《ネット・プロレス大賞2019 〜MVP〜》
アントーニオ本多選手の名前を挙げる理由はもちろん様々あると思いますが、
続けてまたしても“X”として、
両国でのマッスルのあとのツイキャスで、
“1年間あらゆるかたちで活躍を続けた”という選出の根拠については、
[かと思えばマットプロレスでみっちゃん(影山道雄)と一騎討ちを演じたりもする]
本人が肯定するか否定するかはさっぱり想像もつきませんが、
もちろん、本人は「試合がしたいから」自分で興行を開いたり、
面倒見がいい、優しい、視野が広い…
酒呑童子興行、高梨将弘自主興行と、
[2.18新木場宴で藤田ミノルとの防衛戦が決定。本日現在、2020年最大の期待を向けるカード。]
[届けた人の一人]
さて、MVP。
遅れに遅れておりますが、
もうここまで来たら完走することに意義がある。
ちょっと前まではもう少し“プロレス界全体”みたいなものを
俯瞰して(るつもりで)順位を決めていた気がしますが、
徐々に徐々に見ているものや感情の部分で決める傾向が強まってる気がします。
ただしかし。
私の私による論理の中では、
この順位が妥当であり、正しい。
そう言い切れる。
1位 里歩
2位 アントーニオ本多
3位 藤田ミノル
好きな名前が挙がりました。
ただ、2019年に関して言えば、
この3人を挙げない理由がない。
1位に挙げたのは、里歩。
スーパーアジア王者、アジアドリームタッグ王者、クイーンオブアジア王者という、
“アジア”の名を冠するベルトを3本保持して迎えた2019年、
引退を控えながらなお強さを誇ったコマンド・ボリショイ相手に
スーパーアジア王座防衛を果たしたのがまず凄かった。
その後ヘルニアの治療のため2ヶ月ほど欠場する間に、
7.2新宿FACE大会を以ての我闘雲舞退団を発表。
しかしそこからの“卒業ロード”では激闘の連続。
4月の板橋大会では“今まで向き合ってこなかった”高梨将弘と
素晴らしいシングルマッチを展開すると、
5月のゴーゴーグリーンカレーコップンカップでは、
佐藤光留とのタッグ“佐藤里歩”で勝ち進み、
自信2度目となる優勝を果たしました。
その5月にはAEWの旗揚げ大会“Double or Nothing”に電撃参戦し、
日本の“Joshi”を代表する一人として大会を大いに盛り上げました。
6月には我闘雲舞の、女子プロレスの、
プロレス界の未来たる駿河メイを相手に
スーパーアジア王者として最後の防衛を果たし、王座返上。
そして、7月には我闘雲舞所属最後の試合を、
師匠・さくらえみ相手に戦い、“家”から旅立つこととなりました。
その後、週刊プロレス紙面内で、AEWとの契約を公表。
さらに日本国内ではスターダムへの不定期参戦が決まり、
時のハイスピード王者・DEATH山さん。から王座を奪取。
AEWでは志田光、ナイラ・ローズという超強敵を破り、
10月になんとAEW初代女子王者という栄冠に輝くこととなりました。
歯科医・ブリット・ベーカーの挑戦を退け、
次なる防衛戦の相手は、AEW大会内で自身に黒星をつけた、
師匠・さくらえみ。
僅か数ヶ月ぶり、三十数度目の師弟対決は、
海を飛び越え、世界中の百万を超える視聴者の前で展開されることとなり、
師匠相手に防衛に成功。
この試合はレスリングオブザーバー誌では、
AEWで行われた女子の試合で、これまででベスト、と評価されました。
…さあ、ここまで里歩選手の2019年経緯をザーーっと振り返ってみましたが、
なんでしょうこの波乱万丈というか、世界を股にかけての壮大なストーリー。
個人的な見解ではあるのですが、
里歩選手のパフォーマンスがこの一年で劇的に上がった、
とかそういう話ではなくて。
そして我闘雲舞にいたから注目度が云々とか、
そういう話でもなくて。
これまで積み重ねてきた歴史…
まだ、20歳を少し過ぎた年齢ですでにそんな歴史があるというのもまた凄い話ですが、
その積み重ねが一気に、世界に向けて花開いた一年。
ものの数ヶ月で“世界の”里歩になったその功績を、
“一位”というかたちで讃えたいイヤーでした。
2位に挙げたのは、アントーニオ本多。
なんと全体18位。
おう、みんな見る目あるな。
投票した全員とハイタッチしたい。
アントーニオ本多選手の名前を挙げる理由はもちろん様々あると思いますが、
おそらく、2019年丸々1年間に渡って常に大きな話題を提供し続けた、
ということについては、概ね同意いただけるところなのではないか…
と、個人的に思うところであります。
二月のマッスルでは“マッスルにしかできないメインイベント”で
DJニラとの素晴らしい両国メインを演じ、
後楽園ホールでは“イッキイキ”チャントを鳴り響かせ、
EXTREME王座を戴冠。
ゴーゴーグリーンカレーコップンカップでは“りんごとはちみつ”タッグで初出場準優勝。
ゴーゴーグリーンカレーコップンカップでは“りんごとはちみつ”タッグで初出場準優勝。
DDTでは大田区大会を前にEXTREME王座を落とすものの、
夏は夏でやはり存在感を見せつけ、7月のBASARAで行われた“宴闘争2019”では、
藤田ミノルが用意した“X”としてBASARA初登場。
酔いどれた新木場の夜を大熱狂させると、
ビアガーデンでは旧姓・広田さくらとの死闘、
さらに8月には、“ごんぎつねvsコブラ”という、
夢の対決を実現するに到りました。
続けてまたしても“X”として、
今度は東京女子プロレスに初参戦。
この夏のXを独り占めにすると、
DDTグループが総力を結した両国大会“Ultimate Party”では、
最注目カードとなったミックスドタッグマッチ、
ケニー・オメガ&里歩vsアントーニオ本多&山下実優
という…DDT所属が一人もいないにも関わらず、
最高にDDTらしさを感じられるカードに組み込まれ、
その素晴らしさを存分に発揮されていました。
両国でのマッスルのあとのツイキャスで、
アントン&DJニラをよく知る我闘雲舞代表のさくらさんが、
マッスルとマッスル坂井に対して明確な嫉妬心を口にしていたのが
個人的にはとても印象的で。
あのメインイベントのアントンもニラさんも、
市ヶ谷で70人の観客を前に戦うのと変わらない、
いつもどおりのアントーニオ本多で、いつもどおりのDJニラでありながら、
一方で振る舞いはまさに、メインイベンターのそれ。
分かりづらいことを大会場でも堂々と行い、ありのままの二人の戦いを見せた、
その信頼に対しての嫉妬心は、アントーニオ本多…そして、DJニラ…という、
二人の“メインイベンター”の魅力を誰よりも表現していたように思いました。
DDT総選挙ではいつも選抜に選ばれるものの、
中間どころの順位で呼ばれるたびに「見る目がない!」と切って捨てていたアントーニオ本多。
その魅力が、全てではないながらも…改めて、証明された年だったように思います。
そして3位は、藤田ミノル。
“1年間あらゆるかたちで活躍を続けた”という選出の根拠については、
前の二人とほぼ同様。
ただ、活躍の示し方については三者三様…
というよりか、藤田ミノルの活躍の仕方は、
プロレス界にあって、超がつくほど、異質なのではないでしょうか。
3月の「モーニング闘争」ではヤス久保田を相手に“ガンバルンバ”させ、
5月には刺激を欲していた葛西純との「人生を投影した」王座戦を戦いました。
この時点で振り幅がすごい。
7月には“弟子”木高イサミとBASARAのシングルトーナメント“頂天”の座を争うと、
その月の新木場大会でプロデュース興行“宴闘争2019”を大成功に納め、
さらに、袂を分かったように見えたガンバレ☆プロレスにまさかの再登場。
[かと思えばマットプロレスでみっちゃん(影山道雄)と一騎討ちを演じたりもする]
屋号を変えた古巣・2AWでは初代王者決定トーナメントで準決勝へ進出を足がかりに、
突如として“藤田プロレススクール”という一大ムーブメントを勃興、
そして、これもやっぱり興行を開催することになり、
平日の千葉とは思えぬ数の観客を集め、成功に導くのでした。
本人が肯定するか否定するかはさっぱり想像もつきませんが、
フリーのプロレスラーでありながらここまで他のプロレスラーや、
参戦している団体のことを考えて、身体は愚か、脳を、
そしておそらくは財布まで削りながら真剣にプロレスに、
プロレス“界”に向き合うレスラーを知りません。
…いや、いるのかもしれませんが、
ここまで行動に示すレスラーを知りません。
っていうか、いない。
もちろん、本人は「試合がしたいから」自分で興行を開いたり、
何かしらの因縁を吹っ掛けた、というのかもしれません。
でも結局いつも狙いはそれだけではなくて。
“なんとかしたい”と思う場所や、人に対して、
実際になんとかしようとする。
その藤田ミノル選手の凄さを…正直、どのように表現していいかわかりません。
さて、あまりにも色々な姿がありすぎる藤田ミノル選手ですが、
さて、あまりにも色々な姿がありすぎる藤田ミノル選手ですが、
個人的に一番もしかしたら本質的な姿に近いのかもしれないと思っているのが、
“先生”としての藤田ミノル。
藤田ミノル教頭。
面倒見がいい、優しい、視野が広い…
そんな形容もいくつか思い浮かべましたが、
最後の最後、試合が終わって、藤田ミノルの口から語られる言葉からは、
どこかに“教え、導く”意図みたいなものを感じられて。
藤田ミノルが動けば動くほど、輝けば輝くほど、
続く後進たるプロレスラーたちは、巻き込まれながらも何かを学び、
手に入れ、導かれていく。
先生も生徒も、ともに楽しみながら。
まだまだ今しばらく、
“場末のミスタープロレス”
“掃き溜めのブラックジャック”
“裏切りの流浪狼”
にして、“教頭”、
藤田ミノルの活躍を祈り、追いかけていきたいと思います。
他に候補に考えたのはまず、
石井慧介。
昨年もリストアップしていましたが、
兎にも角にも振り切れ具合が年々加速してる。
“ガンプロに来てよかった”といって憚らない石井慧介は、
別にDDTを批判するわけでなく、
ガンプロにいるからこそ巡ってくる機会を楽しみ、
活かしながら、みるみる自身の狂気を花開かせています。
敗れたものの勝村周一朗との一進一退が手に汗握ったインディJr、
人を人とも思わない扱いでぶん投げまくった今成夢人戦、
藤田ミノルとのシングルマッチではゾンビのような打たれ強さで
“バケモノかコノヤロー”と言わしめるなど、攻防ともに新味を見せ続けました。
また、油断ならないのがそのプロデュース力。
王子で行われた主催興行では、
離脱表明直後の藤田ミノルをメインに出場させたり、
ラリプロにまなせゆうなを放り込んでみたり、
“断崖ボーナス”という謎の制度を導入したりと、
あまりに斬新な仕掛けで驚かせてくれました。
また、自身の地元埼玉は狭山ヶ丘大会では、
マットプロレスにも関わらず100人超の観客を動員。
さて、では何故投票しなかったかと言えば、
理由は至極単純で、KO-D無差別級を獲ってほしかったから。
正直2019年に関しては“今の石井慧介なら獲れる”と思うタイミングだったので、
是非獲ってほしかった。
2020年もたぶん、その狂気はさらに輝きを増す。
高梨将弘は2018年も名前を挙げましたが、
今年もやはり、というか、更に輪をかけて
投票に資する(と書くと何様感がすごい)活躍ぶり。
酒呑童子興行、高梨将弘自主興行と、
自身がプロデュースする2つの素晴らしい興行を展開し、
リングの上ではユニオンMAX王座の獲得、
クリス・ブルックスとの“CDK”の始動、
さらに、我闘雲舞現場監督就任と、激動の一年。
何より、年末のBASARA後楽園大会では、
“宿敵”木高イサミからついに勝利を挙げ、
ほぼ4年越しの“挑戦状”の本懐を遂げました。
ユニオンMAX王者になったことで、
高梨将弘からはこれまでとはまた違う…
言い方として正しいかはわかりませんが、
“欲”のある戦いぶりが見えている気がして。
そして、その最中にある戦いは、さらなる戦いを呼ぶ。
[2.18新木場宴で藤田ミノルとの防衛戦が決定。本日現在、2020年最大の期待を向けるカード。]
名前を挙げている選手全員に共通して言える気がしますが、
プロレスラーは、いつだって素晴らしい。
たとえそこがどこで、誰が相手で、何人がみているかに関わらず。
素晴らしいものは素晴らしい。
その素晴らしさを必ず誰かは見ていて知っていて、
それが、結果、世界…ここでは海外に限らず、広義で…に届いた。
[届けた人の一人]
“世界に届くパフォーマンス”をずっと続けてきた素晴らしさが、
特に2019年、焦点の当たる年だったような気がしました。
プロレスラーは素晴らしい。
2020年もまた、そんな素晴らしいプロレスラーたちの活躍と、
何より、無事を祈念しつつ、2019年の振り返りからようやく
筆を置きたいと思います。