■深き者ども
【消えゆく「魔法の霧」】
世界の西部に広がる大海。
そこには数多くの魔物と、まだ明かされない謎の数々が潜んでいた。
近年、海洋技術や航海術が改めて見直され始めている。
西部地方に住まう者にとっては、海賊都市クロスボーンの近辺でおよそ200年ぶりに大規模な艦隊戦が行われたことは、記憶に新しいところであろう。
そもそも六門世界の海洋技術は、技術革新が目覚ましかった百年戦争期においてすら、200年以上前のままほとんど進歩せずにいたのだ。
それは、「海洋技術が向上したところで、資源的にも領土的にも、どの国や勢力も得をしない状態」であったからだ。
世界の海のうち人間がたどりつける領域の広くは、古代帝国期以降、大きな壁に阻まれていた。
視界を遮り海流を乱す、広大な結界――「魔法の霧」。
その「魔法の霧」が、長い時を経て、再び晴れ渡ったのだ。
【暗黒海域の異変】
晴れ渡る「魔法の霧」についての歴史をひもとくと、そこには「七つの海」があるという記録が目につく。
霧の晴れている数十年の間にだけ航海ができるという「七つの海」のひとつには、霧の影響が消えてなお荒波と暴風で進入者を阻む「暗黒海域」がある。
「暗黒海域」はその名の示すとおり暗雲のたちこめる海で、日中でも周囲の視界が確保しづらいほどに暗いことで知られる。
別名「魔海」とも呼ばれる、この危険な海域――そこに踏み込んだ船には、深淵からにじみ出るようにして姿を現した無数の人影が這い寄ってくるという。
古い書物の一説によれば、その深淵から忍び寄る者たち――深き者ども――を総べる王と、さらにその神の存在が示唆されている。
【深海の巫女ハイドラ】
「魔海」は強力な呪いが働く海域だといわれている。
昼なお薄暗いその天候もその影響だが、なによりそこへ近づく者を狂わせることがあるというのだ。
霧が晴れた「魔界」に近づいたギルマンたちは、見る間に呪いにその身を狂わせていった。
そして人魚のほとんどは呪いを恐れ、「魔界」には近づくことすらしない。
だが「魔海」に潜む「大いなる存在」は、珊瑚の秘法を求め、遠く離れた人魚の領域にまでその影を落としていた。
ある日、珊瑚の王族のひとりが、姿を消した。
【深淵姫アシラト】
力を求め、自ら進んで深淵に心身を沈める者もいる。
数多くのコミュニティに分かれ、常に互いに協力体制をしきながらも部族間の勢力争いも激しい種族、スキュラ。
その中に、勢力争いに敗れて族長の座を追われた者がいた。
彼女は「魔海」に追われ、光の届かぬ闇に姿をくらます。
そして逃亡者たる彼女は「大いなる存在」にすべてを捧げ、暗闇の中で目覚める。
覚醒した彼女は、再び同族の前に姿を現した。
他のスキュラとは比べ物にならぬ力を手に入れた彼女――その魂の主はしかし、彼女自身ではなくなっていた。
■精霊たちの狂宴
【崩壊の足音】
世界の最果て、四方の門において、それは静かに動き出した。
にじり寄る異変に、人々も魔物も気づかずにいた。
だがそれは、確実に世界を蝕む。
精霊たちも、自我のようなものを持っている。
森羅万象が六つの元素で成り立つこの世で、より色濃く、混じりけのない元素をその身に宿す精霊たちは、エレメンタルと呼ばれる。
エレメンタルが他の精霊と異なる点は、自身の外側にある元素に強い影響を受け、自身の近くにある元素へも強い影響を与えるということだ。
火のエレメンタルは、火に誘われ、さらに火を強くする。
そうした性質もあって無用な争いや混乱を避けるため、大きな力を持つエレメンタルは、世界の果て近くにその身を置くのが常であった。
しかしエレメンタルたちが、なにかしらの異なる要因で、その不文律を破り始めた。
【狂霊化】
世界各地で異変が起こっていることを掴んだアカデミアは、優秀な探索者を選抜し、その調査へと向かわせる。
ほどなく、自我が半ば崩壊しているエレメンタルたちが数多く発見される。
このエレメンタルの変異現象は「狂霊化」と名付けられ、その対策が練られ始めた。
しかしアカデミアの動きはここでも後手に回っていることが判明する。
その身に強大な元素の力を持つドラゴンのような巨大生物までもが、その影響を受け始めていたのだ。
「狂霊化」はエレメンタルだけに現れる変異ではない。
このことは、他の生物――最終的には人間にまで――その影響が現れる可能性を示していた。
後に「エレメンタル・ストーム」と名づけられる災厄が、世界に降り注ぐ。
【ダイアモンド・ドラゴン】
「狂霊化」の影響はエレメンタルだけにとどまらず、その身に強大な元素の力を宿した者たちにも現れはじめる。
この世界において元素の力を操る偉大な存在といえば、ドラゴンだ。
一騎当千といわれる大型のドラゴンたちは、その身に宿した力の大きさゆえに、「狂霊化」から逃れることができなかった。
普段は極地に潜み、他の種族との関係を絶っているドラゴンたちも、その身にたぎる衝動を抑えきれず、目につくすべてを踏みしだき、蹂躙し始める。
【テンペスト・クィーン】
「精霊王」と呼ばれる存在がある。
それは最高位の精霊たちに冠される呼び名であり、エレメンタルの王たる証でもある。
その存在は謎に包まれているが、それぞれに関係する強い精霊力を持っている。
「精霊王」は東西南北にある四方の門の近くに太古の昔から存在するといわれている。
世界の極に存在する「精霊王」は、その存在を知られてはいたものの、人がその姿を目にすることはなかった。
しかし世界に吹き荒れる「エレメンタル・ストーム」は、「精霊王」たちまでその毒牙にかける。
精霊の王たる者たちまでが「狂霊化」し、世界に破壊の嵐を巻き起こし始めたのだ。
【消えゆく「魔法の霧」】
世界の西部に広がる大海。
そこには数多くの魔物と、まだ明かされない謎の数々が潜んでいた。
近年、海洋技術や航海術が改めて見直され始めている。
西部地方に住まう者にとっては、海賊都市クロスボーンの近辺でおよそ200年ぶりに大規模な艦隊戦が行われたことは、記憶に新しいところであろう。
そもそも六門世界の海洋技術は、技術革新が目覚ましかった百年戦争期においてすら、200年以上前のままほとんど進歩せずにいたのだ。
それは、「海洋技術が向上したところで、資源的にも領土的にも、どの国や勢力も得をしない状態」であったからだ。
世界の海のうち人間がたどりつける領域の広くは、古代帝国期以降、大きな壁に阻まれていた。
視界を遮り海流を乱す、広大な結界――「魔法の霧」。
その「魔法の霧」が、長い時を経て、再び晴れ渡ったのだ。
【暗黒海域の異変】
晴れ渡る「魔法の霧」についての歴史をひもとくと、そこには「七つの海」があるという記録が目につく。
霧の晴れている数十年の間にだけ航海ができるという「七つの海」のひとつには、霧の影響が消えてなお荒波と暴風で進入者を阻む「暗黒海域」がある。
「暗黒海域」はその名の示すとおり暗雲のたちこめる海で、日中でも周囲の視界が確保しづらいほどに暗いことで知られる。
別名「魔海」とも呼ばれる、この危険な海域――そこに踏み込んだ船には、深淵からにじみ出るようにして姿を現した無数の人影が這い寄ってくるという。
古い書物の一説によれば、その深淵から忍び寄る者たち――深き者ども――を総べる王と、さらにその神の存在が示唆されている。
【深海の巫女ハイドラ】
「魔海」は強力な呪いが働く海域だといわれている。
昼なお薄暗いその天候もその影響だが、なによりそこへ近づく者を狂わせることがあるというのだ。
霧が晴れた「魔界」に近づいたギルマンたちは、見る間に呪いにその身を狂わせていった。
そして人魚のほとんどは呪いを恐れ、「魔界」には近づくことすらしない。
だが「魔海」に潜む「大いなる存在」は、珊瑚の秘法を求め、遠く離れた人魚の領域にまでその影を落としていた。
ある日、珊瑚の王族のひとりが、姿を消した。
【深淵姫アシラト】
力を求め、自ら進んで深淵に心身を沈める者もいる。
数多くのコミュニティに分かれ、常に互いに協力体制をしきながらも部族間の勢力争いも激しい種族、スキュラ。
その中に、勢力争いに敗れて族長の座を追われた者がいた。
彼女は「魔海」に追われ、光の届かぬ闇に姿をくらます。
そして逃亡者たる彼女は「大いなる存在」にすべてを捧げ、暗闇の中で目覚める。
覚醒した彼女は、再び同族の前に姿を現した。
他のスキュラとは比べ物にならぬ力を手に入れた彼女――その魂の主はしかし、彼女自身ではなくなっていた。
■精霊たちの狂宴
【崩壊の足音】
世界の最果て、四方の門において、それは静かに動き出した。
にじり寄る異変に、人々も魔物も気づかずにいた。
だがそれは、確実に世界を蝕む。
精霊たちも、自我のようなものを持っている。
森羅万象が六つの元素で成り立つこの世で、より色濃く、混じりけのない元素をその身に宿す精霊たちは、エレメンタルと呼ばれる。
エレメンタルが他の精霊と異なる点は、自身の外側にある元素に強い影響を受け、自身の近くにある元素へも強い影響を与えるということだ。
火のエレメンタルは、火に誘われ、さらに火を強くする。
そうした性質もあって無用な争いや混乱を避けるため、大きな力を持つエレメンタルは、世界の果て近くにその身を置くのが常であった。
しかしエレメンタルたちが、なにかしらの異なる要因で、その不文律を破り始めた。
【狂霊化】
世界各地で異変が起こっていることを掴んだアカデミアは、優秀な探索者を選抜し、その調査へと向かわせる。
ほどなく、自我が半ば崩壊しているエレメンタルたちが数多く発見される。
このエレメンタルの変異現象は「狂霊化」と名付けられ、その対策が練られ始めた。
しかしアカデミアの動きはここでも後手に回っていることが判明する。
その身に強大な元素の力を持つドラゴンのような巨大生物までもが、その影響を受け始めていたのだ。
「狂霊化」はエレメンタルだけに現れる変異ではない。
このことは、他の生物――最終的には人間にまで――その影響が現れる可能性を示していた。
後に「エレメンタル・ストーム」と名づけられる災厄が、世界に降り注ぐ。
【ダイアモンド・ドラゴン】
「狂霊化」の影響はエレメンタルだけにとどまらず、その身に強大な元素の力を宿した者たちにも現れはじめる。
この世界において元素の力を操る偉大な存在といえば、ドラゴンだ。
一騎当千といわれる大型のドラゴンたちは、その身に宿した力の大きさゆえに、「狂霊化」から逃れることができなかった。
普段は極地に潜み、他の種族との関係を絶っているドラゴンたちも、その身にたぎる衝動を抑えきれず、目につくすべてを踏みしだき、蹂躙し始める。
【テンペスト・クィーン】
「精霊王」と呼ばれる存在がある。
それは最高位の精霊たちに冠される呼び名であり、エレメンタルの王たる証でもある。
その存在は謎に包まれているが、それぞれに関係する強い精霊力を持っている。
「精霊王」は東西南北にある四方の門の近くに太古の昔から存在するといわれている。
世界の極に存在する「精霊王」は、その存在を知られてはいたものの、人がその姿を目にすることはなかった。
しかし世界に吹き荒れる「エレメンタル・ストーム」は、「精霊王」たちまでその毒牙にかける。
精霊の王たる者たちまでが「狂霊化」し、世界に破壊の嵐を巻き起こし始めたのだ。
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