そこで、同清規に於いて「略三宝」があることが分かったので、見ておきたい。なお、同清規後半では、禅宗清規同様に略されて「十方三世云々」と書かれたが、「祈祷」の項目に以下の「略三宝」が記されていた。
十方三世一切諸仏
世尊菩薩摩訶薩
平等大慧一乗妙法蓮華経
『草山清規』7丁裏
残念ながら、この清規からはどのように読んでいたのかは分からない。一部宗派では、敢えて古い唐音で読むようにしているけれども、そのような状況だったのかが分からないということだ。しかし、この略三宝は、やはり思想的に日蓮宗の教義を反映しているのだろう。
最初の「十方三世一切諸仏」とあるから、全ての諸仏への帰依を表明し、また、世尊と菩薩へも帰依し、最後には平等大慧たる一乗妙法蓮華経を挙げるが、ここは禅宗系が「摩訶般若波羅蜜」であることを思うと、敢えて『法華経』に持って行った様子が分かる。
ところで、上記の字句を考える時、例えば前掲同書に掲載されている「十仏名」とは記載が異なっていて、もしそちらから「略三宝」を作ると、以下のようになる。
南無十方三世一切諸仏
諸尊菩薩摩訶薩
南無妙法蓮華経
やっぱり違う。とはいえ、なんか、こっちで十分な気もする。なお、北尾日大(1877~1946)著の『日蓮宗法要式』(平楽寺書店・大正10年)でも、先に引いた「略三宝」は採用されている様子も分かる。ただし、どうも、略すとただの「南無妙法蓮華経」で回向文を締めくくる場合もあるようだ。
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