※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。
(第9場でその場しのぎのバレーが上演されている最中、舞台裏で伯爵夫人の衣装に着替える途中だったクリスティーンが、ブケの死という事故の混乱の中オペラ座の屋根へと逃げて来る。ラウルもすぐ後に続く。背景はオペラ座の客席やシャンデリアの上にあるドーム型の屋根を模したもの。二人はちょっとした言い争いのようになる。)
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"WHY HAVE YOU BROUGHT ME HERE?"
RAOUL:(ラウル) Why have you brought me here? どうしてここに?
CHRISTINE:(クリスティーン) Don't take me back there! 私をそこに戻さないで。
RAOUL:(ラウル) We must return! 戻らねば!
CHRISTINE:(クリスティーン) He'll kill me! His eyes will find me there! 彼は私を殺すの。そこだと彼に見つかるわ。
RAOUL:(ラウル) Christine, don't say that... クリスティーン、そんなことを言わないで。
CHRISTINE:(クリスティーン) Those eyes that burn! 燃える目!
RAOUL:(ラウル) Don't even think it. 考えちゃいけない。
CHRISTINE:(クリスティーン)And if he has to kill a thousand men - 彼が多くの人をを殺すとしたら。
RAOUL:(ラウル)Forget this waking nightmare... そんな悪夢なんか忘れて。
CHRISTINE:(クリスティーン)The Phantom of the Opera will kill again オペラ座の怪人はまた殺人をするわ。
RAOUL:(ラウル)
This Phantom is a fable... Believe me... 怪人なんて作り話だ…。僕を信じて。
There is no Phantom of the Opera... オペラ座の怪人なんていない。
(ラウルはクリスティーンの両肩を抱くが、彼女はそれを逃れるようにラウルから離れる。)
CHRISTINE:(クリスティーン)My God, who is this man... 神よ、あの男は誰かしら…
RAOUL:(ラウル) My God, who is this man... 神よ、 あの男は誰なのか
CHRISTINE:(クリスティーン)...who hunts to kill".! … 捉えて殺す
RAOUL:(ラウル) ...this mask of death...? 死の仮面?
CHRISTINE:(クリスティーン)I can't escape from him... 彼から逃れられない。
RAOUL:(ラウル)Whose is this voice you hear... 耳にする声は誰のものなのか…
CHRISTINE:(クリスティーン) ...I never will! 決して逃れられない。
RAOUL:(ラウル) with every breath...! 息をするたびに…
BOTH:(二人)
And in this labyrinth, where night is blind, 闇夜の迷路
The Phantom of the Opera is here/there: inside your/my mind... オペラ座の怪人はそこここに、心の中に
RAOUL:(ラウル) There is no Phantom of the Opera... オペラ座の怪人なんていない…
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(ラウルは再びクリスティーンの両肩を抱くが、彼女はまたそれを逃れる。)
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"RAOUL, I’VE BEEN THERE"
CHRISTINE:(クリスティーン)
Raoul, I've been there - to his world of unending night... ラウル、私はそこに行ったことがあるの 終わりのない夜の世界へ
To a world where the daylight dissolves into darkness... darkness... 昼の光が暗闇に溶け込む世界へ
(クリスティーンは身を翻し、ラウルに近づき彼の両肩を掴む。)
Raoul, I've seen him! Can I ever forget that sight? ラウル、私は彼を見たの あの光景を忘れられるかしら?
(クリスティーン、ラウルの肩を引き寄せ上半身を預ける。)
Can I ever escape from that face? So distorted, deformed, あの顔から逃れられるかしら? とても醜く歪んでいたの
It was hardly a face, in that darkness... darkness... あの暗闇の中で顔というものではなかったわ
(クリスティーン、徐々にラウルから体を離し、今までの恐ろしさを忘れるかのようにゆっくりと歩きだす・・・)
※クリスティーンは怪人に連れられ、彼の隠れ家に行った時のことを思い出している。夢の中での出来事のような、地下の湖をボートで渡ったこと、怪人の部屋の異様な空間、そして何よりも怪人の仮面の下から現れた醜く恐ろしい顔を思い出すことは恐怖を掻き立てるものである。しかし同時に、その時怪人が語っていた彼の音楽への思いを理解できること、彼の不幸な生い立ちと深い悲しみに対して一瞬抱いた哀れみ、それまで彼女に歌を教えてくれていたことへの感謝、そして怪人の作る音楽への憧れともいえる感情が入り乱れて、クリスティーンの心の中にある、現実の世界と理想的芸術世界という矛盾の一端がここで言葉となって出現する。
But his voice, filled my spirit with a strange, sweet sound... でも彼の声は不思議な甘い音楽で私を満たしてくれた
In that night there was music in my mind... あの夜私の心には音楽があったわ
And through music my soul began to soar! そして音楽を通して私の魂は舞い上がったの
And I heard as I’d never heard before... それまでに聞いたことのない音楽を聴いたわ
(ラウル、言い聞かせるように・・・)
RAOUL:(ラウル)
What you heard was a dream and nothing more... 君が聞いたものは夢でそれ以上のものではない
(クリスティーン、ラウルの言葉を否定するかのように・・・)
CHRISTINE:(クリスティーン)
Yet in his eyes all the sadness of the world... でも、彼の目には世界の全ての悲しみが見えたの
Those pleading eyes, that both threaten and adore... あの訴えるような目は脅しと憧れの目でもあったわ
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RAOUL:(ラウル、なだめるように)Christine... Christine... クリスティーン…クリスティーン
PHANTOM: (怪人、姿を見せず、ラウルの声に続けて) Christine... クリスティーン…
CHRISTINE:(クリスティーン、ラウルのものではない声に驚いて) What was that? あれは何?
(辺りを見回したクリスティーンは両手で顔を覆ってうずくまる。それを見たラウルは彼女に近づき、両手を差し延べて立ち上がらせ、彼女の頭からフードを外す。そして上半身を抱く。)
※自分の心の中に矛盾を抱え、これまでは怪人と過ごした経験を通して理想的芸術世界へ心の中心をやや傾けていた彼女だったが、怪人の声を聞いた瞬間に恐ろしさが彼女を支配する現実世界に引き戻されたのである。
RAOUL:(ラウル)Christine…クリスティーン…
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"ALL I ASK OF YOU"
RAOUL:(ラウル)
No more talk of darkness, Forget these wide-eyed fears.
暗闇の話をやめて 恐ろしいことは忘れて
I'm here, nothing will harm you - my words will warm and calm you.
僕はここにいる 何も君を傷つけることはない 僕の言葉が君を温め安心させる
Let me be your freedom, let daylight dry your tears.
僕が君を自由にし 日の光が君の涙を乾かす
I'm here, with you, beside you, to guard you and to guide you...
僕はここにいる 君の傍に 君を護り一緒に歩むために
※恐ろしさに支配されていた彼女も、幼馴染みのラウルがいることで、現実世界で心穏やかに過ごしていけそうな希望を感じられるようになる。この場面でクリスティーンとラウルが将来を約束する。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Say you love me every waking moment, turn my head with talk of summertime.
目覚めている時には私を愛してると言って 夏の話で私を変えて
Say you need me with you, now and always... promise me that all you say is true - that's all I ask of you...
いつも私を必要だと言って あなたの言うことが全て本当だと約束して あなたにお願いするのはそれだけ
RAOUL:(ラウル)
Let me be your shelter, let me be your light. 君の隠れ家になろう 君の光になろう
You're safe: No-one will find you - 君は安全だ 誰も君を見つけられない
Your fears are far behind you... 君の恐れは遠い昔のことになる
CHRISTINE:(クリスティーン)
All I want is freedom, a world with no more night, 私が欲しいのは自由 夜のない世界
And you, always beside me, to hold me and to hide me... そしてあなた いつも傍にいる 私を抱き隠すために
RAOUL:(ラウル)
Then say you'll share with me one love, one lifetime... 僕と一つの愛、一つの人生を共にすると言って
Let me lead you from your solitude. 孤独から君を救い出そう
Say you need me with you here, beside you... ここ、君の傍に僕が必要だと言って
Anywhere you go, let me go too - 君がどこへ行こうとも僕も行こう
(ラウル、膝まづき両手をクリスティーンに差し延べる。※指輪はないが、これがプロポースの動作)
Christine, that's all I ask of you... クリスティーン、君に願うのはそれだけ
CHRISTINE:(クリステシーン)
Say you'll share with me one love, one lifetime... 私と一つの愛、一つの人生を共にすると言って
(クリスティーンも膝まづき、ラウルと手を握り合う。そして二人は立ち上がってお互いを見つめ合う。)
Say the word and I will follow you. そのことばを言って そうしたら私はあなたについて行く
BOTH:(二人)
Share each day with me, each night, each morning... 僕(私)と毎日、毎晩、毎朝共に過ごそう
CHRISTINE:(クリスティーン)
Say you love me... 私を愛してると言って
RAOUL:(ラウル)
You know l do... もちろん
BOTH:(二人)
Love me - that's all I ask of you... 私(僕)を愛して 願うのはそれだけ
(二人は抱き合いキスを交わす。)
Anywhere you go, let me go too... どこへ行こうとも一緒に行こう
Love me - that's all I ask of you.... 私(僕)を愛して 願うのはそれだけ
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(再び二人は抱き合う。客席からは大きな拍手。そして拍手の中で二人は再びキスを交わす。ややしばらくして、クリスティーンは自分が務めている伯爵夫人役のことを思い出す。)
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CHRISTINE:(クリスティーン)
I must go - they'll wonder where I am... wait for me, Raoul! 行かなくちゃ あの人たちが心配してるわ 待ってて、ラウル
RAOUL:(ラウル) Christine, I love you! クリスティーン、愛してる
CHRISTINE:(クリスティーン、身を翻し、ラウルに駆け寄り、彼の手を取る。)
Order your fine horses! Be with them at the door! 良い馬を見つけて ドアのところにいて
RAOUL:(ラウル) And soon you'll be beside me! で、間もなく君は僕と一緒になる
CHRISTINE:(クリスティーン) You'll guard me, and you'll guide me... あなたは私を護って一緒に行くの
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(二人は話しながら下手へと去って行く。ドーム型の屋根の上、舞台の位置としてはオーケストラピットと同じ高さに設置された場所からこの一部始終を見ていた怪人が姿を現し悲し気に語る。)
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PHANTOM:(怪人、クリスティーンに)
I gave you my music... made your song take wing... 私はお前に私の音楽を与えた … お前の歌声に翼を与えた
And now, how you've repaid me: denied me and betrayed me... なのに今、お返しがこれか 私を否定し裏切るなんて
He was bound to love you when he heard you sing... 彼がお前が歌うのを聞いたらお前を愛することははっきりしていた
Christine. Christine... クリスティーン…クリスティーン
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RAOUL/CHRISTINE:(ラウルとクリスティーン、声だけ)
Say you'll share with me one love, one lifetime... 一つの愛、一つの人生を共にすると言って
Say the word and I will follow you... そのことばを言って そうしたら私はあなたについて行
Share each day with me, each night, each morning... 毎日、毎晩、毎朝共に過ごそう
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(怪人は怒りを露わにし・・・)
PHANTOM:(怪人、クリスティーンに)
You will curse the day you did not do all that the Phantom asked of you...!
お前は私が頼んだことを実行しなかった日を呪うことだろう!
(両側から赤いカーテンが閉じられ、怪人はその奥へと姿を消す。一方、オーケストラピットよりも下の方ではオペラ「イル・ムート」の公演が終了し、カーテンコールの場面。オペラの出演者全員が客席に向かって礼をし、最後に中央奥から伯爵夫人に扮したクリスティーンが出てくる。とその時、客席の大きなシャンデリアが大音響とともに火花を散らす。役者が慌てて舞台を去り、クリスティーンが驚きの余り立ち尽くす中で舞台が暗くなり第1幕が終了する。)
※このミュージカルの25周年記念公演では上述のように火花が散るだけであるが、実際には1896年にシャンデリア落下事件が起こっており、けが人多数、そして1人の死者が出た。原作者のガストン・ルルーはこの事件をヒントに1910年に「オペラ座の怪人」を書いた(ウィキペディア)。劇場の通常公演でもプロローグの終了間際に舞台中央から客席上方に引き揚げられたシャンデリアが、この第1幕の最後に落ちるように舞台へと降りてくる。