カメラを持って出掛けよう

仕事と音楽の合間に一眼レフとコンデジで撮った写真を掲載しています。

ようやく秋

2020年09月15日 | 播州
ようやく秋めいてきました。
しかし今年はコロナの影響で岸和田のだんんじり祭が中止ということでなんとも寂しい夏の終わりになりそうです。





小説「Obralmの風」



岳は今夜の宿泊先に思案を巡らせた。
(駅前の観光案内で旅館かホテルの紹介を請うか・・・)
深刻な病を抱えながらも今夜の寝泊りの心配かと、岳は自分の思考に苦笑した。
自分の体に宿った病巣は細胞を蝕み屋台骨である生命をも消却しようとしているのに、思考回路は生命維持の基本である寝食の確保を求めて止まない。
もしかすると後者の方が勝れば病は消えて無くなるのではないだろうか、と独りよがりな考えを生み出してしまう。
生きたい、このまま自らの人生を閉じたくはない。
黒坂の駅を過ぎた頃から岳は急な睡魔に襲われ腕組みしたまま居眠ってしまった。
列車の速度が落ち、心地よい揺れが少なくなって岳は眼が覚めた。
車内放送でまもなく終着駅の伯耆大山を告げている。
窓の外に眼をやれば予想通り景色は夜の帳に覆われていた。
駅で宿の案内を請うと運よく運良く駅前に旅館が一軒あり、岳はそこで一夜をしのぐことにした。
「ご出張ですか?」
と受付の女将らしき女性は尋ねた。
「ああ、まあそんなとこです」
よく考えてみれば朝からスーツ姿にネクタイをしているんだから他人から見れば仕事に思われても仕方がない。
通された和室に寝転んで天井を見詰めていると急に睡魔が訪れた。
阪神間から遠く離れた場所に来てみると、今受け止めたくない現実がよそ事のように思えた。

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