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YOUTH

青春とは人生のある期間ではなく 心の持ちかたを言う
by Samuel Ullman

宇江佐真理著 「蝦夷拾遺 たば風」

2008年05月25日 | 
函館生まれの著者の、郷土愛が書かせた作品集ですが、随所に著者の視点が小気味良くちりばめられています。

収録されているのは以下の六作品です。

たば風
 元女中であった現金な実母の下、婚約者が病に倒れたことによって別の男の下に嫁いで男児をもうけた。お家騒動で夫が危険な立場になり、自らも家を動けない状態になってしまう。
恋文
 夫の定年退職とともに離婚を要求する妻が話題になり、「熟年離婚」という言葉もできた。幸いにも我が家に未だその兆しはないが、時に言葉にすることが如何に大事か考えさせられた。
錦衣帰郷
 最上徳内が故郷に錦を飾る数日間を描いたもの。不勉強にして最上徳内を知らず、読後にネットで調べました。
柄杓星(ひしゃくぼし)
 北斗七星ですね。上野の山で破れた彰義隊に加わっていた仙太郎は会津を経て蝦夷地箱館に向かいます。明治5年に鉄道が開通した頃、杉代は柄杓星を見て何を思うのでしょうか。
血脈桜
 松前藩14代藩主徳広の正室光子に侍る6人の娘、うめ、さき、みる、とみ、さな、よねを中心に話が進められる。血脈桜は今も善光寺で輝きを保っているようです。
黒百合
 徳川慶喜が体制を奉還して江戸の街には職を失った武士がたくさんできたわけです。侍の娘の中には実を苦界に落とす者もあったはずです。蝦夷の地に生える黒百合の押し花を手にした千秋の運命が切り開かれることを祈ってやみません。



全体を通して幕末の抗しがたい歴史のうねりに翻弄される姿を切なく描き出しています。切ないものですなぁ~。


解説の蜂谷涼氏は読後すぐに松前を訪れたそうです。


宇江佐真理著 蝦夷拾遺 たば風
文藝春秋文庫
ISBN978-4-16-764009-5 539円
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