雨上がりの緑は、なんと美しいことだろう。子供たちの笑顔もいっそう輝いて見える。
来年二月にいったんクローズすることを決めた ここ、恵比寿三越も いつになく大勢のひとで賑わっていた。
地下二階の広いイートインスペースに配された「コミュニケーションテーブル」(素敵なネーミングね)には
カップルや家族連れが みな思い思いにフロアの店舗で購入したお弁当やお惣菜、和菓子や洋菓子などのデザートの類を
テーブルに並べ 休日の団欒をたのしんでいる。
喫茶「クラビス」のカウンターでは 芸術家風の男性が生後一年に満たない赤ちゃんを、器用に抱いたまま
ひとりコーヒーを飲んでいた。
あまり赤ちゃんがおとなしくいい子にしているので、テイクアウトのコーヒーを待つ間、思わず、
「おとなしい赤ちゃんですね。」と 声を掛けてしまった。男性は赤ちゃんをあやしながら 私を見上げ、
謙遜の表情でにっこりと会釈を返してきた。
ふたこと三言 交わした会話から かなり久しぶりの外出であると
知った。内心 わたしも「そうだろうなあ・・大人も子供も・・まして赤ちゃんでは。」と
深くうなづいたのだった。
それにしても 大勢のひとが周りで飲食する中で、この赤ちゃんの大人しいこと。
どうやら この赤ちゃんのこの 「穏やかさ」は きっと親譲りのものに違いない。
男性の傍らには 優雅な花柄のコーヒーカップとソーサー。
一瞬見ただけでは まるで「赤ちゃん連れ」と気づかない 静かで落ち着いた
この「ふたり」に それがまた 良く似合っていて いい雰囲気だった。
(続く)