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6月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:7770千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)の感想
源氏物語は高校生時代に古文で触ったあと、現代語訳で読んだはずだが、教養程度のことしか記憶にない。本作品は源氏物語あるいは紫式部を研究している途中でつい創作してしまったかのような内容だと感じた。平安時代のあるレベル以上の社会生活が見事に描き出されている。当然のことなのだが、印刷技術がない中で書籍が普及していくには、手作業で書き写すということで、その辺りも巧みに使って謎とされた一帖のアントールドストーリーの謎に迫っている。活字も小さめでページも多いが大いに楽しめた。続きを手に取らなくては。
読了日:06月30日 著者:森谷 明子
陽炎剣秘録 剣客相談人22 (二見時代小説文庫)の感想
今回の舞台はなんと岩手県遠野市。早池峰山を遠望すると、そのいただきが尖っていて「処女の乳房」と呼ばれていたのを思い出す。民話の町遠野で新しいかっぱの成り立ちが本作品で説明されようとは思いもかけないことだった。そして大門。果たしていかなる娘との愛が育まれるのであろうか。
読了日:06月26日 著者:森 詠
熱源の感想
ポーランドといえばショパンの故郷でもあるが、ドイツとロシアに挟まれ蹂躙された地とのイメージがあり、アメリカへの移民の中でもポールスカと蔑まれたとの記憶がある。一方アイヌについては全く知識がない。歌謡曲イヨマンテやアイヌコタンなど、よく耳にすることはあったが、そこにいる住民について考えたことはなかった。幕末から第二次大戦終了までのサハリンのアイヌを描いた作品だったが、情報が過大で右往左往した。カタカナの名前の数々にも苦労した。感じるのは歴史の重みばかりである。
読了日:06月26日 著者:川越 宗一
月影に消ゆ 剣客相談人21 (二見時代小説文庫)の感想
幕末、江戸市中に薩摩の手によるテロリストが跋扈し始める。一党を指揮する月影七人衆の総帥、玄斎との戦いこそが江戸の安寧を取り戻した証であった。
読了日:06月22日 著者:森 詠
ミルク・アンド・ハニー (文春文庫)の感想
読むのに大変苦労した。正直斜め読みである。ハッピーエンドで最後は良かったが、途中はどうにもならなかった。それは倫理観にあるだけではなく「大林」「奈津」の関係に納得できなかったからでもある。解説の辻村深月氏は絶賛であるが本当か?題名がキリスト教から来ているとは知らなかった。脱エジプトで目指す地カナンを表す言葉”a land flowing with milk and honey"だそうな。そして安住の地は見つかったのだろうか。
読了日:06月22日 著者:村山 由佳
殺戮ガール (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)の感想
なんとおぞましいストーリーであることか。殺人が昆虫採集程度の興味なのだ。時系列が長いので中盤までの行程が大変だが、終盤は一気に読ませた。なりたいもの、お笑い芸人の次はラーメン屋か?
読了日:06月18日 著者:七尾 与史
月はまた昇る (文芸書)の感想
ツイッターに「 #保育園落ちた」というハッシュタグが賑わいを見せたのはいつのことだったろうか。未だにこのハッシュタグは使われているので、なかなか大変なんだなぁと考えてしまいます。本書では保育園探しに疲れた女性陣3人が「商店街の保育園」を開園するという話である。それぞれの家庭の事情が絡んで、なかなか面白かった。女性活用と言いながらその環境づくりの遅れていることを、政治家には心してもらいたいものだ。ただ最後まで題名の「月」が何なのかわからないのが残念。「日」でも「星」でもいいのでは?
読了日:06月17日 著者:成田名璃子
運転者 未来を変える過去からの使者 (喜多川 泰シリーズ)の感想
ハードカバーなのだが、自己啓発本のような内容だった。もっと「人間は何をなすために生まれてきたのか」辺りまで問い詰めてほしかった。
読了日:06月17日 著者:喜多川 泰
ほどなく、お別れです それぞれの灯火の感想
前作に比べて特殊能力の出番がなくてとても良かった。葬儀社のお仕事小説を通して、淡々とした様に見える普段の生活のすぐ近くに死のあることが感じられた。葬儀場坂東会館で迎える遺体は毎日あるのだが、70を過ぎた私には身近で経験した死はあまり多くない。そのほとんどが身内であり、その平安を祈るばかりである。回向有縁無縁一切精霊。
読了日:06月16日 著者:長月 天音
ほどなく、お別れですの感想
葬儀社のお仕事話+幻想・霊魂。そんなふうに括って申し訳ないが、主人公自身の、そして仏様にまつわる霊と魂魄と言う説明不能を出された段階で、もう判断の下しようがない。里見道正は真言宗の僧侶の設定だが、あまり真言を唱えるシーンは出てこないのが残念。あ、続きがあるんだ・・・
読了日:06月15日 著者:長月 天音
線は、僕を描くの感想
知らない水墨画の世界に誘ってもらった。道具も技術も知らなくても、知っているような気にさせてくれる。これは巨匠篠田湖山の教育がそうだからなのだろう。講談社のサイトに「線僕」のサイトがある。コミック化されているので登場人物の姿まである。先に見ていなくてよかった。書画用の和紙を「画仙紙」と称するようだ。私もモノクロの写真を和紙にプリントする試みをしたことがあるが、凹凸が激しくなかなか難しかったのを思い出す。「楽しく描く」ことにより青年の心が解き放たれる、そんな簡単な言葉では言い表せないが、素晴らしかった。
読了日:06月14日 著者:砥上 裕將
ホテル・ピーベリー (双葉文庫)の感想
若い男性教諭と小学生の女児。ハインラインの「夏への扉」(同題の日本映画が公開されるとは!)ではそれが可能となる話である。ピーベリーとはコーヒー豆とのことであるが、品種ではなくでき方による分類であるらしい。コナコーヒーは美味しいが高価なので、私がお土産にしたのはカウアイ島のコーヒー豆であった。そうそう、星の写真の話もあった。主人公木崎淳平も、デジタルとフィルムカメラを操っていたんだった。本作は私の好きなもの(ハインライン、コーヒー、カメラ)の話題が散りばめられており、とても楽しく読み終えた。
読了日:06月13日 著者:近藤 史恵
居酒屋ぼったくり おかわり!の感想
5月にNHK朝イチで新玉ねぎの特集をやったことがあった。その時「種類が違う」と言っていたような気がしたのだが、本誌で明らかなように「同じ種類で乾燥させないもの」が正しいようだ。その折には家内にたらふく玉ねぎ料理を作ってもらって堪能したのを思い出す。さてさて「夫婦が夜中に運動するなんて、他にないだろう・・・」とはまたあけすけな。新装なった居酒屋ぼったくり、春夏冬二升五合(商い益々繁盛)のようである。
読了日:06月13日 著者:秋川 滝美
ふうふうつみれ鍋 居酒屋ぜんや (時代小説文庫)の感想
姪のお栄がお年寄りの部屋子として大奥上がった。ルリオの子を勘定奉行久世丹後守用人の柏木へ献上した結果だ。ヤキモチ焼きおえんもスリムになって見事懐妊。揺れた只次郎の心も落ち着いて、ぜんやに平和が戻った。この春は我が家でもいただきものの筍にありついたが、「筍羹」という料理は初めて知ったし、柔らかい蕪をエビのそぼろあんかけでいただく場面もいかにも美味しそうだ。スズキとエビのすり身を混ぜ込んだふわふわと柔らかく儚く甘い、かすてら玉子なるものも食べてみたいものだ。
読了日:06月12日 著者:坂井 希久子
ダウン・バイ・ロー (講談社文庫)の感想
前に感想を書いてから2ヶ月にもならないのに、ストーリーの記憶がなくまた読んでしまった。バイオレンスは苦手だが、つまるところこの作品の本質は「ゲーム」なのだろう。この世が油断のならない戦場で、いかに相手の裏をかくかを競う本庄のゲームなのだ。いやはや。
読了日:06月12日 著者:深町 秋生
あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや (時代小説文庫)の感想
お妙の亡き夫善助のなくなった経緯が明らかになった。しかし近江屋の動機に納得しにくい自分がいた。牡蠣の松前焼き。「肉厚の身から、海の滋養を煮とかしたような汁がにじみ出てくる・・・」涎が出てしまう。
読了日:06月12日 著者:坂井希久子
ころころ手鞠ずし―居酒屋ぜんや (時代小説文庫)の感想
「居酒屋ぜんや」シリーズ第三巻。「大嵐」「賽の目」は捕物帳、「紅葉の手」「蒸し蕎麦」はグルメ小説の体をしている。手毬ずしは材木問屋近江屋の妊婦、若女将のおしのの要望に答えて持参した「寿司」である。はっきりしないのは、潜入捜査までしたのに結論が出ていない捕物の経過と、お妙、只次郎の仲である。
読了日:06月10日 著者:坂井 希久子
無刑人 芦東山の感想
農民の出身でありながら仙台藩に武士として取り立てられ、儒学者として仕えた芦東山を描いた作品。儒学と朱子学の派閥争いにも触れて面白いが、荻生徂徠の「古文辞学」にも興味を惹かれた。真っ直ぐ過ぎて融通も効かず、自説も曲げない、忖度をしない儒学者。24年に及ぶ幽閉もむべなるかな。最初に渋民が出てきたので盛岡市の話かと思ったら、一関市大東町の渋民とのことだった。歴史に埋もれた思索家の話だが、とても面白かった。
読了日:06月08日 著者:熊谷 達也
居酒屋ぼったくり〈11〉の感想
居酒屋ぼったくりの完結編である。シリーズでいろいろと美味しそうな料理とお酒(日本酒、ビール、ウヰスキー、焼酎)を紹介され、私も酒屋に足を運んで発泡日本酒を買うに至った。表紙絵も新装開店の店頭で、めでたしめでたし。だが、新婚の描き方は淡白に過ぎたように感じた。
読了日:06月07日 著者:秋川 滝美
恩讐街道 剣客相談人20 (二見時代小説文庫)の感想
無外流免許皆伝の剣客相談人大門甚兵衛の過去が明かされ、幕末の富山藩の内紛に巻き込まれる。あっちでもこっちでも麗しい恋の花が咲いて、なかなかのサービスでありました。
読了日:06月06日 著者:森 詠
涅槃の雪 (光文社時代小説文庫)の感想
水野忠邦が断行した天保の改革。倹約令、歌舞伎3座の浅草への移転、株仲間の解散などが実施されたが、江戸の経済は著しく疲弊した。そんな時代を背景に、北町奉行吟味方与力高安門佑を取り巻く家族の愛をうたった作品。雪花という名の遊女の本名はお卯乃。うのはなからきらず(雪花菜)と連想して命名したとは、坂井希久子「さくらからめいら」で知った知識があってニヤニヤした。そして雪には別の意味も含まれていた。涅槃の雪は誰がために降るのか。激変する歴史を明治まで生き延びた鳥居耀蔵、幕末の一コマを覗いた気分である。
読了日:06月06日 著者:西條 奈加
ノースライトの感想
ギザギザ屋根の工場は、直射日光を避けて安定した北側採光を取り入れたものだった。それが題名のノースライト。建築士青瀬稔が建てた信濃追分のY邸の特徴が北側採光だった。しかしなぜか施主が住む気配がない。こうして殺人のない推理小説が動き出した。ブルーノ・タウトが高崎でデザインした工芸作品の椅子がきっかけとなり話が展開していく。建築士同士の羨望、嫉妬、競争心やブルーノ・タウトの功績、日本経済の浮沈、家族のあり方など多方面を網羅して、全く飽きさせることのない作品であった。
読了日:06月04日 著者:横山 秀夫
暗闇剣 白鷺 剣客相談人19 (二見時代小説文庫)の感想
「白い鳥は投げ餌である」との中馬死に際の一言が、文史朗を救い暗殺剣秘剣白鷺の敗れる一因となった。今回はテロリストを動かす長州藩に対抗すべく、なんと奉行所からの依頼で動いた剣客相談人であった。
読了日:06月02日 著者:森 詠
読書メーター
7月には久々に私も参加できる展覧会が開催されるので、作品の準備をはじめました。
- 会期:7月17日(土)〜25日(日)
- 場所:土浦市民ギャラリー
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