湘南SPレコード愛好会

鎌倉・大磯を起点に年に4回例会を開催し、蓄音機の様々な活動をしております。

第7回例会

2013年04月16日 | 連絡・報告
日時:平成25年4月14日(日)午後4時~
会場:カフェサンスーシ(鎌倉)

EMG Mark7による、ポピュラー・歌謡曲 リクエスト特集
担当:渡邉 治雄




    

○EMGについて

イギリスのEMG Mark7はEMGの蓄音機の中でも、一番良い蓄音機と評価されていて、この機種だけホーンにエボナイトを使用し、他の機種の紙のホーンと違い材質が堅いことで低音域が締まった音に聞こえます。またホーンを外部に出さず箱の中に収めたことで、低音域がホーンの内部で共鳴してもホーンが揺さぶられることがなく、音の歪が少なくなっています。更にホーンの形が円形型エクスポーネンシャルのため、一つの周波数の共鳴が一カ所(一つの面)でしか共鳴しないため、どこで聞いても音の位相はずれることがありません。EMGが他の蓄音機よりも更にハイファイの音を再生することに執着したことが伺われます。
今回、使用したサウンドボックスはEMGの2スプリング、針圧は75グラムに調整、ホーンから1メートルの位置で300Hzから3000Hzまでフラットな周波数特性で、音圧はラウドの鉄針で再生することで95dBSPL出ています。


○針の材質の違いと、鉄針の太さの違いによる周波数特性の変化



今回、老舗シェルマンの二階にて、竹針・ソーン針・鉄針の周波数特性の違いを実験しました。
まず、HMV203をお借りして測定を行いました。図ー3がそのグラフです。
黒線(竹針)と青線(ソーン針)を比較してみると、250Hzでは両方とも同じレベルの90dBSPLであることが分かります。500Hzでは8dBソーン針の音が大きい、1KHz、2KHz、4KHzでは10dBソーン針の音が大きいことが読み取れます。即ち、竹針は低音域よりも高音域の方が減衰が大きいことがわかります。
次に、赤線(鉄針:ミディアム)と黒線(竹針)を比較しますと、250Hz以下の低音域は4dB位、鉄針の方が音が大きいのが読み取れます。従って、竹針は高音域の減衰が多いため、音が柔らかく感じる訳です。ソーン針はこの二つの中間の特性と言うことが分かります。

続いて、同所で鉄針による周波数特性の違いを実験しました。
お借りしたのはEMGー10bです。図ー4がそのグラフです。
赤線がラウド(太針)、黒線がソフト(細針)で、これを比較すると1000Hzから低い音は、どちらも同じ100dBSPLですが、2000Hzでは、5dB位ラウドの方が大きい、また3000Hzでは約8dB、4000Hz以上の高音域では、約10dBラウドの方が音が大きい、従ってラウドは全音域で大きくなるのではなく高音域のみが大きくなることが分かります。これはソーン針でも同じ結果でした。高音域を大きくするには、針を太くすると良いようです。しかし、騒音計で測定すると、どちらの針も同じ位のレベルになります。
何故かと言うと、500Hz~1000Hzのレベルが100dBSPLもあり、高音域3000Hz~4000Hzでは、ラウドで90dBSPL、ソフトで約80dBSPLなので、全体のエネルギーはどちらも同じ約100dBSPLと言うことになります。




 ♪リクエストされた曲目♪ (順不同)

1 エディット・ピアフ:ラビアンローズ
2     〃    :パダン・パダン
3 グレンミラー:ムーンライト・セレナーデ
4 ルイ・アームストロング:ラモナ
5     〃      :ココナッツ・アランド
6 ペギー・リー:ベラ・ノッテ
7 ラースロ・セントジョルジュ:サパティアード
8 アルフレッド・カンポーリ:チャールダッシュ
9 ナット・キング・コール:スマイル
10 デューク・エリントン:十二番街のラグ
11 マリア・カラス:あなたの優しい声が
12 パンク・ジョンソン:聖者が街にやって来る
13 美空ひばり:お祭りマンボ
14 石原裕次郎:錆びたナイフ
15 江利チエミ:ヴァイア・コン・ディオス
16 淡谷のり子:巴里の屋根の下
17 ペギー葉山:南国土佐を後にして


◎次回予告
第8回例会 6月9日(日)午後4時より  会場:カフェサンスーシ
パテ縦振動の魅力 第2回 担当:金子 家祥
大好評の第1回に引き続き、今回新たに入手した仏パテ社の蓄音機“サロン”により、パテ縦振動SPレコードの中から、クラシック、シャンソン、ポピュラーをセレクトしておとどけします。

第6回例会 

2013年02月12日 | 連絡・報告
日時:平成25年2月10日(日)午後4時~
会場:カフェサンスーシ
創立1周年記念講演会 テーマ:黎明期のレコード”ベルリナー”
講師:湘南SPレコード愛好会 顧問 マック杉崎氏





(クリックすると画像が拡大します。)


                      創立1周年を迎えて           会長 村上信至
 
湘南SPレコード愛好会は、この2月9日に創立1周年を迎えました。昨年は、全てが初めての事ばかりで、役員一同文字通り手探りの運営でしたが、皆様のご協力を得て何とか予定の事業を行う事が出来ました。まことにありがとうございました。
今年は、この経験を生かし、更に内容の充実を計ってまいります。
本日は1周年を記念しての特別企画、当愛好会の顧問、マック杉崎氏による講演会を開催します。テーマは「黎明期のレコード”ベルリナー”」です。本日は氏のご厚意により、貴重なコレクションの中から特別に公開をいただくものです。世界的にも貴重な最初の横振動の発明品、5インチディスクとその蓄音機、その後改良された7インチディスクとその蓄音機を聴き比べます。さらに20世紀初頭に横振動として製品化された他社の7インチ用蓄音機との比較などを行います。見て、聴いて、触って、ベルリナーの歴史とその進歩をご鑑賞ください。



      講演:「黎明期のレコード”ベルリナー”」
                講師:湘南SPレコード愛好会顧問 マック杉崎氏

私は先輩諸氏に恵まれ、蓄音機の世界に足を踏み入れました。若い頃に海外勤務も経験し、スペインやイギリスでの人脈を得て、現地の蓄音機やSP盤を買い求めることが出来ました。これが今日の原点です。
皆さんの中には良い音を追及されている方もおられると思いますが、今日は逆に時代を遡って黎明期ではどんな音で聴いていたのかをベルリナーの蓄音機とレコードを使って鑑賞いたします。
これが、本日使用する蓄音機(下の写真)です。



(左)Berliner Hand‐driving Gramophone
ベルリナー手回し式蓄音機、1895年
1880年代から不完全ながら蓄音機は存在していたが、この完成型の特許は1895年2月10日である。
(右)Berliner Trade‐Mark Model
同型の機械は、Eldridge Johnsonの改良型として1898年より多くの機種があり、本機はイギリス製、新型3号として1903年4月に発表されている。


それでは、鑑賞して参りましょう。これは本日使用するレコード(下の写真)です。



写真左:ベルリナーレコード
(中)5 Inch Berliner Plate    England.1890~'92
 35.Who Killed Coek Robin だれがロビンを殺したか?
(左)7 Inch Berliner Disk Dec.13.1898 London 2187
Star of My Soul   Sung by Bryce
(右)7 Inch Berliner Disk July.23.1900 Milano
Quest'e Quena-Rigoietto-Verdi Carlo Caffetta
写真右:各社レコード
(左)Improved Record 7 Inch 1900 Manufactured by Eldridge Johnson
La Paloma A‐171
 Bariton Solo by Sig.E.Francisco
(右)Victor 7 Inch 1902
The Gate City March 1444
Sousa's Band
(中)Gremophone & Typewriter 7 Ⅰnch  1903 日本録音
 あほだら経 反物づくし
 豊年斉梅坊主    東京12449

 
エミール・ベルリナーは、ドイツからアメリカに渡った移民です。彼は1887年に、横振動の平板レコードを発明しました。そのレコードは当初はプレートといいました。
この5インチプレート(ディスク)は、素材に硬質ゴム(エボナイトともいう)を使用していました。音質も悪くノイズの中からやっと歌声が聞き取れます。裏に貼ってある歌詞カードを見なければ、言葉がよく判りません。割れやすいのと、後に7インチができた時に回収したせいか、このレコードは数が少なく、今日では大変珍しい物です。蓄音機は手回しです。
その後、7インチディスクと蓄音機を開発、素材もシェラックになり丈夫で音が良くなりました。蓄音機も進歩してサウンドボックスの振動板がガラスから雲母に、動力はゼンマイになり回転も一定で、お聴きのように格段に進歩したのです。
ベルリナーは、録音や販売を細分化して会社を作り、自分のパテントに関するレコード製造は全部ハノーバープレスにしました。G&T等のヨーロッパ系の会社はベルリナー資本です。G&Tとは、グラモフォン&タイプライターの略です。1901年から6~7年続き、その後この文字が消えます。当初はレコードだけでは不安があったのでしょうか、簡便なタイプライターも同時に販売しておりました。
1900年に、片腕だったエルドリッジ・ジョンソンが、袂を分かって独立し、後にビクターとなる会社を作ります。しかし、裁判沙汰になり、グラモフォンという名称は判決により使えなくなります。そこで彼はトーキングマシンという名称を使うようになりました。1902年にはニッパー犬のマークを商標登録します。今度はベルリナーが、ニッパー犬のマークを使えなくなり、以後エンジェルマークにします。それからは、アメリカでは蓄音機をトーキングマシンと呼ぶようになります。ビクターはこの様に紆余曲折の末誕生したのです。
今日紹介するレコードの中に、G&Tのフレッド・ガイスバーグという、録音プロデューサーがおります。カルーソやパッティの有名な録音をするのですが、1903年2月に、いわゆる出張録音の為来日します。 7インチと10インチ合わせて273面のレコードを録音をしました。
これをハーノーバーに送り、レコードが作られて、また、日本に送り返されました。しかし各一枚毎にオーダーは百枚とか二百枚だったらしく、現存する物が少ない希少盤です。
その中でも有名なレコードでは、落語家の快楽亭ブラックの録音があります。ブラックは東京育ちのイギリス人で、一世を風靡しました。この一連の出張録音では、通訳そしてプロデューサーの役割も果たしたそうです。
こうして聴き進みましたが、なんと回転数が1枚ごとに違います。当時は、まだ規格がなかったからです。
しかも手回しですと、回転が一定にならない。今、会員にハンドルを回して頂きましたが、手で廻すと一定になりません。すごく難しいのが分かります。
さすがにエジソンは進んでいて、既に最初から電動モーターでした。しかし、大変高価なため商品として普及しませんでした。そこで、安価で出来るゼンマイにしたんですね。ですから、ゼンマイの方が後なんです。ゼンマイ以前の動力は、ウエイトドライブといって、鳩時計の錘の原理を用いたものもありました。


今日は、私の勝手で一番やって見たかった事を、皆様のお蔭でできた思いでおります。
村上会長を始め、心優しい会員の方々ばかりで、玩具いじりの子供の如き私に、最後まで録音再生の源流へ遡る旅にお付き合い頂き、ありがたく感謝しております。
会員の皆様のご健康と趣味の益々のご発展をお祈りいたします。
ありがとうございました。
                                   MAC杉崎




                      ♪懇親会♪ 
                   マック杉崎氏を囲んで

講演会では、マック杉崎氏の深い知識に裏打ちされた素晴らしいお話を聞かせて頂きました。そして解りやすい解説と楽しいトークを交えてのお話と古の音楽に、興味深く耳を傾けていると、”ベルリナー”の時代、19世紀末の世界を訪れているようにさえ感じました。

講演会終了後、場所を近所のレストランに移し、杉崎氏を囲んで懇親会が行われました。
皆さん一様に新たな発見と、大珍品に触れることが出来た興奮で高揚しておりました。蓄音機やSPレコードの話に食事もそっちのけで、杉崎さんにご自分のコレクションの相談に乗って頂いたり、著作の本にサインをねだったりと、大いに楽しい一時を過ごすことができました。
杉崎さん、ありがとうございました。



○次回予告
第7回例会 日時:平成25年4月14日(日)午後4時~  於:カフェサンスーシ
 ポピュラー・歌謡曲 リクエスト特集  担当:渡邉治雄氏   
 使用蓄音機:EMGアップライト・グランド型

260曲の目録から、自由にリクエストができます。会員以外の方も大歓迎です。参加費はワンドリンク付きで¥1,000です。ぜひご参加ください。


平成25年度 年間予定表

2012年12月13日 | 連絡・報告
第6回例会 2月10日(日)午後4時~ 於:カフェサンスーシ
○創立1周年記念講演会 特別企画 テーマ:黎明期のレコード”ベルリナー”
講師:湘南SPレコード愛好会 顧問 マック杉崎氏


ベルリナーの5インチディスクと7インチディスクをベルリナー蓄音機で聴き比べ、録音技術の進歩とその歴史的意義を解説します。5インチディスクや蓄音機は国内に数点しか存在せず、博物館でも見ることのできない大変貴重なものです。今回、記念講演として「図説・世界の蓄音機」の監修者、マック杉崎氏にご講演をいただきます。ご期待ください。


第7回例会 4月14日(日)午後4時~ 於:カフェサンスーシ
○ポピュラー・歌謡曲 リクエスト特集    担当:渡邉治雄


厳選した名盤、130枚のSPレコード、この目録の中から皆様にリクエストをいただきます。聴きたい曲や、懐かしのメロディーにめぐり会うかもしれませんよ。
使用蓄音機:EMGアップライト・グランド型(国内に3台が確認されています。)


第8回例会 6月9日(日)午後4時~ 於:カフェサンスーシ
○”パテ”縦振動の魅力 Ⅱ         担当:金子家祥


大好評の第1回に引き続き、今回新たに入手した仏パテ蓄音機”サロン”で、レパートリーを拡大してお届けします。ピュアで迫力のある縦振動の音をお楽しみください。


第9回例会 8月25日(日)午後4時~ 於:カフェサンスーシ
○会員愛聴盤・珍盤・決定盤、鑑賞会     担当:会員全員


会員の皆様が日頃愛聴しているSPや、珍盤、希少盤、お勧めしたいSP、思い出のSPなどを持ち寄って鑑賞します。復刻盤もOKです。鑑賞されるだけの方もどうぞ。思わぬ出会いや発見があるかも、お楽しみに!


第10回例会 10月13日(日)午後4時~ 於:カフェサンスーシ
○平面バッフルスピーカーと真空管アンプによる
 JAZZのSPレコードと復刻盤の実験的電気再生法 担当:小沢俊雄


JAZZのSPレコードと復刻盤を電気再生し、現代の録音とも対比して鑑賞します。さて、どんな結果が出るでしょうか、皆様のご感想をお聞かせください。


第11回例会 12月8日(日)午後3時~ 於:カフェサンスーシ
○追憶の童謡集         担当:西山直利
あの日あの時、口ずさんだ懐かしい童謡の数々、幼い頃が偲ばれます。お若い方々には大正後期から昭和初期にかけての、児童文化が花咲いた素敵な時代の作品を鑑賞して頂きたいと思います。

○歴史的名盤集         担当:マック杉崎
当会顧問、マック杉崎氏のコレクションの中から、希少な名盤をご紹介して頂きます。ご期待ください。


☆第3回総会 同日、同所に於いて 午後4時30分~ 

☆忘年会 同日 午後6時~ 於:中華料理 山下飯店(鎌倉駅前交差点際)
                会費:5,000円  




第5回 例会報告/第2回 通常総会/打上げパーティー

2012年12月13日 | 連絡・報告

平成24年12月9日(日)午後4時から7時30分

             

♪第5回例会♪

今回はより多くの会員の皆様にSPレコードと蓄音機、小物を入手して頂くため、そして愛好会の運営費(通信費)を確保するために、オークションを開催しました。
結果は平均価格が1点につき、1,000円未満でしたが、会員の皆様への便宜がお計り出来できたのではないかと存じます。入札は一点に付きお一人が多く、ほとんど競ることも無く決まる状態でしたが、皆様と共に楽しい一時を過すことができました。ご協力に感謝します、誠にありがとうございました。



出品点数:25点 (蓄音機2台、電蓄1台、小物6点、SP15組と1枚)
落札点数:25点
落札金額:18,400円
運営費充当金:920円
寄付金:8,680円

運営費として、売上からの充当金と寄付金の合計で9,600円が確保できました。目標の10,000円には届きませんでしたが、これで一安心です。当会は年会費が無料なので、皆様のこのようなご配慮はありがたいです。今後とも宜しくお願い致します。


               
◎第2回 通常総会

同日同所で、総会を開催いたしました。役員の任期は2年ですので、今回は役員改選がありません。会則に基き、会長が議長を務めました。

開会のことば:会長 村上信至

出席数:11名
委任状:16名
会員総数:30名
会則の規定により、総会は成立しました。

議長 村上信至

書記 後藤明子

運営委員長 金子家祥(代理:村上)から、以下の議案が上程されました。

総会議案
○第1号議案
 平成24年度事業報告
 平成24年度会計報告
○第2号議案
平成25年度事業計画
○第3号議案
 顧問選任の件
杉崎 信さんを役員会において顧問に推挙。

質疑応答

以上を一括審議、満場一致で可決承認されました。

閉会のことば:副会長 渡邉治雄


               
♪打上げパーティー♪

今年度は初年度でもあり、この1年を振り返りながら親交を深め歓談しました。お酒も程よく回ったころには、音楽以外の話題も出て、あちらこちらで談笑の花を咲かせておりました。長時間に亘ったイベントもそろそろお開き、午後7時30分散会致しました。

平成25年度は、湘南SPレコード愛好会の創立1周年に当たります。当会の顧問、杉崎 信(マック杉崎)さんが記念講演を行ってくださる事になっております。ご期待ください。詳細は、来年度の事業予定表をご覧ください。





第4回 例会報告

2012年10月17日 | 連絡・報告







日時:平成24年10月14日(日)午後4時より
会場:カフェサンスーシ
使用機器:パラゴン№145

                ♪私の思い出の曲♪     担当:金田邦明

◎蓄音機 パラゴンについて

純国産ポータブル蓄音機パラゴンは、自社ブランドの他にテイチク蓄音機のOEMを行っていて、最後はテイチクに併合されたようである。またテイチク蓄音機には製造元パラゴン㈱の表示があるものもある。自社ブランド製品は少ないようで、今ではなかなか見ることができない。

現在ネット上に現れるのは、ポータブル型、卓上型合わせて4種類くらいしかない。時に見るポータブル型は、№35、№145、他にテイチクブランドものなどである。卓上型は№40、№145…などと少ない。製造は1920~30年代と思われる。

サウンドボックスはビクトローラキャムデン型で少し軽量に出来ていて、針圧は95グラム(因みにMHV5Aは130グラム)。その支点はボールベアリング数個を両側から調整ネジで押さえガタをなくし、グリースでダンプされている。
卓上型の物は通常のもののように縦にグースネックに取り付けて蓋を閉めて演奏するが、ポータブルの№35や№145でも蓋を閉めて演奏出来るように、高さを低くするために、ほぼ水平に取り付けてあり、取り外しは出来ない構造になっている。支点部分は針を90度曲げて取り付けてある。一見縦振動のボックスに見えるがそうではない。演奏中に蓋を閉めるよう促されているのは、ボックスからの高音部が直接放射される音との干渉を防ぎ、音の濁り(歪感)をなくすためである。

ホーンは厚紙のようなものを巻いて、トグロ状にさせ、全体にピッチかタールのようなもので固めてある。№145のホーンの開口部は約20㎝×10㎝、長さはサウンドボックスから測ると約110㎝ある。

モーターは一丁ゼンマイで10インチ盤に対応している。12インチ盤をかけるには多少の追い巻きが要る。

再生音はホーンの大きさの割には大きく柔らか目に聴こえる。

◎鑑賞レコード

クラシックの部
1、J・ティボー:バッハのソナタ「ガボットとロンド」
  メニューイン:クライスラー「美しきローズマリー」

2、ルネ・シュメー:ヴィニアフスキー「華麗なる大ポロネーズ」
         :ヘンデル「組曲イ長調」
   ルネ・シュメーはフランスの女流ヴァイオリン奏者で、1932年に来日して宮城道雄と共演し「春の海」の尺八パートをヴァイオリンで演奏したものが有名。

3、アディラ・ファチーリ&ジェリー・ダラーニのⅤ二重奏:パーセル「黄金ソナタ」

4、W・ランドフスカ:モーツアルト「トルコ行進曲」

5、P・カザルス:タルティーニ「グラーベとエスプレシーボ」
        :バッハ「甘き死よ来たれ」、ハイドン:「メヌエット」
   日本ビクターの「秘曲集」の中からの1枚。HMV盤ではDB1400でハム音が盛大に    入っているので電気再生では注意が必要、この盤も同様。それゆえかCD復刻は聴いたことがない。   

6、ソフィー・ブラスロウ(コントラルト):シューベルト「野薔薇」「鱒」

7、チャールス・クルマン(テノール):ワグナー「ローエングリン」第3幕第3場
  クライディア・ムッツイオ(ソプラノ):ジョルーノ「アンドレアシェニエ」
                          第3場「母は死んだ」
その他の部
1、グレンミラー:真珠の首飾り・茶色の小瓶

2、ドリス・デイ:君を慕いて

3、ローズマリー・クルーニー:美しき茶色の瞳
   1928~2002年、アメリカ・ケンタッキー州の出身。ケネディ大統領の応援中に暗殺を目の当りにしてから鬱病と薬物依存に陥り、2002年ビバリーヒルズで逝く。

4、レケル・メレ:ドンニャマリキータ
   1926年のフランス映画、ジャック・フェデェール監督「カルメン」に主演している。日本では淡谷のり子が唄った。カンナの花が匂う懐かしのマドリード。

5、ロシータ・キロガ:古いギター
   キロガは1920~30年代にタンゴやシャンソン歌手として活躍したアルゼンチンの歌姫。タンゴ「カミニート」の作曲家ファンデティオス・フェリベルトの愛弟子

6、池真理子:ボタンとリボン
   大正6年京都生まれ。宝塚で活躍し、戦後渡米して帰国、スイングの女王と言われた。平成12年5月、ホテルのショーで「センチメンタルジャニー」を唄った直後にくも膜下出血で倒れた。83歳であった。

7、暁テル子:東京シューシャインボーイ
   大正10年浅草生まれ。昭和8年に松竹少女歌劇団へ。他に「ミネソタの卵売り」が有名。昭和37年心臓マヒで死去、41歳。

8、平野愛子:港が見える丘
   大正8年東京出身。昭和20年にビクターの公募で3000人の中の7人に選ばれる。昭和22年、この曲がヒット。作曲家が神戸の港を思い浮かべて作ったとされる。横浜の「港が見える丘公園」は後に名付けられた。

9、織井茂子:黒ユリの花
   1926年東京目黒出身。10代の頃は童謡歌手としてリーガル盤で活躍。1952年「君   の名は」が大ヒットした。1996年膵臓ガンで亡くなった。70歳。

10、鶴田浩二:街のサンドイッチマン
   1924~1987年、浜松(兵庫県ともいわれる)出身。高田浩吉劇団へ入団後、失踪事   件や暴力団からの襲撃事件などがあった。22歳のとき薬の影響で左耳が難聴にな   り、田端義夫のアドバイスで手をかざしてうたうようになる。唄がうまく声とマ   ッチしている。

11、斎田愛子:長崎物語
   元の名は橘良江。1910年カナダ生まれの2世。昭和2年デビュー。藤原歌劇団でオペラに出演。「由利あけみ」の後に代わって唄った。唄はインドネシアに追放され、日本を想う「お春」の手紙1639年(寛永16年)を元にした。お春の父はイタリア系、母は日本人で目はブルーなので、心は日本人であっても当時の混血追放策で余儀なくされた。

12、平井英子:童謡「ねこふんじゃった」


金田さんの絶妙な講演で、ほぼ時間通りに例会が終了しました。良く整備されたパラゴンの音は柔らかく澄んでいて、かけたSPの中ではカザルスの演奏が特に白眉でした。金田さんの蓄音機に対する愛情が伝わって参ります。この後、懇親会に入り皆さんの活発なお話で盛り上がりました。SPの手入れの方法や針の選び方など、皆さんの薀蓄の深さに感嘆するばかりです。



♪次回予告♪
第2回総会・第5回例会・今年度打上げ会
日時:平成24年12月9日(日)午後4時~
会場:カフェサンスーシ


○今年度打上げ会:1年の締括りとして楽しい一時を過ごしたいと思います。軽食やアルコ-ルも用意しますので出欠は必ずご連絡ください。申込み用紙は、会報・第3号に同封して11月中旬に郵送します。



☆例会場のカフェサンスーシにフランス・パテの縦振動蓄音機が入りました。とても良い音で鳴っています。ティボーやキルティ、ヴァランなどが鑑賞できます。一聴に価しますよ。
 
 

第3回例会 報告

2012年09月03日 | 連絡・報告


日時:平成24年8月24日(日)午後4時から6時
会場:カフェサンスーシ

             ♪ルミエールによるヴァイオリンの巨匠達♪      担当:村上信至

◎HMV460 ルミエールについて

フランスのルイ・ルミエール(映画の発明者)の発明機。キャッチフレーズが No soundbox,No tonearm,No horn であった。明快かつ柔らかく、繊細な音がする。
製作は1924年~5年の一年間のみ。販売台数は1037台、売れ残ったルミエールは通常の蓄音機に改造されてHMV461として販売された。ルミエールがあまり売れなかった理由としては、構造上とてもデリケートであり、取扱が難しい事が考えられる。振動板が紙であるため、直接手を触れると簡単に破れてしまう。現存する物は殆どが修理を施されていて、完品は台数が少ない。しかし、良く整備し調整されたルミエールの、美しい音色は魅力的である。


◎HMVルミエールを聴く

1、ヘンデル:調子のよい鍛冶屋 ランドフスカ(クラブサン)

2、グノー:セレナーデ ロガチェウスキー(テノール)

3、ジュナン:ベニスの謝肉祭 モイーズ(フルート)

4、竹久夢二作詞・多忠亮作曲:宵待草 ベルトラメリ能子(ソプラノ)


◎SPコンサート ヨアヒムからハイフェッツまで

1、ヨーゼフ・ヨアヒム(ストラディヴァリウス) ブラームス:ハンガリア舞曲第2番

2、アドルフ・ブッシュ(ストラディヴァリウス) ドボルザーク:スラブ舞曲第6番

3、ウィリー・ブルメスター(  ?  ) ラモー:ガボット

4、ヨーゼフ・ヴォルフシュタール(グァルネリ・デル・ジェス) ブラームス:ワルツ

5、ブロニスラフ・フーベルマン(グァルネリ・デル・ジェス/ストラディヴァリウス)
                バッハ:パルティータより

6、ユージン・オーマンディー ミネアポリス交響楽団 クライスラー:愛の悲しみ

7、バルナバス・フォン・ゲッツイ(ストラディヴァリウス) R・コルサコフ:印度の歌
                コリュス(ソプラノ)ザイドラー=ウインクラー指揮 管弦楽団

8、フリッツ・クライスラー(ストラディヴァリウス) 自作:ヴィーン奇想曲

9、ヴァーサ・プシホダ(ストラディヴァリウス/グァルネリ・デェル・ジェス)
                ドヴォルザーク:スラブ舞曲第10番

10、ウージェーヌ・イザイ(ストラディヴァリウス/グァルネリ・デル・ジェス)
                メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲第3楽章

11、ジャック・ティボー(ストラディヴァリウス) グラナドス:スペイン舞曲

12、ジョルジュ・エネスコ(グァルネリ・デル・ジェス) プニャーニ:ラルゴ・エスプレッシーボ

13、カール・フレッシュ(ストラディヴァリウス/グァルネリ・デル・ジェス) ファリャ:ホタ

14、トーシャ・ザイデル(ストラディヴァリウス) ブラームス:ハンガリア舞曲第1番

15、ヤッシャ・ハイフエッツ(グァルネリ・デル・ジェス) サラサーテ:チゴイネルワイゼン
                バルビロリ指揮:ロンドン交響楽団

予定した2時間で用意したSPレコードを全て聴くことができず、数枚が残ってしまいました。そこで午後6時に一旦閉会し、カフェサンスーシさんのご協力を得て、懇親会の時間を延長し、残りの数枚を聴いて頂くことが出来ました。ご配慮をいただき感謝しております。その後、皆さんの持参したSPレコードも聴かせていただきました。リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」、「モンテカルロの一夜」や「会議は踊る」、クライスラーやザイデルのヴァイオリンなどを楽しみ、結局終了したのが午後8時。またもや時間延長になってしまい反省することしきりです。
皆様、ご協力ありがとうございました。

前回の第2回例会は私の急な入院により、今回の第3回例会のプログラムと入れ替えさせて頂きました。この変更をお詫びしますとともに、快く対応してくださった、金子さんに感謝と御礼を申し上げます。






♪次回予告♪
第4回例会:10月14日(日)午後4時より
会場:カフェサンスーシ
蓄音機:パラゴン
テーマ:「私の思い出の曲 童謡~歌謡曲~クラシック」
担当:金田邦明



☆来年度例会でのSPコンサートの担当者を募集します、ジャンルは問いません。開催月は偶数月です。復刻盤もOKです。会員の皆様の愛聴盤や愛機をご紹介ください。ご連絡は事務局まで。


☆会報第3号の投稿記事を募集します。内容は自由です。音楽以外の旅行記やエッセイ等でも構いません。内容は自由です。原稿の送付先は事務局まで。


               

第2回例会 報告

2012年07月18日 | 連絡・報告
平成24年6月10日(日)午後6時から10時 会場:カフェサンスーシ


                    ♪パテ縦振動の魅力♪          担当:金子家祥

 会員の皆様、先日はお疲れ様でした。今回、第2回例会は村上会長が突然の入院と言うこともあり、急遽、私金子が次回との入れ替えで担当することになりました。宜しくお願い致します。

 さて、縦振動盤はまさにSPレコードの元祖と言うべきもので、エジソンシリンダー、パテ縦振動盤、ダイヤモンドディスク、他にもマイナーなメーカーが数社ありました。今回は、その中でもっともポピュラーなパテのレコードと蓄音機を使用しました。
 機種名は、パテ・フレール社、コンサートA、1910年頃のフロントホーンです(写真参照、クリックすると拡大します)。
 ここで問題になるのが縦振動のレコードです。先述した、もっともポピュラーなパテ縦振動とは言っても、当時は日本に於ける知名度や普及率はかなり低く、その事情は現在でもあまり変わりません。国内での数は少ない上、高額な蓄音機ですので入手はかなり困難です。レコードも同様で、アメリカのオークションには、我が国から比べれば、かなりの枚数は出品されておりますが、落札できたとしても、送料などの手数料を加算するとかなり高価な物になってしまいます。例えば、ヴァイオリンのジャック・ティボーでしたらパテのレコードでは数万円はくだらないでしょう。そんな訳で、レコードの入手も非常に難しいのです。
 今回使用した約10枚のレコードの選曲には苦労しました。私自身も30枚ほど保有していましたが、あまり良いものがなく、今回、この例会の為に新たにアメリカのオークションで10数枚を入手しました。これには、当カフェサンスーシのオーナーОさんにご協力をいただいた結果です。我儘なお願いに快く応じてくださり感謝申し上げます。お陰様で、使用できそうなレコードを、沢山集めることができました。パテ縦振動盤は無名アーティストの演奏が多く、声楽のニノン・ヴァランやヴァイオリンのジャック・ティボーなどの有名なものもありますが、なかなか入手できませんので、今回は無名アーティスト物のレコードを持参しました。また、パテ初期のセンタースタートのレコード(最初期盤、内周から外周へ針を運ぶパテ独特の縦振動盤)も数枚含めました。
 当日はパテの歴史を説明しながらのレコード・コンサートでしたが、持ち時間が1時間半~2時間と言う制約もあり時計を見ながらの進行となりました。一通りの演奏が終わり最後の挨拶をしようとした時に思わぬアンコールの声があがり、結局大幅に時間延長することになってしまい、店側には大変ご迷惑をお掛けしてしまいました。しかし、今回の盛況ぶりに胸を撫で下ろしております。
 今回の例会の模様を、当会会員でフルート演奏家のIさんが、ご自身のブログ「フルートの部屋」で紹介をしてくださいました。紙面をお借りして御礼申し上げます、ありがとうございました。会員の皆様どうか、こちらもご参照ください。
 今後もこれに懲りず、縦振動パートⅡを企画したいと存じますので、何卒宜しくお願い致します。今回はありがとうございました。
 結びに、会長の一日も早い回復を願っております。



♪次回予告♪
第3回例会:日時:平成24年8月26日(日)午後4時から 
会場:カフェサンスーシ
蓄音機:HMVルミエール
「ヴァイオリンの巨匠たち」:サラサーテ/イザイ/ヨアヒム/エネスコ/フレッシュ他
担当:村上信至
 

第1回例会 報告 

2012年07月15日 | 連絡・報告
平成24年4月8日(日)午後6時~9時      会場:カフェサンスーシ



                「私の決定盤」              出席者全員

♪記念すべき第1例会。SPレコードによる「私の決定盤」を、会員の皆様から自己紹介を兼ねて、ご紹介していただきました。
使用した蓄音機はWさん所有の、EMG-mrak9です。

☆Kさん
  ヴィターリ:シャコンヌ  ジャック・ティボー(V)  ビクター盤

☆Mさん
  シャンソン:巴里祭  ジョルジュ・セラー(ミュゼット) ビクター盤

☆Sさん
  落語:柳家小せん   アメリカンレコード盤

☆Wさん
  パット・ブーン/石原裕次郎  ドット盤/テイチク盤

☆Оさん
  中国映画主題曲:李香蘭  中国コロンビア盤

☆Tさん
  軍歌:愛国行進曲  徳山環・灰田勝彦・四家文子・中村淑子  ビクター盤

☆Mさん
  ナポリ民謡:サンタ・ルチア  ティト・スキーパ(T)   ビクター盤

☆Kさん
  クルト・ワイル:マック・ザ・ナイフ  演奏者不明   (見本盤)

♪皆様から、曲に纏わる思い出や感想をお話しいただき、その後懇親会へと移りました。
楽しいお話の数々に時の過ぎるのを忘れ、ふと気が付くと時計の針は午後9時を指していました。
予定の時間を1時間も過ぎてしまったので、次回の例会での再会を約し散会いたしました。

例会開始時間の変更について

2012年07月13日 | 連絡・報告
第3回例会から開始時間が午後4時に変更されました


   ♪平成24年度 湘南SPレコード愛好会 例会予定表♪

第3回例会 8月26日(日)午後4時より    会場:カフェサンスーシ
  ○ヴァイオリンの巨匠たち・蓄音機HMVルミエール使用
   ヴァイオリニスト:サラサーテ/イザイ/ヨアヒム/エネスコ他
   講師:村上信至
  ○リクエスト/懇親会

第4回例会 10月14日(日)午後4時より   会場:カフェサンスーシ
  ○私の思い出の曲<童謡~歌謡曲~クラシック>
   講師:金田邦明
  ○リクエスト/懇親会

第5回例会・第2回総会 12月9日(日)午後4時より  会場:カフェサンスーシ
  ○第2回総会:24年度活動報告、25年度活動計画、その他
  ○忘年会:会員愛聴盤コンサート、皆様の愛聴盤をお持ちください。
   (お酒を飲まれる方は、車の運転をご遠慮ください)

 

湘南SPレコード愛好会のブログを始めました。

2012年07月13日 | 連絡・報告

              例会場と設立総会 初代会長 村上信至


♪ 湘南SPレコード愛好会は、SPレコード及び、これを音源とした復刻LP・CDの鑑賞を通じた、音楽愛好家の親睦と交流の集いとして、更にこの文化遺産を次代に継承することを目的として、平成24年2月に設立総会を開き創設されました。創設会員数は20名です。現在は25名になりました。
例会場は上の写真にある、鎌倉のカフェサンスーシです。ここを会場として2ヶ月に一度のペースで、例会と情報交換会を兼ねて開催されております。
例会当日には、会員の楽しいお話や、珍しい蓄音機とレコードを聴かせてくれたりします。リクエストもできます。
当会は入会金や年会費はありません。負担金は、例会に出席を頂いたときの、当日のワンドリンク代のみです。
これもお店のオーナーのご理解とご協力のたまものです。
オーナーも愛好家であり会員ですので、どうかお気軽にお立ち寄りくださいませ。

○例会場
〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下3-10-23
カフェサンスーシ
☎・FAX 0467-23-7223

※平成26年6月現在、例会は大磯の「無罣庵」と交互に開催しておりますので、HP又は 当ブログのお知らせをご確認の上ご出席ください。