「下ちゃん。 ちょっと調べて欲しい物があるんだけど。」
「えっ?。 僕でお役に立つことであれば、、。」
僕に渡されたのは「小さな瓶」1つ。
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植物の種子だ。
聞くとこの種子は、患者さんが梅の剪定の仕事をしている最中に眼に入り、偶然それが白目の奥に刺さり、「目の奥に何か入り、ゴロゴロする。」とDさんの医院に駆け込んだもの。 D先生が抜いたとき「ズボット」音がして血が出たらしい。
「抜く時、そんな音するの?」
「本当にしたんだって。」とまじめな顔。
「この植物の名前を調べて欲しい。」
僅か1つの種子だけで、調べるのは結構難しいが引き受けることにした。
改めて種子を見ると、明らかにイネ科の植物だ。
イネ科の植物の穂は、花穂(かほ)により形成され、その花穂は沢山の小穂の集まったもの。 丁度私達が食べるお米の一粒が、小穂であると考えたら分かりやすい。 その小穂が今回の依頼物件なのです。
もうひとつの特徴が、小穂から突き出ている、1本の長い芒(ほう)。
そして花期が6月にあてはまる植物。
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「カモジグサ」
子どもが若葉を人形のかもじにして、遊んだ事によりついた名前の植物だ。
道路端や畑のふちなどに普通に生え、花期も5月から7月でぴったり合う。
約90%の確立で間違いないと思われる。
Dさんに、早速連絡を取り結果を知らせた。
「今度の定期学会で報告しておく。ありがと。」
それにしても、良くこんな物が眼に刺さったね。
あ~、オソロシ。