※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。
再び舞台が明るくなると、観客はクリスティーンを後ろから見ることになる。彼女は舞台の奥の幕に投影された観客に向かって深々と身を屈め拍手喝采に応えている。(※オーケストラが配置されている階の下側に白い幕と思われるものが吊るされ、実際の客席をステージ側から撮った映像がその幕に投影されていて、客席の拍手喝采が「ハンニバル」を見ている観衆として使われている。ハー・マジェスティーズではこの観衆は背景幕に絵として描かれている。)
舞台奥の幕が両側から閉じられるとバレリーナたちがクリスティーンに駆け寄り興奮して口々に賞賛のことばを掛ける。そこへマダム・ジリーが来て、杖で床を突く。
GIRY: (マダム・ジリー、クリスティーンに)
Yes, you did well. He will be pleased. そう、あなたはよくやりました。彼も喜ぶでしょう。
(そしてバレリーナたちに)
And you! You were a disgrace! Such ronds dejambe! Such temps de cuisse ! Come, we rehearse. Now!
で、お前たち! 恥ずかしいわ! あのロン・ドゥ・ジャンブ!あのタン・ドゥ・キュイス!来なさい。今から練習します。
(バレリーナたちがバレーの練習をし始め、クリスティーンは自分の楽屋へ向かおうとしたところで声がどこからともなく聞こえてくる。クリスティーンが困惑したように辺りを見回すとメグ・ジリーが彼女に声を掛ける。)
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Brava, brava, bravissima... ブラボー、ブラボー、最高だ
※イタリア語の bravo は男性に対して、brava は女性に対して使う言葉で、それぞれ最上級が bravissimo, bravissima。ゆえに正確には「ブラバー、ブラバー、最高だ」にしなければならない。
MEG:(メグ)
Christine, Christine クリスティーン、クリスティーン
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Christine... クリスティーン…
MEG:(メグ)
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Where in the world have you been hiding? Really, you were perfect!
一体どこに隠れていたの? 本当、あなたは完璧だったわ
I only wish I knew your secrets Who is this new tutor!
あなたの秘密を知りたいの (※学校で習う仮定法過去の典型ですね)先生は誰なの?
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(クリスティーン、少しの間辺りを見回し、そしてメグに向き直って…)
CHRISTINE: (クリスティーン)
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Father once spoke of an angel... I used to dream he'd appear...
お父さんはかつて天使について話してた… 私は彼が現れると夢見たわ
Now as I sing, I can sense him... And I know he's here
今、私が歌うと彼を感じることができるの…彼がここにいるって分かるの
(そして舞台上に置かれた化粧台の方へ急ぎ、メグは彼女の後を追う。クリスティーンは化粧台のところで衣装係から舞台衣装を外してもらい白いガウンを着ながら話=歌を続ける。※ハー・マジェスティーズではクリスティーンが使う楽屋が設置されていて化粧台はその部屋にある。)
Here in this room he calls me softly... Somewhere inside... hiding...
この部屋で彼は優しく私を呼ぶの… この中のどこかに隠れていて…
Somehow, I know he's always with me... He - the unseen genius...
ふと、彼がいつも私と一緒にいると気づくの… 彼は見えない天才よ
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※この辺りのバレリーナ(映像では少ししか見えないが)、クリスティーン、メグ、衣装係それぞれの所作や表情、演技のタイミングは、当然ではあろうが、さすがプロと思わせるものがある。
MEG:(メグ、不安げに)
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I watched your face from the shadows Distant through all the applause
陰であなたの顔を見たわ 拍手喝采の遠くからね
I hear your voice in the darkness Yet, the words aren’t yours
闇の中であなたの声を聞いたわ でも、言葉はあなたのじゃなかった
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CHRISTINE:(クリスティーン、高揚して)
Angel of Music! Guide and guardian! Grant to me your glory!
音楽の天使、指導者そして保護者 あなたの栄光を私にください!
MEG :(メグ、自分自身に) Who is this angel! This... 天使って誰なの?この…
BOTH:(二重唱)
Angel of Music! Hide no longer! Secret and strange angel...
音楽の天使! もう隠れていないで! 未知で不思議な天使…
CHRISTINE:(クリスティーン)
He's with me, even now... 彼は今でも私と一緒にいるわ
MEG:(メグ)
Your hands are cold... あなたの手冷たいわ
CHRISTINE:(クリスティーン)
All around me. 私の周りに
MEG:(メグ)
Your face, Christine, it's white... クリスティーン、あなたの顔、白いわ
CHRISTINE:(クリスティーン)
It frightens me... 怖い
MEG:(メグ)
Don't be frightened... 怖がらないで
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(ここで、マダム・ジリーが練習を抜け出したメグを見つけて、杖で床を突く。メグたちは驚いてマダム・ジリーを見る。)
GIRY:(マダム・ジリー)
Meg Giry. Are you a dancer? Then come and practise.
メグ・ジリー。あなたはダンサーでしょ。だったら来て練習しなさい。
※自分の子に姓名をすべて使って呼びかけるのは、これから説教をする、これから叱るという前触れ。
(メグが去った後、マダム・ジリーはクリスティーンに手紙を渡す。)
GIRY:(マダム・ジリー)
My dear, I was asked to give you this. これをあなたに渡すように言われたわ。
(クリスティーンは手紙を受け取り、読み始める。)
CHRISTINE:(クリスティーン)
'A red scarf, the attic... Little Lotte. ... ' 「赤いスカーフ、屋根裏部屋… 小さなロッテ…」
※手紙に書いてあったのは、クリスティーンが幼少の頃に体験したことに関連するものである。ロッテというのはドイツ語系の女児の名前シャーロットを短くした名=ニックネームである。クリスティーンの父が幼い彼女とラウルに様々な物語を聞かせていたが、その中にロッテの物語というものがあって、それに因んでラウルは彼女を Little Lotte と呼んでいた。