あー、涼しい。
やっと地獄の夏が終わったようで。
今年もクオーツ星の新譜出す。
皆様、11月23日(土)は吉祥寺プラネットKで。
前作は全曲推し曲かもってくらいに充実した内容だったけど、
今回はさらに限界突破の向こう側。
まだ録音してないけど、最高傑作でしょう。
あと、これも毎度のことですが
制作費でお金が飛ぶので
バンドを存続するため、
生きるために、
一人でも多くの
レコ発の来場お願いします!!
売れてないバンドなんていつだってギリギリですよ。
逆にいつ終わってもいい覚悟で毎回、名盤生み落としてますよ。自分で言うしかないのが悲しいですが。
あと、11月22日(金)の誕生日ワンマンもよろしくお願いします。
レコーディングの準備してるからか、音への感覚が研ぎ澄まされてて、バンドも弾き語りもライブ調子良いですわ
そんな大イベントを控えた、以下ライブスケジュールです。
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ロック界、今年一番の大ニュース。
オアシス再結成。
一年前にメルカリで出品したオアシスの全アルバム対訳付きがこの再結成の発表と共に売れた。
ありがとう。ギャラガー兄弟。
こんな恩恵を受けつつ、僕の脳裏をよぎるのはあの人のこと
キャプテン
20代前半、僕が大学生でチェーンの飲食店で働いていた頃。
この店は忙しいのに常に従業員不足で、体力的に倒れたり、精神を病んで退社したり、血尿を流したり、女子従業員に手出したり、しょっちゅう店長が変わっていた。
そんな過酷な店にまた新しい店長が送り込まれた。
40代後半で長身だけど腰が低く、笑顔の優しそうな人だった。
僕ら従業員からしたら「どうせすぐ根を上げてやめんだろ」ってなもんだ。
しかし新店長は常に笑顔を振りまき、人手不足にも負けず一生懸命働いていた。
我々にもお店のことを熱心に聞いたりして、コミュニケーションをうまくとっていた。
今までの人とは違い「真摯で仕事のできる人」という印象だった。
そんな店長の本性が露わになったのは1ヶ月たった頃…
トラブルが起きて店長に電話をした。
店長「〜して、〜してください」
僕「え?え?」
早口で聞き取れなくて、テンパる僕。
店長「まー、そういうワケで…わかった?」
僕「すみません、ちょっと早くて分からなかったです」
店長「分かんねーかな。日本語で言ってんのに」
一方的に電話を切られた
あれ?
この人、ヤバイかも。
そう気づいた頃からどんどん本性を見せてきた。
店では「今すぐやれ!」「わかんねーのか、殺すぞ!」が日常的に飛びかった
羊の皮をかぶった狼だった。
僕への呼び方も
「小豆原さん」から
「お前」になり、
「てめー」になり、
最終的に「一朗!」になって
馴れ馴れしくて怖いヤンキー先輩みたいになっていた。
「今日から俺のことは店長と呼ぶな。キャプテンと呼べ。」
浦和レッズの熱心な(狂信的な)ファンなことは知っていたが、店でもサッカーを持ち込むとは。
キャプテン曰く「みんな同じフィールドで戦うチーム」ということだ。
「何、あいつ?あんなんで人がついてくると思ってんのかよ」と怒りをあらわにする人もいた。
意外にもそういう人は少数派で、不思議とみんなは理不尽な要求に耐えていた。
昼ピークは5,6人が厨房で働くのが通常だが、
驚くべきことに厨房には曽根くんという男の子1人(高校2年生)だけだった
しかも、
「20秒以内にあげてこい」
「ハマったら殺す」
「作り間違えしたら、お客さんに土下座しろ」
物理的に無理だ
作り間違えしたら本当にお客さんに謝りに行かした(その間厨房は無人になって注文が入り続ける)
「おい!何度言ったらわかんだよ!早いだけじゃなく丁寧に作れ!ゆっくり早くやれ!!!!」
「すみません!!」
闇金業者並の圧に彼は謝るばかりだった。
虫を見つけたら手で包んで外に逃してあげる優しい曽根くん。
謝ってもさらに罵られ、最終的にトレーで殴られてた。
もう人の道を外れてる…
キャプテンは下ネタも大好きで
女性のお客さんがきたら「いいケツしてんなー、後ろからかぶりつきてえよ」
「やべえ疲れすぎて勃起してきた!生命の危機を感じてます!」と女性従業員に言ったり
「俺、セックスうめえよ?」と、急に男子従業員に言ってみたり
そんなセクハラ発言の時はいつも満面の笑みだった。
昔いた店舗ではかなり偉い役職だったらしいが、何やらやらかして店長に降格されたらしい。
絶対、暴力かセクハラだ。
ただ、キャプテンには妙なカリスマ性があった。
「強いチームってのは思いっきり休む。残業とか、根性論とか、無駄な努力してる奴は強くなれない」
「面倒くせえことはさっさと終わらせろ」
「仕事だけやるくらいなら死んだ方がマシ。好きなことやるために命がけで頑張るんだよ」
「最初来た時はクソみてーな店だと思ったけど、俺が日本一の店にしてやる」
無茶苦茶な人だが、キャプテンは仕事が出来た。
今までの店長のように夜な夜な残業などせず、
素早く仕事を終わらして浦和レッズのユニフォームに着替えて飲みに行った。
辞める人間が出たら過去の店長はへり下って止めていたが、キャプテンはそんなことしなかった。
「お前が辞めるっつうんならお前の人生だから止めねえよ。ただ、二度と俺に近寄るな」
キャプテンの行動原理はわかりやすくて、嘘がなかった。
その力強い生き方を間近で見ていた10代20代の我々には刺さった。
「バレンタインとかそんな日でしか愛を確認出来ないのはくだらない人間のすることだ。休むな」
キャプテンがそう告げると職場で付き合ってるカップル達はバレンタインもクリスマスも働いていた。
サボって事務所のPCでYouTube見ていたら
「おい、サンドイッチマン見せろ!」
と言い、隣でハンバーガー屋のコントを見て爆笑した。
やることやってたら、サボるのは許してくれる人だった
めちゃくちゃキレ散らかしても、翌日には満面の笑みで話かけてくる。
「いつも君のお陰で飲みに行けます。助かってますよ」
「一朗はミスってもなんかみんな許しちゃうんだよなあ。愛されてるよなあー」
とても理不尽なキレ方をされても、急に優しい言葉をかけられて心を掴んでくる。
これはDV彼氏の手法だ。
んで、俺もそんな言葉にコロッと持ってかれてるチョロい女みたいだ
感化される人が続出し、いつしか「殺すぞ」「早くしろ」「殴られてーのか」がみんなの口癖になっていた。
職場の言葉使いは悪くなったが、みんな全力で働いていた。キャプテンのために。
暴力的なキャプテンの言動も楽しみになっていて、マゾってこうやって開花されるのかと知った
独裁国家ってこうやって出来あがってくのかもしれない
ある日、キャプテンが新人の男の子を指導していた
「おめえみてーに使えねー奴初めて見た」「疑問を持つな、やれ」「死にたいのか?」
男の子は泣いて帰ってしまい、その親御さんが店に乗り込んできた
このパターンは初めてだった。
店の前に来た親御さんを見てキャプテンは一言呟いた
「来たか」
自分から親御さんに駆け寄り、キャプテンはお得意の羊の皮を被り
謝り倒した。
こういうのは慣れてるのか、見事な謝罪だった。
戻ってきたキャプテンが一言
「世も末だな」
それを聞いて
「殴られたわけでもないのに、なんであんな怒ってるんですかね?」
僕らも麻痺してた。
羊の皮をかぶってるキャプテンの笑顔の奥の目は数々の修羅場を潜った男の目をしていた。
なんでこんなハードボイルドな生き方なのか聞いたことがある
新人社員の時、かなり怖い上司に鍛えられたらしい
殴る蹴るは日常で、本気で死ぬかと思ったらしい
2週間家に帰してもらえず、厨房のシンクでシャンプーして過ごしたこともあるとか
「その上司が厨房にくるとさー、俺や従業員の子達の手が震えてたんだよなあ」
「チェーンの飲食店ってヤクザな世界だよ」
絶対にチェーン店に就職するものか、と思った
そんなキャプテンと俺はある共通の趣味があった。
音楽鑑賞。
キャプテンはブラックミュージックやラップが好きだった。
「ビースティーの新曲聴いたか?白人であれはすげえよな!やられたわー」
若い頃はヒップホップ系の雑誌で働きたいと思ってたらしく、すごく詳しかった。
あの人の罵詈雑言の振れ幅はここから来てんのか、と妙に納得した。
バンドの練習後に店に寄ったらキャプテンが話しかけてきた。
「今日もジャカジャカジャーンか!楽しそうでいいなあ
そういえば、オアシスって知ってる?最近サッカー場でかかってたんだけど、あいつら最高だな」
当然知っていた。というか、むしろすごい好きだったし。
それにしても類は友を呼ぶのか
ギャラガー兄弟の発言はまさにキャプテンだった。
ノエル「世界最大のバンドになりたくねえならやめちまえ」
リアム「よく聞け、クソブタめ。俺はな、陰口でなく、相手に面と向かって直接悪口を言えって育てられたんだよ」
ノエル「テイラー・スウィフトに才能なんかねえよ」
リアム「ダフトパンクはヘルメットをぬげ!あんな曲俺なら30分でできる」
ノエル「ギグのあとならやってることがある。短時間で酔っぱらってバカ騒ぎするんだ」
上げだしたらキリがないが、どれもキャプテンみたいだ
「やる気がない」ってことでリアム(Vo)がいないライブも珍しくない前代未聞のバンドだ
だけど、ロックの神様に選ばれたスターだし(「神は俺らのファンだから俺の天国行きは確定」と言っていた)、ファンは文句もない。
ツアーはいつも一触即発だし、兄弟喧嘩で活動が止まったのもファンからすれば自然な流れだった。
それから程なくしてオアシスは解散し、キャプテンも他の店に行った。
噂ではまた何かやらかしてすごい僻地へ飛ばされたと聞いた。
暴力かセクハラだろ
今は上司は部下のご機嫌取りで怯える時代。
エンタメも過剰なまでにコンプラ。
リアムは毎朝走り込んで体の調子を整え、コンサートをキャンセルする恐れもないらしい。
清廉潔白、聖人を求められるようなこんな時代にキャプテンは生きていけてるのだろうか?
いや、ちゃっかりうまくやってるに違いない。
あの羊の皮をかぶって
キャプテン、オアシスのライブで存分に狼に戻ってくれ