
写真は2021年元旦の霞ヶ浦の日の出です。
本年もよろしくお願い申し上げます。
読んだ本の数:28
読んだページ数:9657魔法飛行 (Golden thirteen)の感想
巻末に有栖川有栖氏の解説があって助かりました。読み始めは「七つの子」と同じような道を辿るのかと思ったのですが、章ごとに挟まれた意味不明の手紙で訳が分からなくなりました。有栖氏は難易度の高いミステリと評価し、北村薫の「私と円紫師匠」シリーズと比較されています。本書は私にとって数少ない理解できない一冊になってしまいました。
読了日:12月30日 著者:加納 朋子
身がわり若さま (下) (コスミック・時代文庫)の感想
いくら蓮っ葉な姫様でも、旅の途中でそんなことしちゃぁまずいでしょうよ。と思いながらもご一同は目的の地へご到着。そして・・・。どうなっちゃうのでしょうね、この後。
読了日:12月29日 著者:山手 樹一郎
身がわり若さま (上) (コスミック・時代文庫)の感想
不動の時代小説の大家山手樹一郎の作品を久々に手にしました。ご落胤である長谷部平馬が、実の兄にあたる亀之助の代わりに将軍家の姫君と見合いをするという奇想天外な物語。上巻は見合い相手の福姫様と本国に向かって旅立つところまで。昭和の時代小説臭プンプンです。
読了日:12月29日 著者:山手 樹一郎
神様のカルテ (3) (小学館文庫)の感想
シリーズ読了4巻目。文体に私が慣れたのか、この作に限って作者の表現力が上がったのか、漱石の作品を読んでいるような気がしておりました。あいも変わらず厳しい勤務体制のもと、患者一人一人に正しい判断と治療が要求される。それにしても患者に寄り添い過ぎではなかろうか。医師の健康こそもっと大切にすべきではないかと感じました。
読了日:12月25日 著者:夏川 草介
神様のカルテ (小学館文庫)の感想
病気を治すばかりが医者の仕事ではない。看取ることも大いにある、ことを改めて意識させられました。それにしても過酷な勤務。夫婦生活はどうなっているのかと余計な勘ぐりもしたくなりました。コーヒーには一家言ある私。自宅で飲むのは深煎でブラック。面倒なときにはカップオンドリップバッグを使用し、いただきもののインスタントコーヒーはカレーの隠し味に使うくらいです。
読了日:12月25日 著者:夏川 草介
涙堂 琴女癸酉日記 (講談社文庫)の感想
真理さん亡くなって5年も経ったのだなぁと思いながら開きました。縄田一男氏の解説がよく纏まっています。臨時廻り同心であった夫高岡靱負の死の謎を探るミステリー、そして5人兄弟の末っ子次男の賀太郎と住むために八丁堀から大伝馬町に住まいを変えることによる町家暮らしのあれこれ。米一石五十二匁八分との事ですが、一石=十斗=百升であり、銀1匁=2600円位とすれば米1升が1,370円くらいでしょうか。現在では米1升が550円くらいですので、けして安くはないような気がします。真理さんこんな計算もしたのでしょうかねぇ。
読了日:12月24日 著者:宇江佐 真理
結び屋おえん 糸を手繰ればの感想
夫に不義を疑われて離縁されたおえん、慣れない長屋での生活が始まった。行方不明の長男福松、おえんの出た家に残された次男幸吉には心に傷が。市井の生活と人間関係を活写したほんわかとしたぬくもりの感じられる作品でした。「夫婦は所詮他人なんです」とはいえ生活があるから難しいですよね。
読了日:12月24日 著者:志川 節子
刑事何森 孤高の相貌の感想
警察組織からスポイルされている孤高の刑事何森の地道な捜査を描いていました。デフ・ヴォイスの作家丸山正樹氏が挑んだのは障害者の世界。頸髄損傷で車椅子生活を余儀なくされている桑原さやか。人の言いなりになる供述弱者である青山典夫。遷延性意識障害の一歩手前で入院した少女。先の二編もそうでしたが、最後の「ロスト」はいろいろと面白かった。
読了日:12月23日 著者:丸山 正樹
まちの感想
体は大きく力持ち。思いやりにあふれた主人公瞬一。高卒であることに劣等感はない。東京に出てきたのは、進学でも就職でもない。お金には不自由しないが、体を動かして仕事をするのは好き。読み始めてから一気にこの子の世界に引きずり込まれました。善人のお話は心地よくとても読みやすい。
読了日:12月22日 著者:小野寺史宜
発注いただきました!の感想
作家って好きな或は興味ある課題を書いているのだと思っていたので驚かされました。テーマや文字数の枠内で作品を作っていくというのは大変なことではないでしょうか。読メでも感想は255文字以内に限られているので原稿用紙100枚とか言うのは分かりますが、15文字✕69行とかもう割付まで決まっていることもあるんですね。作家の世界をちょっと覗かせていただきました。
読了日:12月22日 著者:朝井 リョウ
おもかげの感想
団塊の世代よりちょっと若い竹脇正一。65歳で定年を迎えた送別会の帰りに地下鉄で倒れた。同期の社長堀田憲雄、施設で一緒だった工務店社長の永山徹、複雑な家庭に育った妻の節子、3人目を妊娠中の娘茜の夫大野武志、20年間たまたま同じ地下鉄で通っていた看護師の児島直子。関係性に濃淡ある中でベッドで動けない竹脇は様々なことを思い出し、感じる。フェアリーテイルなのかもしれませんが、地下鉄の路線が具体的で現実との区別が不明確になってきました。助かって欲しいのですが、寝たきりになるくらいなら・・・。
読了日:12月19日 著者:浅田 次郎
神様のカルテ2 (小学館文庫)の感想
第一巻を飛ばして2巻目に。栗原一止は本庄病院に勤めて6年目に入る。0巻「冬山記」の主人公片島榛名が妻になっていますが、住んでいるのは相変わらずの御嶽荘。0巻で同級生であった進藤辰也、砂山次郎も同じ病院に勤務することになった。地方の基幹病院で多くの患者に接し、勤務する過酷な毎日。医師の家族にもただでは済まされない大変さがのしかかる様子が描かれていました。信州の町に咲く様々な花々の描き方も、とても素敵でした。
読了日:12月18日 著者:夏川 草介
神様のカルテ0 (小学館文庫)の感想
出版された順は「神様のカルテ3」の後なのですが、時代的にはこちらが先とのことなので手に取りました。栗原一止がまだ抱いの6年生であった時代から幕を開け、研修医生活を365日24時間対応を標榜する本庄病院で始めることになる。病院経営の難しさや、医師の労働環境、高額な検査機材の導入など地方病院の抱える問題に切り込んでいる。そして唐突に「冬山記」が始まった。読めばわかるその関わりを求めて次巻を手に取る。
読了日:12月18日 著者:夏川 草介
オカシナ記念病院の感想
研修医を題材にした本て多いですね。この作品は題名からしてコミカルですし、方言を多用した表現も面白いのですが、実は「医療とはどうあるべきか」を問うものでした。延命とはどこからを指すのかよく分からず、母親の中心静脈栄養(TPN)をお願いしてしまった自分を未だに許せない自分です。私の最後にはつくづくそのようなことがないように家族によく伝えて置かなければと思っています。宿命治療?~悩みどころです。
読了日:12月17日 著者:久坂部 羊
小説伊勢物語 業平の感想
名前こそ知っていはいるものの、内容については全く白紙状態であった伊勢物語。在原業平作とされるものの、その後何年にも渡って増補されていったようですね。この作品によって日本の歴史に残る古典伊勢物語に触れられたのは幸いでした。業平といえば美男の代名詞。高貴な女性たちとの禁忌の恋も成就してしまう様子は、男どもにとっては英雄であったに違いありません。古典であるので読みにくい箇所も多数あります。私は「ういこうぶり」から躓いてしまいました。しかし掲載された歌の数々を音読するうちに、なにか心にしみるようになってきました。
読了日:12月16日 著者:髙樹 のぶ子
向日葵のある台所の感想
子のためにと思ってしていた事が、虐待だったと気付ける親がどれほどいるのでしょうか。47歳のシングルマザーである麻有子と高校生である娘の葵との暮らしに、脳梗塞で入院した母親が同居することとなった。一体母親はどうして麻友子にそんな態度をとったのか。また姉の鈴子に対してはどうだったのか。向日葵の咲く庭のある一戸建を舞台に、少しずつ吐露される母親の想い。がんを患った今だから話す気になったのだろうか。表紙絵のパン・ド・カンパーニュのトースト、作中のどこに出てきたんだろうか。文庫ではうどんみたいですね。
読了日:12月11日 著者:秋川 滝美
勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~の感想
医学の進歩により治療は大きく発展し、それまで治療が困難だった病気、高齢の患者も治療できる症例が増えてきました。そしてそれらが医療経済を圧迫するから、75歳以上の自己負担を増やそうとした流れになっています。私の知り合いにも胃瘻で6年も生きた方がおられます。尊厳ある死と穏やかな看取りの気持が大切なんじゃないかと考えさせられる内容でした。若い研修医と看護師の明るい描写を用いながら、医療の本質を問う作品でした。
読了日:12月11日 著者:夏川 草介
早稲女、女、男 (祥伝社文庫)の感想
田舎出の私にはわからない小さな事柄を積み上げると、私立大学に集う学生にはあるパターンで括られるようです。面白く読んだ後で深澤真紀氏による衝撃の解説。そうかそうだったのか、と感心しました。明治や法政はなぜ出てこないのかに納得し、短編のタイトルの意味にも初めて注目しました。まぁ、第三の性というのは言いすぎだとは思いますが、そんな自意識を持つワセジョという生き物に気づいた一冊です。解説にもある吉永小百合の通った二文、その時期に5歳年上の叔母は一文でした。
読了日:12月11日 著者:柚木 麻子
神様の暇つぶしの感想
私は写真愛好家ですがポートレートは苦手です。私の本棚に風景写真やスナップ写真の本はありますが、ポートレートは一冊もないんですよ。「体のどの細部もしっかりと存在し、命を宿し、その生命力で外の世界を押し返していた」ような写真集、すごいですねぇ。そんなポートレートを撮られたのは二人暮らししていた父を失ったばかりの女子大生柏木藤子。写真集FUJIKOの編集者がランチタイムからは遅い時間にカレー屋で彼女の隣りに座り、その写真集を預けていった。後日再び会った際に、彼は写真家と同じメーカーのワークブーツを履いていた。
読了日:12月10日 著者:千早 茜
ななつのこの感想
第3回鮎川哲也賞受賞のデビュー作品で巻末に選考経過と選評が載っていて、これも実にわかりやすくてよかった。日常の中の不思議を描いている。新刊書の棚に「ななつのこ」という短編集があった。表紙には麦わら帽をかぶった精密な少年の姿が描かれている。文庫しか買わない私入江駒子は作者である佐伯綾乃あてに初めてのファンレターを書いた。驚いたことにその返事が届いたのだ。という具合に、よくありそうな(都合の良い)日常を描く中にちょっとした不思議を散りばめて、それを佐伯綾乃が解決するお話でした。ほんわかとした語り口が楽しい。
読了日:12月09日 著者:加納 朋子
櫓のない船ー伊庭八郎幕末異聞(3) (双葉文庫)の感想
17歳の伊庭八郎。女の地獄と言われる吉原は鉄漿溝に囲まれている。そこには櫓のない船が浮かんでいる。そんな情景から始まった最終巻。サダとの切ない慕情と、幕府の行く先を決する攘夷のテロの発生をなんとかしようとする侍としての心持ちが描かれる。攘夷のテロの主犯は誰でその目的は何であるか。小天狗と言われた一途な伊庭八郎も流石に傷を負う。眼の離せない場面が次々と現れました。
読了日:12月08日 著者:秋山香乃
半沢直樹 アルルカンと道化師の感想
作家って物知りなんですね。私はフランス語のアルルカンが英語でハーレクインであることも、セザンヌ他たくさんの画家の描く対象になっていることも知りませんでした。アルルカンの持つ性格はホラ吹き、ペテン師、強欲、食い意地が張っているなどがあるようですが、悪役である業務統括部長の宝田に上手に反映しています。ストーリーも大変面白く一気に読み終えました。すごいな半沢直樹。いや池井戸潤。アルルカン繋がりで、私の手にしたことがないハーレクインシリーズの小説、アルルカンの意図を持った内容を扱っているとは思えないのですがねぇ。
読了日:12月07日 著者:池井戸 潤
士道の値ー伊庭八郎幕末異聞(2)(双葉文庫)の感想
前作から2年が経ち伊庭八郎は「小天狗」としてその名がとどろき始めていた。折も折、連続辻斬り事件が起こり、その傷口と特徴的な短袴から犯人は心形刀流の門人の可能性が高い。犯人は誰か、そしてなんのために辻斬りを。ちゃんばらは相変わらずの迫力にあふれていますし、今回は謎解きも加わりとても楽しく読み終えました。
読了日:12月05日 著者:秋山香乃
スプラッシュ マンション (PHP文芸文庫)の感想
kindle unlimitedにて。自治会の役員は持ち回りとはいえ面倒なものです。住んだことがないのですが、上下左右にお隣があるマンションでは色々とありそうですね。そんなマンションの理事長と管理委託先の会社との癒着から始まった事件。色々ありすぎて笑っちゃうのですが、本当に面白い。ひとりひとりの行き過ぎた登場人物が上手に描けているためですよね。大いに堪能しました。
読了日:12月05日 著者:畠山 健二
未熟者―伊庭八郎幕末異聞 (双葉文庫)の感想
伊庭八郎、その名は聞いたことがあります。彼の少年期を題材にしていますが、なんと言っても剣豪小説、おもしろい。新形刀流中段の構え。殺気がビリビリと行間から襲ってくるようでした。
読了日:12月04日 著者:秋山 香乃
てらさふ (文春文庫)の感想
見せびらかすという意味を持った「てらさふ」という題名。漢字は「衒さふ」なんですねぇ。最初に解説に目を通し佐村河内事件を思い出しました。有名になりたいという承認欲求の強い堂上弥子、絶えず強いリビドーに突き動かされそうになる鈴木笑顔瑠の二人の中学生が田舎町でコンビニなってストーリーが進みました。なんてこった、という世界を少女の姿を借りて巧みに描いた作品だと思いました。最後まで廃れない弥子の自尊心。楽しく読み終えました。
読了日:12月04日 著者:朝倉 かすみ
かたづの! (集英社文庫)の感想
江戸初期に女大名として八戸、遠野を治めた祢々の一代記。先に青木慎治の「遠野女大名―史実!四百年前の近代経営」を読了しています。こちらはファンタジー色が強く、カモシカのユニコーンや河童が祢々の協力者として現れます。それはそれで楽しい趣向でいいのですが、祢々の一代記と言い切っていいのかと思われる内容ではありました。遠野の内紛はわかりにくかったのですが、金山をめぐる伊達藩との境界に関する交渉には十余年をかけたとあり、そうだったであろうと思わされました。
読了日:12月03日 著者:中島 京子
猫弁と魔女裁判 (講談社文庫)の感想
テヌーは自分を人間だと思っていたのですね。そんなテヌーの発言がこの巻で初めて登場しました。また裁判も今までにない展開で、強制起訴となったスパイ事件の起訴担当弁護士としてクールに取り組みました。スパイの名はシュガー・ベネット。ベネットといえば骨粗鬆症治療薬なのですが関係はあるのかなぁ。エピローグで出てくるベロニカ、本編では1回しか出てこない名前の白い年寄の猫ではありませんか。
読了日:12月01日 著者:大山 淳子
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