海慧如来 (禅定に入りて黙然としてもの言わず終に説法せず)
海慧如来は白毫の印の中にて常に此の偈を説きたまえり。
本性の義は不生にして 受も無く取者も無し
四大の性は幻の如く 五陰は炎電の如し
一切の諸々の世間は 猶ほ旋火輪の如く
皆無明に随って転ず 業力は生を荘厳す
性相を観ずるに 無常なり 無我なり主有ること無し
智者は応に諦かに 本末因縁の義を観ずべし
本性は実際空なるに 縛著して横しまに有なりと見る
若し能く空を解することに達すれば 願いも無く作処も無く
相も無く所依も無く 必ず道を得て佛の如くならん
衆の魔怨を降伏して 諸々の天人を度脱し
亦大解脱に入らん 空を知るは是れ本の報いなり
是れを佛の説きたまえる所の 無我及び空の義と名ずく
中略
白毫印中 甘露の偈を説く
若し道心を発して菩薩戒を修持せんと欲し、真実空を欲求するものは
菩薩道を隋学すべし、常に當に慈心を行じて 恚害の想を除去し
一切を悲愍して、彼の身空寂なりと観ずべし、我が身は性相無し
四大を仮りて生ずるなり。諸佛の法に随順せよ、殺さざれ瞋りを起こさざれ
悉く諸法を堪受する 其の心は猶し地の如くなれ、常に無所著を行じ
一心を一意に住せしめよ、悉く法は平等にして彼も無く亦此れも無しと観ぜよ。
正心に此の義を思うこそ今乃し菩薩行に応ずるなり。