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ヒューマン・ライツ・ウォッチ スリランカ:普遍的・定期的審査で人権問題での後退に対処せよ

スリランカ:普遍的・定期的審査で人権問題での後退に対処せよ

国連は説明責任・メディア・市民社会に焦点を当てるべき

(ジュネーブ、2012年10月30日)-国連加盟国は2012年11月1日の普遍的・定期的審査(以下UPR)でスリランカに、人権侵害に対する説明責任の追及に向けて行動するよう強く求めるべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。スリランカはまた、ジュネーブで行われる国連人権理事会のUPRの期間中、表現の自由を守り、市民社会とメディアへの脅迫を止める国際的義務を思い出す必要がある。

国連が加盟国の人権状況を4年毎に精査する普遍的・定期的審査で、各国政府はスリランカの人権状況を調べ、改善に向けて勧告することが可能だ。スリランカに対する直前のUPRは2008年、政府と分離独立派タミル・イーラム・解放のトラ(LTTE)の間での武装紛争の最中に行われた。武装紛争は2009年5月に集結している。

「各国政府はUPRを使って、スリランカの悪化する人権状況に関して質問し、意味ある改革に向けて勧告するべきです。長かったスリランカ内戦時の両陣営による多数の犠牲者を出した人権侵害について、政府が誰の責任をも追及していないことが、特に懸念されます。」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは指摘した。

2012年の普遍的・定期的審査に向けて提出した文書でスリランカ政府は、「超法規的・即決或いは恣意的な殺害が行われた疑惑を全て調査するように」という、2008年 UPRの際にされた勧告の実施に向けて措置を講じてきたと主張している。しかしそのような調査が行われた証拠は全くない。政府は又、苦情処理制度を強化すると共に、メディアと市民社会襲撃事件への調査を続行すると述べた。しかし続いているのは人権侵害であり、しかも政府幹部当局者が、政府の説明責任を求めて主張する人々を、公然と脅迫している。また政府は、そのような脅迫行為に関与した当局者の誰をも糾弾していない。

スリランカが2012年UPRに提出した文書への、ヒューマン・ライツ・ウォッチによる対応の詳細が、この文章に添付されている。

2008年 UPRに提出した文書で政府は、国際機関から軽視されている国家人権委員会を強化し、国内の人権保護機関を規制する意向であると述べた。しかし政府は、憲法改正を成立させ、同委員会の独立性を奪って政府の支配下に置いた。

国連加盟国は、スリランカによる約束不履行と、2012年UPRに提出した文書に述べられているアプローチついて疑念をもち重大な懸念を表明するべきである。

『政府の楽観的な手前味噌的自己評価は、スリランカの現状や2008年の約束が不履行であるという事実を、愚弄するものです。「努力」を続けていると言うだけで、人権問題への批判に全く対応しない姿勢は、不誠実で不適切です。』と前出のアダムスは指摘した。

スリランカの2012 年UPRに提出した文書へのヒューマン・ライツ・ウォッチからの反応を知りたい方は、以下の文章をお読みください。

HRWが懸念する主な問題の概略

 メディアへの制約

2012 年UPRに向けた報告書でスリランカ政府は、苦情処理制度を強化すると共に、メディア関係の人間や機関が襲撃されたという申し立てへの調査継続に向け、努力すると述べている。しかし表現の自由権への襲撃事件は、2008年に行われたスリランカに対する前回のUPR以降、増え続けているのが現実だ。ジャフナを拠点とする新聞社の編集者は、2011年7月下旬に正体不明の若者集団に、鉄棒で殴られた。同じ月に、「ラジオ・ネザーランド」の記者チームが警察に嫌がらせをされ、その後白のバンに乗った男たちに銃を突きつけられる強盗・襲撃に遭った。2009年にはサンデイ・リーダー編集者ラサンタ・ウィクレマトゥンゲが、警察署から遠くない所で白昼射殺された。2011年8月には彼の兄弟が、サンデイ・リーダーが記載した高官の汚職に関する記事に対して、ラージャパクサ大統領から脅迫電話を受けている。

2012年7月、ウィクレマトゥンゲが殺害された後にサンデイ・リーダーの編集者になったフレデリカ・ジャンクズは、大統領の兄弟であるゴタバヤ・ラージャパクサ国防省次官が、一匹の子犬を回収するために国営旅客機を外国に差し向けたという疑惑について彼に質問したところ、逆に脅されたと報道した。ゴタバヤは最終的に彼女を脅した事実を、謝罪しないまま認めた。2012年9月にジャンクズは辞職し、新聞社の新オーナーから大統領とその家族に批判的な記事を掲載するのを止めるよう、命令されたと主張している。

2010年1月、大統領選挙の投票日2日前に起きた、政治風刺漫画家のパラギース・エクネリゴダの強制失踪事件は未解決のままだ。前司法長官モハン・ペイリスはジュネーブにある国連拷問禁止委員会の審問で、エクネリゴダは失踪ではなく海外に行ったという情報を得ていると述べた。2012年5月にコロンボの裁判所に召喚された時に、ペイリスは自分の主張に何の根拠もなかったことを認めた。

2012年6月、刑事捜査局はニュース・ウェブサイトのスリランカ・ミラー及び、野党である統一国民党のウェブサイト、スリランカ・Xニュースの各事務所を強制捜査した。当局は複数のコンピューターと書類を押収すると共に、ウェブサイトが「スリランカに関する偽りで非道徳的な情報を広めている」、という容疑で9人を逮捕した。9人は、「大統領或いは政府への不信をかき立て或いはかき立てようと試みる」者に、2年以下の懲役を科すという、刑法第120条を適用されて起訴されている。逮捕された翌日、全員が保釈された。

2011年11月、政府所有のデイリー・ニュース紙は、政府が同国メディア用の活動ガイドライン及び規則を発令する意向であると公表した。メディア省は全てのニュース・ウェブサイトに登録を求め、後に少なくとも5つのウェブサイトが国内で閉鎖された。

私たちは各国政府代表に、メディアへの規制、ジャーナリストへの襲撃、ジャーナリストに対する犯罪が不処罰であること、について懸念を表明すると共に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  •  報道機関やニュースサイトへの不必要な登録義務を撤回すること
  •  政府を批判するウェブサイトの閉鎖をやめること
  •  ラサンタ・ウィクレマトゥンゲ殺害とパラギース・エクネリゴダ失踪を含むジャーナリストへの殺害事件や失踪事件を捜査すること

2.人権擁護者への脅迫

スリランカ全域の市民社会と人権保護団体が、彼らの活動や言論の自由権への監視と取り締まりが強化されているという報告を続けている。2012年3月に国連人権理事会でスリランカに関する決議が採択された後、政府が支配するメディアと政府当局者は、決議支持のアドボケイトをした人権擁護者の名前を公表して脅迫した。ある閣僚は、人権擁護者の「あばら骨を折る」と脅している。国際的な激しい非難を受けて以降、政府はそのような発言をトーンダウンしたが、市民社会団体と人権擁護者への嫌がらせは、特に同国北部と東部は続いている。地元活動家は自らの安全に大きな懸念を持つばかりでなく、彼らが支援する人々に対してより大きな懸念を抱いている。人々の生活がより安易に監視される、地方部ではそれが特に顕著である。北部と東部の人権保護及び人道援助への従事者は、当局による監視なしでの活動は不可能であると共に、井戸掘りや生活訓練集会を含め、如何なる活動に対しても軍に知らせ承認を得なければならない実態を報告している。特に性的暴力の場合、その犯罪行為を報告する文書が軍に押収され、次に報告者の安全が阻害されるのを恐れて、人権侵害事件を取りまとめることに消極的になっていると、複数の人権擁護者がヒューマン・ライツ・ウォッチに話していた。

私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  •  人権擁護者他の市民社会活動家に対する、あらゆる脅迫・嫌がらせを止めること
  •  過去及び継続中の脅迫に関する申し立てについて、公平な捜査を開始すること
  •  人権擁護者他の市民社会活動家を脅迫する政府当局者は、解雇を含む懲戒処分を受けると公表すること

3.テロ対策法とその適用

スリランカ国会はラージャパクサ大統領の求めに応じて、1971年以来長く効力を持ち続けた緊急事態法令を2011年8月31日に期限切れとすることを認めた。緊急事態法令が撤回されたにもかかわらず、1979年成立のテロ防止法(以下PTA)のような、既存或いは新たな法律や規則が、曖昧な根拠に基づき18ヶ月も起訴しないまま拘禁を認め、人権侵害を伴う体制を放置している。PTAのもとで拘禁されている人々は、18ヶ月を遥かに超える苦しい刑務所生活を送って来ている。

私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  •  迅速に起訴され公正な裁判を受けるという権利を含む、適正手続き上の基本的権利を侵害する、テロ防止法の全ての規定を破棄すること
  •  テロ対策に関係する全ての法令が国際的人権保護法に準拠し、テロ対策と人権保護に関する国連特別報告者の勧告に沿うようにすること

4.拷問

スリランカ軍と警察は、犯罪の容疑者やLTTEメンバーの疑いを掛けた者に、拷問他の虐待を長く日常的に行って来た。治安部隊が組織的に、多数派であるシンハリ人も含む全コミュニティーに拷問を行っている、と拷問に関する国連特別報告者は報告している。武力紛争が終結して以降、外国で政治的に活動してきたタミル人を含む、LTTEと関係があると見なされた人々は、拷問他の虐待に遭って来ている。ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った調査は、英国その他の国で亡命申請を拒否されたタミル人の一部が、スリランカ帰国直後に拷問他の虐待に遭ったと申し立て、その主張が医療記録によって裏付けられていることを明らかにした。

私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

 

  •  国際赤十字委員会(以下ICRC)他の中立機関に、人々が拘禁されている場所への自由な監視を認めること
  •  秘密の拘禁場所を備えるのを止めること
  •  全ての拷問疑惑に対処すると共に、犯人への責任追及と被害者への救済措置を確保すること

5.強制失踪

1983年に内戦が開始して以降終結するまで、スリランカで起きた数万件に及ぶ強制失踪に関係した不処罰がまん延している。強制失踪を調査する委員会が解明した事実と「失踪」者に関する情報を、政府は公表して来なかった。その情報が得られないので、無数の家族が愛する者の消息を確認出来ないでいる。失踪事件が未解決のまま放置されていることに加えて、スリランカ政府は、武力紛争末期に起きた強制失踪疑惑に対応していない。無数の一般市民が戦闘から避難にようとしていた時、政府軍は彼らの登録しその身元を精査して、LTTEメンバーと思われる者とその他を分離した。家族によって、刑務所或いは所謂リハビリセンターに拘留されている者の一部が、突き止められているが、その他は未だに行方不明のままだ。公約しているにも拘わらず、政府は被拘留者と拘留場所の包括的なリストを公表していない。

「白のバン」に乗った正体不明の襲撃者が、政治活動家その他の人々を拉致したという報道も続いている。2011年12月、ラリス・クマル・ウィーララージとクガン・ムルガナタンという人権保護活動家2人が、ジャフナで計画されていた抗議集会に行く途中で拉致され、未だに行方不明だ。ウィーララージの父親は、息子が抗議集会の前に、「政治関与を続けるならば消される」という匿名電話を受けていた、と公表している。

政府の調査委員会は失踪を調べているが何の結果ももたらしていない。「過去教訓・和解委員会(以下LLRC)は報告を受けた極めて多数の失踪に関して警告を発し、政府にそれらの報告を調査するよう勧告したが、真剣な調査或いは結果をもたらす行動がとられた兆しは全くない。

私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  •  全失踪者の説明責任を追うと共に強制失踪事件を捜査・訴追する独立した委員会を創設すること
  •  治安対策上の被拘留者の名前とその拘留場所を全て公開すること
  •  強制失踪禁止条約に署名・批准し、その規定に強制力を与える法令を成立させること

6.戦争犯罪その他人権侵害に対する説明責任の追及

国連事務総長の専門家委員会が2011年3月に完了させた、詳細な報告書が指摘する事実を、スリランカ政府は即座に否定した。LTTEとの武装紛争の最終局面数週間で、4万人に及ぶ一般市民が死亡したこと、政府軍が「発砲禁止ゾーン」に広範囲な砲撃を加えたこと、複数の病院に組織的砲撃を行ったこと、戦場となった地域に取り残された一般市民への人道援助を組織的に許さなかったこと、更に一方LTTEが、戦場となった地域から脱出しようとした一般市民を殺害したこと、一般市民を意図的に人間の盾として利用したこと、などを示す信頼性の高い申し立てを同委員会は明らかにしている。政府はその報告書の主張を調査するのを拒否してきた。

政府のLLRCが作成した報告書は2011年に公表され、2009年5月に終結した、LTTEとの内戦終了間際の血塗られた数ヶ月における軍の行為を、ほぼ免責した。政府による砲撃が一般市民に犠牲者をもたらしたという、政府が強く否定していた主張を、LLRCは認めたものの、民間エリアと病院に対する砲撃や再三の攻撃は、戦争法で禁止されている無差別攻撃だったという明確な結論を、見当もしなかった。同委員会の調査結果は、国連専門家委員会、超法規的処刑に関する国連特別代表団、その他ヒューマン・ライツ・ウォッチを含むNGOの調査結果と全く対照を成している。

2012年UPRに向けての報告書で政府は、自軍の戦争末期数ヶ月における軍事作戦を、人道的救出作戦として事実を歪曲して述べている。人権侵害を行ったという膨大な証拠を突きつけられても、政府は人権侵害や戦争犯罪があったという主張を否定し続けている。LLRC報告書が行った勧告に対応して組織された、一般市民に犠牲者が出たという主張を捜査する軍事調査裁判所の設立を、政府は重視している。しかしヒューマン・ライツ・ウォッチは、軍事調査裁判所が何やら捜査を行ったという情報を得ていない。政府のアクションプランは、捜査が2年以内に完了するであろうと表明するだけで、外見を繕い更に引き延ばす試みにしか見えない。

2012年UPRに向けての報告書で政府は、2008年 UPRの際にされた「超法規的・即決或いは恣意的な殺害が行われた疑惑を全て調査すると共に、国際基準に沿って犯人を裁判に掛けるように」という、勧告の実施に向けた努力を継続中であると主張している。しかし、過去10年間に記録された重要な人権保護上の事件の数々の何れに対しても、政府がその約束の実施に向けて本当に努力してきたという、証拠は全くない。

2012年UPRに向けての政府報告書は、2006年8月4日にムートルでアクション・アゲインスト・ハンガー(反飢餓行動:以下ACF)の援助要員17人、及び2006年1月2日にトリンコマリーで学生5人が、それぞれ殺害された事件が、「訴追を起こすことに『一応有利な事件』かどうか確認するために司法長官に付託された」と主張している。しかし政府提案のそれら事件に対する捜査は、延び延びになっている。

ACF援助要員の虐殺に先立ち、政府軍とLTTE間で、ムートル支配を巡る戦闘があった。援助要員の男女計15人の遺体は8月6日、頭や首に至近距離からの銃弾を受け、うつ伏せに倒れた状態で発見され、更にもう2人のACFスタッフの遺体が、逃げようとしていたことが明らかな状態で、近くの車の中から発見されている。殺されたACFスタッフたちは、2004年12月のインド洋津波の被害者たちに対する支援活動に従事していた。重大な人権侵害事件16件の調査に向け2006年11月に創設された「大統領調査委員会」は2009年7月、陸軍と海軍はACF虐殺事件に関与していなかったとしたが、加害者の特定は行わなかった。同委員会の調査は、目撃者は証言するのが難しくなっており、一方、お粗末な警察捜査をやり直すことは一切なかった。また、ラージャパクサ大統領宛の報告書の全文は、今に至るも公開されていない。

トリンコマリーで起きた学生5人に対する殺人事件においても、政府は2012年 UPRに向けた報告書で表明した、犯罪行為疑惑を捜査・訴追するという約束を守るための何の努力もしてこなかった。この件に関するラージャパクサ大統領宛の報告書の全文も、これまでに公開されていない。

中立で公平はスリランカ人権保護団体が行った調査は、それらの事件に政府が関与している強力な証拠を提供している。殺人事件が起きて6年が経過した後に、司法長官が訴追を正当化する『一応有利な事件』かどうか確認しなければならない、などと政府が主張するのは、真摯な対応ではなく、殺害された援助要員や学生の家族の苦しみに対して冷淡な無関心でいることを明らかにしている。

スリランカがこれまでにも長い間、説明責任の追及についての約束を果たさずに来ていること、政府が人権侵害や戦争犯罪疑惑を捜査・訴追して来なかったことを鑑み、私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  •  国連事務総長の専門家委員会が勧告したように、LTTEとの武装紛争の期間中に両陣営によって行われた疑いのある、戦争法と人権侵害について調査するための、中立な国際機関の設立を支持すること
  •  大統領調査委員会と他の過去における政府委員会が、武力紛争の経過で行われた人権保護法や人道法に対する重大な違反疑惑を調査した、その結果を公表すること

7.国内難民

9月にスリランカ政府は、最盛期30万人近い武装紛争で難民化したタミル人を抱えていたメニク・ファームを閉鎖すると発表した。それらの国内難民(以下IDPs)の殆どは再定住したが、一部は未だに出身地や定住用住まいに再定住できないでいる。人道援助機関によると、武装紛争が終結する前に自宅から逃げ出した少なくとも9万人を含む、数知れずのIDPsが、受け入れ家庭や仮設住宅で生活し続けているそうだ。

2012年9月に再定住する予定だった最後のグループ少なくとも300人は、安全保障上の理由でムライティブにある自宅に戻ることを許されなかった。UNHCRによれば、彼らは国有地に再定住させられたが、彼らの土地が返還されない場合、彼らが補償金を受け取られるのかといったことについては、伝えられなかったそうである。

私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  •  全ての国内難民に、可能ならば出身地に戻ることを許し、そこでの土地を政府が所有し続けているのであれば、その理由を公表すると共に、何処かに再定住するための十分な補償を提供すること

8. 国家人権委員会

2008年UPRでスリランカ政府は、国家人権委員会を強化すると共にその独立性を保証するようにという勧告を受け入れた。しかしそれ以来政府は、同委員会の権限と独立性をはく奪してきている。2010年9月に可決された18度目の憲法改正案は、同委員会を大統領に支配下に置くと共に、大統領にその委員を指名する権限を与えている。委員会の職員はヒューマン・ライツ・ウォッチに、同委員会の職務を自由に干渉されないで行えないことに関して、失望をあらわにしていた。

私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  •  国家人権人会の独立性を、大統領支配から解放し、委員を指名する独立したメカニズムを設けることによって、回復すること

9.特別手続き

2012年 UPRに向けた報告書で、スリランカ政府は「国連特別手続」と緊密に連携して活動していると主張している。しかし政府は6件の特別手続に基づく視察要請に応えていない。例えば、「強制的或いは不自発的失踪に関する作業部会」は5件(2006年、2007年、2009年、2010年、2011年)の視察要請をしているが、その全てはペンディングとなっている。

私たちは各国政府代表に、スリランカ政府に以下の事項を勧告するよう強く求める。

  • 「強制的または不自発的失踪に関する作業部会」、「超法規的処刑に関する特別報告者」、「表現の自由に関する特別報告者」、「人権擁護者に関する特別報告者」、「結社・集会に関する特別報告者」、「少数派問題に関する中立専門家」を含む、同国への視察を求める全ての「特別手続」に基づく要請に好意的に対応すること
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