YOUTH

青春とは人生のある期間ではなく 心の持ちかたを言う
by Samuel Ullman

7月の読書メーター 読んだ本の数:24 読んだページ数:7923

2021年08月01日 | Weblog

前半は雨が続いたが、梅雨が開けた途端に暑い毎日が始まった。

冷房の効いた部屋で毎日ひっそりと読書しています。

流浪の月流浪の月感想
ランドセルではなくカータブル(仏のランドセル)、ご飯の変わりに食べたいならアイスクリームでもよし。そんな家庭環境で型にはまらない少女が育ったのだ。事実と真実は違う。以前に似たような本を読んだ記憶があるが・・・。ニュースを娯楽に変えたテレビだが、ネットではそのハンドリングが個人に委ねられることになった。そして面白い歪曲された現実が目の前で繰り広げられ、被害者はさらなる世間の目という被害を受けるのだ。主人公更紗があっけらかんとした性格で描写されているので、世間という巨悪を受け流しており、気持ちが救われた。
読了日:07月29日 著者:凪良 ゆう


MRMR感想
分厚い本で手にするに躊躇した。医薬品会社「天保薬品」を舞台に医薬品業界の解説がなされる。MRがプロパーと称された頃は、たしかに医師の小間使か奴隷みたいな立ち位置だったったようだ。本書では触れられていないが、薬局が院外となったので処方箋をどの薬局に持参するかは患者の自由であり、どの医師の処方で当該医薬品が使われたのか紐付けがしにくくなっており、売上の評価は営業マン個人につきにくくなっているようである。後半は会社間、あるいは社内の戦いの様相を見せてきて、半沢直樹が登場しそうであった。面白く一気に読み終えた。
読了日:07月28日 著者:久坂部 羊


雀のお宿 (時代小説文庫)雀のお宿 (時代小説文庫)感想
この作家の作品は読んで心が落ち着く。5篇の短編が収められて、主人公はそれぞれに悲しいのだが心の平安を獲得する。保坂市之進は前作「鷺の墓」でも活躍しており、このストーリーを改めてシリーズとして整理してほしいと感じた。
読了日:07月27日 著者:今井 絵美子


電王電王感想
家庭環境の異なる二人は、それぞれに体を動かすことが苦手だという共通点で結びつくようになった。この二人、驚くべきことに、テスト問題を奇数と偶数に分けて一方は間違えるような回答をしていた。そして外遊びの時間には二人で将棋を楽しむようになった。大人になってからの視点と子供から成長していく段階の視点が交互に現れて、なかなか面白かった。将棋と数学、確率問題に関わらず関連があるのだろう。凡人の私にはもはや理解が及ばない。以前にTVで将棋ソフトponanzaの番組を見たが、ソフトウエアの進化という意味で大変面白かった。
読了日:07月23日 著者:高嶋 哲夫


逆転の戦国史: 「天才」ではなかった信長、「叛臣」ではなかった光秀逆転の戦国史: 「天才」ではなかった信長、「叛臣」ではなかった光秀感想
今年読み終えた中でも最も感銘を受けた一冊「高瀬庄左衛門御留書」の作者が、戦国時代の著名人に対する一般の理解を正そうといういわば「参考書」。光秀の本能寺の変の動機に迫る項がなんと言っても面白い。結局諸説あるがわからないのだ。歴史に埋もれる女性たちの本名にも、納得させられた一冊である。
読了日:07月22日 著者:砂原 浩太朗


居酒屋ぼったくり おかわり! (2)居酒屋ぼったくり おかわり! (2)感想
まさか先代夫妻が店を開く前からの話とは!新鮮な驚き。当初の店名は「居酒屋久保田」だったんだなぁ。居酒屋のない新興住宅街に住む身にはなかなか想像できない、昭和の匂いプンプンの背景ではないか。
読了日:07月20日 著者:秋川滝美


マリコ (新潮文庫)マリコ (新潮文庫)感想
柳田邦男の本を読もうと、図書館でISBNのない古い本を手にした。第二次世界大戦開戦前夜から、終戦を経てワイオミングで活躍する一人の女性のノンフィクションである。戦争末期、配給制度のもとで敵国人と差別され、やせ細っていく母娘の姿が痛々しい。後半はMARIKOの米国における活躍に焦点が移るが、女性として政治活動にのめり込む姿は、まさにジェンダー問題の先取りだったのだろう。一人の女性の生きざまに感動した。
読了日:07月20日 著者:柳田 邦男


鷺の墓 (時代小説文庫)鷺の墓 (時代小説文庫)感想
また手にした。何度読んでも引き込まれる。
読了日:07月16日 著者:今井 絵美子


いつもの朝に 下 (集英社文庫)いつもの朝に 下 (集英社文庫)感想
上巻の終わりで兄弟のどちらが両親との血の繋がりがないのが明かされた。下巻ではなんと優太の兄へのひたむきな愛が表現された。無医島の医師として努めた桐人は・・・。なかなか素敵な余韻だったが、中間部はホラーに近づきすぎておりどうしようかと思った。カインとアベル、名前だけを知る聖書の物語である。桐の花を改めてGoogleで調べてしまった。
読了日:07月15日 著者:今邑 彩


吉宗の星吉宗の星感想
八代将軍吉宗の一代記である。TV番組では市中をお供もつけず歩き回る正義の味方だが、実際は本書のようであったのだろう。谷津矢車氏が書くのだから、身内や競合相手の暗殺も事実だったのだろうと思わせる。五代綱吉、六代家宣、七代家継から受け継ぐ辺りの情景も、面白く一気に読み進めた。もう少しこの作家の作品に触れたいと思った。
読了日:07月14日 著者:谷津 矢車


いつもの朝に 上 (集英社文庫)いつもの朝に 上 (集英社文庫)感想
家族とは何なのだろうか。父が亡くなったあと画家の母親と文武両道とも優秀な兄との3人ぐらしである。考えてみれば顔の造作も父親には似ていないようだ。と、万引で捕まった裕太は自分の名前の由来が13人目の弟子であるユダに基づくのではないかと考えるのだ。・・・前半は読みにくかったが、隠された父親のメッセージを巡る話からは俄然面白くなってきた。
読了日:07月13日 著者:今邑 彩


始まりの木始まりの木感想
民俗学は自国の「文明」との対峙・葛藤によって生じた。(日本民俗学会サイトより)。携帯電話がスマートフォンになリ、カセットテープがMDを経てCD、メモリに変化していく中で、「民俗学」とは初めて目にした単語だった。本書はそんな民俗学ゼミの修士生藤崎千佳の目線で語られる。本書の装画は「始まりの木」に登場する伊那谷の大柊だろう。これをググってみると、高速道路建設のために移設されたとある。良いにせよ悪いにせよ文明の進行は待ったを許さない。緑を切り倒して建設される太陽光発電所もその一環である。柳田国男、未読である。
読了日:07月11日 著者:夏川 草介


東京すみっこごはん 雷親父とオムライス (光文社文庫)東京すみっこごはん 雷親父とオムライス (光文社文庫)感想
初めて手にした「すみっこごはん」だが、どうやらシリーズ二作目を先に手にしたようだ。料理をレシピ通りにくじに当たったメンバーが作るというとてつもない設定だが、だからこそそれぞれの料理の肝の部分などが明らかになって興味深い。私の学生時代にこのような場所に巡り会えたら、その後の独身生活はもっと実りあるものになったのだろう。料理の一方で、都市の再開発のうねりが押し寄せる。歴史は後戻りできない。未来を示すのは政治の力で、政治家を選ぶのは我々なのだが。有村さんの引用する格言が素晴らしいので、どこかでまとめてほしい。
読了日:07月10日 著者:成田 名璃子


咲見庵三姉妹の失恋 (新潮文庫)咲見庵三姉妹の失恋 (新潮文庫)感想
最近の世間の家族観というものはこの様になってきたのだろうか。芸術家の父親には母親の他に極めて親しい女性がおり、母亡きあとその女性が母親として家庭に入ってきた。妻のいる美術の教諭に心も体も捧げる若き芸術家。自分の世界を確立するために、父親を失った息子をほったらかしにして海外でで活躍する。自分にはたくさんのセフレがいるけど君ともしたいという美男子。・・・そういう世界が描かれた本作品。没入できなかった。
読了日:07月10日 著者:成田 名璃子


まずはこれ食べてまずはこれ食べて感想
大学生5人で立ち上げた企業「グランマ」。業績は順調に伸びているが、メンバーはそれぞれに鬱屈を抱え始めた。そこに現れたのが家政婦筧である。彼女によってメンバーそれぞれが目覚めていくような話ではあるが、根拠が少し弱いと感じた。それにしても一般企業への就職ではなく起業したり、youtuberなどで稼ぐ若者のなんと増えたことか。びっくりな昨今である。
読了日:07月07日 著者:原田 ひ香


リアルフェイス (実業之日本社文庫)リアルフェイス (実業之日本社文庫)感想
手術はある意味芸術であるのかもしれない。「私失敗しないので」のフレーズで有名になったドラマでも、そのスーパー外科医の手技は芸術家の域にあったように。ましてその手術が顔をいじる形成外科手術であるならばである。あちこちに伏せられたポイントをあとから明かすのはミステリーの手段であるが、主人公の明日香の人物設定がとても魅力的で、最後まで一気に読み終えた。知念実希人氏はコロナ禍の現在、twitterでワクチンに対する虚偽の投稿を見つけるたびに糾弾している。お忙しいだろうに頭の下がることである。
読了日:07月07日 著者:知念 実希人


春や春春や春感想
読んだ本を登録しようとしたらすでに既読だった、なんてことが最近多くなった。でも、再読に気づかずに読んで大変面白いのには変わりがなかった。17音で表現する詩。用いる言葉の詳細まで気遣う姿勢にとても感心した。音、文字としての形などの観点を付け加えているのにも心が躍る。TV番組で夏井いつき氏が、助詞の使い方や動詞のあり方など解説するのを目にするが、まさしくそういうことだと納得の一冊であった。
読了日:07月06日 著者:森谷 明子


望月のあと (覚書源氏物語『若菜』)望月のあと (覚書源氏物語『若菜』)感想
シリーズ3作目。第二章からはよく左大臣道長視点で書かれていてびっくりである。あたかも香子の作ったストーリーを現実が辿っていくかのような。和泉式部の歌「あらざらむ 此よの外の思出に今ひとたびの あふ事もがな」も巧みに使われて感心するばかり。それにしても難しいのは漢字の読み。初出のみルビが振ってあるのだが、覚えきれない私には読み飛ばししか手段がなかった。名前だって「藤原賢子」が「かたいこ」でもあり「けんし」でもあるというのはもとより、大弐三位(だいにのさんみ)だなんて。本書の発行は2011年だが続編は?
読了日:07月05日 著者:森谷 明子


広岡浅子という生き方広岡浅子という生き方感想
NHKの朝ドラがどんな内容だったかあまり覚えていないが、大河ドラマの渋沢栄一と同じ時代に女性として活躍した広岡浅子について知りたいと思って本書を取った。期待に反して文学作品ではなく広岡浅子の生涯を紹介した内容であった。あらためて古川智映子の「小説土佐堀川」を読もうかと思案中である。
読了日:07月04日 著者:永井 紗耶子


彼女が天使でなくなる日彼女が天使でなくなる日感想
「兄弟は他人の始まり」なんてフレーズがあるが、親子も人間関係の始まりなのか? 「赤ちゃんは天使だ」というのも別の問題をはらんでいるのか? 幼児教育にはとんと疎い私だが、母親への育児の過度の負担は今でこそ表に出てくるようになったが、私の時代はそれが当たり前のようで、私も妻に随分な負担を強いたと反省している。未婚で親のないモライゴである千尋視点で、あるべき人間関係について考えさせられる一冊であった。
読了日:07月03日 著者:寺地はるな


さざなみのよる (河出文庫)さざなみのよる (河出文庫)感想
なんと言ったら良いのだろうか。第1話で主人公であるナスミが早々にこの世を去ってしまうのである。しかし、この世にはナスミと関わりのあった者たちの世界で消え去ることなく意識されているではないか。鷹子、光の親子までにも。そして途中に出てくる千手観音は災難除け、延命、病気治癒などあらゆる現世利益を網羅し、特に夫婦円満、恋愛成就に功徳があるようだ。私の生まれ年子年の守護神である。オン・バザラ・タラマ・キリク・ソワカ。
読了日:07月03日 著者:木皿泉


高瀬庄左衛門御留書高瀬庄左衛門御留書感想
この作品を読んでして感じたのは「静謐」である。高瀬庄左衛門は元同僚の上司の下、郡方を務めている。息子をなくし、嫁を実家に戻し、小者も去っていって一人きりの生活を送ることとなる。藩では家老の専横があるし、支配の村では一揆蜂起が懸念される。しかし人として生きるために精一杯努め、たまに筆を執って絵を描きながら、他人の困ったことへの助力をためらわないのだ。悲しいほどに不器用な主人公に思い入れしてしまうのは、私だけではないだろう。
読了日:07月02日 著者:砂原 浩太朗


雪の別れ 剣客相談人23 (二見時代小説文庫)雪の別れ 剣客相談人23 (二見時代小説文庫)感想
シリーズ最終巻。今までになく古典に踏み込み、手紙のやり取りに百人一首が使われる展開だった。我が家の孫娘が一生懸命暗記していたのが懐かしい。剣士にして人を殺さないという大門先生、いい味を出している。幕末の江戸、薩摩や水戸の浪人が徘徊する危険な街。そんな背景を上手に生かして、行方不明の札差の娘を探す相談人一行。よもやそんな結末で締めるとはちょっと残念な気がしないでもない。
読了日:07月01日 著者:森 詠


白の祝宴 (逸文紫式部日記) (創元推理文庫)白の祝宴 (逸文紫式部日記) (創元推理文庫)感想
前作「千年の黙」にくらべ、一段とミステリー色が濃くなっている。初めから文庫版を手にしているので、「小少将」と「阿手木(あてき)」のことも全く違和感なし。本作のテーマは「紫式部日記」であるが、作者はあとがきで「つまらない」と読後感その二で述べている。そのつまらなささ、書き手の多様さと思われる点を、こうであったのではないかと再構築している。ここが面白かったポイントだが、ミステリー部分も二転三転。入れ子になって何が何だか分からないまま、最終段階で明かされてほっとした。平安三部作、残すは「望月のあと」である。
読了日:07月01日 著者:森谷 明子

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2回めのコロナワクチン接種して2週間。そろそろ免疫も効き出す頃。
少しホッとする。

新型コロナワクチンQ&A(厚生労働省)

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