十和田湖寄りの奥入瀬渓流にほど近い山奥に日本一のブナの巨木「ニドムカムイ」(アイヌ語で「豊かな森の神」の意)があると知り、一目見ようと訪れた。国道102号からしばらく山道を行くと熊の目印を見つけ、車を止めて恐る恐る原生林の中へ分け入った。
まわりのブナ林と比べてもひときわ大きなニドムカムイは、幹回り601センチメートル、樹高30.2メートル、推定樹齢400年とある。昔からきこりの間で3本に分かれた巨木を神様としてあがめたり、三つ又の木は重心の見極めが難しく伐採に危険が伴うため「三つ又の木は伐るな」といわれてきた。そのため、このブナは「森の神」として残されてきたそうだ。 確かに幹が三本に分かれていた。
ニドムカムイを後にして奥入瀬渓流に向かい、石ヶ戸休憩所に立ち寄った。コロナ禍による影響か奥入瀬渓流にも人影はないが、森の中は薄緑色に輝く新緑の息吹に満ち溢れており、独り占めした気分で感動ひとしおだ。
2020年5月