時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

終の棲家

2020年06月27日 | 時のつれづれ・水無月

多摩爺の「時のつれづれ(水無月の14)」
終の棲家

リビングの大きなガラス戸を開けると、階下の駅前商店街を行く、
子供たちの賑やかな話声が聞こえてきた。

東京都に発令されていた「緊急事態宣言」が解除されてから約1ヶ月
登校が自粛されていた子供たちは、分散登校を経て、徐々に登校する生徒数を増やしてきており、
約3カ月も休校せざる得なかった遅れを取り戻すために、
本来ならお休みの土曜日も授業をしてるようだ。

東京郊外の北多摩に、マンションを購入して・・・ もう20年が経つ。
切っ掛けは、ちょっとしたハプニングからだった。
2000年のゴールデンウィークが始まったばかりの4月の末
ズームイン朝(日テレ・朝の情報番組)を見ていたら、突然テレビ画面が暗くなり壊れてしまった。

何処へも出かける予定はなく、ゴールデンウィークの楽しみはテレビでスポーツ観戦と決めてたのに、
テレビがないのは絶対に・・・ 耐えられない。
お昼前に、女房とドライブがてらに郊外の量販店にでかけた途中
街道沿いで何気に目に留まったのが、現在住んでるマンションのモデルルームだった。

年齢的にも45歳だったし、私たち夫婦は退職したら実家のある故郷に戻るつもりだったが、
東京で育った子供たちは無理だろうし、なにか残せてあげるものがあるとすれば、
お金か、家ってことで・・・ いろいろ考えてた時期でもあった。
さらに、仮に家を買うなら、繰り上げ弁済などで、
現役でローンが完済できるギリギリの年齢ってこともあって、
テレビを購入した帰り道、引き寄せられるように・・・ モデルルームに入っていた。

女房と私には、家を買うなら・・・ これっ、という条件が幾つかあった。
1.最寄駅から戸建てなら歩いて20分、マンションなら10分以内で、
  尚且つ都心の会社までの通勤が1時間以内
2.障がいがある娘にとって、働きにでることに支障がない環境であること
3.近くに学校があり、子供たちの声が朝に夕に聞こえてくること
4.買い物するスーパーが近くにあること

モデルルームに入って直ぐに建設予定地を確認すると、私鉄沿線の駅前で条件1と2は申し分ない。
条件3は、さらに申し分なく近隣には保育園、小学校、中学校、高校、大学まである文教地区だった。
条件4は、歩いて5分のところに小さなスーパーが2軒あり、
駅前なんでコンビニもあり、パン屋も八百屋さんもあるし、
車で10分程度のところには、大きなショッピングセンターもある。

もちろん、歯科や内科などの町医者があるか、ないかも大事なポイントで気にはなっていたが、
小学校や中学校があって、子供たちが多い地域に町医者はセットものだと思っていたので、
まずは子供たちがいるか、いないかが重要で・・・ どこに町医者があるかは気にしてなかった。

当時は、保育園の建設予定地があるのに、
近隣住民の反対で着工できないという話をよく聞いていたが、
私たち夫婦は全く逆の発想を持っていて、
子供が煩いのは当たり前で、元気が良いのが一番だとさえ思っていた。

朝に夕に子供たちの話声が聞こえるのは、とっても楽しいことで、
雑音だ、騒音だなんていう声もあるが子供の声は、老後の活力源だと私たち夫婦は思っている。
もちろん、話の内容に聞き耳を立てている訳ではなく、
単純にワイワイガヤガヤ話す声が心地よいんだから、
閑静な都心に住み、静かな生活を好む方々とは、ちょっと違った思考の夫婦なのかもしれない。

正直言って、モデルルームの間取りより、四つの条件にピッタリだったことに、
私も女房も気持ちが大きく傾いていた。
その場はモデルルームを見ただけだったが、
帰って直ぐに部屋の位置(フロアや方角)、広さ、値段の検討に入り、
翌日には、申し込みに行っていたのだから・・・ ほぼ、即断即決といって良いだろう。

けっこう人気があったマンションのようで、約1ヶ月でほぼ全戸が完売したことと、
申し込んだ部屋は他にも希望する方がいて、3倍の抽選になるという連絡が入って来た。

その時、抽選するに当たって、第2希望、第3希望の部屋があればと教えてくださいと尋ねられたが、
女房は超強気で、希望した部屋に外れたら縁がないだけ・・・ というもんだから、
その部屋1本で行きますと返し、他人任せの抽選を待つことにした。

そして、1週間後「おめでとうございます。」という連絡が入り、
そこから金策に入るのだが、あれから20年経ち、現在に至るのだから縁があったということだろう。

マンションのエントランスから、駅の改札口まで50メートル程度という環境だから、
通勤もずいぶん楽になった。
雨が降ってても小雨程度なら、傘を差さずに小走りで、たいして濡れることがないんだから、
ホントにありがたい。

苦しかったローン返済も、女房が何かとやり繰りしてくれて、
還暦過ぎには繰り上げで完済することができた。
年金暮らしで、けっして裕福ではないが、
贅沢しなきゃ、なんとかやっていけてることは幸せなんだと思う。

切っ掛けはテレビが壊れたことから始まり、
たまたま目に留まったモデルルームから・・・ よもやの急展開へと続き、
その後は抽選があって、高い買い物をしてしまったが、
都心から1時間弱で緑豊かな武蔵野に居るんだから、
なにが切っ掛けになるか分からないが、縁というものは・・・ 不思議なものである。

唯一、変わったことと云えば、退職後はタイミングを見て故郷に帰郷する予定だったのに、
孫が二人も生まれ、近所に住んでることから、
私よりも、故郷に思いが深かった女房が「もう、帰らない。」と言ってることぐらい。
こればっかりは・・・ 仕方ないだろう。

東京都の新型コロナウイルスの感染者数は、未だに収束の兆しすら見えないが、
休校が明けて約1ヶ月、駅前の商店街に子供たちの元気な声が戻ってきた。
退職してから既に3カ月、すっかり家事手伝いの毎日が板について来たが
1日も早い収束を願ってやまない。

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