「松本清張と昭和史」
著者は、昨年読んだ「あの戦争は何だったのか」の保坂正康氏。
松本清張から「時代の記録者としての精神」を受け継いだ著者が、清張の現代史の謎を描く2大ノンフィクション『昭和史発掘』『日本の黒い霧』をとりあげ、昭和前期の・・「あの時代」と作家に加えて歴史の記録者としての「松本清張」を、分析・検証・・・『松本史観』の根底にあるものを明らかにしていく本です。
著者の「あの時代」へのこだわりは、
<戦争、敗戦、占領、侵略、軍事的勝利、他国の植民地支配、テロ、クーデター、革命騒動、そして、貧しさ、豊かさ、宗教を持たない日本人の狂信的な君主への信仰・・。そういったものが、すべて凝縮している>からで・・。
清張は、まさに『あの時代』の空気の中で、庶民として青年期を過ごした人であり、後に作家という立場になってからも、底流から庶民の目で
<自分の生きてきた時代は何だったのか、この時代を自分なりに総括したいという姿勢で昭和史の発掘に取り組んだ(p13)>人であったと。
著者は松本作品について 、その今日的意義を説いて、エピローグを結んでいます。長くなりますが・・以下引用
<二十世紀の前半の日本の錯誤については、冷静に問い直しをしなければならない。それなしに私たちは二十一世紀の空間に身を置くことはできない。もしその問い直しや検証なしに二十一世紀に身を置くなら、私たちの国は「急角度にその性格が変わっていく」ことになるのではないか。そうした自問をくり返すために松本作品は存在している。政治や思想とは別に、私たちの感性や知性を鍛えるために存在しているとも言える。今こそその理解が必要になっている>
映画やテレビの原作で、「松本清張」の名前は知っていても、本、特にノンフィクションは、あまり読んだ事がない身としては・・・ こういう分析本を手にすると、
どうしても、この本の元となる本の一つ『昭和史発掘』を、この夏・・読みたい本に挙げてしまうから・・不思議です。
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