「文藝春秋」編集部 平成30年11月13日 07:00
10月4日に日本語版が発売された自伝『運命』の中で、韓国の文在寅大統領(65)は、日韓関係の未来について次のように綴っている。
〈私たちがともに育んできた文化と歴史の根源は国民たちの心の奥深くにあって、たがいに近づこうと引き寄せあっています。私たちはやがて真の友人となるでしょう〉
しかし今、日韓両国は、「やがて真の友人になる」どころか、それとは正反対の道を歩もうとしている――。
「国際法に照らしてありえない判断」(安倍晋三首相)
「日韓関係を揺るがすような大きな事件になってしまった」(河野太郎外相)
10月30日に韓国の大法院(最高裁判所)で下されたいわゆる「徴用工判決」に対し、日本政府はじめ、多くの日本人は即座に怒りを表明した。
新日鉄住金(旧・新日本製鉄)に対し、第二次大戦中に同社で働かされていた元徴用工4名に合わせて4億ウォン(約4000万円)を支払うように命じたからだ。
これには、産経新聞から朝日新聞に至るまで珍しくすべての国内メディアが足並みを揃え、疑問を呈した。
元徴用工への損害賠償等については、1965年に締結された日韓請求権協定に基づき、両国ともに「完全かつ最終的に解決した」と解釈してきた。
従って、新日鉄住金が今さら賠償金を支払う義務があるはずもない。これは国際法上の常識である。
大法院が下したこの不可解な判決に対し、文在寅大統領は表向き沈黙を貫いている。
しかし、元在韓国特命全権大使の武藤正敏氏は、「この判決は文在寅政権の意向に沿ったものであったと認識しています」と指摘する。
「今回の判決には『伏線』がありました。10月27日、大法院の前行政処次長が逮捕された一件です。容疑は『朴槿恵政権の意向を汲み、徴用工裁判に違法介入し、審理を意図的に遅らせた』というものでした。
これは文在寅政権から韓国大法院への『徴用工を支援するように』という明確なメッセージだと、私は見ています」
さらに武藤氏は、韓国の司法界が抱える問題点を指摘する。
「韓国の裁判ではどんな法律よりも『国民感情』が最優先される傾向にある。
『韓国には国民情緒法がある』なんて冗談を言われてしまうのはそのためです。その国民感情に流されてしまった政治家の一人が、文在寅大統領なのです」
文大統領は、自伝『運命』の日本語版への序文をこう締めくくっている。
〈この本が日本と韓国の国民の心をつなぐうえで、ささやかな力になることを願い、日本の読者の皆さんに韓国の国民からの友情の挨拶をお伝えします〉
今となっては、こうした言葉も空しく響くばかりである。
では、文大統領はなぜ“反日”に手を染めるようになったのか――。
「文藝春秋」12月号 掲載の「韓国『徴用工判決』文在寅は一線を越えた」には、武藤氏の詳しい分析が綴られている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2018年12月号)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます