うとうとしていたけれど、目が覚めた。枕元の窓から雨の音が聞こえる。夜半から雨が降りはじめたらしい。まだ冬の気配が強いが、雨の音は柔らかい。春の雨だ。季節の変わり目。季節の結び目。胸が痛くなる時期だ。感傷といえばそれまでだが。
私は、息を潜めて隣をうかがう。規則正しい寝息。眠りを妨げはしなかったようだ。よかった。愛しい人。私の恋人。今の私の最優先の人。最近、忙しかったのか、ストレスが多かったのか、疲れた顔をしていた。健やかな寝息を聞いて、ほっとした。
そっとあの人の手に触れる。温かい手。私に注ぎ込まれる熱。あの人のすべてを守りたいと思いながら、それはかなわないことも知っている。
あの人も私の盾になりたいと言っていた。けれど、それは無理な相談だ。私には私の、あの人にはあの人の世界があって。自分のことは、自分で対処するしかない。それでも、お互いに慰め合い、支え合い、抱き合うことはできるのだ。それは、些細な、吹けば飛ぶような関係だろうか?
私は、そうは思わない。
世界は、無慈悲で強情だ。それでも、生きていかなければならない。そんな時、愛しい人の慰撫が、「私」という人間への強い肯定が、どれほど力になることだろう。
甘え、甘えられ、頼り、頼られ、与え、与えられ。そんな関係をあの人と築けているのは、幸せなことだ。
あの人が寝返りをうった。あの人の香りが漂う。私の体は、反応する。心と体は繋がっている。
私は、恥ずかしくて、くすぐったくて、どきどきする。
雨の音は、甘やかに窓を叩いている。そんな、如月の夜。
私は、息を潜めて隣をうかがう。規則正しい寝息。眠りを妨げはしなかったようだ。よかった。愛しい人。私の恋人。今の私の最優先の人。最近、忙しかったのか、ストレスが多かったのか、疲れた顔をしていた。健やかな寝息を聞いて、ほっとした。
そっとあの人の手に触れる。温かい手。私に注ぎ込まれる熱。あの人のすべてを守りたいと思いながら、それはかなわないことも知っている。
あの人も私の盾になりたいと言っていた。けれど、それは無理な相談だ。私には私の、あの人にはあの人の世界があって。自分のことは、自分で対処するしかない。それでも、お互いに慰め合い、支え合い、抱き合うことはできるのだ。それは、些細な、吹けば飛ぶような関係だろうか?
私は、そうは思わない。
世界は、無慈悲で強情だ。それでも、生きていかなければならない。そんな時、愛しい人の慰撫が、「私」という人間への強い肯定が、どれほど力になることだろう。
甘え、甘えられ、頼り、頼られ、与え、与えられ。そんな関係をあの人と築けているのは、幸せなことだ。
あの人が寝返りをうった。あの人の香りが漂う。私の体は、反応する。心と体は繋がっている。
私は、恥ずかしくて、くすぐったくて、どきどきする。
雨の音は、甘やかに窓を叩いている。そんな、如月の夜。