死者を祀って神とする習慣は世界中にあるが、敗者を神とする習慣は日本以外ではあまりみかけない。敗者が祀っていた神は勝者から悪魔に落とされるのが通例である。キリスト教で悪魔とされている存在は元を正せば被征服民の神であった場合が多い。
タリバンによる仏教遺跡破壊の記憶はまだ新しいが、彼らから見れば仏像は敗者、すなわち悪魔なのである。
一方、降伏した部族の神を勝者の神の配下に置く習慣もある。闇雲に存在を否定するよりは穏やかな方法である。仏教でも「天」として祀られている存在はヒンズー教の神と同一である。
力関係が拮抗して対立している部族間では、一方の神は敵にとっては悪魔になる。インドの悪魔である阿修羅はゾロアスター教では最高神である。
A級戦犯は言わずと知れた敗者である。神道の発想では神として祀っても問題はない。ただ、どういう根拠で祀るのかは解釈が分かれるところだろう。建御名方神のような地域限定神として神格を与えるのか、崇道天皇や菅原道真などのように御霊として怨恨を鎮める目的か、解釈が難しい。
そもそも靖国神社自体、近代以降の日本が関係した国内外の事変・戦争において、朝廷側及び日本政府側で戦役に就き戦没した軍人・軍属らを、顕彰・崇敬などの目的で祭神として祀る目的で設立した神社である。(wikipedia)
今ひとつよく分からない説明だが、靖国神社の祭祀目的は基本的に鎮魂にあるわけである。あくまでも国家権力サイドに限定しているところが問題を大きくしているのである。国家が特定の宗教である「神道」に荷担するのは憲法違反だろう。
それはさておき、合祀が鎮魂を目的としているなら、無念の刑死をしたA級戦犯も祀る根拠にはなるわけである。
さらに、ほとんど問題視されていないがBC級戦犯の方が無念の度合いは強いと思う。A級の連中は武将クラスであるから、敗戦に対して責任が伴う。刑死しなくても自害する選択肢もあったわけである。しかしBC級の戦死者は戦争責任が存在しない。単にA級の連中の命令に従っただけである。怨恨の情はA級の比ではないだろう。
日本における伝統では、敗軍の将で名のある人物は大抵神社に祀られている。明智光秀は明智神社に祀られている。
一つの案として分祀が叫ばれている。A級戦犯神社を作ろうというのだろうか?
今ひとつ初詣に行く気はしない。まだ東条神社の方が自然である。
私は現状の靖国神社の状態は国家権力によるご都合主義以外の何ものでもなく、こんなことでは合祀されている英霊に対して不敬極まりないと思っている。
靖国神社は本来の東京招魂社に戻すべきである。ご神体は戊辰戦争の戦没者だけで良いと思う。
それ以降の戦没者に関してはその性格に合わせて別途神社を建てるべきなのである。
特に第二次大戦のような戦死者が複雑な場合は、一緒くたに合祀するから無理が生じるのである。キリスト教徒や在日外国人が知らない内に祀られていれば怒り出すのは当たり前だ。
「お国のために戦った」と信じている希望者だけを募って別の場所に有志が「靖国神社」として祀れば問題なかったはずだ。
それはそれとして、中国がしきりに内政干渉するのは「敗者=悪魔」の論理で文句を垂れているのである。政府の弱腰外交には本当に情けなくなる。「はぐらかし」しかやらないから、相手は不審に思ったり小馬鹿にしたりして増長するのである。
中国は自国を「支那」と呼ばれると侮辱されたと怒るくせにモンゴルのことを「蒙古」と差別してはばからない国なのである。
中国人がA級戦犯を許さないのは自国を侵略した連中だからだが、だったらチベットからさっさと出て行け。日中間の戦後処理は終了しているが、中国・チベット間のトラブルは現在進行形である。
日本国内において何を祀ろうが「中国にとやかく言われる筋合いがない」ことは言うまでもない。ただ、日本も外交的には中国の図々しさ身勝手さを参考にした方がいいだろう。
長々と書いたが、もう一度整理するとこういうことになる。
私は現状の靖国神社の存在は好ましいとは思わないが、8月15日に安倍が靖国神社に公式参拝すること自体は、中国に対するあてつけとして意義があると思う。
実は安倍が中国にずっと気兼ねをしているのは、彼の実兄が某大手商社の中国支社長だからだ。兄貴のメンツを考えて靖国参拝は絶対ないのである。
えっ、中国は中国でも日本の中国地方だったんですか!これはどうも失礼しました。
首相、15日の靖国参拝見送り 政局混乱回避で意向
安倍晋三首相は六日、終戦記念日の十五日は靖国神社への参拝を見送る意向を固めた。小泉純一郎前首相は昨年、就任後初めて終戦記念日の靖国参拝に踏み切ったが、首相の靖国参拝には中韓両国などが強く反対していることに加え、七月の参院選で与党が惨敗し、安倍首相の政権基盤が不安定化していることから、これ以上の政局混乱は避けるべきだと判断したものとみられる。
安倍首相はこれまで、小泉氏ら首相の靖国参拝を支持。自らは官房長官時代の昨年四月十五日に靖国神社を参拝したが、昨年九月の首相就任後は中韓両国との関係に配慮して参拝を控えてきた。
ただ、安倍首相は自らの参拝の有無を明らかにしない方針を貫いており、終戦記念日の参拝を見送ったかどうかも明らかにしない見通し。首相が、十月十七-二十日の秋季例大祭期間中など、終戦記念日後も引き続き靖国参拝を見送るかどうかも不透明だ。
小泉前首相は二〇〇一年の自民党総裁選で、終戦記念日の靖国参拝を公約。退任した〇六年を除き、終戦記念日を避けて毎年参拝を続けたが、A級戦犯合祀(ごうし)に強く反発する中韓両国と首脳外交が途絶えるなど関係悪化の主因になっていた。
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