吉田豪のインタビューより
『8日に心不全のため亡くなった俳優で歌手の安岡力也さん(享年65)。追悼記事の多くは闘病生活や家族への愛を語っているが、実にハチャメチャな人物でもあった。力也さんを長く取材してきたプロインタビュアー・吉田豪氏が、不世出の「最強伝説」をここに記す。
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力也さんといえば数々のケンカ伝説があるわけですが、そのエピソードにも、いちいち力也さんの優しさが見える。
力也:これは名前出したくないんだけど、あるプロレスラーがビブロス(赤坂にあったディスコ)に他の悪役レスラーといたとき、下の方でギャーギャー女の子の声が聞こえるんだよ。女の子が逃げ回ってて、周りの男の連中も止めるに止められねえみたいでな。
俺、ビブロスでは一応番長みてえなことやってたから、「どうしたんだ?」っていったら、女の子が俺の後ろに隠れたんだよ。それで、あるプロレス ラーが俺の襟首を掴みやがったんで、「なんだ、この野郎!」って表に出たの。ちょうど駐車場が工事中でブロックがいっぱい積んであったから、ブロックで頭 パカーンて割ったんだけど、一発じゃ倒れねえんだよ。額から血が出てるだけで。(中略)
それでもう1回ブロックでパカーンとやったら、その場にズデーン。で、その1週間か2週間後かな? そいつと東京駅で会ったんだよ。額にデカいバ ンドエイド貼ってて、「リッキー、覚えてるか? ここやったのリッキーだよ。俺も悪かったけど、ここまでやることはねえだろ」って(笑)。で、新幹線の中 で飲もうってことになって、(中略)京都までずっと飲みっぱなし。それから、もう親友よ!〈『ブレイクマックス』2003年9月号〉
このプロレスラーというのが、実はアブドーラ・ザ・ブッチャーなんです。当時は力也さんが「今は仲良しだから名前は出さないで」っていってたが、もういいでしょう。二人とも株が上がるエピソードですから。
※週刊ポスト2012年4月27日号
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