ベッドの上の生活から一気に。
車椅子が貸与されたことで、その練習と称して毎日、病室から廊下を通ってエレベーターに乗り、1階フロアにある売店まで繰り出したのだ(笑)
この頃、同じ部屋のおじいちゃんの1人が退院して、代わりに俳優の渡辺謙似の若い(といっても当時の僕より幾つか年上)お兄さんが入ってきた。
彼はヘルニアを患っていた。
新しいお隣さん!
年下の僕にも毎朝すごく丁寧に挨拶してくれたし、面倒見が良かった。お名前は忘れてしまったけれど。
車椅子で出歩ける?ようになって、しょっちゅう病室から居なくなる僕を、様子を見に来た母と一緒に探してくれたことが何度かあった。
僕は同室のおじいちゃんたちを苦手に思っていたが、彼は社交的な人のようで彼らともすぐに親しくなった。
それを見て、少しは見習おうかとも思った。
この頃はリハビリに勤しむ日々が続いた。
リハビリ用の施設があり、老若男女さまざまな人たちがそこにいた。
最初は立ち上がる練習、次いで手摺りに掴まりながらの歩行練習。
病棟の廊下でも歩く練習をした。
最初の頃、加減が分からず長いこと歩いて「無理しちゃダメ!」と怒られたりもした。
ちょうどこの頃だったと思うが、いつものように車椅子で売店に行き、エレベーターを待っていたときに、かつてアルバイトをしていたときの塾長とばったり出会った。
約4年ぶりの再会。
彼は母親を病院に連れてきていたようだった。
「ん?こんなところで何しとんがよ」が第一声だった。
「見れば分かるでしよ。入院してるんですよ」
「実は脚、折っちゃって。ひと月くらい居ます」
もともとお互いに会話は少ないので、
「そうか、身体、大事にせなあかんぞ」
くらいの会話をして別れた。
そして本格的なリハビリが始まった頃には7月になっていた。
続く