僕が買い物かごに入れた柑橘類の単価を打ちこもうとして、
若い女性のレジ係が、かごから取り出し、
僕の方へ見せながら、
「グレープフルーツですか、サンフルーツですか」と聞く。
僕は戸惑う。
品名など確認せずに買い物かごに入れたのだから。
長いつけまつげの彼女が差し出している丸い果物を見ながら、
僕は心の中で「確かに名前も値札も付いていないな」と思う。
僕は咄嗟に、半ば冗談に、「安いほうにしといて」と言った。
と、彼女は0.1秒間考えた後で、
「じゃ、・・」と言ってレジに単価を打ちこんだ。
この緩やかな、
温かな、
庶民同士の心と心とが触れ合うような、
言わば、
値段の付けようのない対応に乾杯を。
僕は特別な感謝の意を込めて、
「ありがとう」と彼女の心に対して言ってレジから離れた。
♭ いいじゃないの、幸せならば。 ♯
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