■煉獄のディアブロ
【黒い竜巻】
エレメンタルストームの顕現――それは世界の各所で発見される、世界崩壊の兆しとしか思えない超自然的な現象。
カラマン砂漠で見かけられる「黒い竜巻」も、そのひとつだ。
その巨大な「黒い竜巻」は、あるとき突然に姿を現した。
遠く離れても、天まで貫くその威容を見失うことはない。
この竜巻は町ひとつを覆い尽くすほどの規模であり、もしこれが砂漠から飛び出すようなことがあれば、その通り道にあるものはすべて破壊しつくされるであろうと思われた。
実際には「黒い竜巻」はひとつところでたたずみ続け、砂漠の近くに住まう者たちへ暗い不安を与え続けている。
エレメンタルストームの調査を進める大学院の報告によると、「黒い竜巻」は世界の綻びが生んだ「歪み」とでも呼ぶべき存在なのではないかという。
世界各地で起こる異常の数々により、エレメントの密度が濃すぎる場所や、薄すぎる場所が生まれていることは、今や専門の学者でなくともおよび知るところである。
「黒い竜巻」は、こうした世界の「歪み」に生まれたというのだ。
こうした説を唱える学者によると、そもそもカラマン砂漠には現代の魔法技術では及びもつかぬ力で築かれた「異界」が、太古の昔より存在していたらしい。
人為的に築かれた「異界」は、永い時を経て、砂漠へ巨大な「歪み」を生み出す。
そこへエレメンタルストームをきっかけに、巨大なエネルギーが流れ込み、対となる別の「異界」を生み出したというわけだ。
この説が正しいと仮定すれば、2つの事実が想定されるようになる。
ひとつは、砂漠には人知れず存在する「異界」――例えば砂漠の近辺で聞かれる昔語り、幻の「黄金の獅子宮」――が実在するということ。
もうひとつは、「黒い竜巻」の内側に、人知を超えた新たな「異界」が生み出されたであろうこと。
そして、その学説を裏付けるかのように、砂漠の近辺では異形のものどもが見かけられるようになる。
【紫の焔】
「黒い竜巻」が姿を現して以降、近隣の町に姿を現すようになった異形の化物たち。
それらはすべて、夜の闇の訪れとともに音もなく現れ、みな一様に全身から「紫色の炎」を思わせる光が立ちのぼっているという。
夜の帳とともに現れるこの化物どもについて、生体などの詳しいことは、いまだよくわかってはいない。
だがしかし、人々は紫のオーラをまとうこの異形のものどもへ、「ディアブロ」という呼び名を与えた。
「ディアブロ」どもが訪れた場所の近くでは、その後に必ず地底深くへ穿たれた「穴」が見つかるともいう。
「黒い竜巻」と同じく、螺旋状に刻まれた大地の「穴」。
形容しがたいこの超自然的な現象も、いつからか「奈落」と呼ばれるようになる。
「ディアブロ」どもは、闇夜とともに「奈落」から染み出すように現れる――そんな噂話が、まことしやかに囁かれている。
人は「名前のないもの」の実態をとらえることができない。
世界の万物は、「真の名」に支配されるのだ。
それゆえ人は、敵にも味方にも「名前」を与える。
たとえそれが、恐怖に打ち克つためだけに与えられた、仮初めの名であったとしても。
当初は漠然とした暗い不安だった、「ディアブロ」と「奈落」。
名を与えられたそれらは、明らかな脅威と恐怖の対象として、人々の心に刻みつけられた。
たとえ今は正体不明であったとしても、「名前」のある相手へは敵意も注意も向けることができる。
人々は「ディアブロ」と「奈落」へ、立ち向かうことにしたのである。
《アビス・ハウンド》《エナジー・ドレイン》《アビス・ワーム》
【煉獄の闇騎士エリゴール】
当初「ディアブロ」はすべて、魔犬とでも呼ぶべき姿を持つ、猛獣の姿を持つものばかりが目撃されていた。
しかし砂漠の近隣の各所で「ディアブロ」との遭遇例が増えていくにつれ、魔犬以外の姿を持つものがいることが明らかになる。
「煉獄の闇騎士エリゴール」は、全身に重甲冑をまとった悪魔の騎士であるという。
その体格はトロールをも凌駕するほどの巨躯であり、全身から立ちのぼる紫色のオーラは、巨神族すら退かせるほどの威容を誇る。
彼は魔犬どものように街を破壊しつくすようなことはしなかったが、とある街を一夜のうちに制圧する。
そして領主の城を奪い、夜ごと街中に恐怖の支配を及ぼしているという。
エリゴールと配下の住まう城の周囲は瘴気に包まれ、夕暮れが訪れるたびに日々「奈落」と化しているらしい。
「奈落」を押し広げるエリゴールの目的が何なのか、それを知る者は、まだいない。
《煉獄の闇騎士エリゴール》
【アビス・ドラゴン】
不思議なことに、最近姿を現したばかりの「黒い竜巻」や「奈落」の近辺には、どういうわけか巨大生物が数多く姿を現す。
研究者の言によれば異界が形成されたのは近年のことであり、その異界の存在した場所は、もともとは「無」であったと唱えられているにもかかわらず、だ。
「アビス・ドラゴン」も、そうした巨大生物の一種である。
「黒い竜巻」の近辺で目撃されたこのドラゴンは、火竜にも匹敵するほどの巨体を持っており、にもかかわらずこれまで大学院の記録に無かった外見を持ち合わせているという。
これほどの魔力と巨体を持ち合わせた存在が、はたしてエレメンタルストーム発生以後に形成されたという異界で、短期間に育ちうるのだろうか?
不思議な説を発表している学者もいる。
その説によると、もともと世界に存在する生物が「奈落」の力に触れることによって、「新たな姿」と「異界の力」を身に宿すこともありうるという。
そのため、もともとは弱い力しか持たなかったというドラゴンが、短期間に強大な火竜に近い存在にまで変化したというのだ。
だとすれば、生物の姿形を大きく歪め、強大な力に目覚めさせる異界のパワーに、人間は立ち向かうことができるのだろうか?
《アビス・ドラゴン》
【黒い竜巻】
エレメンタルストームの顕現――それは世界の各所で発見される、世界崩壊の兆しとしか思えない超自然的な現象。
カラマン砂漠で見かけられる「黒い竜巻」も、そのひとつだ。
その巨大な「黒い竜巻」は、あるとき突然に姿を現した。
遠く離れても、天まで貫くその威容を見失うことはない。
この竜巻は町ひとつを覆い尽くすほどの規模であり、もしこれが砂漠から飛び出すようなことがあれば、その通り道にあるものはすべて破壊しつくされるであろうと思われた。
実際には「黒い竜巻」はひとつところでたたずみ続け、砂漠の近くに住まう者たちへ暗い不安を与え続けている。
エレメンタルストームの調査を進める大学院の報告によると、「黒い竜巻」は世界の綻びが生んだ「歪み」とでも呼ぶべき存在なのではないかという。
世界各地で起こる異常の数々により、エレメントの密度が濃すぎる場所や、薄すぎる場所が生まれていることは、今や専門の学者でなくともおよび知るところである。
「黒い竜巻」は、こうした世界の「歪み」に生まれたというのだ。
こうした説を唱える学者によると、そもそもカラマン砂漠には現代の魔法技術では及びもつかぬ力で築かれた「異界」が、太古の昔より存在していたらしい。
人為的に築かれた「異界」は、永い時を経て、砂漠へ巨大な「歪み」を生み出す。
そこへエレメンタルストームをきっかけに、巨大なエネルギーが流れ込み、対となる別の「異界」を生み出したというわけだ。
この説が正しいと仮定すれば、2つの事実が想定されるようになる。
ひとつは、砂漠には人知れず存在する「異界」――例えば砂漠の近辺で聞かれる昔語り、幻の「黄金の獅子宮」――が実在するということ。
もうひとつは、「黒い竜巻」の内側に、人知を超えた新たな「異界」が生み出されたであろうこと。
そして、その学説を裏付けるかのように、砂漠の近辺では異形のものどもが見かけられるようになる。
【紫の焔】
「黒い竜巻」が姿を現して以降、近隣の町に姿を現すようになった異形の化物たち。
それらはすべて、夜の闇の訪れとともに音もなく現れ、みな一様に全身から「紫色の炎」を思わせる光が立ちのぼっているという。
夜の帳とともに現れるこの化物どもについて、生体などの詳しいことは、いまだよくわかってはいない。
だがしかし、人々は紫のオーラをまとうこの異形のものどもへ、「ディアブロ」という呼び名を与えた。
「ディアブロ」どもが訪れた場所の近くでは、その後に必ず地底深くへ穿たれた「穴」が見つかるともいう。
「黒い竜巻」と同じく、螺旋状に刻まれた大地の「穴」。
形容しがたいこの超自然的な現象も、いつからか「奈落」と呼ばれるようになる。
「ディアブロ」どもは、闇夜とともに「奈落」から染み出すように現れる――そんな噂話が、まことしやかに囁かれている。
人は「名前のないもの」の実態をとらえることができない。
世界の万物は、「真の名」に支配されるのだ。
それゆえ人は、敵にも味方にも「名前」を与える。
たとえそれが、恐怖に打ち克つためだけに与えられた、仮初めの名であったとしても。
当初は漠然とした暗い不安だった、「ディアブロ」と「奈落」。
名を与えられたそれらは、明らかな脅威と恐怖の対象として、人々の心に刻みつけられた。
たとえ今は正体不明であったとしても、「名前」のある相手へは敵意も注意も向けることができる。
人々は「ディアブロ」と「奈落」へ、立ち向かうことにしたのである。
《アビス・ハウンド》《エナジー・ドレイン》《アビス・ワーム》
【煉獄の闇騎士エリゴール】
当初「ディアブロ」はすべて、魔犬とでも呼ぶべき姿を持つ、猛獣の姿を持つものばかりが目撃されていた。
しかし砂漠の近隣の各所で「ディアブロ」との遭遇例が増えていくにつれ、魔犬以外の姿を持つものがいることが明らかになる。
「煉獄の闇騎士エリゴール」は、全身に重甲冑をまとった悪魔の騎士であるという。
その体格はトロールをも凌駕するほどの巨躯であり、全身から立ちのぼる紫色のオーラは、巨神族すら退かせるほどの威容を誇る。
彼は魔犬どものように街を破壊しつくすようなことはしなかったが、とある街を一夜のうちに制圧する。
そして領主の城を奪い、夜ごと街中に恐怖の支配を及ぼしているという。
エリゴールと配下の住まう城の周囲は瘴気に包まれ、夕暮れが訪れるたびに日々「奈落」と化しているらしい。
「奈落」を押し広げるエリゴールの目的が何なのか、それを知る者は、まだいない。
《煉獄の闇騎士エリゴール》
【アビス・ドラゴン】
不思議なことに、最近姿を現したばかりの「黒い竜巻」や「奈落」の近辺には、どういうわけか巨大生物が数多く姿を現す。
研究者の言によれば異界が形成されたのは近年のことであり、その異界の存在した場所は、もともとは「無」であったと唱えられているにもかかわらず、だ。
「アビス・ドラゴン」も、そうした巨大生物の一種である。
「黒い竜巻」の近辺で目撃されたこのドラゴンは、火竜にも匹敵するほどの巨体を持っており、にもかかわらずこれまで大学院の記録に無かった外見を持ち合わせているという。
これほどの魔力と巨体を持ち合わせた存在が、はたしてエレメンタルストーム発生以後に形成されたという異界で、短期間に育ちうるのだろうか?
不思議な説を発表している学者もいる。
その説によると、もともと世界に存在する生物が「奈落」の力に触れることによって、「新たな姿」と「異界の力」を身に宿すこともありうるという。
そのため、もともとは弱い力しか持たなかったというドラゴンが、短期間に強大な火竜に近い存在にまで変化したというのだ。
だとすれば、生物の姿形を大きく歪め、強大な力に目覚めさせる異界のパワーに、人間は立ち向かうことができるのだろうか?
《アビス・ドラゴン》
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