快読日記

日々の読書記録

「告白」町田康

2020年09月11日 | 日本の小説
9月11日(金)

「告白」町田康(中公文庫 2008年)を読了。

自分の中の思考が的確な言葉に結びつかず、発する言葉はいつも内面とズレているので他人には決して届かない。
みんなが自然にできていることが何故か自分には全くできず、理解もできない。
だから理解されることもない。
そんな苦痛を抱えて生きた主人公・城戸熊太郎の一代記。

モチーフとなった河内音頭「河内十人斬り」をYouTubeで聞いてみたんですが、
この城戸熊太郎を「思考が言葉として外に出せない人物」「一度も本当のことを言えたことがない人物」と設定したところに町田康のすごさがあるなあと思いました。

熊太郎の脳みそは頭蓋骨という牢に閉じ込められて出口を失っています。
そこに潜り込み、息つく間もなく言葉を与え続ける作家の作業。
想像しただけで頭がぐわんぐわんしてきます。
土石流みたいな言葉の重量とスピードに何度も押し流されそうになり、
あ、ちょっと待って!となってページを戻してじっくり読み直す、みたいなことを繰返しながら読み終わりました。
そのくらいの疾走感。しかも高濃度。

町田康は、これを書きながらよくも正気でいられたなあ、とため息が出ます。
すごい胆力というか体力というか執念というか……。むー、壮絶だ……。
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