青森の弁護士須藤のブログ

主に判例を勉強します 
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判例読みますか

2015年02月20日 | 判例

 最高裁判所第2小法廷判決 平成12年3月24日
【判示事項】 一 長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合に使用者の民法七一五条に基づく損害賠償責任が肯定された事例
       二 業務の負担が過重であることを原因として心身に生じた損害につき労働者がする不法行為に基づく賠償請求において使用者の賠償額を決定するに当たり右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を斟酌することの可否

【判決要旨】 一 大手広告代理店に勤務する労働者Aが長時間にわたり残業を行う状態を一年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した場合において、Aは、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていたため、継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態になっていたものであって、Aの上司は、Aが業務遂行のために徹夜までする状態にあることを認識し、その健康状態が悪化していることに気付いていながら、Aに対して業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、その業務の量等を適切に調整するための措置を採らず、その結果、Aは、心身共に疲労困ぱいした状態となり、それが誘引となってうつ病にり患し、うつ状態が深まって衝動的、突発的に自殺するに至ったなど判示の事情の下においては、使用者は、民法七一五条に基づき、Aの死亡による損害を賠償する責任を負う。
       二 業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、右性格等を、民法七二二条二項の類推適用により右労働者の心因的要因として斟酌することはできない。


・・
・・・
最高裁は, 「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。」と判示しました。
 会社としては,社員の健康状態に十分配慮する必要があります。
 まずは,社員の労働時間を正確に把握することから始めましょう。
 特に,特定の社員が,いつも深夜まで働いていないか,徹夜などしていないか,などいずれも簡単にチェックできることですので,いますぐチェックしましょう!

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2015年01月16日 | 判例

建物明渡等請求控訴事件

最高裁判所第1小法廷決定 平成26年6月26日
【判示】 賃貸借保証会社による未払賃料の代位弁済は建物賃借人による賃料の不払という事実に消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因の発生という事態を妨げるものではないと判示として建物賃貸人による債務不履行解除を有効と判断した原判決に対する上告受理申立てについて,受理しない決定をした事例
【事案の概要】 本件は,本件建物の賃貸人である被控訴人X1が,賃借人の控訴人に対し,賃料不払を理由とする催告による債務不履行解除を原因として本件建物の明渡しを求め,控訴人との間で賃借人の債務の保証委託契約を締結して,本件賃貸借契約の保証人となった被控訴人X2が,控訴人に対し,被控訴人X2が控訴人の未払賃料等の5か月分について代位弁済した金員の支払を求める事案
【訴訟経過】第1審の神戸地方裁判所尼崎支部平成25年5月29日判決が被控訴人らの請求を全部認容した
 控訴審である大阪高等裁判所平成25年11月22日判決が,前提となる事実,争点及び当事者の主張並びに当裁判所の判断のいずれも第1審判決を引用せずに記載した判示をした上で,これと同旨の原判決を相当として控訴を棄却した
 原判決の判断内容
 ア「弁論の全趣旨によれば,控訴人は,平成24年4月分~平成25年3月分までの賃料等を支払っていないことが認められる。よって,被控訴人X1は本件賃貸借契約を解除することができる。これに対し,控訴人は,平成24年4月分~平成25年1月分の賃料等については,被控訴人X2がこれを代位弁済しているから,控訴人に賃料等の不払はないと主張する。そして,証拠(省略)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人X2は,被控訴人X1に対し,平成24年2月~平成25年6月まで,毎月の賃料等7万8000円に相当する金額を代位弁済していることが認められる。」
 イ「本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は,保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し,賃借人が賃料の支払を怠った場合に,保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり,これにより,賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能とし,賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。しかし,賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって,賃借人による賃料の支払ではないから,賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり,保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら,保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって,これにより,賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。よって,控訴人の上記主張は理由がない。」


・・
・・・
賃料の支払をしなかった賃借人が,「私の代わりに保証会社が支払ったんだから,賃貸借契約の解除はできないだろ!」と主張したわけですね。
細かい事情は不明ですが,まともな主張とは思えませんね~~

非常識な主張は通らないという良い例だと思います

事務所のホームページです

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2013年10月08日 | 判例

民法900条4号ただし書 「嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の2分の1」とする

憲法14条1項 「すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない」

 

裁判年月日 平成25年9月4日 最高裁大法廷 決定

事件名 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件

【判旨】

この事件で問われているのは,・・・相続制度全体のうち,・・・嫡出子と嫡出でない子との間で生ずる法定相続分に関する区別が,合理的理由のない差別的取扱いに当たるか否かということであり,・・・合理的な根拠が認められない場合には,当該区別は,憲法14条1項に違反する。

昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向,我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化,諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘,嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化,更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば,家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして,法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,上記のような認識の変化に伴い,上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。

以上を総合すれば,遅くとも相続が開始した平成13年7月当時においては,立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。

したがって,本件規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたというべきである。

・・本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的となった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。

 

・・

・・・

ついに,違憲判決が出ました!!

民法900条の規定については,これまでにも最高裁の判決が出ていて何回も読みましたが,全然納得出来ませんでした。

これで,納得です

ただ,これまで,最高裁が合憲だと言ってるから民法900条の規定に基づいて渋々遺産分割に応じた方も相当多くおられるはずで,先例としての事実上の拘束力について制限するということが,理解できるような,理解できないような・・・

難しいです・・・

生まれて来た子どもに罪はないということですね

 

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2012年12月27日 | 判例

相続が発生した場合,「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に」相続放棄しなければなりません(民法915条1項)。

でも,特別な事情があれば,相続発生から3ヶ月を過ぎても相続放棄が認められる場合があります。

【裁判年月日】昭和59年4月27日 最高裁第2小法廷

昭57(オ)82号 貸金等請求事件

【判旨】

(民法915条1項の)熟慮期間は,原則として,相続人が前記の各事実(相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上の相続人となった事実)を知った時から起算すべきものであるが,相続人が,右各事実を知った場合であっても,右各事実を知った時から三ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが,被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,被相続人の生活歴,被相続人と相続人との間の交際状況その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって,相続人において右のように信じるについて相当な理由があると認められるときには,相続人が前記各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり,熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。

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疎遠になっていた人が亡くなった場合などは,

上記裁判例によって,亡くなった時から3ヶ月が過ぎた場合であっても,

相続放棄できるケースがあります。

諦めないで,相談してみましょう

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2012年11月02日 | 判例

平成24年9月13日 最高裁第一小法廷判決

事件番号 平成22年(受)第1209号 建物明渡請求事件

【事案】

被上告人が,平成15年7月18日,上告人との間で,「定期建物賃貸借契約書」と題する書面を取り交わし,期間を同日から平成20年7月17日まで,賃料を月額90万円として,本件建物につき,賃貸借契約を締結した。本件契約書には,本件賃貸借には契約の更新がなく,期間の満了により終了する旨の条項がある。

被上告人は,本件賃貸借の締結に先立つ平成15年7月上旬頃,上告人に対し,本件賃貸借の期間を5年とし,本件定期借家条項と同内容の記載をした本件契約書の原案を送付し,上告人は,同原案を検討した。

被上告人は,平成19年7月24日,上告人に対し,本件賃貸借は期間の満了により終了する旨の通知をした。

【原審の判断】

上告人代表者は,本件契約書には本件賃貸借が定期建物賃貸借であり契約の更新がない旨明記されていることを認識していた上,事前に被上告人から本件契約書の原案を送付され,その内容を検討していたこと等に照らすと,更に別個の書面が交付されたとしても本件賃貸借が定期建物賃貸借であることについての上告人の基本的な認識に差が生ずるとはいえないから,本件契約書とは別個独立の書面を交付する必要性は極めて低く,本件定期借家条項を無効とすることは相当でない。

【判旨】

法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃借人になろうとする者に対し,定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了させることを理解させ,当該契約を締結するか否かの意思決定をさせるために十分な情報を提供することのみならず,説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。

以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと,同条2項は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃貸人において,契約書とは別個に,定期建物賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了することについて記載した書面を交付した上,その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。そして,紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

したがって,法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。

・・

・・・

定期建物賃貸借をするときは,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない(借地借家法38条2項)とされています。

賃借人保護の規定です。

期間が満了すれば契約の更新がないのですから,契約書のほかにも書面で十分に説明しなければ,賃借人の保護が図れないというわけです。

一般論としては,全く理解可能ですが,

本件のように,賃借人が定期賃貸借契約であって契約の更新がないと十分に理解しているようなケースであっても,契約書とは別個の書面での説明がなかったという形式的な理由だけで,賃借人を保護するようです。

定期建物賃貸借だと十分に分かっていながら,書面不備を理由に居座ろうとするような賃借人を保護する必要なんかあるのでしょうか?!

裁判所の常識が世間一般の常識から外れていないことを祈ります

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