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アニメ「もーれつア太郎」のおすすめエピソード

2021-05-16 20:17:00 | 赤塚不二夫
今回は、Twitterのフォロワーさんのリクエストにお応えして、アニメ「もーれつア太郎」(昭和版、平成版)について紹介し、おすすめエピソードを語っていこう。
(本文中の人名は敬称略とさせていただきます)


まずは知らない方のために、「もーれつア太郎」全体について説明する。

「もーれつア太郎」は1967年以降「週刊少年サンデー」を中心に連載されていた赤塚不二夫の漫画で、それを原作としてテレビアニメも2度制作されている。


ギャグ作品であり、かつ赤塚作品としては「下町」や「人情」の要素を強く持つ。
当初は八百屋の主人公・「ア太郎」と、その父親である「×五郎」の親子ドラマ。序盤で×五郎が死んで幽霊になった後はさらにア太郎の子分・「デコッ八」が登場。その後も、たくさんのブタを子分にする「ブタ松」、タヌキのような姿でどこかマヌケな「ココロのボス」、決してへこたれないバイタリティを持つネコの「ニャロメ」といったキャラクターが続々と登場し作品を盛り上げ、ヒット作となった。

僕にとって、「もーれつア太郎」はどんな作品なのか。

僕は赤塚ファンになって今年でもう13年になるが、赤塚作品の中でも未だに「もーれつア太郎」は、原作・アニメ共に馴染み深さや思い入れが随一の存在だ。

まず、2009年にたまたまいち早く単行本が全巻揃った。当時はまだ疎らにしか単行本を持っておらず、その中で真っ先に一通り読むことができたので、この時点で赤塚作品の中でも「ア太郎」は頭ひとつ抜けた存在になった印象がある。

その後、2010年3月からは有料の動画サイトにてアニメの視聴を始める。それまでは専ら、運良く再放送やネットの動画(多くは違法UPだが当時は知らないし気にもしなかった)があったものしか観ていなかった中で、初めて自分から積極的に視聴しに行った形になる。ここで、基本的に週1本ずつ視聴するという生活が、配信終了となる8月末まで続いた。昭和版も、平成版もたくさん観た。

さらにその後、2011〜2014年にかけて、DVD-BOX全4巻を購入。これは2007年頃に発売された、所謂"完全生産限定盤"と言われるものだったようだが、通販から買い集めた。ここで、アニメの全話視聴も完了する。

こんな感じで、自分にとっての「ア太郎」への思い入れや愛着は、「早いうちから作品の大部分を楽しむことができた」というある種の刷り込み的なものもあるだろうが、それでもやはり作品として面白いしキャラクターも魅力的で、純粋に好みであることも間違いない。

それほどの作品なので、やはり「バカボン」や「おそ松」は(内容はともかく)実現した「新作アニメの登場」というのはず〜〜っと熱望し続けているものの一向に実現せず、もどかしい。それでも3年前に舞台化という大きな動きがあったことはとても嬉しかったし、楽しませてもらった。

さて、いささか前置きが長くなったが、今回のメインはそんな「もーれつア太郎」のアニメについてだ。昭和版、平成版について、概要と個人的全体評価を語ってから、おすすめエピソードを紹介する。

もーれつア太郎(第1作)
1969年4月4日〜1970年12月25日(全90回)
金曜19:30 NET系 東映動画

昭和版と称する。1970年9月放送分(第77回)まではモノクロ、同10月放送分から最終回までカラー。

オリジナルエピソードや改変自体は多くあるが、時系列を含め(ここ重要)ほぼ原作を忠実に映像化しており、赤塚アニメでは最も順当に「漫画をアニメ化した」作品であると言える。
それ故、原作同様前半と後半での作品カラーの変化が大きい。シリーズが始まってしばらくはア太郎・デコッ八・×五郎を中心に展開する任侠ドラマがメインだったが、中盤以降ココロのボスやニャロメといったキャラクターが中心となるギャグ作品としての要素が強くなっていった。※1

僕としてはこの昭和版ア太郎が最も好きな赤塚アニメであると言っていい。原作の魅力を殆どそのままに再現しつつアニメならではの楽しみどころもあり、満足度が高い。ただ先述の通り、極端に言えば別アニメというほど前半と後半で雰囲気が違い、
かつこのアニメの本番は後半からだという風にも思っているので、ご紹介するエピソードもどうしてもそちらに偏る。

では、以下にご紹介しよう。

第57回「江戸っ子対ギャング最大の決戦」
(1970年5月8日放送)
アニメオリジナルエピソード。昭和版ではしばしば他の赤塚作品(殆どは「おそ松くん」)のキャラクターがスターシステムで登場し、この回もそのひとつ。ここではイヤミやハタ坊らがア太郎たちと対立するギャングとして登場し、文字通りの「決戦」を繰り広げ、ストーリー漫画のような緊迫感ある物語を楽しめる。
各キャラの個性も光り、イヤミたちの悪役ぶりやア太郎の親分らしい頼もしさも見所。細かい部分では、おっさん声で喋るチビ太というのは後にも先にもここだけではなかろうか(笑)

第59回「やるべしニャロメは男でやんす」(1970年5月22日)
原作は「ニャロメのいかりとど根性」…読んだ者に非常に大きなインパクトを与える「ひきにげ」のエピソードだ。そのアニメ化であるこの回も演出や脚色などの効果も相まって、原作に勝るとも劣らない仕上がりとなっている。特に、原作では意味深なところで終わっているがアニメではさすがにそこで終わらせるわけにもいかず独自の続きが描かれている。
ストーリーはシリアスなものになっており、そこでのニャロメの「孤独な戦い」には胸が締めつけられるが、最後まで視聴することでそのメッセージ性とハラハラドキドキを味わっていただきたい。

第69回「ニャロメ恋狂い」
(1970年7月31日)
ニャロメが恋するなんていつものことではあるが…ここではデコッ八も同じ外国人女性に惚れてしまい、そこから起こるアレコレが面白い回だ。思い込みで彼女のために奮闘するニャロメとデコッ八、彼らに振り回されるココロのボス、妙に達観した感じのア太郎…。今回ニャロメはなかなかヤバいことをやっている(笑)
尚、この回は原作の「ニャロメのぐれてやる〜‼︎」をベースにしたと思われる箇所がいくつかあるがストーリー的にはほぼ原型をとどめておらず、アニオリにカウントしても問題はないと思う。

第70回「怪談八百×ユーレイ」
(1970月8月7日)
アニメオリジナルエピソード。真夏に放送された、文字通りの怪談だ。原作でも赤塚漫画全体でも、意外と怪談を題材にした話というのは珍しいような印象があるが、この回は幽霊や赤ん坊を中心にその人間ドラマも交えてかつレギュラーキャラもうまく動かし、秀逸にまとめ上げている。イヤミやダヨーンの役どころにも注目だ。

第74回「ヒコーキ泥棒ニャロメ!」
(1970年9月4日)
アニメオリジナルエピソード。同年3月に実際に起こった、よど号のハイジャック事件を題材にした娯楽巨編だ。テーマも相当大それており細かいネタも満載。そして他作品キャラの客演を最も大々的に行ったと言えそうだ。イヤミやデカパン、チビ太などは通例通りだが、六つ子(とその両親)がアニメの「ア太郎」に登場するのはこれが唯一。そしてバカボンのパパも登場し、なんと台詞もある。明確に「バカボンのパパ」であるキャラクターがTVアニメに出て、さらに喋るというのはこれが史上初のはず。
全体的にお祭り要素が強い話である。

第85回「バスは出てゆく煙はのこる」
(1970年11月20日)
おすすめ度はかなり高い話。ニャロメの恋を中心に描かれるエピソードは多くあるが、ここではア太郎も同じ女性を好きになってしまい、デコッ八やココロのボスたちも巻き込んでドタバタを巻き起こす。
ストーリーが面白いのは勿論だが、なんといってもニャロメの恋がここまでうまくいった件というのは他に例がなく、その意味で非常に重宝すべき一編だと思っている。ニャロメがいかにして幸せを得るのか、そして対象の女性・吉永京子さんの可憐さを見届けてほしい。
ついでに、超さりげなくすごいメタ発言をするア太郎にも乞うご期待(笑)
尚、この話はアニオリではなく「小学四年生」掲載分にて基になった話が存在するらしい。ずっと探しているものの未だ確認できていないので、いつかは読んでみたい。


このほか昭和版では、
第2回B「とうちゃんのもーれつ幽霊」
第29回「デコッ八のもーれつショック」
第33回「もーれつ涙はあついのココロ」
第44回「男一匹デコッ八」
第51回A「ココロの怒りは胸にきけ」
第53回A「ケムンパスの恋」
第54回B「スモウ病発生のココロ」
第60回A「どしゃぶりの涙雨ニャロメ」
B「花と少女と江戸っ子と」
第67回「女はシゴクべしニャロメ」
第71回「走れニャロメロス」
第73回A「男ココロの泣きどころ」
B「とんでもハプニング」
第76回「おれと結婚しろニャロメ」
第77回A「喰われちゃたまらんべし」
B「金にうらみがあるニャロメ」
第82回「ニャロメだ!結婚だ!」
と、この辺りがおすすめだ。


もーれつア太郎(第2作)
1990年4月21日〜12月22日(全34回)
土曜19:00 テレビ朝日系 東映動画

平成版と称する。前作から20年の時を経てリメイク。
世界観は一新され舞台も放送当時の現代となり、キャストの続投もココロのボス役の八奈見乗児のみとなった。※2
第21回までは1本立て、第22回から最終回までは2本立てで編成される。

大部分が原作をベースとしていることは変わらないものの、昭和版と比較するとアレンジやオリジナル要素が多い。基本的な部分でも、アニメオリジナルキャラのレギュラーヒロイン・モモコがいたり、ア太郎だけでなくデコッ八も×五郎の姿が見えるようになったり、おまわりさんが独自のデザインであったり※3などといったものがある。
また原作や昭和版ではシリーズが進む中でレギュラーキャラが徐々に増えていったが、本作では第1話時点で殆どのキャラが登場し、途中参加するレギュラーキャラはブタ松のみとなっている。

原作を尊重しつつも新しく生まれ変わった各キャラや音楽等の面は「もーれつア太郎」のリメイク作品としてほぼ満点に近いが、各話の脚本の仕上がりはまちまちで、非常に秀逸にアレンジされたものもあれば改悪としか思えないようなものもある。
また、設定に一貫性があること、キャラクターの出番の偏りが極力大きくならないようになっていること、最終回が最終回らしい話になっていることなど、ひとつの作品としてのまとまりがある点も評価に値する。

おすすめエピソードはこちら。

第8回「それはヒミツ!ニャロメの誕生日だべし」
(1990年6月9日)
原作「ニャロメにも誕生日があった」を概ねそのままの流れでアニメ化。原作からして、みんなでニャロメの誕生日パーティーをするという心温まるものがある話だが、盛り上がりやキャラクターの可愛さなどが強調されており観ていて実に楽しいものになっている。唯一、ブタ松の登場前にアニメ化してしまったのは惜しまれるところか。

第12回「犯人はあいつだニャロメ!」
(1990年7月7日)
昭和版でも該当回を紹介した、「ニャロメのいかりとド根性」のアニメ化。平成版での原作アレンジの中では、全体的に間延びもせず演出も冴えて物語展開もよく、最高傑作に挙げてもいいと思っている。昭和版では社会派ドラマとしての側面が強調されていたが、こちらでは「信頼」や「いかりとド根性」のような感情面に重きを置いているといえる。やはりこちらも独自に原作では描かれなかった「その後」が描かれているので、そちらも必見。

第14回「マイホームだニャロメ!」
(1990年7月21日)
原作は「ニャロメのマイホーム」。ニャロメが空き地に自力で家を建てる話。原作部分はゲストキャラのデザインを含めて忠実でありながら、なぜニャロメが家を建てる気になったのかという動機付けとそれに対応するラストの結びが追加され、綺麗にまとまっている。そのオリジナル要素が原作のオチ部分とリンクしているのも上手い。
原作に登場していない、×五郎やモモコの扱いもなかなか好きだ。

第18回「王子と玉子 どっちがえらいのココロ⁉︎」
(1990年8月18日)
原作は「シャンデリアとペンフレンド」、デコッ八が女の子と文通をする話だ。
ストーリーはほぼ同じだがオリジナル展開や演出によりなかなか笑いどころ満載な1本になっている(余談だが、後に「美少女戦士セーラームーンR」など数多の作品を手がける幾原邦彦の演出デビュー作がこの回)。原作では文通相手の女の子とその弟として「ひみつのアッコちゃん」からモコとカン吉が登場していたが、こちらでは両者ともオリジナルキャラとなり、1話きりではもったいないほどの個性を伴っている。
さらに原作でやや不自然だった部分に改変が加えられているのもさりげない評価ポイント。


第30回Bパート「追跡!ニャロメとダイヤ」
(1990年11月24日)
アニメオリジナルエピソード。この回はストーリーを楽しむというより、そのテンポや動きを楽しむ1本だ。音楽とともに軽快に繰り広げられる追いかけっこをご覧あれ。忘れがちな×五郎の占い好き設定も活用されている。

第34回Bパート「男を咲かせ!ア太郎一座」
(1990年12月22日)
最終回。昭和版とは異なり、最終回を飾るに相応しい感動のストーリーとなっている。デコッ八の生死の危機を前に仲間たちが団結する展開は目頭が熱くなること間違いなし。赤塚作品の中でも「人情もの」という独自要素をもつ「ア太郎」の集大成ともいえる内容だ。アニメオリジナルながら、2018年の舞台版でも一部この回から案を得たと思われる描写があるなど、伝説の回となっている。

このほか、平成版のおすすめ回は
第3回「神様の八百屋でやんす」
第4回「ボスのシッポはニャーガイぞ!」
第6回「お見合いをぶっつぶせ、ニャロメ!」
第7回「ココロの花はウーツクシイのココロ」
第11回「ねてる間にポッカンのココロ」
第20回「天高くニャロメ恋する秋だべし」
第22回B「ア太郎はおぼっちゃま」
第26回A「走れ友よ!ちかいのマラソン」
B「恐怖の宝さがし」
第27回B「ブタだって恋をしたい」
第32回A「モモコのカレは誰だ⁉︎」
第33回B「思い出のゲンコツ」
などなどである。

以上、もーれつア太郎のおすすめエピソードを紹介してみた。まだまだ好きな話はあるし、逆に好きになれない、どうも苦手な話もあったりするのだが、ここでは割愛する。

さて…ここまで語っておいて何気に悩ましいのが、現在「もーれつア太郎」が、新旧ともに気軽に視聴できるとは言い難い状況にあることだ。地上波・衛星ともに再放送はほぼ全く行われていないし、各種動画配信も充実してはいない。DVDも、昭和版のみ比較的購入しやすいものが数年前に発売されたくらい。封印作品というわけでは全くないが、視聴ハードルはそこそこ高いと言わざるを得ないだろう。新作アニメの件も含めて、「もーれつア太郎」をめぐる状況が、もっと改善されれば良いのだが。

こんなに素晴らしい作品なのだから…‼︎



※1 プロデューサーの大沼克之は、任侠物として始めたアニメながら次第にニャロメらの出番が増えたことで「すっかり演歌の似合わないシリーズになりました(笑)」と語っている。
最終回Bパートを含め、原作同様ア太郎やデコッ八が登場しないエピソードも複数あるが、それでもアニメなりに配慮はあった方であり、原作で彼らの出番がない話にシーンを追加して出番を作ったこともいくつかあった。

※2 昭和版でB助を演じた田の中勇は本作では神さまを演じている。はせさん治も昭和版でモブとして数回出演した後、平成版にて×五郎役でレギュラーとなった。

※3 同時期にフジテレビ系で放送されていた「平成天才バカボン」にて、目ン玉つながりのおまわりさんが登場していたため描き換えられた。設定資料や番宣記事では従来の目ン玉のつながったデザインで描かれているものがある。


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