ばりん3g

マイクラ補足 兼 心理学のつぶやき

「SNSをやりすぎるとうつ病になる」と言われているのはなぜだ?

2021-07-31 | 旧記事群

2014年に発表された論文によると、Facebookの使用は承認欲求を媒介することでうつ病に影響を与えることが分かった。

 

「SNSをやりすぎるとうつ病になる」「SNSをやりすぎると対人関係がうまくいかなくなる」という言葉は少々説明不足だし、あまりにも大雑把すぎる。

確かに、そう訴える彼らが認知しているような、SNSを使用することで気分を悪くするなどの悪影響を被る人もいる。

だが同時に、こういった研究ではSNSを使用することで逆にうつ病が改善したり、気分が高揚したりする人も観測されるのだ。

両者の差分は何か。

そこから得られる、SNSを使用すると悪影響を被る人の条件とはなにか。

それを見極めずに単一的な思考でSNSが悪い、SNSをすることで何々が、と訴えるのは……言葉を選ばずにいうと悪手でしかない。

 

原因となるのは承認欲求だ。

ここでいう承認欲求は「他人に自分を認めてほしい欲」という認識でOK。

承認欲求は集団で生きる限り、というか人間である限り発生するものであり、身を置く集団に無下に扱われる(例えばいじめ、虐待など)程度ではそう簡単に潰えたりしない。

だが身を置く集団が対象を無下に扱っていれば、もしくは対象が正当に評価されるような集団に居なければ、いつまでたっても欲求は解消されない。

解消されない欲求はどこで満たす? どこで解消する?

解消されない欲求へのいら立ちはどこへぶつければいい?

そう、誰もが扱えるSNSがそういった悩みを打ち当てる場所となる。

 

そこからの経路はかなり複雑だが、基本的に承認欲求を起点とする摩擦や依存へとつながり、結果的に悪影響へとつながっていくのだ。

満たされない欲求は、次第に暴走していく。

ゲームをやりたい子供からゲームを取り上げても、子供はなにをしてでもゲームをしようとするだろう。ゲームができない苛立ちから、子供はあらぬ行為に出ることだろう。

それとほぼ同じことが、SNSで、インターネット上の対人関係で発生するのだ。

 

「SNSをやりすぎると対人関係がうまくいかなくなる」のではない。

「周囲との対人関係がうまくいかなかったからSNSをやりすぎる」のであり、「SNSでの対人関係がうまくいかないからうつ病になる」のだ。

SNSを使用すると悪影響を被る人間の特徴の1つは、承認欲求が満たされていないこと

SNSが単体で悪者扱いされる問題では、決してない。

 

 

参考文献

Edson C.TandocJr,PatrickFerrucci,MargaretDuffy (2014) Facebook use, envy, and depression among college students: Is facebooking depressing?


努力を重ねても成績は良くなるという『当たり前』

2021-07-30 | 旧記事群

2011年に発表された論文によると、知能は学業成績と最も深く関係しており、次いで知的好奇心と努力の掛け合わせが関係していたという。

また、知能の学業成績への影響は性格を介さずに発生するとの事。

 

「もともと頭がいい人はテストでもいい点がとれる」

「テストという目標のために熱意と努力を絶やさない人もテストでいい点がとれる」

「そして、性格がどれだけよかろうが悪かろうが、もとからある知能の妨げにはならない」

「ただし、性格次第では好奇心を働かせられるかどうかが変わってくるので、性格を遠因とした好奇心の動きようで成績は変わるかもしれない」

私は今、読者が各々の場で体験したであろう当たり前というものを言葉にした。

今回の議題は理屈もなんとなくわかってしまう事々だし、そのなんとなく思いついた理屈がほぼそのまま通用する議題でもあるのだ。

私はこれ以上この議題で風呂敷を広げることができない。

なので今日はこれでおしまいだ。

 

 

1つ言うことがあるとすれば、

こういう当たり前とだと言われる現象を統計と論理で分析するのも心理学だと言える。哲学と混同されがちなのは、「当たり前に焦点を当てる」という本質が似通っているからなのだ。

だから、心理学で分析した結果には、今回のような意外性のないものもたくさんある。大昔の偉人が残したことわざ通りの結論になることもある。当たり前だとされてきたことがそのまま結果となることもある。

 

それでいい。

意外性を求めることが学問の本質ではない。

 

 

参考文献

Sophie von Stumm, Benedikt Hell, Tomas Chamorro-Premuzic (2011) The Hungry Mind: Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance.


「年齢を重ねるごとに、好奇心は薄れていく」は適当ではない。

2021-07-29 | 旧記事群

2021年に発表された論文によると、人間は自分には時間がないと認識することで好奇心が低下することが分かったそう。

 

理屈としては、人間は「自分には時間がない、余裕がない」と認識することで、感情を起因とした行動を優先するようになるからだという

人間は「自分には時間がない、余裕がない」という不安を抱えると、それを解消するために奔走し始めるのだ。金銭的余裕がないから浪費するような、そんな感覚。

余裕がないことを言い訳に、長期的な目標の起点になる好奇心に背を向ける。金銭的余裕がないから貯金せずに浪費するような、そんな感覚。

余裕がないという思い込み(もしくは事実)は、それなりに人を狂わせる。経済面の題材で説明したほうがわかりやすいが、好奇心にもこういった影響があるのだ。

 

ちなみに、もともとの論文の題材は加齢と好奇心の関係を調べたものである。

結果としては、加齢と好奇心は「自分には余裕がない」という思考を介することによって負の相関を形成するとのこと。

 

「年齢を重ねるごとに、好奇心は薄れていく」は適当ではない。

「余裕がなくなるほど、好奇心は放っておかれる」のだ。

 

 

参考文献

Li Chu, Jeanne L. Tsai , Helene H. Fung (2021) Association between age and intellectual curiosity: the mediating roles of future time perspective and importance of curiosity.


「子供は作りたくないわ。だってお金がかかるんだもの」

2021-07-28 | 旧記事群

2011年に発表された論文によると、子供がいることによる親の幸福度は個体差と環境に大きく左右されるが、一般に子供の数だけ幸福度は下がり、その効果は40代を境に逆転するとのこと。

 

子供の存在そのものが与える幸福度の影響は、個体差によって点でバラバラだ。「子供を作ると、親も子供も不幸になる」とは断じて断言できないほどに複雑怪奇なんだ。

だが「子供を作ると、親も子供も不幸になる」という主張は根強いし、測定方法に難はあるが、そういい張る論文も数多い。

どうしてそのような主張が幅を利かせているのか?

下手に綴ると混乱を招くので、結論と要点だけ載せておく。

 

同論文において、

若年層の家族において子供はいればいるほど幸福度は下がるが、これは国からの援助が多い国ではこの低下率が小さくなっていったという。

また40代から発生する子供の数だけ幸福度が上がるという現象は、その子供に老後の生活をどれだけ援助してもらっているかによって大きく変動するという。

 

ちなみに、借金の額と幸福度には大きな相関があったりする

……身もふたもないが、そういうことだよ。

 

 

参考文献

Rachel Margolis,Mikko Myrskylä (2011) A Global Perspective on Happiness and Fertility.


「年上の言うことは正しい」わけがない。

2021-07-27 | 旧記事群

2019年に発表された論文によると、若年層は睡眠時にネガティブな記憶が促進されるのに対し、高齢者は睡眠時にポジティブな経験の定着が促進され、また睡眠時間が長ければ長いほどネガティブな記憶が少なくなるとのこと。

また、どういう形であれ睡眠による記憶の定着促進はどの年齢であっても発生するともある。

 

「年上の言うことは正しい」のような、年齢という権威を借りた脅迫や押し付けの効力に、ヒビが入った瞬間である。

人間は年齢によって感情の定着に偏りが生じたり、どの反応に敏感なのかが全然違ったりする。理由は複雑怪奇だが、おおきいものにホルモンバランスがあるらしい……?

年齢によって感情の定着に偏りが生じるのであれば、年齢を根拠とした正しさというものは成立しない。年寄りだから正しいわけではないし、年寄だから正しいということもない。もちろん、若年層だからという言い訳も通じない。

高齢者はそういわれるだけの人生経験を持っているが、それが有効に使えるかどうかは不明瞭だ。むしろ経験と感情の偏りからくるバイアスにとらわれる可能性のほうが高い。

 

「年上だろうが何だろうが、聞き入れた情報はきちんと精査しよう」

あと寝不足は最悪記憶障害を引き起こしかねないからな! 寝なよ!

 

 

参考文献

Sheng-YinHuan,Kun-PengLiu,XuLei,JingYu (2019) Age-related emotional bias in associative memory consolidation: The role of sleep.