快読日記

日々の読書記録

「吉里吉里人(上)」井上ひさし

2012年08月21日 | 日本の小説
《8/20読了 新潮文庫 1985年刊 【日本の小説】 いのうえ・ひさし(1934~2010)》

この夏休みの課題図書(自分で決めた)。
夏休みって、普段読まない長いやつに手を出したくなりませんか。

ある日突然、東北の一地方が「吉里吉里国」として日本からの分離独立を宣言する、という話であることは(「坊ちゃん」の主人公は学校の先生らしい、という程度に)知っていましたが、そこから想像する重そうな話とはだいぶ違っていました。
話の横道への逸れ方が甚だしいこと火の如し、下半身ネタが多すぎること山の如し、です。
あと、全体的にしつこい小説ですね。

たっぷり振られた東北弁のルビが最初は読みにくくて、これは前途多難かと思いきや、第二章・三章の日本語講座が面白かったのでぐいぐい行けました。
その日本語講座もちょっとくどかったけど。

国語って何?
国家って何?
読みながら気持ちよくなってくる東北弁に頭をほぐされながら、そんなことを考えます。
震災後の復旧は思うように進まず、領土問題は先行き不安、こんな状況の今読む吉里吉里人にどんな意義があるのか。
別になくてもかまわないですが、ゴールが楽しみです。

とりあえず、
売れない小説家である主人公(たぶん)の古橋のぼやきが妙に悲哀に満ちていて切ない。
そして、吉里吉里国出入国審査官・トラキチ東郷のテレビ演説と吉里吉里国国歌には感銘を受けた。
その勢いで中巻、下巻と読破できるといいなあ。

/「吉里吉里人(上)」井上ひさし
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