アラフォーじゃぱん

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私小説「ある女の一生」

2021-12-18 10:44:00 | 日記



今年の春、私はとうとう35歳になった。
とうとう、というほどでもないが、現実を体に刻もうと口に出してみる。
「35歳。。」
みんなはどんな暮らしをしているんだろう、そして私はこれからどこへ向かうんだろう。
こんなことをずっと考えている。
というのも、ふうてんの寅さんのような性格や暮らしをしているせいか
私には現実というものに疎い。
そんな私を唯一、叱ってくれるのが母。
昔も今も、小言を言われればむっとくるが、恋人もいないし友達も結婚して子供もいるとなれば、
親友のような存在でもある。
母は、私の性格とはうってかわって働き者、おしゃべり上手、世渡り上手。
少しは似ればよかったなと思いつつ、日がなぼーっと暮している。

そうあの時から。

23歳、私は期待に胸を膨らませて大手商社へ入社した。
母の後押しはもちろん、父や祖母も喜んでくれた就職。
私自身も、期待と自信に満ち溢れていた。
黒のスーツを着てバッグをひっさげ、髪の毛をひとつに縛りいざ出発。
入社日当日、会社のエントランスを通過し、自分の部署へ向かう。
「えっと、24階はー」と無数にある数字の番号から24を探しているうちに、
後ろから「24階お願いします」という声。
朝の通勤時は、みんな急いでいる。故にぼーっとエレベーターの中でつったってるわけにいかないと知った。
チーン、という音と共に流れ出る人。
私もその後についていく。
渡されていたカードキーを通し、○○オフィスの中へ入室した。
「おはようございます」とまずojtの先輩が気づいて声をかけてくれ、
「日比谷さんのデスクはここだから」と示してくれる。
私は、言われた通りの場所へ行き、腰をおろし、「時間になったら、自己紹介してもらうね!」と言われた。
私は、事前に準備していた内容を空で思い出しながら、緊張に身を包まれていた。
そこへ、「あーら、新しい子?名前なんていうの?○○ちゃん?よろしくー」と、
2人組に声をかけられた。
この2人こそ、今後の私の人生の深淵にコミュ障という悩みを深くした問題の先輩、安田さんと羽鳥さんだ。
ふたりとも転職してきて、1年程だという。私は「よろしくお願いします」といいその場に立った。

あの頃、今思い出しても何もできなかった自分が歯痒い。
そして今の生活の根本的原因を見つめ続けている。
何かあると母にあたり、父と喧嘩し、泣いたあと布団の中で必ず思う。
「私って社会に必要とされていない。もう死んでもいいや。。」
昔は、自分でいうのもなんだが明るくて元気で正義感が強いタイプだった。
男子にも負けないくらい強くて、よくいじめられている女の子を守る子だった。
少し頭が悪くぼーっとすることも多かったが、基本的に弱いものの味方だった。
それは大人になっても変わらない。
「将来、私はキャリアウーマンになって世界を飛び回るんだ」という子供らしくない夢も描いていた。

しかし、現実はそう甘くない。
毎日、安田さんからは怒られ、羽鳥さんからは嫌味を言われ続け、
私の心は病んでいった。
ある朝、口の中に違和感を覚え、うがいをすると血が混ざっていたこともある。
「だから、何回いったらわかるのよ」
「新人て宇宙人みたいだよね」
「はやくしなさいよ、のろま」
あげくのはてに
「これゴミだから妖怪ってマジックで書いて捨てといて」
と言われた。
胸の中ではわかっていた。「先輩にとって私という存在は疎ましいんだろう」
そして、「この会社に私の居場所はないんだ」
数日後、私は退職届を出した。
上司からは、「訴えないでね」とまで言われた。

とまぁ、あれから10数年。
今、私はふうてんの寅。
自由気ままに生きている。
あの頃の傷は、いまだに痛む。
けれど、どうしようもない。
ため息まじりで「私は、ただの人間でもない。人間にさえもなれない。妖怪だから」と。
それは、私にどうしようも変えがたい真実であった。

しかし、母はそんな私の心をつゆ知らず、
早くまともな仕事しなさいと言ってばかり。
私も焦って探してきては、失敗ばかりで、もう生活保護をもらうか考えていた頃。
あるドラマを見た。
「それは、少女が35歳の自分にタイムスリップして夢を叶える」という話である。
なかなか全体的に明るい雰囲気ではないが、ラストはアナウンサーになって好きな人とも結婚。ちゃんちゃんといった内容である。
この物語を、みんなはどう思うんだろうと一瞬思った。
ひねくれ屋は、そんな簡単に人生がうまくいってたまるかと思うだろう。
反対に正直者は、よかったよかったと自分の可能性に期待するのだろうか。
どうやら私は後者のようで、ひとしきり最終話をみて泣いた後、
「私は会社働には向いてない。絵や文を描く仕事につこう」と決心した。
そう決意すると、行動力だけははやい私は、こんなふうに文章を書いているのである。

「35歳」
数多くの女性たちは、どうしているだろうか。
私は、その数多くの人間の、いや宇宙人か妖怪かもしれないうちのひとりである。
今、私のことを疎んだ人たちに仕返ししてやりたいとか、そういった気持ちはない。
そのかわりに、私は願っている。
誰かを疎んだり、蔑んだりいじめることのない人生でありたい。
誰かを幸せにし自分もハッピーでいられる人生にしたい。
キャリアウーマンにはなれなかったけれど、
周囲の期待も削いでしまったけれど、
私は私でありたい。
そういう願いを切に抱いている。

終わり。


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