「蠢く悪計」
安世耿が如煙の手をとりながら見つめていると、部下が「密偵の知らせによれば、皇帝は病に伏し、親政できぬゆえ襄王が摂政になったと」と報告に来る。
部下が下がった後「蝶舞、聞いたか。襄王が摂政になった。よいことだ」と言って、安世耿は如煙の手に口づけをする。
明月楼。「襄王はお年だし、大丈夫かしら」と心配する嬌郡主。朱殿下は「叔父上には政務に励んでいただいて、奸臣を一掃してほしい」と言う。諸葛正我は「皇太后様が摂政に襄王をお選びになったのは、他の老臣に適任者がいないからだ」と話す。うなずき「陛下も悩んだに違いない。壮年の後続を用いたいが、玉座を奪われるのも怖い」と言う朱殿下。嬌郡主は「でも凡庸な襄王に安心して政務を任せられない」と言う。
「襄王と安世耿は誼がある。神侯府は安世耿にとって邪魔者。襄王が摂政となった今、潰される恐れが」と言う諸葛。嬌郡主も「冷血と無情は行方不明。追命と鉄手しか残っていない。とても心配です」と話す。「安世耿は大胆不敵だ。冷血と無情がいない今、そなたの暗殺でも図られれば神侯府は瓦解するぞ」と言う朱殿下。それでも正義は悪に勝つと信じてる諸葛に、嬌郡主は「常に用心することが必要よ」と言う。
諸葛は「だが考え方によっては、この状況は安世耿に有利に見えて、我らにとっても悪くない」と話す。安世耿はこれを好機とし行動に出るはず、その安心感が油断を生み、馬脚を現すだろうと。
所轄たちは安世耿の出方を注視することにする。
安世耿は襄王と会う。久しぶりに安世耿と会え、襄王は喜ぶ。「陛下に疎んじられたゆえ、叔父上は隠居なさった。会いたいと望んでも、叶わなかったのです」と安世耿は言う。
安世耿と椅子に座った襄王は「今回は陛下に摂政を命じられた。だが私1人の力では無理だ。下の代の甥たちの力を借りねばならぬ。今日は心ゆくまで、そなたと語り合いたい」と話す。
襄王は庶出の皇子で、母親はあらゆる屈辱を味わい、悲しみの中で死んでいた。同じように庶出の皇子である安世耿を気にかけ、紫禁城で独ぼっちだった安世耿を陛下にお願いし、安王に預けた襄王。安世耿は「地位をくださったのは叔父上です。そのご恩は一生、忘れません」と言う。「身分は関係ない。庶子が何だ。嫡子が何だ。庶子の私が摂政になったではないか。今から私たち庶子は力を合わせて、己の能力で天下を治めてみせよう」と襄王は話す。
如煙のことを思い出そうとするが、どうしても無理だと離陌に言う無情。無情は「思い出って大事なのかな」と言う。離陌は「もちろん大事だわ。喜怒哀楽や愛や憎しみがなければ、人生は真っ白で味気ないものになる」と話す。無情は「現在を起点にすればいい。今から思い出を作るんだ」と言う。しかし「あなたには波瀾万丈な恋愛の経験があるの。誰もがうらやむ経験よ。あれほどの深い想いと、愛した人を忘れるなんて寂しいわ」と言う離陌。友達のことも忘れてるけど、友情だって簡単に築けるものじゃないと。それでも「苦しいのは嫌だ。生まれ変わったほうが気が楽でいいよ」と無情は言う。そこに慕雪が来る。
「捜したのよ」と言う慕雪に「ご用?」と離陌が聞く。「お兄様が」と慕雪が答え、離陌だけその場を後にする。
慕雪が「2人で何を話してたの?」と無情に尋ねる。無情は行ってしまった離陌を見つめ、何も答えない。
モルチの元へ行こうとしていた離陌は、助けを求める矢で射られた男を見かける。すぐに離陌が駆け寄ると、モルチが門を開けて出てくる。
「王子を暗殺…」と男が言い、離陌は読心術で“金甲神虫の油を王子の服に”という声を聞く。男が亡くなってしまい「金甲神虫の油を服に塗るって」とモルチに話す離陌。モルチから「なぜ分かる?」と聞かれ、離陌は「あなたが来る前に聞いた」とごまかす。
金甲神虫とはチンガ国で一番毒のある虫だった。「地下に棲み、地上に出れば火を起こす。小さな虫だが侮れない。火力は人間1人を燃やせる」とモルチは言う。
モルチは兄と弟の仕業だと考え「懲らしめないと私の気が収まらない」と話す。離陌は「待って、あなたの兄弟よ。それに証拠がないからには追求しても無駄よ」と言う。もうすぐ即位するのだから敵を作らないほうがいいと。しかし「君は黙っていてくれ。くれぐれも、このことは内密に」とモルチは言う。
やけ酒を飲んでいた追命に「街へ行かないか?仕事をすれば気も紛れる」と言う鉄手。依依は「私は捕吏の心得も学ぶ」と話す。
鉄手と依依と一緒に街へ行った追命だったが、2人がいちゃつき「無神経だな。人の気持ちを考えろ」と文句を言う。結局、追命はやけ酒を飲みに行ってしまう。
依依から頼まれ、鉄手は実地訓練をすることに。人々を観察していた鉄手は、怪しい男2人を見つける。その2人が女性の荷物を盗み、二手に分かれて鉄手と依依は追いかける。そして依依は泥棒を捕まえるため、毒の技を使ってしまう。
男が倒れて苦しんでいるところに、もう1人を捕まえた鉄手が来る。
「やり過ぎだよ。奴らは泥棒で大悪人じゃない。捕縛で十分だ」と言う鉄手。俺たちの目的は悪人を改心させること、もし殺してしまったら更正の機会を奪ってしまう、悪人にも両親や妻子がいる、残された子供は神侯府と世間を恨むだろう、それでは捕吏の目的に反すると。「悪かったわ。でも、わざとじゃないの」と申し訳なさそうに言う依依。しかし鉄手は「本当かな」と疑う。依依が「私を信じないの?」と聞くと「前に大行岩で君が使った技は残酷だった」と鉄手は言う。「あなたのためよ」と依依が言っても「忘れたのか、もう毒を使わないと約束したはずだ。君は毒を使うばかりか、心まで黒くなった」と鉄手は話す。
依依は「私の心に毒があると?」と聞く。「師匠の温如玉に似て、心まで毒に染まってる」と鉄手は答える。「私を誤解してるわ」と言う依依。鉄手は「そうかな。都に戻った以上、君には毒の技をすべて捨ててほしかった。十分な時間を与えたが今日の君は大きな過ちを犯した」と言う。何を言っても鉄手が信じてくれず、依依は行ってしまう。
明月楼。やけ酒を飲んでいる追命に、嬌郡主は「いずれ想いが通じる時が来るわ」と話す。恋愛は追いかけっこよ、1人が逃げて、1人が追う。追いかけるほど相手は逃げると。「もう追いかけるのに疲れました」と言う追命。嬌郡主は「紫羅はまだ幼い。あなたを好きだから、失うことをまったく想像してない」と言う。追命が「本当に?」と聞くと「考えてみて。紫羅が甘えるのは常にあなたよ。習慣になっているのよ。あなたは防波堤で、何があっても守ってくれる」と言う嬌郡主。
追命は「私にだって限界があります。もううんざりだ」と言う。しかし嬌郡主は「違うわね。追い続けるのが怖くなったの。結果を恐れてる。だから失恋の傷を最小限に抑えたい。勇気を出して自分を信じるのよ。いつか想いが通じて、今までの苦しみが幸せに変わるわ。あなたは優しい人よ。紫羅と結ばれてほしいわ」と話す。
襄王は「私は隠居していたから朝野のことはよく知らぬ。朝廷には忠臣がいれば奸臣もいる。誰が信頼に足るのか教えてはくれまいか」と安世耿に言う。「今まで参内の機会がなく、政務に興味もなかったのです。お尋ねのことについては何も申し上げられません」と答える。「朱家は元々、子孫が少ない。朝廷に信頼できる者がいない今、そなたの助力が必要だ。力を貸すと言うのであれば、私も後日、陛下の前でそなたを持ち上げられる」と言う襄王。安世耿は「叔父上の頼みとあれば、私も正直に話しましょう。この数年間、参内していませんが、朝廷内のとは耳にしています。朱殿下と諸葛殿が親しく、よく集まっては何か企んでいるとか」と話す。
襄王は「2人が親密なのは知っている。よからぬ噂も聞いたが、まだ証拠が出ていない」と言う。「では調べてから対策を考えましょう」と言う安世耿。襄王は「そうだな、密かに調査させよう。覚えておけ。疎遠でも我らは身内だ。今は安姓だが、いずれそなたを朱姓の一族として迎えたい」と話す。安世耿は感謝する。
帰る安世耿は“叔父上、あなたはまるで道化だ。今さら朱姓に戻れと?朱姓に何の価値がある?私は紫禁城を安姓に変えてみせる。今に見てるがいい”と思う。
冷血は毎日、四色魚血を飲み、三時、治療を受けていた。しかし手に力が入らず、剣も持つことができない。「もう時間がないんだ、離陌を捜したい」と言う冷血にしがみつき「きっと治るわ。私を信じて、あと少し待つのよ」と言う瑶花。そこに刀夫人が来る。
瑶花はどうすれば内力が元通りになるのか聞く。刀夫人は「おそらく、この男の体内には紅鱗毒と別の種類の毒が潜んでいるはずよ」と言う。「狼毒だ」と言う冷血。刀夫人は「狼毒が?やはりね、2種類の毒が作用し合ってるから内力が戻らないのよ。四色魚血を飲ませ、全身に行き渡らせようとするたびに不思議な力に邪魔される」と話す。紅鱗毒を取り除くためには、先に体内の狼毒を消さないと、と。しかし刀夫人は狼毒に対しては成す術がなかった。
「唯一の方法は、四色魚血の量を増やし、気を巡らす時間も六時に延ばすことね、そうすれば魚血の効果が最大限に発揮される。でも先に言っておく。この治療法は大きな痛みを伴う。それに治療期間もかなり長くなる」と話す刀夫人。冷血が「その期間は?」と聞くと、刀夫人は「短ければ3か月。長ければ3年」と答える。
明月楼。公主が来たのが見え、急いで芸妓2人と遊んでいるふりをする追命。不機嫌になった公主が帰ろうとし、嬌郡主は「追命と話をして」と止める。「嫌です。悪いのはあっちだもの」と言う公主。嬌郡主は「公主なら、心を広く持たないと。話しかけて、寛容なところを見せるの」と話す。公主は「私を無視して芸妓と遊んでるじゃない」と言い返すが、嬌郡主は「でも大事にしてくれる友人よ。あなたの顔色を見て何でも従えと言うの?覇気のない男がいい?それじゃまるで太監だわ」と説得する。
挨拶だけでいいの、と嬌郡主に言われ、公主は声をかけようと追命に近づく。そんな公主を無視し、芸妓と遊び続ける追命。公主が怒って明月楼を出て行き、嬌郡主は「そこまでよ。紫羅の気を引いて妬かせたかったのでしょう?でも、やり過ぎよ。逆効果になってかえって怒らせたわ。追いかけて」と追命に言う。一生、許してもらえないわよ、と。追命は急いで明月楼を出て行く。
追いかけてきた追命に「芸妓と踊っていれば?」と言う公主。公主は芸妓と遊んでいたことを責めまくり、追命は釈明すらできない。「もういいよ」と言い、追命はその場を後にする。残された公主は「私ったら怒りん坊」とつぶやくものの「冷兄様が恋しいせいね」と思う。
明月楼に戻ってきた追命に、嬌郡主は「公主は?」と聞く。「またケンカを…」と追命が答え、嬌郡主は「では出入り禁止よ」と言う。公主と仲直りするまで明月楼には来ないで、男は挫折すると酒に溺れるけど、その間に愛する女性を奪われるの、愛する人を大切にせず、やるべきことをやらないからよ、別れることになってから後悔しても何もならないの、と。
1日でも早く離陌を捜し出したい冷血は、刀夫人の家を出て行こうとする。「生きているうちに、もう一度、離陌に会いたい」と言う冷血に「そのためにも治療しないと」と瑶花は止める。それでも「俺の毒は治すのに時間がかかる。もう待てない」と行こうとする冷血。瑶花は「天意を信じてるのなら待つことも大切でしょ。楚離陌が神侯府に来たことも、狼毒を抑えられたことも決して偶然じゃない。縁があるなら、巡り合えるよう天が計らってくれる」と言う。
瑶花が言った「諦めなければ希望はある」という言葉を口にした冷血は、涙を流す。
諸葛が襄王と会っているところに安世耿が来る。年内に起きた四大凶徒の殺人事件や、九尾狐と玉璽の事件について、諸葛に来てもらい説明を頼んだと安世耿に話す襄王。襄王は「難事件が解決したということは、神侯府は都にとって有用だということだ」と言う。「その通り。諸葛殿と四大名捕の名を知らぬ者はいない。民衆から大きな支持を得ています」と言う安世耿。諸葛は「安殿下とは共に朝廷に尽くし、国を守りたい」と言う。襄王は「政見が異なろうととも、忠誠を尽くす相手はお一方。私ではなく皇帝陛下だ」と2人に告げる。
「帰ってよいぞ」と襄王に言われ、諸葛が先に外に出る。それを追いかけて出てきた安世耿が「諸葛様」と呼び止める。諸葛は「いつも諸葛殿とお呼びなのに、なぜ突然、諸葛様と?」と尋ねる。「敬意を表したのだ。ご活躍だが忠告しておく。神侯府は若者が多い。つい張り切りすぎてケガをせぬように」と言う安世耿。諸葛は「彼らに代わって、お心遣いに感謝する。失礼します」と言って、その場を離れる。安世耿は“得意顔だな。今に目にものを見せてやる”と思う。
ーつづくー
如煙が亡くなった事はつらい事だけど、無情にはやっぱり思い出してほしい。
悲しいことだけではなく、楽しい思い出もいっぱいあるから。
それに四大名捕として安世耿の悪事も暴かないと、如煙も浮かばれないよね。
追命と公主に続いて、鉄手と依依までケンカを(✽ ゚д゚ ✽)
毒の技を使ったのはよくなかったかもしれないけど、鉄手も責め過ぎてしまったかな…。
好きな人に信じてもらえないのはつらい。
安世耿びいきの襄王は大丈夫なのかなって心配になっちゃう。
「誰が信頼に足るのか教えてはくれまいか」って一番信用できない安世耿に聞いてるしヾ(・ω・`;)ノ
冷血の治療も長い(*´Д`*)
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救ってあげられなかったというマイナス思考ではなく、「誰もがうらやむ」と言ってあげるほうが無情にも救いになると思うし、そんな風に言える離陌も強いなと思いました♪
無情には離陌が、冷血には瑶花が
プラス思考で、と言っていました。
瑶花は本当にいい人ですよね。
彼女なりに後悔しない生き方、それを感じます。
先回のコメントで触れ忘れていたのですが、
このドラマでの狐ちゃんはなかなかの切れ者キャラですねー
そして、追命も鉄手も恋愛は何だかうまく行かなかくて、
こちらのカップルの行方も気になります。
世叔と郡主様はこの回も素敵でした☆☆☆