赤塚不二夫原作「天才バカボン」は、これまでに5回テレビアニメ化されている。
そして僕は、それを全話視聴済みである。
今回は、それらを自己流に解説していく。
資料として、参考にしてもらえれば嬉しい。
ただし、この文章はあくまで僕の独断と偏見によるものであることは留意していただきたい。
尚、ここの文章の大部分は過去に某所で書いたものを流用している。
第1作:天才バカボン
1971年9月25日~1972年6月24日 全40回
よみうりテレビ 土曜19:00~19:30 東京ムービー制作
ほのぼのホームドラマなのだ
最初のテレビアニメ。
放送開始からしばらくは比較的原作に忠実なギャグ作品となっていたが、スポンサーの移行により中盤頃にホームドラマ路線へとシフト。独自色の強い人情ハートフルコメディが物語の主体となり、多くのオリジナル要素が加えられ、結果的に原作とは大幅にカラーの異なる作品となった。特に、バカボンのパパに定職が与えられたのは原作・アニメ通しても唯一である。こうした内容の改変は、原作者の赤塚不二夫を失望させることとなった。しかし、単体のアニメ作品としては評価が高く、現在でもファンの多い作品でもある。
尚、主題歌は全シリーズ中最も有名。「西から昇ったお日様が東に沈む」というフレーズは誰もが聞いたことがあるだろう。
(個人評)筆者としても赤塚不二夫先生の原作が好きなのでこのアニメには不満も多く、他の赤塚アニメと比較すると相対的に評価が低くなるのも事実です。しかしやはり同時に原作と切り離せば出来のいい作品であるのも事実、「これはこれで好き」であることも間違いないですね。
第2作:元祖天才バカボン
1975年10月6日~1977年9月26日 全103回
日本テレビ 月曜19:00~19:30 東京ムービー制作
このハチャメチャ感こそバカボンなのだ
前作より3年の時を経て再アニメ化。「元祖」の称号は、前作の改変内容を踏まえ「本作こそ決定版のバカボンである」という意味合いをこめてつけられたとされており、赤塚不二夫本人による命名という情報もある。
前作とはうってかわってアナーキーなナンセンスギャグ作品となり、原作を重視した内容は好評を博し2年間に及ぶロングラン放送となった。これは赤塚アニメとしても最長の放送期間を誇る。キャストはパパ役の雨森雅司をはじめ多くは前作から続投しているが、おまわりさん(本作から本官さんとも呼ばれるようになる)のみ肝付兼太に交代(ただし前作のおまわりさんは原作と異なるキャラデザとなっていたため、ある意味別キャラとも言える)。また前作放送時は原作でもまだ登場していなかったウナギイヌが本作から登場している。
こちらはEDが有名。作詞は赤塚不二夫本人で、「41歳の春だから」のフレーズからパパの年齢は41歳として概ね定着している。
(個人評)最も成功した赤塚アニメといっても過言ではないのではないでしょうか。筆者自身としても、一番好きなバカボンアニメとして挙げるのがこれです。ただ原作に忠実とはいっても作画面は独自色が強いほか内容も長期シリーズ故時期にもよる部分もあり、特に終盤になるにつれ独自展開も多くなるのでそこは要注意ではあります。
第3作:平成天才バカボン
1990年1月6日~1990年12月29日 全46回
フジテレビ 土曜18:30~19:00 スタジオぴえろ制作
新しくなっても楽しいのだ
1988年2月から放送されていた同じく赤塚不二夫原作の「おそ松くん」の後番組として放送された。「おそ松くん」とは多くのスタッフが共通しており、作風やキャラクターデザインが似通っているほか、BGMも一部共通している。
「天才バカボン」のアニメとしては「元祖」のスタイルを継承しており、原作改変も多かった前番組「おそ松くん」と比較してもより原作に近い内容となっている。原作をベースとしつつ舞台は現代であるため、平成を思わせる事物も度々登場する。
前作までパパを演じた雨森雅司が鬼籍に入っていたため、富田耕生が後任となり、これ以降富田は多くの場でバカボンのパパ役として起用されていくこととなる。その他のキャストもママ役の増山江威子以外は一新された(ただし本官さんとレレレのおじさんの千葉繁は前番組「おそ松くん」の序盤でも同様の2役を演じていた)。
(個人評)非常に安定していると思います。「元祖」も良いのですが、あちらはやや上級者向けな部分もあると思うので、この「平成」であれば初心者にもオススメしやすいですね。初心者にもマニアにも優しい内容です。ただ、いい意味でノーマルでもあるので、特別これといった強いイメージがないのが強いて挙げられる難点でしょうか。
第4作:レレレの天才バカボン
1999年10月19日~2000年3月21日 全24回※
テレビ東京 火曜19:28~19:55 スタジオぴえろ制作
現代でぶっとんだことやるのだ
「平成」とほぼ同じ制作体制で4度目のアニメ化となった。
これまでのシリーズと同様、原作のエピソードをベースに構成されているが、大幅な改変や独特の演出等により独自の世界観が展開されている。本官さんのピストルがモデルガンになっているなど規制も目立つ一方で原作に近い過激な描写がそのまま放送されたり、「現代版バカボン」を強く意識した作りになっていたり(時事ネタが頻繁に登場する、突然登場人物の顔が3Dになるというようなギャグが挟まれるなど)するのも特徴。
シリーズで初めてデジタル制作が導入されたが、一部の回はセル画となっている。キャストは「平成」と同様ママ役の増山江威子が続投しているほか、千葉繁が本官さんとレレレのおじさんの一人二役として「平成」から再登板している。そのほかのキャストは一新され、特に小倉久寛によるパパはこれまでにないタイプとなっていた。
(個人評)ファンの間ではかなり賛否の分かれやすい作品です。確かに演出過剰だったり「滑ってますよ」ってギャグもあったりしますし、声の違和感についても(筆者は慣れたとはいえ)頷けます。ただ、ちゃんと「天才バカボン」のアニメでありつつ「現代のアニメ」としても成立している点は今となっては非常に評価に値しますし、何より今観ても十分面白いと言えます。
※「レレレの天才バカボン」は本放送では2回スペシャルが
あったため、実際の放送回数は全22回。
第5作:深夜!天才バカボン
2018年7月10日~2018年9月25日 全12回
テレビ東京 火曜深夜25:35~26:05
studioぴえろ+制作
深夜のオリジナルバカボンなのだ
「レレレ」から実に18年ぶりのテレビアニメ化で、初の深夜枠での放送になった。
本作の大きな特徴は、原作のエピソードからアニメ化されていた従来のシリーズとは異なり、全話が完全にオリジナルストーリーとなって、監督・脚本を務めた細川徹の個性が色濃く出た内容になっていることであり、深夜の放送を意識したギャグやメタフィクショナルなネタが非常に多い。実在の人物の出演も多く、殆どは本人役として声の出演もしている。同じ赤塚不二夫原作で大ヒットした「おそ松さん」を意識した点もいくつか見られる。尚、原作のエピソードの映像化はないが、各話のゲストキャラクターの造形など細かい部分で原作から引用された要素は多数存在し、さらに第11話は原作のとあるエピソードが深く関わるストーリーとなっている。
キャストはママ役を含め完全に一新されている。
(個人評)辛辣な言葉になりますがはっきり言いますと、この作品は「勘違いした監督が自己満足で作った結果見事に滑った作品」といっていいと思います…。普通に原作の話をやればいいのに何故それをしないのかという気持ちも強いですが、そうして作られたオリジナルネタも正直純粋な面白さという点で微妙ですし、おそ松さんのように新たなファン層を獲得できているわけでもないようで需要もよくわからず…。
ただ、やっぱりテレビアニメ第5作として天才バカボンが復活したという点だけでもこの作品の価値は大きく、さらにおそ松さんとは違ってキャラクター設定などは殆ど原作のままであることも特筆すべきポイントです。面白さという点で微妙とはいっても全話がそうだったわけではありません。残念だったことは否めませんが、なければ良かったというような作品では決してありません。
そして、第11話だけは間違いなく「良かった」と言えます!! 極端な話、「深夜!」は第11話だけ観ていただければ十分ですね。
天才バカボン、テレビアニメ第6作も心待ちにしております。