時々眺める富士山

父と本(2)

父は昔から百科事典が好きだった。平凡社の百科事典を読むのが趣味で、読むと覚えているので、歩く百科事典といわれていたと、昔、父の友人から聞かされた。

私が小学生高学年のころ、平凡社の百科事典の新版が出て、それを子供たちのためにと買った。書店から届くと、最初に父がさっと目を通した。百科事典は調べるものではなく、全部読んでおくものだというのが父の考え方だった。ただ、私は図や写真を眺めることはあったが、当時はあまり読まなかった。確か、最初の方に「相生」があったことは覚えている。

我々子供のために、講談社の少年少女世界文学全集というのも買ってくれた。これは、姉はすぐに読んでいた。国内作品は原文い忠実だが、翻訳はかなり抄訳となっているとのことだった。そのため、分量は少なくなっていたのだが、それでも小学生の時の読書力では、読むのに時間がかかった。その後、中学から高校になって、さっと読んでしまったことを覚えている。

父は、職業の関係から専門書をたくさん持っていたし、新たに本が増えていった。本は重たく、場所をとり、木造の家では、本を置いている場所が沈むようなことになる。私が中学生のころには、家のあちこちに、当時出始めた軽量のスチール書架が並ぶようになった。廊下が、それで狭くなっていった。その後、重量に耐える書庫を増築し、丸善から移動書架を購入した。80代半ばまで父の生活は、本に囲まれた生活だった。しかし、その後は本を読むよりTVを観る時間の方が長くなっていった。
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