翌朝、突然、田舎に住む爺から電話があった。爺「ちょっと困ったことになったよ、また、あそこに行くことになったよ・・」
数年前に完治したはずの肺結核がぶり返したようだ。
電話の向こうで、小さなセキが聞こえたが、驚いた様子はみせないようと、寝ぼけた声で「すぐ戻れるさ」と、一言でかたずけて
いつものようにぶっきらぼうに早々に話を切り上げた。
嫌なニュースが朝から舞い込むと、ろくなことはないなーと、さめた珈琲をすすっていると、庭先の椿が一輪、首から落ちた。
その一瞬、あのsirenの文字が脳裏に浮かんだ。
軽いめまいとともに、桜井橋で交わしたあの約束がうかんで来た。