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日記、日々の想い 

少年は、そのこいぬを、思い返す

少年は、その子を
思い返していた
涙が、溢れ出てくる
あの夕暮れの、土手道
息が、切れて
膝に手をついて
立ち止まって
俯向き、息を整え
恐る恐る
振り返ってみた
必死で、逃げてきた
あの暮れなずんだ
誰も、いない土手道
いる筈もない、あの子
あの子の姿を
追い求めていた
いる筈が、ないのに
どうして、あの時
振り返ったりしたんだろう
あの子が、あの遠くの
空き地から
土橋を渡って
追って来られる筈がないと
分かっているのに
居て欲しいと
願って、振り返っていた
誰も、いや
こいぬなど、いる筈もない
あの黄昏ていく、土手道
それは、少年が
自分の犯した罪
あのいたいけないのちが
いのちが、きっと
消えるのだと
いや、おまえが
吹き消したのだと
思い返し始めたからだろうか
少年は、犯した罪を
贖う唯一の機会を
その時に逃した
そうなのかも知れない
少年は、その道を
駆け戻る勇気
あの子の元に、駆け戻って
抱き上げる
抱き締める
その勇気が、なかった
おまえには、あの子を
育んでやるちからが
ないんだと、そうして
諦めるしか、なかったんだろう
いや、言い訳したのか…
だから、少年は
また、前を向いて
ただ、とぼとぼと
ただただ、とぼとぼと
日暮れていく土手道から
田んぼ道へと、下って
家路を、辿るしか
なかったんだろう…
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