〇 動画編集アプリ「Clipchamp」のAI機能、素材から動画を自動作成。
今回は、Windows 11に付属する動画編集アプリ「Clipchamp」のAI機能を紹介する。このアプリは、素材の動画や写真を組み合わせて編集する機能を一通り備えている。最新バージョンでは、AIが素材を使って動画を自動作成する機能も利用できる。今回はその手順を見ていこう。
※ Windows 11バージョン23H2で解説しています。
イベントや旅行などで撮りためた動画や写真は、1本の動画にまとめておくと、後から内容を振り返りやすい。とはいえ、動画の編集は手間の掛かる作業であり、不慣れな人には分かりづらい面もある。
Windows 11に付属する動画編集アプリ「Clipchamp」は、動画編集に必要な機能を一通り備えている。さらに、AIが自動で作成する機能もあり、簡単な設定をするだけで、素材の動画や写真を、AIが“いい感じ”にまとめてくれる(図1 )。このアプリで最初に表示される「ホーム」画面から「AIでビデオを作成する」を選んで作業を始めればよい(図2 )。
図1、「Clipchamp」を使うと、動画や写真などの素材となるファイルを用意するだけで、AIが1本の動画にまとめてくれる(イラスト:森 マサコ)。
Θ 最初に「AIでビデオを作成する」を選択。
図2、Clipchampの起動直後は「ホーム」画面が表示される。そこで「AIでビデオを作成する」という項目をクリックすると自動作成の画面に切り替わる。
AIによる素材のファイルの解析や自動編集などの処理は、全てパソコン内で実行される。素材が外部に送信されたり、AIの学習に使われたりすることはない。
このほか、通常の編集画面で利用する機能にも、AIの技術が利用されている。動画から音声を認識して字幕を自動作成したり、入力した文章を音声に変換したりする機能がある(図3 )。
図3、入力した文章からナレーションの音声を生成する「音声変換」も、このアプリのAI機能だ。
Clipchampは、素材のファイルを必要なときに元のフォルダーから読み込む。作業を完了して出力するまで、素材ファイルの移動や削除は避けよう。なお、有料プランなら、クラウドにバックアップした素材を使用できる。
タイトルを入力して素材を読み込ませる。
Clipchampの「ホーム」画面で「AIでビデオを作成する」を選ぶと、「自動作成」画面になる(図1 )。ここでの作業は、4つの項目に沿って進める。最初は「メディアをアップロード」という項目だ。
図1、「AIでビデオを作成する」を選ぶと、この画面になる。最初に動画のタイトルを入力し、素材のファイルを読み込ませたら、「開始する」をクリックする。
動画のタイトル(題名)を入力し、素材として使いたい動画や写真のファイルをアプリに読み込ませる。「自分のメディアを追加する」という領域をクリックすると、ファイルを選択するための画面が開く。一般的な動画、写真、音声などの素材を読み込める。あるいは、エクスプローラーで開いたフォルダーからドラッグ・アンド・ドロップの操作で、この領域に直接ファイルを入れてもよい(図2 )。
図2、フォルダーを開き、動画など素材のファイルをClipchampのウインドウにドラッグ・アンド・ドロップして読み込ませてもよい。
データの読み込みには少し時間がかかる場合もある。ファイルごとに表示される進行状況を見て待とう。全て終わったら、画面左下の「開始する」をクリックして次の項目に進む。
見本から選んでスタイルの好みを教える。
2番目の項目は「スタイル」(図1 )。ここでのスタイルとは、AIが作成する動画の印象やBGMとして流れる音楽などを決めるための表現や様式のことだ。
図1、「スタイル」の画面では、表示されるスタイルの見本について自分の好き嫌いを伝えるか、「自動選択」を選ぶ。同時に、素材の解析も進行している。
画面の左側に、スタイルの見本がカードのように次々と表示される。作りたい動画に合うと思ったら親指を上げた緑のボタン、合わないと思ったら親指を下げた赤のボタンをクリックしていく。選ぶのが面倒なら「自動選択」でもよい。
同時に、先ほど読み込んだ素材のファイルが解析されており、進行状況が画面右側に表示される。
動画の向きと長さを指定する。
3番目の項目は「長さ」。ここでは、作成する動画の向き(横長/縦長)と、長さ(再生時間)を選ぶ(図1 )。画面右側では、作成される動画のプレビューを再生できるので参考にしよう。設定できたら左下の「次へ」をクリックする。
図1、「長さ」の画面では、動画の向きとして「横長」または「縦長」を指定。さらに、動画の長さを3段階から選ぶ。右側でのプレビューも可能。
動画の向きとして横長または縦長を選ぶと、素材の動画はその向きに合わせて編集される。縦長にすることで、横長で撮影した素材の動画が小さな表示になることがあるので注意しよう(図2 )。
図2、素材の動画ファイルが横長の場合、動画の向きとして「縦長」を指定すると、横幅に合わせて画面中央に縮小表示されることがある。
動画の長さは、「1分未満」、「およそ〇分」(AIが提案する短めの時間)、「全長」(素材の動画ファイルを全てつなげた合計時間)の3種類から選ぶ。「1分未満」と「およそ〇分」の場合は、AIが素材の動画ファイルから使用する場面を自動で選んでつなぎ合わせる。
なお、「1分未満」という選択肢は、動画の共有サービスである「TikTok」や「YouTubeショート」などで公開する用途を想定したものだ。
音楽を確認して「エクスポート」。
最後の項目は「エクスポート」。動画に合わせて流れる音楽(BGM)を確認し、設定を完了する(図1 )。完成したら、「エクスポート」をクリックして、動画ファイルを出力する。「タイムラインで編集する」をクリックすると、通常の動画編集画面で手直しできる。
図1、「エクスポート」画面では、音楽(BGM)を確認、変更できる。ビデオの作り直しも可能。問題がなければ下部の「エクスポート」をクリックする。
ここで「新しいバージョンを作成します」をクリックすると、現在の内容を破棄して動画を作り直せる。設定の項目名をクリックして戻ることもできる。
完成したファイルが保存されるのを待つ。
「エクスポート」をクリックすると画面が切り替わり、完成した動画が1つのファイルとして出力される(図1 )。作成途中の画面に表示されていたプレビューは、処理を軽減するために画質の粗いデータになっていた。実際の画質での動画は、この段階で生成されるので、出力には時間がかかる。進行状況を見ながら作業の終了を待とう。
図1、エクスポートの進行画面。動画によってはかなり時間がかかる。同じ画面の下方で、外部サービスへのアップロードも指定できる。
出力を待ちながら、別のアプリで作業してもよい。その場合は、「新しいウィンドウでエクスポートの進行状況を追跡する」というメッセージをクリックして、小さな表示を出しておくと便利だ(図2 )。
図2、エクスポート画面のメッセージをクリックすると、進行状況がデスクトップに小さく表示される。完了を待ちながら別の作業をしてもよい
出力が完了すると、エクスポート画面の右上に「ダウンロード」という表示が現れる(図3 )。標準の設定では「ダウンロード」フォルダーに動画ファイルが保存されているので確認しよう。
図3、エクスポートが完了すると「ダウンロード」という通知が表示される。出力したファイルは標準で「ダウンロード」フォルダーに保存されている。
出力後は、画面上部の「ホーム」をクリックすると起動時の画面に戻る。「編集を続行」を選ぶと、次項のような通常の動画編集画面に切り替わる。
通常の編集画面で手直しも可能。
エクスポートの完了後に「編集を続行」を選ぶか、「ホーム」画面で保存されている作業データを選ぶと、AIが作成した動画を通常の編集画面で開いて、自分で手直しできる(図1 )。
図1、Clipchampの通常の編集画面。AIが作成した動画をこの画面で開き、通常の作業手順で手直しすることもできる。
ただし、再編集するためには、素材の動画や写真のファイルを元のフォルダーに残しておく必要がある。なお、有料プランで素材のファイルをクラウドにバックアップしていれば、その限りではない。