リスクの少ない海外生産の手段としては、次のような方法があります。投資よりも、簡単な調査(Feasibility Study-F/S)で始めることができます。いずれの場合でも、相手先と詳細に交渉し、きちんと契約書を交わすことが大切です。
1.委託生産 Production Consignment
商品の生産を海外の業者に委託するもので、製品の販売権は委託者(Consignor)にあり、受託者(Consignee)の権利は製造のみです。契約を行う前に主に次の点についてF/Sを行います。
*受託先の機械設備の詳細、原材料・部品調達の可否、使用技術及びその水準の確認及び技術支援の 必要性
*労賃、労働条件及び労働力の質
*物流インフラ・コストの確認
事業の内容によっては技術援助契約(Technical Assistance Agreement)、ライセンス契約(License Agreement)、原材料供給契約(Material Supply Agreement)及び秘密保持契約(Secrecy Agreement)などが必要になります。
この方法の問題点は受託者が製造技術やノウハウを吸収し、将来競争相手となる恐れがあることです。
2.OEM (Original Equipment Manufacturer/Manufacturing)
広い意味での委託生産の一種で、留意事項は上記の通りです。更に、この場合は委託者が受託者に対し委託者のブランドを付して生産させ、その製品を全量引取ります。
*委託者が技術情報を提供し、ブランドにふさわしい商品が生産されるよう受託者を指導・監督しま す。
*受託者がブランドを他商品や第三者に使用させないようにします。
*対象商品がブランドの有無にかかわらず、第三者に販売されないようにします。
業務の内容によっては上述の諸契約が附随する事があります。この場合も受託者が製造技術やノウハウを吸収し、将来競争相手になる場合があります。
3.委託加工 Processing Trade
委託者は原料及び部品を無償で提供し、受託者に加工を委託し、加工賃を払い、加工後の商品を全量引取ります。海外の安い労働力を利用するメリットがありますが、品質及び納期管理に注意して下さい。
いずれも、海外に工場を作ったり、現地企業を買収したりするわけではないので、比較的「気楽に」
始めることが出来ます。先ずはこのような形で海外進出し、次の段階として海外に工場を建設したり、海外企業を買収したりという「本格的な」海外進出を考えるのも、賢明なやり方と思います。
以上私の講演用テキストから抜粋、簡単にまとめて見ました。
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