快読日記

日々の読書記録

「大阪的」江弘毅 津村記久子

2021年06月19日 | その他
6月2日(水)

「大阪的」江弘毅 津村記久子(ミシマ社 2017年)を読了。

大阪は、東京と張り合うとかではなく、いち「ローカル」として進むべき、
という津村記久子(大阪在住。作品にはほとんど大阪臭・関西臭がしない)
の話はおもしろかったです。
そもそも大阪はもう人口でも神奈川に抜かれていて、
日本第2の都市ですらないしね、
だから、ことさら大阪を特別視せず、
ただのおもしろい地元、と考えた方がいいじゃないか、と。
しかし、相手の江さん(大阪在住)は、
その考えに大賛成!という発言はしているのに、
終始、大阪は特殊だ、独特だという考えから抜け出せていなくて、
さらにそれに対する自覚もなくて、
これ、対談じゃなくて、大阪をテーマにした津村記久子のエッセイとかでよかったんじゃないかなー、と思いました。

「認知症になった蛭子さん」蛭子能収

2021年06月09日 | その他
5月22日(土)

「認知症になった蛭子さん」蛭子能収( 2021年)を読了。

認知症にかかったから即死するわけではないので、働いて稼がなきゃならない。
蛭子さんが主張するように、テレビでどんどん使ってやってほしい。

病気の人を笑ってはいけません、みたいな考えは結構だけど、
その考えが小人プロレスをなくし、小人プロレスラーの職を奪い、路頭に迷わせた悲劇を思い出します。

「ていだん」小林聡美

2021年06月09日 | その他
5月3日(月)

「ていだん」小林聡美(中公文庫 2021年)を読了。

ひとつひとつはすごく短い鼎談集なんだけど、物足りなさは意外とない。

お茶を飲むみたいにツルツルと読む。

「スピリチュアル系のトリセツ」辛酸なめ子

2020年08月11日 | その他
8月11日(火)

スピリチュアル系のトリセツ」辛酸なめ子(平凡社 2020年)を読了。

サッカーでも音楽でも宗教でもなんでもいいんですが、
愛好するものや心酔する人や信仰の対象を、突っ込んだり笑ったりするのは普通はできないですよね。
むしろ、そうした対象を他人に笑われたら怒っちゃう人の方が圧倒的に多い。

でも、それができてしまう辛酸なめ子はとても稀有な才能を持つ人なんですね。

例えば、ダライ・ラマにはフェロモンが漂っている、「半分肩を出されているからでしょうか、女性ファンも多いようです。」
チャネラーについては「本当にチャネリングしている場合もありますが、言ったもの勝ちの世界でもあります」
自称・宇宙人たちが「実は銀河連合の一員なんです」とか「宇宙連合に入っています」と言うのを聞くと「その真逆の存在が関東連合なのかも」とつぶやく。
え? おちょくってるよね、ばかにしてるよね、て聞きたくなるところですが、ことはそう簡単ではない。

実はかなりキツめにのめり込んでいる様子もあるからです。

本書では、“スピ度”軽めレベル1(パワーストーン・手相・風水など)から、
チャネリング・波動・ライトワーカー(←この本で初めて知った言葉)などのディープなレベル4まで、
巧みに分類していて、本当におもしろい!
あちこちのセミナーやイベントにも出向き、
体温低そうなイラストと声小さそうなレポートでまとめられていますが、
ところどころで「私も人間でいることが辛いです……」などという心境が吐露されてもいて、
この「信じてる」と「おちょくってる」のバランスが絶妙です。
「依存」と「批評」のバランス、と言ってもいいかもしれません。

スピる人には女性が多いことについても
「宗教では神に対して人間の無力さを痛感させられる反面、
スピリチュアルでは人間の潜在的な力を引き出すところも、女性本能に訴えている」と指摘していて、
その当事者でありながらこの冷静な分析はどうよ!と心のなかで叫びました。


そうそう、「波動」の項で、
「波動」を計測してカラフルなLEDで教えてくれる「霊石」というおもちゃみたいなアイテムが出てきて、
すごくおもしろそうです。やってみたい。

「怖い凡人」片田珠美

2020年05月30日 | その他
5月30日(土)

「怖い凡人」片田珠美(ワニブックスPLUS新書)を読了。

千葉県野田市の栗原心愛ちゃん虐待死、東芝の不正会計、などの事件や、
日大アメフト部内田監督、ボクシング協会会長“男・山根”といった人物の分析から、
“能力はむしろ平均以下なのに、上の顔色を見ながら横暴に耐えることでのし上がり、それなりの地位に着くと今度は下を追い詰める人たち”=アイヒマン的人物を「怖い凡人」と名付けて読みとく本。


おもしろいところはたくさんあるんですが、ひとつあげると「例外者」というカテゴリー。
それは、“自分は理不尽にひどい目にあったんだから、特権が与えられて当然だ”、という考え方をする人たちだそうで、
筆者はヒトラーも男・山根も内田監督も(って並べるのはいくらなんでも、ですが)この「例外者」であると指摘しています。

山根氏に至っては無国籍だった時代もあり、これだけ苦労させられたんだからその分取り返してやる!という「復讐」をしていたのかもしれません。こ、怖い。


森友学園への国有地売却の決裁文書の書き換えを命じられ、自殺した職員がいましたが、彼を追い詰めたのもこの「怖い凡人」たちだ、と筆者ははっきり述べています。

「そして、みんなバカになった」橋本治

2020年05月18日 | その他
5月18日(月)

2004年以降の、雑誌に掲載されたインタビューをまとめた「そして、みんなバカになった」橋本治(河出新書)を読了。

根底には日本に対する愛着(日本人に対する、ではなく)があって、それがなんで今こうなっちゃってるのかというと……、という話です。

橋本治は、“教える人”で、それこそ噛んでふくめるように書いてくれたものを読めたけど、
インタビューは、目の前の聞き手の力量や関係によって説明の仕方が変わるから、意外と読みにくいものがありました。
とくに、ちょっと見当違いな合いの手が入ると、わたしなどはとたんに混乱する、その点では書いたものの方がわかりやすい気がします。


このコロナ禍が、日本人のバカ化に歯止めをかけるのか、やっぱり拍車をかけてしまうのか、橋本治はもう教えてくれないけど……。


「問題は、個人の自由か、社会のあり方か、どちらを優先させるかということ以前に、「社会が崩壊してしまったら個人の自由もへったくれもないかもしれないぞ」というところに、今、来つつあることなんです」(124p)

「情報は「煮詰める火」でもあるということを、忘れない方がいいですね」(125p)

「サイコパスの手帖」春日武彦 平山夢明

2020年05月11日 | その他
5月10日(日)

数日前、何かの啓示のように「あらいかずとよ」という名前が浮かび、
戦国武将?明治政府の人だっけ?とずーっと気になってたら、
夜、テレ東で過去の「テレビチャンピオン」傑作選みたいなのをやっていて、
そしたら出てました「あらいかずとよ」!
大食いの赤阪尊子の初期のライバルだった~!
すっきり~!
そして、なんてグッドタイミング~!


それはさておき、「サイコパスの手帖」春日武彦 平山夢明(洋泉社)を読了。

この2人の対談シリーズ、最初はうっすらと噛み合わないところがあって、
でも、かえってそこに緊張感が生まれていいかんじでしたが、
どんどんこなれてきて、今は完全に同好の志みたいになってます。
こんなにツーカーな対談も珍しい。

サイコパスかどうかはともかく、他人の何に違和感を覚えるか、「こいつやばい」と感じるか。
これはもう理屈じゃなくて勘というか嗅覚ですよね、そこら辺の感性がぴったり合うと「だよね~」「やばいよね~!怖い怖い怖い怖い」になります。

ちょこちょこ出てくる平山夢明の子供のころのエピソードや知り合いから聞いた話もおもしろい。
中でも、“知り合いの小学校時代からの同級生で、動物虐待と虚言を繰り返すやばいやつがいて、大人になった今、そいつは動物を虐待から守る署名運動をしている”という話。
見た目やテンションが植松某っぽい、というのも怖いです。

あと、春日武彦がサイコパスと確信している政治家って誰だろう?あの人?それともあの人?

「背筋の凍る話 PARTⅣ」桜金造

2020年04月11日 | その他
4月10日(金)

風呂に浸かりながら「背筋の凍る話 PARTⅣ」(桜金造 リイド社)を読みました。
ああ、平和ってこういうことかもしれません。
怖い話も笑いと同じ娯楽だから。
昨日テレビでどこかのおじさんが「早くあたりまえの日常が戻って来てくれたらいい」と言ってるのを聞いて、本当にそうだなあと思いながら、自分がちょっとぐったり来ていることに気づきました。

そんなときこそどうでもいい本を!

何の役にも立たない本を!

今のわたしを癒すのは、こういう何の実にもならない本を読むという贅沢な時間!

有限である時間を桜金蔵に費やすという無駄使いこその贅沢よ!


というわけで、残っていたPARTⅣ(奥付は、PART2→PART3ときて、なぜか4巻めだけⅣ)に手をつけたんですが、
それまでの実話ものの雰囲気は去り、なんだか安い短編小説集みたいな風情なのでした。

それもまたよし!

そして、最終章、桜金造のお母さんの最後の言葉「オマエ…ヒロシマ…ノコ…ナンダ!!」というのは、原爆云々の話ではなく、本当のお父さんのお名前では? と半笑いしながら本を閉じたのです。

桜金造は大きい病気をして、リハビリがんばってたようですが、その後元気にしてるかな〜。

「背筋の凍る話PART2」桜金造

2020年03月15日 | その他
3月14日(土)

この令和の御代に桜金造の怪談本を読んでいる人間なんていますか。
わたし以外に。
しかも「PART1」を読み終えてから10年以上の時を経ての「PART2」。

ふだんなら(自分もよくやるくせに)イラッとする変換ミス・誤植の類もちょうどいいスパイス。
それ込みのチープな雰囲気が、怪談にぴったりだからです。

「PART1」に比べて質が落ちてるわけではない(実は今回「1」を読み直してしまった)のにあんまり怖くなかったのは、わたしに原因があるってことでしょう。
つまり、50を目前に大人になったということではないか。
霊との遭遇や死後の世界の話にビビる老人なんてイメージできません。
年を取るにつれ、この世よりあの世に親しみを感じるから…かどうかはわからないですが。

そんなわけで、
「怖いっ!」というより、じんわり切ない、哀愁漂うかんじの「2」でした。
「1」の方がネタ感が強く、「2」はリアルさを追求している印象です。

撮影所に今でも赤木圭一郎の幽霊が出る話なんてとくに悲しい。

「キダ・タロー対談 ひと・こころ・いのち これが私の生きる道―26人からのメッセージ―」

2020年03月13日 | その他
3月11日(水)

「キダ・タロー対談 ひと・こころ・いのち これが私の生きる道―26人からのメッセージ―」(本願寺出版社)は、西本願寺が発行する月刊誌連載をまとめたもので、ゲストは芸能人・学者・芸術家・経済人・スポーツマンなどジャンルかなり広め。

とくにおもしろかったのは、
近藤正臣が環境問題に取り組んでいる話や、
桜守・佐野藤右衛門の桜の話。

キダ・タローの返しももちろんおもしろかった。
例えば、ウミガメの研究を46年続けている名古屋港水族館長が結局「ウミガメのことはまだよくわからない」と繰り返すんですが、
それに対してキダ・タローは「ハハハハハ、けっさくやなあ。46年も研究してはって、わからんって」。
相手の言うことをただキャッチするだけ!
これ、簡単なようでなかなかできないことですよ。
さすが浪速のモーツァルト!


「最近の若者にもの申す」的な場面は、あまりにステレオタイプ(←キダがというより例えば大村崑が)なご意見なんだけど、そこにはむしろ安定感が漂います。
そう。年寄りは若い人を変に理解したり媚びたりしなくていいの。


関西弁の、のったりした雰囲気と仏教のベースがあいまって、心の水分補給になる1冊でした。
例えるならば、昆布茶みたいな本。

「なまえのないねこ」竹下文子/文 町田尚子/絵

2020年02月14日 | その他
2月13日(木)

昨年の暮れあたりから うちの猫がちょくちょくおねしょをします。

ノラ出身なので 正確な年齢はわからないけど、東日本大震災の前年にはもう居着いていたから、10歳以上ではある。

もうおばあちゃんなんですかね?

我が家では初めての猫なのでよくわからないけど

でも、知らん顔でモリモリ朝食を召し上がる姿には威厳すら漂います。

猫といえば、町田尚子が描く猫はもうなんというか質感がすごいです。

重さも匂いも体温も感じる。

猫に対する信頼、と言ったらおかしいけど、ただかわいいだけなんじゃなくて、彼らのあの「何か考えてるかんじ」とそこへの共感がじんわり伝わってきます。

絵の力ってすごい。

読書中『考証要集』大森洋平

2016年05月18日 | その他
5月15日(日)

『考証要集』(大森洋平/文春文庫)をちびちび読む。

円形脱毛症は平安時代、「鬼舐頭(きしとう)」と言ったそうだ。

もし、自分が円形脱毛症になっても、「ストレスでハゲた」と思うより「鬼に頭を舐められた」ということにした方が断然楽しいだろう。

読書中『世界の名前』岩波書店辞典編集部 編

2016年04月25日 | その他
4月24日(日)

ウガンダのニョロ語社会では、子供が道で生まれれば「道」と名付け、藪で生めば「藪」、バナナ畑だったら「バナナ」になるんだそうだ。
「人々は彼を殺した」という名前もあり、「これは、家族の一員が殺されたという恨みを、生まれてきたこの名に刻んでいる」、「彼らを放っておけ」という名前は「あの子は夫の子ではない」と噂されたときにつける名前。
なんだかすごい。

同じアフリカでも、ガーナの元国連事務総長コフィ・アッタ・アナンは「金曜日・双子・第四子」という“データ派”、ベナンのゾマホンは「火のないところに煙は立たぬ」という“格言派”。

って、ずっと書き写してるのもどうかと思うが、とにかくおもしろい。


ここで問題。
「わたしは知らなかった」という名をつけられた子供がいる。
そのココロは?


【答え】
そうと知らずに結婚した夫があまりにもひどい男だった、という母親の気持ちを記録した名前。