ばりん3g

マイクラ補足 兼 心理学のつぶやき

「理論上、性癖をめっちゃ煮詰めたゲームが一番課金される」プレイヤーの課金動機について心理学的に解説。

2023-08-15 | ゲーム

問題。

理論上、課金による売り上げが一番伸びるゲームは次のうちどれでしょう。

補足として、すべてのゲームが一定以上のクオリティを保証しているものとする。

 

1:課金しないとまともに収集できないゲーム(例:ASPHALT9)

 

 

2:課金しなくても十分に遊べるけど、課金したほうがもっと楽しめるゲーム(例:原神)

 

 

3:売上という概念をゴミ箱に捨て性癖を煮詰めたゲーム(例:ブルーアーカイブ)

 

 

正解は…3:売り上げという概念をゴミ箱に捨てただ性癖を煮詰めたゲームでした。

どうでしょう。この問題正解できましたか? できなかったとしてもあなたの回答を監視している公的機関は存在しないはずなので、事前解答を撤回して正解を答えられたことにしても問題ありません。よかったね。

 

 

はい、理屈と根拠を説明します。

プレイヤーの課金動機として最も有力なのは購入に関する合理的な根拠と状況によるもの。プレイヤーはそのゲームが個人的に好きだったり、プレイヤーがそのゲームのクオリティを認めていたり、値段設定が適切なものだったりするときに、プレイヤーは課金したくなるそう。

また、独立した要因としてゲームに対する支援が挙げられる。そのゲームが凄くよくできていて、大好きで大好きで仕方なくて、使っちゃいけないお金を使ってでもこのゲームを続けたい、続いてほしいという熱意が課金意欲を掻き立てているという。

なので、特定の描写に異常なまでの拘りを見せているようなゲームや、課金しなくても充分にプレイできるし課金額も負担にならないちょうどいい塩梅なゲームは、結果的にとても儲かるのです。具体例については「ブルアカ セルラン1位」とでも検索してみて。

 

今回引用した研究を参照にするならば、1:課金しないとまともに収集できないゲームはあまり集金できそうにない。

2:課金しなくても十分に遊べるけど、課金したほうがもっと楽しめるゲームも確かにお金は集まるだろう。課金動機の1つに反復作業の回避や待ち時間の省略などの、不快感解消のためのものもある。が、上記の購入に関する合理的な根拠と状況によるものには劣るという。

もっとも、今回の統制条件として挙げた「一定以上のクオリティを保証している」ことが一番の課金理由だったりするが

 

基本的に、Free-to-playなゲームの課金総額の過半数は上位数パーセントのプレイヤーにより積み上げられ、8~9割のプレイヤーは課金しないか微額の課金を行っている。

ここで、ガチャチケット等の課金アイテムをとてもたくさん配ったとしよう。

上位数パーセントのプレイヤーはたとえたくさんのアイテムをもらったところで、課金行為は簡単にはやめないし、増減もほぼないだろう。

8~9割のプレイヤーはシンプルにアイテムがたくさんもらえるためとてもうれしくなる。

また、そうしたお配りは新規プレイヤーの参入機会にもなる。初期費用が保障されているからだ。

この主張は研究ではなく、実際のゲームにて起きた事象を参考にしている

 

理論上、性癖をめっちゃ煮詰めたゲームが一番課金される。

そして、課金しないと解消されない不快感を増やすよりも、課金したくなるような設計を組んだほうが、結果的に儲かるのだ。

 

 

参考文献

Juho Hamari, Kati Alha, Simo Järvelä, J. Matias Kivikangas, Jonna Koivisto, Janne Paavilainen. Why do players buy in-game content? An empirical study on concrete purchase motivations. Computers in Human Behavior, Volume 68, 2017, Pages 538-546, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2016.11.045.


「直観的操作」とはなにか? 心理学の観点から"やさしく"解説。

2023-08-09 | ゲーム

直観的操作について心理学的に1から説明しようとするとだいぶややこしくなるため、今回は図を引用して簡単に済ませる。

どれぐらいややこしくなるのかというと自己効力感の定義とか動機付けのダイナミックな変動とかを記載することになる。多分論文読んだほうがはやい。

 

引用:中谷, 矢野 (1993)

図はゲーム(図ではRPGと記載)とプレイヤーのやり取りを可視化したものだ。

Inputの部分ではプレイヤーが実際にコントローラとかで入力してゲームを操作している部分。

Outputの部分では操作されたゲームが音とか映像とかで出力されて、それをプレイヤーが感じている部分。

このInputとOutputのサイクルがゲームプレイのなか絶え間なく続くわけだが、俗に「直観的」と言われる要素はこのサイクルを滞りなく続けるためのテクニックだと思ってほしい。

 

例えばInputの部分。ゲームのプレイアブルキャラを動かすために3つも4つも5つもボタンを押さなきゃいけないのはキツイし、攻撃するために90年代の格ゲーのコマンド入力が毎度求められていたら嫌になること間違いない。

ほとんどの場合、操作は手段であり目的ではない。プレイヤーはゲームを操作したいのではなく、ゲームを操作して目的を達成したい。なので、手段が複雑であれば目的達成はそれだけ理不尽に難しくなる。

だから、移動はスティックを倒すだけ、攻撃はボタンを押すだけ。これで問題ない。操作を簡便化してもやりがいは減らないし、むしろ操作のしやすさはプレイ体験の向上に直結する

 

もっと言えば、ゲームのOutputがInputしたプレイヤーの意図とずれていないかも重要になる。わかりやすいのはゲームの入力遅延、動いてほしいというプレイヤーの意図が遅れて反映されるのは、どのゲームにおいても致命的なはず。

また、Outputのスピードが速すぎても認知できずにイライラするし、遅すぎてももっさりしてイライラする。これはゲーム全体の速度やパラメータに関するお話であり、こうした要素も「直観的」に繋がるのだ。

 

直観的操作のお話は心理学でいうところの有能感の欲求に当たる。

ゲームを滞りなく操作できるというのは、善いゲーム体験の礎となるのだ。

 

 

参考文献

Klimmt, C., & Hartmann, T. (2006). Effectance, Self-Efficacy, and the Motivation to Play Video Games. In P. Vorderer & J. Bryant (Eds.), Playing video games: Motives, responses, and consequences (pp. 133–145). Lawrence Erlbaum Associates Publishers.


ゲームだって無理やりやらされたらクソつまらなくなる。

2023-08-08 | ゲーム

ゲームが楽しい理由はいろいろあるけれど、その1つに「自由に遊べる」というのが挙げられる。

どんなゲームを遊ぶか。いつ、どこで、だれと、どのように、どれぐらい遊ぶか。そしていつ辞めるのか。

ゲームの楽しさは、プレイヤーが好き勝手にいろいろ決定できることに一因があるのだ。

この好き勝手にいろいろ決定できる権利は私たちが根源的に求めているものとされ、心理学では自律性の欲求(Deci and Ryan 2000)なんていわれてる。

 

じゃぁ、この自律性の欲求をゲームプレイで満たせなくしたら、どうなるだろう?

このゲームをやってくださいと言われる。この時間から、この場所で、指定した人と、、指定したプレイングで、この時間まで遊んでくださいと。途中の離脱は許しませんよと言われる。無理やりやらされたとき、それでもゲームは楽しいものになるのだろうか

 

動機付け理論の観点から言えば、これはNOと言える

これに関しては理屈うんぬんよりも実証があるからそれを引用しよう、Dennis Charsky, and William Ressler. (2011)だ。

この研究は世界史の授業の代替としてCivilization IIIを採用し、その運用の仕方によってテスト成績にどう差が生じるのか、また意欲がどのように変動するかを調べたものだ。

この研究の主題はゲームプレイそのものよりかはゲームを使った学習方法にあるのだが、それは置いといて。ちょっとこの実験の手続きを一部引用するので読んでほしい。

 

米国コロラド州の公立高校所属を対象。1群28名、2群25名、対照群29名で構成。群間に成績差はなく、従来の指導に対する動機付けも差はなし。

授業目的としてCivⅢのコンセプトマップ(単語間の関係を可視化することで概念学習の手助けとなるもの)の作製を掲げた。1群は研究者が事前に作成したマップを提供され、これに沿った内容をゲームから見つけるように指示された。2群はプレイとともに自分自身のコンセプトマップの構築を指示された。対照群はコンセプトマップに関するものは課されず自由にプレイした。

CivⅢを2週間ほどプレイ。生徒はプレイ後に理解度に関するテストがあることを告げられた。授業外でゲームをしないこと、ゲームのヒントや戦略を求めないこと、授業活動について他の人と話し合ってはいけないこと。

 

この手続きで実験した結果、1群と2群は意欲のスコアが下がったという。

私はこの論文を読んだとき「そりゃそうだろ」と思った。だって手続きそのものが自律性の欲求をおもいっきり阻害しているんだもの

授業という決められた枠組みの中で、CivⅢとかいうマニアックなゲームをやらせる。授業外でのゲームプレイは禁じられているし、課題とテストが目的だからプレイングも固定される。そして授業の枠組みに組み込まれているから、離脱は容易じゃない。

どんなゲームを遊ぶか。いつ、どこで、だれと、どのように、どれぐらい遊ぶか。そしていつ辞めるのか。全部自分で決められないんだもの。嫌になっちゃうわこんなの。というか従来の授業形態が意欲削っている理由の1つだからなこれ。

なおこの論文のオチは、課題もなにもなく自由にプレイしてもいいと言われた対照群がいちばん意欲高かった、というね。

 

ゲームだって無理やりやらされたらクソつまらなくなる。

ゲームを研究している専門家も、意外と見落としがちなポイントである。

 

 

参考文献

Dennis Charsky, and William Ressler. “Games are made for fun”: Lessons on the effects of concept maps in the classroom use of computer games. Computers & Education Volume 56, Issue 3, April 2011, Pages 604-615