務のよしなしごと

ハンプトン・コート宮殿の人々(完成時期未定)
「オペラ座の怪人」勝手に解説
住んでいる近辺の紹介

「オペラ座の怪人」第1幕 第2場

2021-04-26 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。

再び舞台が明るくなると、観客はクリスティーンを後ろから見ることになる。彼女は舞台の奥の幕に投影された観客に向かって深々と身を屈め拍手喝采に応えている。(※オーケストラが配置されている階の下側に白い幕と思われるものが吊るされ、実際の客席をステージ側から撮った映像がその幕に投影されていて、客席の拍手喝采が「ハンニバル」を見ている観衆として使われている。ハー・マジェスティーズではこの観衆は背景幕に絵として描かれている。)
舞台奥の幕が両側から閉じられるとバレリーナたちがクリスティーンに駆け寄り興奮して口々に賞賛のことばを掛ける。そこへマダム・ジリーが来て、杖で床を突く。

GIRY: (マダム・ジリー、クリスティーンに)
Yes, you did well. He will be pleased.       そう、あなたはよくやりました。彼も喜ぶでしょう。

(そしてバレリーナたちに)

And you! You were a disgrace! Such ronds dejambe! Such temps de cuisse ! Come, we rehearse. Now!
で、お前たち! 恥ずかしいわ! あのロン・ドゥ・ジャンブ!あのタン・ドゥ・キュイス!来なさい。今から練習します。

(バレリーナたちがバレーの練習をし始め、クリスティーンは自分の楽屋へ向かおうとしたところで声がどこからともなく聞こえてくる。クリスティーンが困惑したように辺りを見回すとメグ・ジリーが彼女に声を掛ける。)

PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Brava, brava, bravissima...       ブラボー、ブラボー、最高だ
※イタリア語の bravo は男性に対して、brava は女性に対して使う言葉で、それぞれ最上級が bravissimo, bravissima。ゆえに正確には「ブラバー、ブラバー、最高だ」にしなければならない。

MEG:(メグ)
Christine, Christine         クリスティーン、クリスティーン

PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Christine...       クリスティーン…

MEG:(メグ)
####################
Where in the world have you been hiding? Really, you were perfect!
一体どこに隠れていたの? 本当、あなたは完璧だったわ
I only wish I knew your secrets Who is this new tutor!
あなたの秘密を知りたいの (※学校で習う仮定法過去の典型ですね)先生は誰なの?
####################

(クリスティーン、少しの間辺りを見回し、そしてメグに向き直って…)

CHRISTINE: (クリスティーン)
####################
Father once spoke of an angel... I used to dream he'd appear...
お父さんはかつて天使について話してた… 私は彼が現れると夢見たわ
Now as I sing, I can sense him... And I know he's here
今、私が歌うと彼を感じることができるの…彼がここにいるって分かるの

(そして舞台上に置かれた化粧台の方へ急ぎ、メグは彼女の後を追う。クリスティーンは化粧台のところで衣装係から舞台衣装を外してもらい白いガウンを着ながら話=歌を続ける。※ハー・マジェスティーズではクリスティーンが使う楽屋が設置されていて化粧台はその部屋にある。)

Here in this room he calls me softly... Somewhere inside... hiding...
この部屋で彼は優しく私を呼ぶの… この中のどこかに隠れていて…
Somehow, I know he's always with me... He - the unseen genius...
ふと、彼がいつも私と一緒にいると気づくの… 彼は見えない天才よ
####################

※この辺りのバレリーナ(映像では少ししか見えないが)、クリスティーン、メグ、衣装係それぞれの所作や表情、演技のタイミングは、当然ではあろうが、さすがプロと思わせるものがある。

MEG:(メグ、不安げに)
####################
I watched your face from the shadows Distant through all the applause
陰であなたの顔を見たわ 拍手喝采の遠くからね
I hear your voice in the darkness Yet, the words aren’t yours
闇の中であなたの声を聞いたわ でも、言葉はあなたのじゃなかった
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####################
CHRISTINE:(クリスティーン、高揚して)
Angel of Music! Guide and guardian! Grant to me your glory!
音楽の天使、指導者そして保護者 あなたの栄光を私にください!

MEG :(メグ、自分自身に) Who is this angel! This... 天使って誰なの?この…

BOTH:(二重唱)
Angel of Music! Hide no longer! Secret and strange angel...
音楽の天使! もう隠れていないで! 未知で不思議な天使…

CHRISTINE:(クリスティーン)
He's with me, even now...       彼は今でも私と一緒にいるわ

MEG:(メグ)
Your hands are cold...      あなたの手冷たいわ

CHRISTINE:(クリスティーン)
All around me.       私の周りに

MEG:(メグ)
Your face, Christine, it's white...      クリスティーン、あなたの顔、白いわ

CHRISTINE:(クリスティーン)
It frightens me...      怖い

MEG:(メグ)
Don't be frightened...      怖がらないで
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(ここで、マダム・ジリーが練習を抜け出したメグを見つけて、杖で床を突く。メグたちは驚いてマダム・ジリーを見る。)

GIRY:(マダム・ジリー)
Meg Giry. Are you a dancer? Then come and practise.
メグ・ジリー。あなたはダンサーでしょ。だったら来て練習しなさい。
※自分の子に姓名をすべて使って呼びかけるのは、これから説教をする、これから叱るという前触れ。

(メグが去った後、マダム・ジリーはクリスティーンに手紙を渡す。)

GIRY:(マダム・ジリー)
My dear, I was asked to give you this.       これをあなたに渡すように言われたわ。

(クリスティーンは手紙を受け取り、読み始める。)

CHRISTINE:(クリスティーン)
'A red scarf, the attic... Little Lotte. ... '       「赤いスカーフ、屋根裏部屋… 小さなロッテ…」

※手紙に書いてあったのは、クリスティーンが幼少の頃に体験したことに関連するものである。ロッテというのはドイツ語系の女児の名前シャーロットを短くした名=ニックネームである。クリスティーンの父が幼い彼女とラウルに様々な物語を聞かせていたが、その中にロッテの物語というものがあって、それに因んでラウルは彼女を Little Lotte と呼んでいた。


「オペラ座の怪人」第1幕 第1場 -4

2021-04-21 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。
また、英語学習者のために、英語の構造や語感をやや残した和訳にしました。日本語にない、日本語らしくない言い回しが多く出てくることになります。プロの翻訳家の和訳を楽しみたい方は是非ロンドンでの25周年記念公演のDVDを手に入れてください。

(メグ・ジリーからカルロッタが使っていたステージ用ストールを渡されたクリスティーンはレイエのピアノ伴奏に合わせて、「ハンニバル」第3幕でエリサが歌うアリアをおずおずと歌い出す。)

####################"
"THINK OF ME"

CHRISTINE:(クリスティーン)
Think of me, think of me fondly, When we've said goodbye.       さよならを言った後は私のことを深く思ってね
(ここでクリスティーンは逃げ出したい素振りを見せる。気合を入れるため、マダム・ジリーが杖で床を突く。クリスティーンは気を取り直して続ける。)
Remember me every so often Promise me you'll try.       いつも私を思い出し、そうするって約束してね
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FIRMIN:(フィルマン、歌の途中でアンドレに向かって)
André, this is doing nothing for my nerves.       アンドレ、何も心に響かない。

ANDRÉ:(アンドレ)
Don't fret, Firmin.       いらいらするな、フィルマン。
--------------------------------------------------
####################
CHRISTINE:(歌の続き)
On that day, that not so distant day When you are far away and free       そう遠くないあの日、あなたは去って行った
If you ever find a moment Spare a thought for me       合間を見て、私のことも考えてね
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REYER:(レイエ)
Madame! Monsieur!       皆さん、(彼女の歌をお聞きください)。
--------------------------------------------------

(舞台がやや暗くなり、その間クリスティーンは、衣装係から衣装を着せられ、マダム・ジリーから身振りの指導、レイエからスコアを見せられ歌の指導を受ける様子が演じられる。そして舞台が再び明るくなり、マダム・ジリーとレイエが舞台端へ去ると、彼女が「ハンニバル」の初公演で主役として第3幕でのアリアを歌う場面に変わっている。)

####################
CHRISTINE:(歌の続き)
And though it’s clear Though it was always clear       決してあり得ないとはっきり分かっているし
That this was never meant to be If you happen to remember       いつも分かっていたことだけど 思い出すことがあったら
Stop and think of me       立ち止まって私のことを考えてね
Think of August when the world was green       緑で一杯だった8月のことを思い出して
Don’t think about the way things might have been       こうだったかもしれないとは考えないでね
Think of me, think of me waking Silent and resigned       目覚めていても言葉に出さずおとなしくしている私のことを考えてね
Imagine me trying too hard To put you from my mind       あなたを心から遠ざけようと努力している私を想像してね
Think of me Please say you’ll think of me       私を思っていると、私のことを思っていると言ってね
Whatever else you choose to do There will never be a day       あなたが何をしようと
When I won’t think of you       私があなたを思わない日はないでしょう

(「ハンニバル」の初演でクリスティーンが舞台で歌っているのをフィルマン夫妻、アンドレ夫妻と共にボックス席から見ていたシャニュイ子爵=ラウルは彼女が昔別れた幼馴染みであることに気づく。)

####################
RAOUL:(ラウル)
Can it be! Can it be Christine! Brava! Brava!       あれはクリスティーンだ! すばらしい!

※フィルマン夫人はラウルと同じく感激して拍手しようとするが、気難しいフィルマンにたしなめられる。台詞はないが二人のこのやりとりや表情が面白い。また、アンドレの二人を見る呆れたような表情も面白い。台詞がなくてもさすがにプロの役者だと感心させられる。アンドレ夫人は動画の中では見えないが、後の場面で台詞なしで出演している。

Long ago, it seems so long ago How young and innocent we were       今ではずっと昔のようだが、二人は若くて無邪気だった
She may not remember me But I remember her       彼女は覚えてないかもしれないが、僕は彼女を覚えている

####################
CHRISTINE:(クリスティーン)
Flowers fade The fruits of summer fade       花は色あせ 夏の果実も朽ちる
They have their seasons, so do we       季節があるように 私たちにも輝く時があるわ
But please promise me       でも約束して
That sometimes you will think Of me       (think と of の間にカデンツァを入れて)時々私のことを考えるって

※この歌を歌う際にクリスティーンはラウルのことを思っているかどうかは分からないが、ミュージカルの作者がガストン・ルルーの原作を基に彼女とラウルの間柄にこの歌をオーバーラップさせることにより二人が再開後に親密さを増していく伏線として設定していると考えられる。劇中劇のエリサとハンニバル、そしてミュージカル自体の中のクリスティーンとラウル、二組のカップルが、お互いに離れている時期があって再び会うという複雑な設定が見事に絡み合った場面が最初から設定されており、このミュージカルの難しさと面白さが同時に現れている部分でもある。
#################### ("THINK OF ME" の終了)

大きな拍手とともにクリスティーンが舞台上で床に伏せると舞台が暗くなり「ハンニバル」初演が成功したことが暗示される。
以上で第1幕第1場の終了。


※"THINK OF ME" の歌詞は1986年の初演でサラ・ブライトマンが歌っていたものとは若干違っている。因みにオリジナルの歌詞は以下のとおり(途中の他の出演者の台詞等は削除しクリステーンとラウルが歌う部分だけを抜粋)。
CHRISTINE
Think of me, think of me fondly When we've said goodbye.
Remember me once in a while Please promise me you'll try.
When you find that, once again, you long to take your heart back and be free
If you ever find a moment Spare a thought for me

We never said Our love was evergreen
Or as unchanging as the sea But If you can still remember
Stop and think of me Think of all the thing we shared and seen
Don’t think about the things which might have been

Think of me, think of me waking Silent and resigned
Imagine me trying too hard To put you from my mind
Recall those days Look back on all those times
Think of all the things we’ll never do There will never be a day
When I won’t think of you

RAOUL
Can it be! Can it be Christine!
Bravo!
What a change! You’re really not a bit the gawkish girl that once you were
She may not remember me But I remember her

CHRISTINE
We never said Our love was evergreen
Or as unchanging as the sea But please promise me
That sometimes you will think (Cadenza) Of me


「オペラ座の怪人」第1幕 第1場 -3

2021-04-21 | 趣味

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また、英語学習者のために、英語の構造や語感をやや残した和訳にしました。日本語にない、日本語らしくない言い回しが多く出てくることになります。プロの翻訳家の和訳を楽しみたい方は是非ロンドンでの25周年記念公演のDVDを手に入れてください。

(ルフェーブルから背景が描かれた幕が落下したことについて問われたブケは・・・)

BUQUET(ブケ)
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Please, monsieur, don't look at me: As God's my witness I was not at my post. 私を見ないでください。神様がご覧になっていましたが、私はそこにいませんでした。
Please, monsieur, there's no one there: and if there is, well then, it must be a ghost… そこには誰もいませんでした。もしいたなら、それは幽霊にちがいないです。
####################

MEG:(メグ・ジリー、上を見上げて)
He's there, the Phantom of the Opera... オペラ座の怪人がそこにいるんだわ。(※phantom とは幻想、蜃気楼、得体の知れない人物、幽霊という意味。実際に後に Opera Ghost という言われ方もしているが、一般的な邦訳「怪人」を使うことにする。)

FILMIN:(フィルマン)
Good heavens! I have never known such insolence. とんでもない。今までこんな無礼なことはなかった。

ANDRÉ:(アンドレ)
Signora, please. These things do happen. 落ち着いてください。こんなことはよくあることです。

CARLOTTA:(カルロッタ)
These things do happen? You have been here five minutes! What do you know? Si! These things do happen, all the time.
よくあることですって? あなた方はここに5分しかいないのよ。何を知っているの? そう、こんなことはいつも起こっているの。
For the past three years, these things do happen. And did you stop them happening? No! And you …
この3年間こういうことが起きているわ。(そしてルフェーブルに向かって)で、あんたはそれを起こらないようにしたの?
You’re as bad as him. These things do happen.
(次にアンドレたちに)あんた方だって彼と同じく役立たずよ。実際こんなことが起こるんだもの。
Well, until you stop these things happening, this thing does not happen!
で、あんた方がこんなことが起きないようにするまで、このこと(自分が出演すること)はなしにするわ。

(カルロッタ、肩から前方に巻いていたステージ用ストールを後ろに投げ捨てるように外す。)

CARLOTTA:(カルロッタ、ピアンジにイタリア語で)
Ubaldo! Andiamo! ウバルド、行きましょう!

PIANGI:(ピアンジ、小走りでカルロッタの後を追うが、途中でわざわざ引き返し、アンドレとフィルマンに向かって言う)
Amateurs! ド素人めが!(再びカルロッタを追う)

LEFÈVRE:(ルフェーブル)
I don't think there's much more I can do to assist you, gentlemen. Good luck. If you need me, I shall be in Frankfurt.
お二方、私にはこれ以上お助けできることがあるとは思えません。幸運を祈ります。何かありましたら私はフランクフルトにおります。

ANDRÉ:(アンドレ)
But Monsieur … でも、ルフェーブルさん…

LEFÈVRE:(ルフェーブル、周囲の人々に)
Move, please. Out of the way. どうか、道を開けて。(と言ってその場を去る)

ANDRE:(アンドレ、気を取り直すように)
La Carlotta will be back. カルロッタは戻って来るさ。

GIRY:(マダム・ジリー)
You think so, Messieurs? I have a message, sir, from the Opera Ghost.
そうでしょうか?私はオペラ座の幽霊(怪人のこと)から手紙を預かっています。

FIRMIN:(フィルマン)
Oh, God in heaven, you're all obsessed! いやはや、皆憑りつかれている。

GIRY:(マダム・ジリー)
He merely welcomes you to his opera house and commands you to continue to leave Box Five empty for his use and reminds you that his salary is due.
彼(怪人)は単にあなた方を彼のオペラ・ハウスに歓迎しているんです。そして彼が使えるように5番のボックス席をずっと空けておくようにと要求し、彼に給料を払うことは義務だと言っています。

FIRMIN:(フィルマン)
His salary? 彼の給料だって?

GIRY:(マダム・ジリー)
Monsieur Lefèvre paid him twenty thousand francs a month. Perhaps you could afford more, with the Vicomte De Chagny as your patron.
ルフェーブルさんは彼に毎月2万フラン払っていました。多分、パトロン(金銭的支援者)がシャニュイ子爵なら、お二人はもっと払えるでしょう。

ANDRÉ:(アンドレ、マダム・ジリーに)
Madame, I had hoped to have made that announcement myself.
マダム・ジリー、そういった発表(シャニュイ子爵が支援者であること)は私自身がしたかったです。

GIRY:(マダム・ジリー、フィルマンに)
Will the Vicomte be at the performances tonight, monsieurs? 子爵は今夜公演に来られるのですか。

FIRMIN:(フィルマン)
In our box. 我々のボックスにね。

ANDRÉ:(アンドレ、マダム・ジリーの腕を取ろうとする動作と共に)
Madame, who is the understudy for the role? マダム・ジリー、(カルロッタの)代役は誰ですか。

(マダム・ジリー、冷たくアンドレの手をかわす)

REYTR:(レイエ)
There is no understudy, monsieur - the production is new. 代役なんていませんよ。新作ですから。

MEG:(メグ・ジリー、クリスティーンの手を引きながら)
Christine Daaé could sing it, sir. クリスティーン・ダーエが歌えます。

FIRMIN:(フィルマン)
A ballet girl? バレリーナの?

MEG:(メグ・ジリー、フィルマンに)
Well, she's been taking lessons from a great teacher. ええ、偉大な先生のレッスンを受けているんです。

ANDRÉ:(アンドレ)
Oh, from whom? ん、誰の?

CHRISTINE:(クリスティーン、不安げに)
I don't know, sir. 分かりません。

※ミュージカルではクリスティーンが歌のレッスンを受けてきた経緯が全くと言っていいほど省かれている。ガストン・ルルーの原作では、クリスティーンはかなり長い期間、怪人が誰であるのか分からないまま、ほぼ毎晩、夢遊病者のようになって怪人に歌のレッスンを受けていた。怪人はクリスティーンの才能を見出し、彼女をプリマドンナに、そして自分のものにすべく全力を傾けて指導しており、オペラ座にさまざまな災いを起こすことによってカルロッタを追いだし、彼女が主役になるための機会を整えようとしているのである。

FIRMIN:(フィルマン)
Oh, not you as well! 君じゃダメだ。(そしてアンドレに) Can you believe it? 信じられるか?
A full house - and we have to cancel! 全席キャンセルだ!

ANDRÉ:(アンドレ、手招きして)
Daaé? That’s a curious name. Any relation to the violinist? ダーエ?珍しい名前だ。バイオリン奏者と何か関係は。

CHRISTINE:(クリスティーン)
My father, sir. 父です。

GIRY:(マダム・ジリー)
Let her sing for you, Monsieur. She has been well taught. 歌わせてやってください。よく教えを受けています。

ANDRÉ:(アンドレ、 間をおいてから)
Very well. よろしい。

REYER:(レイエ)
Oh, from the beginning of the aria then, mam'selle. Gentlemen, please. (クリステーンに)では、アリアの最初から。(アンドレ達に)皆さんお聞きください。

(メグ・ジリー、カルロッタが使っていたケープをクリスティーンに手渡す。ピアノからメロディーが流れ、クリスティーンはおずおずと歌い出す。)


「オペラ座の怪人」第1幕 第1場 -2

2021-04-16 | 趣味

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(ひざまずいたハンニバルが苦労しながらも腰から短剣を抜き、右手に持った短剣を高く上げてリハーサルも一区切りとなる。音楽監督レイエが満足げに皆に声をかける。ほぼ同時に支配人のルフェーブルが新しい経営者のアンドレとフィルマンを伴って舞台に現れる。)

REYER:(レイエ)
Hey! Hey! We’re doing that all again! Thank you very much. You were very good. This song is marvelous. Thank you.
そう、そう。もう一度やろう。とても良かった。この歌はすばらしい。ありがとう。

LEFÈVRE:(ルフェーブルがアンドレとフィルマンに)
This way gentlemen, this way. Rehearsals, as you see, are under way, for a new production of Chalumeau's 'Hannibal'.
こちらです。ご覧のとおり新作、シャルモー作「ハンニバル」のリハーサル中です。

LEFÈVRE:(ルフェーブルがリハーサルをしている出演者全員に)
Ladies and gentlemen, Ladies and gentlemen, please … Ladies and gent… Madame Giry.
皆さん、どうか皆さん。… (多くの出演者はルフェーブルに気づかず騒がしいまま。)マダム・ジリー! (ルフェーブルはマダム・ジリーに声をかける。マダム・ジリーが杖で舞台の床を突くと皆は口を閉じる。
※Madame は英語の Mrs. に相当する仏語で、成人した女性に使われる。必ずしも既婚者に使われるとは限らない。)

LEFÈVRE:(ルフェーブル、発表する)
Thank you. May I have your attention, please? As you know, for some weeks, there have been rumours about my imminent retirement.
(マダム・ジリーに)ありがとう。(そして皆に)どうか聞いてください。知っての通り、この数週間私が近々引退するという噂が流れていました。
I can now tell you these were all true. And it is now my pleasure to introduce you to the two gentlemen who now own the Opera Populaire. で、その噂はすべて本当です。そして、皆さんに新しくオペラ座を経営する2人の方々をご紹介することを嬉しく思っています。
Monsieur Richard Firmin and Monsieur Giles André.
リシャール・フィルマン氏 と ジル・アンドレ氏です。 (※Monsieur は英語の Mr. に相当する仏語)

PIANGI:(ピアンジがルフェーブルに何か忘れていないかと言わんばかりに)
Oh, no, please. (と言ってカルロッタを指さす)

LEFÈVRE:(ルフェーブル、ピアンジに促されるように)
Gentlemen, Signora Carlotta Giudicelli, our leading soprano for 19 seasons now.
お二方、カルロッタ・ジュディッチェリさんです。19シーズン私たちの主役ソプラノ(プリマドンナ)をやっています。 (※Signora は仏語の Madame に近い伊語。必ずしも既婚者に使われるとは限らない。)

ANDRÉ:(アンドレ、さっそくカルロッタにおべっかを使う)
Of course, of course. I have experienced all your greatest roles, Signora.
もちろんです。あなたの演じる役は全て拝見しております。

LEFÈVRE:(ルフェーブルはピアンジを紹介する)
And Signor Ubaldo Piangi       そして、ウバルド・ピアンジ氏です。 (※Signor は 英語の Mr. に相当する伊語)

FIRMIN:(フィルマン) An honour, Signor.       光栄です。

ANDRÉ:(アンドレ、カルロッタにおべっかを続ける)
If I remember rightly, Elissa has a rather fine aria in Act Three of 'Hannibal'.
記憶が正しければ、エリサは「ハンニバル」の第3幕でもっと素晴らしいアリアを歌ってますね。
I wonder, Signora, if, as a personal favour, you would oblige us with a private rendition?
個人的なお願いなのですが、もしよろしければ私達に歌っていただければ嬉しいです。
Unless, of course, M. Reyer objects...
もちろんレイエ氏が反対しなければですが。

CARLOTTA:(カルロッタ)
No, my manager commands... M. Reyer?
いいえ(反対するはずありません)。支配人の命令ですもの。レイエさん?

REYER:(レイエ) My diva commands. Will two bars be sufficient introduction?
歌姫の命令ですから。はじめの2小節で十分でしょうね。

FIRMIN:(フィルマン)
Two bars will be quite sufficient.       2小節なら十分だ。

(カルロッタ、ステージ用ストールを両手に持ってピアノの傍に歩み寄る。)

REYER: (レイエ) Signora?       では…

####################
CARLOTTA:(カルロッタが歌い始める。実際には2小節以上になる。)
"THINK OF ME"
Think of me, think of me fondly, When we've said goodbye.         さよならを言った後は 私のことを深く思ってね
Remember me every so often, Promise me you'll try.           いつも私を思い出し、そうするって約束してね
On that day, that not so distant day When you are far away and free         そう遠くないあの日、あなたは去って行った

(カルロッタ、アンドレに歩み寄りストールの片方をアンドレの肩に掛けるとアンドレはニヤける。)

If you ever find a moment Spare a thought for me         合間を見て、私のことも考えてね

(カルロッタは次にルフェーブルの方へ向かう。ルフェーブルはアンドレから外れたストールの片方をカルロッタに掛けてやる。)

Think of me, think of me warmly …       暖かい心で私を思って…
(ここで背景が描かれた幕が突然落ちる。)

※エリサとハンニバルが遠く離れている時にエリサが歌うアリア。このアリアの歌詞はシャニュイ子爵(ラウル)とクリスティーンの関係も暗示している。クリスティーンが後でこれを歌うことになるが、ラウルとは昔別れたままで、今でも彼のことを思っていることが後々見えてくる。
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MEG/BALLET GIRLS/CHORUS: (メグとバレリーナ)
The phantom of the Opera. He's there, the Phantom of the Opera...
オペラ座の怪人だわ。怪人がそこにいる。

FILMIN: (フィルマン、メグに)
Will you show a little courtesy!         少し静かに!

ANDRÉ: (アンドレ、メグに)
Mademoiselle, please!       どうか静かに!(※Mademoiselle は英語の Miss に相当する語で仏語。若い女性に使う。)

LEFÈVRE:(ルフェーブル、カルロッタに)
Signora! Are you all right!         大丈夫ですか。

LEFÈVRE:(ルフェーブル、大道具主任のブケを呼ぶ)
Buquet? Where is Buquet! Get that man down here. (To ANDRE and FIRMIN) Chief of the flies. He's responsible for this.
ブケ? ブケはどこだ? そいつをここに来させろ。(アンドレとフィルマンに)大道具主任で、この責任があります。

LEFÈVRE:(ルフェーブル、ブケに)
Buquet? For God's sake, man, what's going on up there?
ブケか?一体上で何が起きているんだ?


「オペラ座の怪人」第1幕 第1場 -1

2021-04-15 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。
また、英語学習者のために、英語の構造や語感をやや残した和訳にしました。日本語にない、日本語らしくない言い回しが多く出てくることになります。プロの翻訳家の和訳を楽しみたい方は是非ロンドンでの25周年記念公演のDVDを手に入れてください。

(前奏曲が終了すると同時にオペラ「ハンニバル」のリハーサルの場面。プリマドンナのカルロッタがエリサ役で登場し、生首をトロフィーに見立ててカデンツァを歌い始める。)
※リハーサルの内容は、ウバルド・ピアンジ演じるハンニバルと彼の軍隊がローマからカルタゴへ帰還する場面である。彼らは留守中にカルタゴに圧政を敷いていたローマを駆逐しようと意気込んで帰って来る。ハンニバルの恋人エリサや周囲の人々は彼らを歓迎しようとしていて、ハンニバルらが登場して歓迎の宴が始まる。
※ハンニバルは紀元前800年〜150年頃に地中海沿岸で栄えた国カルタゴの将軍で実在の人物(紀元前247年〜183年頃)。第2次ポエニ戦争を始めた人物とされているが、残念ながらローマに破れカルタゴに帰還した。一方エリサはカルタゴを建国した伝説上の女王ディードーの幼名とされる(ウィキペディア)。二人は時代を共に生きてはいないが、ニュージカルではハンニバルとエリサは恋人という設定(両者を演じているカルロッタとウバルドも恋人)。
※アンドリュー・ロイド・ウェバーはヴェルディーの歌劇「アイーダ」に似せてこの架空のオペラシーンを作ったらしい。
このリハーサル中に、ちょっとした事故が起き、カルロッタが逃げ出しクリスティーンに代役のチャンスが巡って来るが、ガストン・ルルーの原作では、クリスティーンが代役としてデビューするのは、実在のオペラ、グノー作「ファウスト」である。

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CARLOTTA (ELISSA): (エリサ役のカルロッタのカデンツァ)
This trophy from our saviours, from our saviours,       このトロフィー、救済者から、私たちの救済者(ハンニバル)からのもの
From the enslaving force of Rome!       ローマの圧政から救うもの

(エリサの周囲に奴隷の踊り子や人々が集まり踊りや歌が始まる。奴隷に扮したバレリーノがコーラスの間に舞台を躍動的に踊り回る。)

GIRLS' CHORUS:(女性コーラス)
With feasting and dancing and song, tonight in celebration,       ごちそう、踊りや歌で今夜はお祝い
We greet the victorious throng, returned to bring salvation!       救いをもたらすため帰還した無敗の軍に挨拶をしよう

MEN’S CHORUS:(男性コーラス)
The trumpets of Carthage resound!        カルタゴのトランペットが鳴り渡る
Hear, Romans, now and tremble!           ローマ人よ、今こそ聞いて震え上がれ
Hark to our steps on the ground!          地に響く我らの足音を聞け

ALL: (全員でコーラス)
Hear the drums. Hannibal comes!          ドラムの音を聞け ハンニバルがやって来る

(ここでハンニバルが登場。他の出演者と少々タイミングが合わないが、構わず演じ続ける。)

PIANGI (HANNIBAL): (ハンニバル役のピアンジの独唱)
Sad to return to find the land we love              恋しい土地に帰ってみれば悲しいことに
Threatened once more by Roma's far-reaching grasp.       遠いローマに再び脅されている
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REYER: (音楽監督のレイエがピアンジの発音を注意するために中断させる。)
No, no, no, no! Signor... if you please: 'Roma'. We say 'Rome', not 'Roma'.
違う、違う、違う! 「ローマ」じゃない。我々は「ローマ」じゃなくて「ローム」と言うんだ。

PIANGI: (ピアンジ)
Rome. Rome is very hard for me. It’s very, very hard... I’m from Italy
「ローム」。「ローム」ってとても(発音が)難しい。とても… 出身がイタリアだから…

REYER: (レイエ)
Well, once again, then, if you please, Signor: Just get it right, please. ‘Sad to return.../, signor...
では、もう一度お願いする。ちゃんとやってくれればいいんだ。「帰ってみれば悲しいことに…」から…

(ハンニバル、気を取り直して再び歌い始める。)

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PIANGI (HANNIBAL):(ハンニバル役のピアンジ)
Sad to return to find the land we love           恋しい土地に帰ってみれば悲しいことに
Threatened once more by Rome's far-reaching grasp         遠いローマに再び脅されている
Tomorrow we shall break the chains of Rome               明日はローマの鎖を断ち切るぞ
Tonight, rejoice, your army has come home.                 喜べ、今夜は我が軍が帰ったのだ
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(声が本調子でないハンニバルとエリサがステージ脇に去ると、舞台中央で再びバレリーノと踊り子たちの踊りが始まる。クリスティーンとメグ・ジリーが踊り子役で登場するが、まだそれとは分からないうちに暫く踊りが続く。)

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CHORUS:(コーラス)
Bid welcome to Hannibal’s guests, the elephants of Carthage!           ハンニバルのゲスト、カルタゴの象たちを歓迎しよう
As guides on our conquering quests Dido sends Hannibal’s friends!     遠征のガイドとしてディードーがハンニバルに送った像たちだ

(ハンニバルとエリサが手を携えて舞台中央に現れる。奴隷役のバレリーノから臣従礼を受けたエリサが再び歌いだす。その最中にクリスティーンとメグ・ジリーがエリサの前に出てひれ伏す。)

CARLOTTA (ELISSA):(エリサ役のカルロッタ)
Once more to my welcoming arms my love returns in splendour         待ち焦がれた私の腕へ栄光を浴びて再び戻って来る

PIANGI:(ハンニバル役のピアンジ)
Once more to the sweetest of charms my heart and soul surrender         最も魅力ある人に心も魂も再び屈する

CHORUS:(コーラス)
The trumpeting elephants sound! Hear, Romans now and tremble!         像の雄たけびだ、ローマ人よ、今こそ聞いて震え上がれ
Hark to their step on the ground Hear the drums!           地に響く彼らの足音を聞け ドラムの音を聞け
Hannibal comes!           ハンニバルがやって来る
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(エリサを含め皆がハンニバルに向かって跪き、またはひれ伏す。ハンニバルは片膝をつき苦労して短剣を何とか抜き、リハーサルの一区切りとなる。音楽監督レイエが満足げに皆に声をかける。)