務のよしなしごと

ハンプトン・コート宮殿の人々(完成時期未定)
「オペラ座の怪人」勝手に解説
住んでいる近辺の紹介

「オペラ座の怪人」第2幕 第7場 -1

2021-10-01 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。

(「ドン・ファンの勝利」の最終場面。上手側階段の下に大きなテーブルとベンチが設けられ、テーブルにはドン・ファンの財力を示すような豪華な食事の用意。オーケストラが演奏する曲と共に舞台奥からドン・ファンの友人パサリーノに扮した役者に手を取られた端役のカルロッタをはじめ悪党や騒がしい小娘たちに扮した大勢が登場し、歌い出す。)

####################
“DON JUAN TRIUMPHANT”

CHORUS:(コーラス)
Here the sire may serve the dam, here the master takes his meat!       ここでご主人は女をもてなし、ここでご主人は肉を食らう
Here the sacrificial lamb utters one despairing bleat!                            ここで生け贄の子羊は絶望的な声をあげる

CARLOTTA AND CHORUS:(カルロッタとコーラス)
Poor young maiden! For the thrill on your tongue of stolen sweets
かわいそうな乙女!盗んだお菓子を舌で味わうスリルと引き換えに
You will have to pay the bill - tangled in the winding sheets! 
シーツに絡められてつけを払わねばならない!
Serve the meal and serve the maid!
食事を出し、乙女を出すのだ!
Serve the master so that, when tables, plans and maids are laid,
食卓と企てと乙女を並べてご主人に奉仕するのだ
Don Juan triumphs once again! 
ドン・ファンがまた勝利するのだ!

(ドン・ファンに扮したピアンジがジプシーの踊り子に扮したメグと共に舞台奥から現れる。踊り子はドン・ファンから何かを渡され彼の頬にキスをする。するとドン・ファンは更に彼女に何かを投げ渡す。メグはそれを両手で上手にキャッチして彼から離れる。そしてドン・ファンは友人のパサリーノに語り掛ける。)
※文字による台本ではお金や財布を渡すとされているが、遠目ではそうとは分からない。何かの報酬として渡したことが推測できればいいだろう。

DON JUAN:(ドン・ファン=ピアンジ)
Passarino, faithful friend, once again recite the plan.       パサリーノ、忠実な友、もう一度計画を確認しよう。

PASSARINO:(パサリーノ)
Your young guest believes I'm you - I, the master; you, the man. 
若いお客は私があなただと信じ込んでいる ―— 私が主人であなたが従僕。

※ドン・ファンの計画とは、友人のパサリーノに従僕の服装を着せ、女を誘惑させる。手口は「主人の留守中に、主人の邸宅で食事をして楽しい時間を過ごそう。」というもの。女が来たところでドン・ファンが従僕になりかわってものにしようとする、ストーリーを追うには少し複雑な企てである。

DON JUAN:(ドン・ファン)
When you met you wore my cloak, she could not have seen your face.
お前が(彼女と)会ったとき私の服(従僕の服)を着ており、彼女はお前の顔を見てはいない。
She believes she dines with me, in her master's borrowed place!
彼女は私(従僕)と食事をすると思っている — 彼女の男(従僕)が借りた場所でな!
Furtively, we'll scoff and quaff, stealing what, in truth, is mine.
本当は私(従僕に扮する主人)のもの(酒食等)を盗み密かに悪ふざけをする。
When it's late and modesty starts to mellow, with the wine...
時間も遅くなり、(彼女の)慎みがメロメロになり始める、ワインでな...

PASSARINO:(パサリーノ)
You come home! I use your voice - slam the door like crack of doom!
(私が演じる)あなた(=主人)が帰って来る  私はあなたの声色を使う。運命が裂けるようにバタンとドアを閉める!

DON JUAN:(ドン・ファン)
I shall say: 'come - hide with me!  Where, oh, where?  Of course - my room!'
(従僕を演じる)私が言う「 こっちに隠れよう。どこにって?もちろん私の部屋だ!」

PASSARINO:(パサリーノ)
Poor thing hasn't got a chance!      かわいそうな獲物は逃げるチャンスがない!

DON JUAN:(ドン・ファン)
Here's my hat, my cloak and sword.       私の帽子、着物、そして剣だ。(と言ってパサリーノに渡す。)
Conquest is assured, if I do not forget myself and laugh...       自分を忘れて笑わなければ成功間違いなしだ…

(ドン・ファンはパサリーノの衣装をまとい、フードを頭から被り顔を隠す。そして舞台奥の部屋へと隠れる。するとすぐにアニータに扮したクリスティーンが上手側階段から降りて来る。)

ANITA:(アニータ=クリスティーン)
'...no thoughts within her head, but thoughts of joy!      「...頭の中には何の考えもなく、喜びの思いだけ!
No dreams within her heart, but dreams of love!'             心の中に夢はなく、愛の夢だけ!」

(誰もこの時気づいてはいないが、ピアンジは縄で首を絞められ殺されている。そしてここから怪人がピアンジの代わりにドン・ファンを演じる。)

PASSARINO:(パサリーノ、声だけ)
Master?      ご主人様。(どんな具合ですか?)

DON JUAN:(ドン・ファン=怪人、声だけ)
Passarino - go away!  For the trap is set and waits for its prey...
パサリーノ、行っても良いぞ!  罠が仕掛けられ獲物を待つだけだ…
####################

(この間、アニータはショールをテーブルに置き、そこを一周した後、ベンチに座りリンゴを手に取る。するとドン・ファン=怪人がフードを頭に被ったまま現れ、彼女に声を掛ける。)
※旧約聖書の創成期ではイブが禁断の果実リンゴを食べアダムにも分け与える。食べ終わるとそこから二人は裸でいることに恥ずかしさを感じるようになったとされる。禁断の果実リンゴは人間の性に関する快楽に関連付けて隠喩として使われる(ウィキペディア)。リンゴを手にすることはドン・ファンとアニータの今後を予測させる動作になっている。

####################
“THE POINT OF NO RETURN”

DON JUAN:(ドン・ファン)
You have come here in pursuit of your deepest urge,
お前は最も深いところにある衝動を求めてここに来た
In pursuit of that wish, which till now has been silent, silent...
今まで沈黙していたその願いを求めて…

(アニータはリンゴを手にしてベンチから立ち上がり、ドン・ファンから距離を取るようにテーブルから離れる。)

I have brought you, that our passions may fuse and merge –
私は我々の情熱が溶けて融合するようにお前をここに連れて来た
In your mind you've already succumbed to me,
心の中でお前は既に私に屈している
Dropped all defences, completely succumbed to me –
護りをすべて取り払い、完全に屈したのだ
Now you are here with me: no second thoughts, you've decided, decided...
今やお前は私とここにいる:考え直すことなく、お前は決めたのだ…

(ドン・ファンはアニータからリンゴを取り上げ、杯を渡す。)

Past the point of no return - no backward glances:      戻れないポイントを越え —— 後ろを振り返らず
Our games of make believe are at an end...      我々の戯れは終わりに来ている...

(ドン・ファン、アニータに杯を飲み干すよう手で促し、彼女は一気に飲み込む。)

Past all thought of 'if' or 'when' - no use resisting:
「もし」とか「いつ」という考えを越え —— 抵抗しても無駄だ

(ドン・ファン、飲み終えたアニータの右手首付近を取り踊りに誘う。しかしアニータは少しの間彼に合わせて踊るような動作をするが、突然身を翻し彼を焦らすように離れ、左手に持っている杯をテーブルに置く。そしてベンチに座る。)

Abandon thought, and let the dream descend...        考えることを捨て、夢に身を委ねるのだ…
What raging fire shall flood the soul?        どんな猛烈な火が魂を氾濫させるのか
What rich desire unlocks its door?        どんな止めどない欲望がドアを破るのか
What sweet seduction lies before us...?        どんな甘い誘惑が我々の前に横たわっているのか

(ドン・ファンは座っているアニータに近づき背後から誘惑を続ける。ドン・ファンは右手を彼女の右腕から肩、そして首へと動かす。アニータは酔いが回ってきて陶酔の表情を浮かべる。)

Past the point of no return, the final threshold –       戻れないポイント、最後の入り口を越え
What warm, unspoken secrets will we learn!         どんな暖かく言葉にできない秘密を我々が学ぶのか!

(ドン・ファン=怪人、背後からアニータの顔を両手で包むようにし、次に彼女の左手に左手を重ね右手は彼女の右肩に置いたまま左手をアニータの腰から胸の方へと徐々に上げていく。)

Beyond the point of no return...        戻れないポイントを越えて...

(アニータ=クリスティーンは何かに気づき咄嗟にドン・ファン=怪人から離れる。)



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (So am I)
2021-10-31 00:07:51
面白い。この場面、良いですよね。
返信する

コメントを投稿