朝は出社で人混みに揉まれ、日中は仕事と人間関係に疲弊する。
手枷、足枷で身体が儘ならない様な感覚で重い身体を引き摺りながら家に着く。
暗い玄関で脱いだ靴もそこそこに、狭い1Kの部屋の床にカバンを放り投げて座り込み、壁に背を預ける。
部屋の灯りは暗い儘に眼を瞑り、ふぅ〜っと一つ溜め息を吐く。
一日の喧騒の中に居ると身体が火照り呼吸も浅くなる。
暫く深い呼吸で酸素を身体に行き渡らせると火照りも引き、身体が軽くなる。
一日の内には色んな事が在る。
色んな心が湧き出て来る。
此れを調御しろと云われても俺には出来ない。
他人との争いや喧嘩の時は、怒りを抑え込まねばならぬ。
が、自然湧出的な心の変動はもう其れに任せるしか無い。
我々が仕事なり、スポーツなり、家事や育児と云った作業を行う事で、湧き出でる心の動きを抑え振り分ける事が出来るのかも知れない。
俺は一日の反省はしない、後悔もしない。
毎夜の就寝時に眼を瞑り一日の自分を反省(責めて)して眠りに着くと云うが、一番心を落ち着ける時に其れでは心身が悲鳴を上げる。
わざわざ感謝して眠りに着く人も居るが、其の念すらもストレスになる。
まだ好きな音楽を聴き、映画を観たり、本を読んで眠りに落ちた方がいい。
自己反省するならば、仕事や学業、を終えて直ぐ後が良い。
若くはない歳に達した。
俺が何に気を付けるかと云えば、喧騒から離脱して独りになる時間を必ず作る事である。
家族と居ても、其の何処かで「独りになる」時を作れれば心身へ掛かる重圧も和らぐ。
孤独も良いものである。