以下はDNで書いたもののリニューアル。
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当時の入居者で顔見知りになっていたのは、職場が同じオッチャン(今もいる)、ガチやべぇの兄さん(退去済み)、そして他力本願の君(退去済み)
名前を知らないので最後に挙げた若い子を僕は『タリキ』と呼称していた。
よりによってこのドカ雪の年、彼が契約していたのは入口から一番奥まった駐車場所だった。
最初に日中だけで約40cm積もった日、帰宅してすぐ除雪に掛かったが、仕事の疲れから数メートルしか掘り進めなかった。
2日目の夕方、僕を見つけた彼は「除雪、してもらえないんですか?」と声を掛けてきた。
「入居者ガイド読んでない?ここは入居者が除雪をするんだよ」と答えた。
この日も同じように敷地に入れずに路上駐車をする車が多数あった。
彼は「困ったな…」と呟いて、車で何処かに去った。
後で知ったが、少し離れた高速道路のガード下に路駐をしていたようだ。
僕も管理していた会社の人にひと言ことわってすぐ近くのガード下に路駐をした。
そこから歩いて物件まで戻って来た彼は僕が除雪に着手し始めたのを横目に階段を上っていった。
翌朝、また同じくらい積もってほぼ元通りになった⤵
確か40、50、40cmと積もったのだったか、積雪量が多すぎて除雪は遅々として進まず。
その日もバイトだった彼は帰宅の際に車で除雪の進み具合を見に来た。
自分でどうにかする気はサラサラないのだと分かった。
前日から2、3メートルしか掘り進んでいないのを見て車をガード下に回した。
真っ暗になってもザクザクと除雪を進める様子を伺っていたのは間違いない。
一度だけスノーダンプを使っているのを見たが、すぐにその場に放り出してやめてしまったあたり、根性も無さそうだった。
ちなみにガチやべぇの兄さんは帰省中だったようで、彼の車に積もった雪は1メートル近くになり、巨大な雪うさぎのようになっていた。
数日後の話になるが、帰省先から戻って来た日に自分の車の雪を見て「ガチやべぇ…」と呟いたのが印象的だった。
3日目だったか、付近の除雪を請け負っていた建設会社の人が見かねて声を掛けてきた。
「タダではできないけど、◯万円で駐車場の除雪をしてやろうか?」
「多分ダメだと思いますが、他の住人に聞いてみます」と返事を保留した。
やはりケチ揃いの住人たちは割り勘になるとは言え、自分の懐が痛むことには反対だった。
除雪はしてもらいたいが、カネを出すのはまっぴらごめん…まぁ分かっていたが。
そうして4日目の午後になって、ようやくメイン通路の3分の2まで掘り進んだ。
建物のすぐ横が空いていたので、仮の住まいにすることにしてようやく路駐の日々が終わった。
そこにたどり着くまでにいくつか契約者なしの駐車スペースを中継地点にしたのだが、これ幸いとタリキが空き巣狙いするので閉口した。
だから、仮の住まいにした場所を残して全て雪捨て場にして埋めた(笑)
やはり掘り返すのは嫌なようだった。
休みが続いたので、それから数日は仮の駐車場所から車を動かさなかった。
その間、何度か彼はメイン通路に車を置こうとしていたようだが、他の入居者からのクレームを恐れたか、ずっと路駐を続けていた。
僕も見つけたらレッカー移動してやるつもりでいた。
そうして…
雪がとけて春になり、いつの間にか彼は退去して居なくなっていた。
本当にヘンな奴だった…。