11月の読書メーター
読んだ本の数:21
読んだページ数:7007
じんかんの感想
「人はなぜ生きるのか」。商人の父を足軽に殺され、母親は首をくくった。そんな少年九兵衛の生き様が信長によって語られる。松永弾正久秀といえば室町幕府内でのらりくらりと策を練った武将のようなイメージがありましたが、本書によって私の中ではスーパースターになってしまいました。堺や大和についてあまり知らない私ですが、本書では民主主義を目指したように描かれています。それで題名が「じんかん」かと。厚い本ですが、一気に読ませる筆力に感服です。
読了日:11月30日 著者:今村 翔吾
たこ焼きの岸本 (ハルキ文庫 は)の感想
大阪の文化圏について全く不明な東北出身の私。まずは住吉大社の位置をマップで確認しました。住吉鳥居前というと、南海線の方なんですね。話から大阪の下町情緒が匂ってきました。臭いという字のほうが良かったかな?おせっかいなおばはんおじさん、地元に居つかない息子や娘。たこ焼き屋の十喜子の家出した息子が戻ってきたと思ったら!ここからの展開にはびっくりしました。そして楽しいひと時を過ごすことができました。
読了日:11月29日 著者:蓮見恭子
猫弁と少女探偵 (講談社文庫)の感想
赤毛の弟は結局何者だったのでしょうか。恋も少しは前進しましたかね。
読了日:11月27日 著者:大山 淳子
猫弁と指輪物語 (講談社文庫)の感想
「癒やされるミステリー」と文庫の裏表紙に書いてあります。登場人物が交錯してくるので相関関係がなかなかわかりにくかったのですが、恋バナが主軸でゆっくり進むのでその点は読みやすかった。元恋人とか息子だったとかこっちの猫なのかあっちの猫なのか、そこが仕込んだ種だったということでした。さて指輪、どの指輪の物語でしょうか。
読了日:11月27日 著者:大山 淳子
遠野女大名―史実!四百年前の近代経営 (小学館文庫―時代・歴史傑作シリーズ)の感想
同じ人物を描いた中島京子の作品を里中満智子がコミックにしているのですね。物語は八戸から始まりますが、当時は南部藩だったのですね。ついでに調べると津軽藩は南部藩から独立し、明治になって弘前県から青森県になったとのこと。さて遠野物語くらいしかしらない遠野。調べると金山跡がたくさん出てきました。物語には女忍を登場させて情報を得る形にしていますが、実際に判断し指示する殿様寧寧が大変だっのだろうなと感じました。南部地域の良い勉強になりました。
読了日:11月26日 著者:青木 慎治
マイ・ストーリーの感想
著者と翻訳者のおかげでとても読みやすかった。今年も米国の大統領選が行われ赤と青のいがみ合いが繰り返されました。全体を通してアフリカ系アメリカ人のどうにもならない被蔑視の世界を見せつけられた感じです。あの偉大な国が未だに人種偏見に満ちているなんて。BLM運動の底の深さを感じました。京都大学の竹沢泰子教授はBlack Lives Matter の意味合いを「黒人の命を粗末にするな」とするのが一番スッキリすると述べています。日本では大抵のところを歩いていても命の危険を感じないことのありがたさがよくわかりました。
読了日:11月26日 著者:ミシェル・オバマ
いしゃ先生 (PHP文芸文庫)の感想
日本のチベットと言われた山形県大沢村。その僻地で活動を続けた女医、志田周子の活動を描いた作品。淡々とした描き方。偏屈な地方で住民の健康意識の向上を図り続ける医療活動が主な内容なのだが、気がついたら涙が頬を伝っていた。2019年厚生労働省は、岩手、新潟、青森、福島、埼玉、茨城、秋田、山形、静岡、長野、千葉、岐阜、群馬、三重、山口、宮崎の16県が、人口や診療需要に対して適正な医師数を確保できていない医師少数県となっていることを明らかにしました。研修医の皆さんや、これから医師を志す皆さんに考えてほしい。
読了日:11月23日 著者:あべ 美佳
日銀券 下巻の感想
上巻で疲れ果て間を空けての下巻着手です。生きている以上経済について門外漢であってはならないのでしょうが、国を動かすという壮大な経済ドラマは用語を追うのも大変でした。日銀副総裁の芦川笙子の姿に胡散臭さを感じていたのですが、それも作者の狙いだったのでしょうか。読み終えてみれば彼女は日本経済を救ったジャンヌ・ダルクだったかのようです。2019年11月には109円くらいだったドルが1年を経て103円台になっています。大統領選も決着がついたのについていないような状態で、先行きの不安はいつになっても解消できません。
読了日:11月21日 著者:幸田 真音
海蝶の感想
「正義仁愛」という四字熟語はこの本を読むまで知りませんでした。海上保安庁の精神だそうです。海猿というコミック・映画は見ていないのですが、流石に言葉は知っています。その女性版がこの海蝶。今や社会の至るところで女性進出が著しいわけですが、あまり知られていない海保の仕事を見事に我々に伝えていると同時に、3.11を絡めた家族のあり方を描いた作品でした。関連するサイトを調べていたら、元AKB48篠田麻里子さんの父上が海上保安官なのだそうですね。2001年12月22日北朝鮮工作船との銃撃戦、思い出しました。
読了日:11月16日 著者:吉川 英梨
土蛍: 猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)の感想
猿若町捕物帳シリーズ最終巻。解説を読んで改めて「むじな菊」を見返しました。八十吉のスネの痛みは放っておいたらやがて治った。夫にちょっかいを出した小萩に対して妻の良江は痛みに耐えきれず抉ってしまったのだった。「土蛍」は泥の中にいるホタルの幼虫。「泥の中でしか生きられぬのに、暗闇に中では美しい光を放つのだ」。序盤に置いた一つ一つの碁石がやがて勝敗を決して行くような、そんな近藤史恵氏の巧みさにもはや何も言う言葉はありません。
読了日:11月15日 著者:近藤 史恵
ほおずき地獄―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)の感想
「猿若町捕物帳」シリーズの順番が光文社の発行順と異なっているのがとても気になっていたのですが、解説でスッキリしました。もともとは幻冬舎文庫のシリーズとして始まったものの二作で終了となり、文芸誌に掲載された続編を光文社から単行本として出版された後に文庫化され、それを機に幻冬舎のものも所蔵されることになったとのこと。スッキリしました。ストーリーは監禁されている少女のちょっと不気味などろどろ感がありましたが、お駒が義母になった背景やお花の来歴が明らかになって楽しく読み終えました。
読了日:11月14日 著者:近藤 史恵
コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店― (新潮文庫nex)の感想
コンビニ。どこの街に行っても同じような景色が広がる要因の一つは、大CVSチェーンのためだと思っています。ところが、本作品のコンビニはどちらかというと近代的な万屋のような感じです。レトロな門司港に構える高齢者マンションの一階というロケーションも、このお店の個性を読者に上手く伝えているようです。そこで働く個性的なメンバーと客の数々。その家族も混じり合ってほのぼのとした空気を描き出していました。「コンビニ外国人」はノンフィクションのルポルタージュでしたが、それとは旗色の異なる楽しいお話でした。
読了日:11月14日 著者:町田 そのこ
セイレーンの懺悔 (小学館文庫)の感想
ニュースショーを私は見ません。専門家と言われる出演者が必ずしも真実を言わないから。都合の良い編集でそう見せられているのかもしれません。「マスゴミ」という言葉はいつ頃からできたのでしょうか。報道される表現によって私の意見も二転三転してしまいます。真実を見定めるのは本当に難しい。本書はニュースショーの新人レポーターの活動を追う形で、ニュースショーの抱える問題点とあるべき姿を訴えていると感じました。少年少女の難しい心のありようにも言及し、ちょっと欲張りな内容でした。
読了日:11月13日 著者:中山 七里
巴之丞鹿の子―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)の感想
解説に記載がありました。この猿若町捕物帖シリーズで文庫で最初に出たのは「にわか大根」そして本作品が出され「ほおずき地獄」が続いたとのこと。読んでいる限り順不同でも全然問題にならないと感じました。帯揚げ、帯枕を包んでいる布なんですね(知らないことが多いです)。はやりの鹿の子模様のついた帯揚げで縊り殺される事件が続いて起きた。南町同心の玉島千蔭は犯人を追う。一方、矢場で働くお袖は藤枝小吉と出会う。並行する二編の物語がやがて形を作って真実を描き出しました。なかなか楽しく読了しました。
読了日:11月12日 著者:近藤 史恵
にわか大根―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)の感想
南町同心の玉島千蔭を中心に芝居町や吉原を舞台に謎に挑むシリーズ第3段。私はバラバラに読んでいますが、ちっとも齟齬を感じません。雀のモチーフを衣装に取り入れた三人の
遊女が死んだ「吉原雀」、大阪から帰ってきた巴之丞のライバルと目されていた役者が芝居下手になっていた「にわか大根」、そして八朔の宵に殺害された元陰間の役者「片陰」の3編。末國善己氏の解説が実に親切で、これを読まない手はありません。
読了日:11月11日 著者:近藤 史恵
日銀券 上巻の感想
日銀のウエブサイトには「物価が安定していて、お金を安心して使うことができるということは、あらゆる経済活動や国民経済の基盤です。」との記載があります。金融政策の何たるかを知らない私には読了に大変時間のかかった上巻です。ただ、年寄の恋愛ネタが不気味というかテーマに沿っているのかと疑問に思えました。さぁ、下巻をどうするか。
読了日:11月10日 著者:幸田 真音
寒椿ゆれる―猿若町捕物帳の感想
シリーズ一作目かと思って読んだのに四作目だと判明しました。がっくし orz。近藤さんの捕物帖、どうなんだろうねという意識が強かったのですが、なかなかどうして、推理効いていて大変楽しく読みました。組織犯罪を暴くのに権威を利用しなくちゃならないのは残念な話ですが、それより何より「おろくさん」の実態にびっくりしました。
読了日:11月10日 著者:近藤 史恵
ダブル・トライの感想
昨年のラグビーワールドカップでにわかラグビーファンになった一人の私。今もYOUTUBEで試合を見ることができて一人で盛り上がっています。この小説のテーマは7人制のラグビー。東京オリンピックが延期されたことを受けて、かねてから7人制でオリンピックを目指していたパナソニックの福岡堅樹選手がオリンピック出場を断念したのが思い出されます。二足のわらじのもう一方の円盤投げの技術の説明に多くのページを割いています。でもあまり熱くはなれませんでした。私が円盤投げをよく分かっていないためでしょうね。ちょっと消化不良です。
読了日:11月05日 著者:堂場 瞬一
夫の彼女の感想
題名にミスリードされました。妻と彼女の設定がとても良くできていて、一気に読み終えました。品のない言葉を使っているから、ヤンキーみたいな格好をしているからといって、その人物をそれだけで判断してはいけないということでしょうか。なかなか含蓄のある作品でした。
読了日:11月03日 著者:垣谷 美雨
絵ことば又兵衛の感想
過分にして知ることのなかった岩佐又兵衛。この絵師の波乱に富んだ人生を描いた作品。谷津矢車氏は狩野永徳、蔦屋重三郎、歌川芳藤などを題材にした小説も書いておられるのですね。楽しいと思って筆を取っても必ずしも上手には描けない絵画ですが、好きだからこそもっと上手に書きたいとの情動が沸き起こる絵師の姿と、時代に翻弄される庶民を巧みに描き出しておりました。ネットで調べると重要文化財である山中常盤物語絵巻が色鮮やかに現れます。熱海にあるMOA美術館でいつかは現物を目にしたいものです。。
読了日:11月02日 著者:谷津 矢車
暗闇にレンズの感想
写真愛好家の一人として手にした作品です。レンズってなんだろうと思って定義を見ると「二つの球面、または球面と平面とで囲まれる透明体」(デジタル大辞泉)だそうです。暗闇ではレンズが屈折させようにも光がないので、なんの役にも立たないように思われます。本書は観念的にムービーの歴史を追った作品(のよう)でした。しょっちゅうカットが変わり、語り手も変わるので筋を追うのに大変苦労しました。読んだ後も分かったのか分かっていないのか、よく分かりません。4代に渡る血筋だけ理解に達しました。
読了日:11月01日 著者:高山 羽根子
読書メーター
紙の本ではありませんが「戦国小町苦労譚」という小説がNETで公開されています。
作者は「夾竹桃」さんです。
ある日、一人の少女が戦国時代へタイムスリップした。
それこそ神の気まぐれ、悪魔の退屈しのぎといえるほど唐突に。
少女は世界を変える力を持っているわけではない。
どこにでもいるごく普通の、そして平凡で地味な少女だった。
そんな少女が出来る事は一つだけしかない。
戦国時代を生き抜く――――それだけだ。
なかなか面白い設定なのですが、農業、工業、近代技術に関する薀蓄がすごくて大変です。
でも、なかなかおもしろいので暇なときにご覧になることをおすすめします。
https://ncode.syosetu.com/n8406bm/
写真は茨城県行方市の西蓮寺の樹齢1000年以上と言われる大銀杏です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます