人には
忘れられない
遠い日の思い出があるものです。
それが
どれだけ不思議な事だったとしても…
私にとっては
大切な想い出の破片。
コレエダ ケイタの話をしよう…
あれは
私が中学2年の頃でした…
クラスに必ず1人は
いたんじゃないでしょうか?
目立たない奴
存在感の薄い奴
それが
コレエダ ケイタ君
でした。
彼には
友達がいませんでした…
たった一人を除いては…
その友達というのが
僕だったのです。
当時、友達の証しとして
流行っていたのが
【互いの家に泊まりにいく】
という行為でした。
例に漏れず僕も
コレエダケイタ君の家に
泊まりにいくことになったのです。
学校が終わり
僕はコレエダケイタ君と
一緒に帰りました。
国道を2km位
進んだ頃でしたか…
コレエダケイタ君が
スッと、わき道に入りました。
違う。
…それ、わき道じゃないんです。
薄暗い森の中に続くケモノ道なんだ。
どんどん
森の中に入っていく
コレエダケイタ君。
『コッチダヨ』
小さい白い手が、手招きする。
僕は
ちょっぴり怖くなって
(僕はいったい何処に
連れていかれるのだろう?)
とも、思いましたが…
その反面
まるで秘密基地を探検するようで
わくわくしていたのを覚えています。
森のトンネルの中を進んでいくと
急に目の前が開らけました。
そして僕は
眼前に広がる光景に
自分の目を疑いました。
そこに街は、ありませんでした。
詳しく言うと
広大な土地に
舗装された道路だけ…
まるで、開発途中の住宅街…
そんな中に
コレエダケイタ君の
家はあったのです。
異変は、初めから感じていました。
その家に入った時に
(なんか薄暗いなぁ?)と
感じました。
確かに、外は夕方で
家の中は電気が灯いていたのですが…
常に
目の前に薄い幕があるような感じ…
まるで霧の中にいるような
そんな印象を受けました。
そして普通
新築の家には
木の温もりを感じるものですが
そこはまるで
冷たい大理石の中に
放り込まれたかのような
空気が漂っていました。
居間に通されました。
母親がいました。
3歳位の妹がいました。
赤ん坊の弟がいました。
テレビを観ました。
食事をしました。
その間
終始…皆、無言でした。
食事中、ふと気が付いたのです…
居間があって
その隣に
もうひとつ部屋があるのですが
襖が少しだけ開いている。
なんとはなしに覗いてみたんです。
電気も付いていない
真っ暗な部屋の中
布団が一組…
敷かれている。
その上に…いる。
白髪で髪を乱した老爺が正座している。
その老人の目は…
うつろに虚空を凝視したまま
身動きひとつせず
そこに鎮座していた。
僕は、怖くて、怖くて…
がくがく震えていました。
居たたまれなくなり
そのまま二階に上がり
コレエダケイタ君と
二人で話をしました。
何の話をしたかまでは
忘れましたが…
これだけは覚えています。
コレエダケイタ君は
何度も、確かめるように
僕に…こう言ったのです…
『ズット友達デイテクレルヨネ?』
その後、僕は
2年の途中で転校してしまい
それっきり…
コレエダケイタ君と
会う事はありませんでした。
月日は流れ
僕は上京して
仕事に追われる毎日を
過ごしていました。
そこに友人から電話があったのです。
久しぶりの電話で
思い出話に花が咲き
僕は
コレエダケイタ君の名前を出したのです…
だけど…
友人の答えは意外なものでした。
「誰それ?」
僕がどれだけ説明しても
『コレエダケイタを知らない』と
言うんです。
念のため
他の友人にも
確認してみたのですが…
同じ事でした。
卒業アルバムにすら
その名前を
見つける事は
出来ませんでした。
実は…この話
そこまでで終わっていたのですが…
つい最近の事です。
自宅に友人が来ており
その話をしてました。
『不思議なこともあるもんだな』
それじゃ
ネットでコレエダケイタ君の家を
見つけてみようという事になり
地図を検索してみました。
(グーグルアース)
通っていた学校は
すぐに見つかりました。
国道を指で辿っていき
さすがにケモノ道までは
地図にはなかったのですが…
見覚えのある森をつっきり
目で追っていったその先に…
僕は、見てしまったのです。
広大な土地…
そして、そこに…
【S墓地】
の文字を!
真相は、分かりません。
もしかしたら
彼もまた
途中で転校したのかも知れない。
いや…
もしかしたら…
僕にしか見えない存在…
だったのかも知れない。
ただ僕の脳裏には
はっきりと…
コレエダケイタ君の言葉が
刻み込まれているのです。
『ズット友達デイテクレルヨネ?』
追〓たまこ〓憶
記事にしてみてください(*´ω`*)