ばりん3g

マイクラ補足 兼 心理学のつぶやき

勉強をより効果的で面白いものにする、策の1つ。

2022-01-21 | 旧記事群

2008年に発表された論文によると、グループロールプレイによる歴史の授業は高校生の歴史の成績をあげ、また批判的思考の向上も見込めたという。

具体的には、歴史の基礎知識を身に着けた学生達がそれぞれの役割を持ったグループに分かれ、題材を模したやり取りを行ったという。論文には「冷戦時の国際連合」を題材としたという記述があり、1949年のベルリン危機とベルリン空輸について、東西勢力を模したグループが当時の主張を再現したり、もしくは主張の論理を組み立てていったのだそう。

このグループロールプレイを基礎知識を教えたうえで行ったところ、ロールプレイを用いない従来の授業を行った対照群よりも成績が上がったという。またロールプレイを行った学生は学習内容との関連性を見出し、より深い考察と、やる気が観測されたという。

 

学習内容とゲーム内容が一致している場合、学習した内容をゲームでフィードバックすると成績向上が見込めるという話もあり(Sarit Barzil 2013)、このことから意思決定が伴うフィードバックは有効であることが推測できる。

わかりやすいたとえは、理科の実験だろうか。生徒は事前に学んだ、あるいは同時並行で学んだ内容をフラスコ振ったり試験官熱したりして自分たちが関与する形で具現化する。そのときに湧きあがる楽しいという感情が、学習を後押しするようなイメージだ。

意思決定が伴うフィードバックを行うことで得られるものは単純な知識ではなく、「自分の能力をきちんと発揮できた」という実感のある複雑な知恵である。もちろん、フィードバックを行うためには事前に知識を習得している必要があり、ただごっこ遊びをしているだけでは身につかないので注意だ。

 

ーーー「なんでこんな役に立たそうな勉強しなくちゃいけないんだよ」

「それらの知識は社会に出た時に必須だし、生きる手段を幅広いものにするためにもあるんだよ」

「じゃその使い方も教えてくれよ。使い方わかんなきゃいつまでも無用の長物だろうが」

 

 

参考文献

Savich, Carl (2008) Improving Critical Thinking Skills in History.

Sarit Barzil,iaIna Blau (2013) Scaffolding game-based learning: Impact on learning achievements, perceived learning, and game experiences.


年表学んで歴史シミュレーションゲームやれば、少しは歴史に強くなれる。

2022-01-20 | 旧記事群

2013年に発表された論文によると、学習内容とゲームジャンルが一致している条件において、ゲームによる問題解決能力の向上には事前学習が有効であり、また事前学習はゲームで得られる楽しさを阻害することはなかったという。

事前学習を設けることで対象は学習内容をゲームでフィードバックでき、また意志決定を介したゲームを用いることで学習を『体力を使う楽しさ』として昇華できたことが、今回の問題解決能力の向上という結果につながったと思われる。

わかりやすく言うのであれば、第二次世界大戦を題材とした歴史シミュレーションゲームをプレイする前に1930年代から40年代の年表と知識を学んでおくことで、よりその時代への理解が深まるということである。事前知識をゲームで一通り閲覧した後に、その知識を深堀しようとする試みはなお良しだ。

今回の研究では「事前学習からゲーム」以外にも「ゲームしてから学習」「ゲームのみ」のグループが設けられたが、「ゲームしてから学習」はゲームしたことによる疲労から学習内容が身につかず、「ゲームのみ」では思う通りの結果が得られなかったという。

また、今回の研究ではどの形態の学習であっても学業成績の向上は確認できなかったという。この原因として、期間が短すぎた(今回のゲームを介したお勉強の効果は一日分の観察から求めだされた)こと、ゲームに適応した頭の使い方と学習に適応した頭の使い方に差分がある可能性が論文内で挙げられている。

 

ーーーまた今回の研究では、ゲーム・学習への熱中は事前学習によって阻害されなかったが、

ゲーム・学習への熱中は成績や能力向上の直接的要因とはならなかった。

だが、これは生徒が学習に熱中しなくてもいいという証拠にはならず、

まして、意思決定の機会もなく生徒が関連性を見いだせず

熱中したくてもできない授業展開を容認するものではない。

 

 

参考文献

Sarit Barzil,iaIna Blau (2013) Scaffolding game-based learning: Impact on learning achievements, perceived learning, and game experiences.


ミルグラム実験で示されたような圧力からの、脱し方の1つ。

2022-01-19 | 旧記事群

1965年に発表された論文によると、複数人の行動範囲を狭めるだけの圧力がある環境下にて、反乱で得られるメリットが確定した場合、対象は圧力に抗い始めるという。

この場合のメリットとは平たく言えば「先に反乱したメンバーが比較的安全であり、反乱を起こすことでメンバーと同じ立ち位置になれること」であり、反乱形成の経過から、メリットが確定した場合複数人の行動範囲を狭めるだけの圧力よりもメンバーからの圧力に屈するっことを選んだ、とたとえたほうが適当かもしれない。その証拠に、メンバーが圧力に屈している場合、メンバーからの圧力は生じず、対象も圧力に屈服し続けたという。

この実験はかの有名なミルグラム実験の追記である。ミルグラム実験てのは、あれだ。被験者が壁越しの人に問題を出して、ミスったら壁越しの人に電撃を与えて、ミスするたびにどんどん強くなる電撃に壁越しの人は悶え始めて、でも試験官が続けるように促すから、最終的にどんなに倫理感ある人でも電撃ポチポチしちゃうアレだよ。雑な説明でごめん。

今回の研究とミルグラム実験の違いは、被験者側が試験官側とつながりを持つ2名を混ぜた3名で構成されており、特定のタイミングでその2名が命令に背くという条件で施行されたこと。被験者側の2名からの圧力が発生したことで、また圧力に屈することで2名からの指示を得られるであろうと理解したことで、被験者は試験官からの圧力に抗ったという。

ちなみに、被験者側からの圧力を自覚していた被験者はごくわずかであり、大半は「ヤツが抗ってなけりゃ、先に俺が動いていたぜ」と述べている。個人の認知をゆがめてしまう集団心理の特性が見え隠れしている。

ーーー「……結局、圧力に屈してんじゃん」なんていわないこと。

 

 

参考文献

Milgram, S. (1965). Liberating effects of group pressure.

P.S 書いてから気付いた、実験施行した本人による追記だこれ。


辛抱強さや責任感は学習戦略という形で表れ、そして成績を向上させる。

2022-01-18 | 旧記事群

2015年に発表された論文によると、良心性(辛抱強くやりきる力。責任感。誠実性)はより深みのある学習戦略という形で現れ、そして全般的な学業成績を向上させたという。

具体的には、学習戦略のうち、学ぶ内容の『なぜ』と『どうして』を掘り下げる戦略(深層処理)、一般に成績向上が見込めるとうたわれる学習の活用(方法論的学習)、学ぶ内容を自身にあてはめ関連性を見出す戦略(精密化処理)は良心性により強化され、成績を向上させる要因になったという。また神経症は深層処理と精密化処理を選択する負の要素であるという。

学ぶ内容をありのままに記憶し事実の正確さに重きを置く戦略(事実の保持)は良心性とはあまり関係がなく、定期テストの成績にのみ影響を与えたという。

このことから、良心性は学習においてできることを最大限に発揮しようと促す性格特性でもあり、その強さは成績という形で強く表れるということがわかった。

 

ーーー「また、良心性による効果は年齢不問で発生し、その効果量は……」

調べれば調べるほど湧き出てくる、良心性と成績の相関。

私がうっきうきでこれらの結果を並べると、ある人は

「性格は変わり様がないんだから、それ教えられても俺たち何にも出来ねぇんだけど」

と言い返してくる。

その思いに反論したい私が持つ手札は、基礎研究のあり様という極めて一般的な回答のみ。

これでもいいかもしれないが、これでは私が納得しない。

ちくせう。今に見てろ。良心性向上の可否について調べてきてやるからな。

 

 

参考文献

VerešováMarcela (2015) Learning Strategy, Personality Traits and Academic Achievement of University Students


矛盾する要求を投げかけてくる、相手の頭の中を解説。

2022-01-17 | 旧記事群

1971年に発表された論文は、ダブルバインド(相反する複数の命令を投げかけること)は投げかける側の不規則かつあいまいな定義の評価によって発生するものであり、また投げかける側の葛藤や不安によって引き起こされるものでもあるとした。

論文内で述べられている具体例を1つ引用する。

ある人は周囲にポジティブな志向を持っているが、自身にはネガティブな志向を持っている。彼は自己嫌悪などの癖の強い行動により周囲を引き付けるが、彼は自身に対するネガティブなイメージを保ちたいため、周囲を拒絶する。がしかし、彼は自己嫌悪するほどに周囲からの関りを欲しているため、離れていく周囲をまた引き寄せようとし、時に離れていく周囲に怒り散らす。彼の主観は「周囲の反応に逐一対応している」という受け身なものであり、彼は動く周囲に合わせて投げかける要求を変えているというのだ。

「私から離れてほしい、けど離れていかないで」という主張は、彼が対人におけるかかわり方や人が発するメッセージの処理の仕様が曖昧で一貫性がなく、なおかつ仕様を考えるときに脳を占拠していたネガティブ志向と競合がおきた結果である。

また、対人におけるかかわり方や人が発するメッセージの処理の仕様が曖昧なのは、彼もまた「私から離れてほしい、けど離れていかないで」というような受け答えをされてきた可能性が高いのだ。

そして彼のこの主張を受け取った人も、一貫性のない要求に混乱してしまう。一夜の付き合いならまだしも、長期間の暴露であれば彼の受け答えに順応してしまう。そう、受け取った人も彼になる可能性があるのだ。

 

ーーー対策は評価や仕様の具体的な言語化なのだが、

こうも過敏に反応されると、こちらも頭がおかしくなりそうだな。

 

 

参考文献

CARLOS E. SLUZKI M. D,ELISEO VERÓN Ph.D. (1971) The Double Bind as a Universal Pathogenic Situation.