快読日記

日々の読書記録

「大人にしてあげた小さなお話」岸田今日子

2009年01月29日 | 日本の小説
《1/29読了 大和書房 2000年刊 【日本の小説 掌編集】 きしだ・きょうこ》


不思議な話や、切ない話、背筋がゾクッとする話が21編。
一気に読むのが惜しくて、毎晩ちびちび舐めるように読みました。

軽い思い出話みたいに始まるのに、気がつくととんでもないところに連れて行かれる岸田ワールド。
昔話をモチーフにしたものも、単なるパロディではなく、こってりしつつ透明感があり、淫靡かつかわいらしい、岸田今日子独特の味があります。
ゾクッとくるというのは"恐怖"と"快感"の両方です。

文章も、押したらじゅっと濡れそうなかんじ。
水分過多なので読者への浸透率も高いです。

専業の作家より言葉がナマっぽいのも、わたしが岸田今日子作品が好きな理由です。
発想も「どこからこんなのが湧くんだろう?」というものばかり。
特に、「七匹の仔山羊」の本当の話や、猫と結婚した女の話など、動物が登場する作品がよかったです、濃くて。
それで必ず隠し味に「苦味」が混じっている。
だから、"大人にしてあげる"話なんですね。

女優の文章って当たりが多いとかねがね思っていましたが、それが小説だとなおさらな気がします。
岸本加世子の小説も同じ理由で好きなんです。
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