「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

東洋大学 vs 法政大学(関東大学リーグ戦G1部-2024.10.15)の感想

2024-09-22 00:10:19 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


熊谷ラグビー場の第二試合のキックオフは15時だが、そんなことは関係なく酷暑が続く。東洋大は緒戦の大東大戦でトライ数同数ながらGKの失敗が響き敗戦、一方の法政大は、緒戦の日大戦で終了間際の逆転劇を演じて勝利している。緒戦からリーグ戦Gは大混戦を予感させる熱き戦いが続いている。

さて、ピッチに登場した選手達は、猛烈な暑さを感じさせない位に元気いっぱい。東洋大の211cmのLOジュアン・ウーストハイゼンは相変わらず超ハイタワーだが、1年生の時からは身体つきが変わっている。大学ラグビーは1年観ない間にメンバーが入れ替わり、知っている選手も成長が早いと感じる。

◆前半の戦い

東洋大のキックオフで試合開始。開始から僅か2分、東洋大があっさり先制する。ラインアウトから左オープンにワイドに展開し、返しの展開でFB坂本がパスダミーでウラに抜けてトライ。前節は不調だったSO天羽のGKも確実に成功し、東洋大関係者は一同胸をなで下ろした(はず)。[7-0]

東洋大は畳みかける。5分、HWL付近のラインアウトでHOが回り込み左に開いた最後尾のNo.8にパス。間髪入れず内側に走り込んだ右WTBモリース・マークスが真っ直ぐインゴールまで力強く駆け抜けた。法政DFの対応が甘くなっていたとはいえ、鮮やかなサインプレー。[14-0]

11分、法政はSO金が正面15mのPGを成功させようやく一矢報いる。ここから法政のエンジンが掛かり速いテンポのパス回しでペースを掴む。CTB13の炭竈は力強い突破(と髪型)で魅せるムードメーカー。2連続トライの東洋大も規律を感じさせるパス回しで対抗し、膠着した展開となる。[14-3]

26分、法政に待望のトライが生まれる。BK展開からショートキックはチャージに遭うものの、跳ね返りがスッポリWTB小林の胸元に入る。ラッキーもあったが入れ替わりのような形で小林がウラに抜け出し、フォローしたHO花澤がトライ。GK成功でビハインドは1トライで逆転可能な4点に縮まる。[14-10]

しかし、東洋大はすかさず反撃。31分、法政ゴール前のラインアウトからモールを形成して押し込みトライ。ここから東洋大がペースを掴む。法政も速いパス回しで東洋大のゴール前までボールを運ぶものの、反則などのミスが出て波に乗れない。[21-10]

前半終了間際の42分、東洋大は法政陣22m手前でのラインアウトを起点として、5分に見せたのと同じようなサインプレーからトライを奪う。今度はNo.8から外へボールを展開し、FB坂本がタックルを外して抜け出しトライ。これで東洋大は完全に波に乗ったと思われた。[26-10]



◆後半の戦い

後半も最初に得点したのは東洋大。2分、ラインアウトからモールを形成して押し込みトライ。第一試合の大東大もラインアウト/モールで着実に加点して日大に勝利を収めたことが思い出される。東洋大のリードは3T3Gでも追い付かない23点に拡がった。[33-10]

東洋大の勢いは止まらない。8分、法政陣22m内のラインアウト/モールを起点として前進。最後はCTB13の浅尾がトライ。点差はさらに28点に拡がり(GKは失敗)東洋大サイドには圧勝ムードも漂い始める。[38-10]

しかし、何が起こるかわからないのが大学ラグビーの怖い/面白いところ。15分、法政選手のハイパントをキャッチした東洋大選手がタックルを受けてボールを後ろに反らす。このボールを法政のFB桜庭が拾いラストパスをCTB炭竈に渡す。ムードメーカーのトライで法政に反抗の狼煙が上がった。[38-17]

東洋大はまったく慌てる必要がないのだが、イージーなノックオンなどのミスを犯し法政にペースを渡す。19分、法政は東洋大のオブストラクションで得た反則のチャンスを活かし、ラインアウト/モールから得点を奪う。ラックから出たボールが10→13→14と繋がる法政らしいトライ。[38-22]

法政の押せ押せムードの中で、東洋大は一息つく。23分、法政陣22m内のラインアウト/モールを起点とした連続攻撃でFL森山がトライ。だが、法政も諦めない。28分、こちらもラインアウト/モールを起点としてNo.8宮下がトライ。ビハインドを16点に縮め(法政の攻撃力を持ってすれば)残り時間はまだあるという状況となる。[45-29]

だが、ここで法政に痛恨のシンビン。36分、東洋大がすかさずラインアウト/モールから得点を挙げ、法政の逆転は難しい状況となる。[52-29]

それでも法政は諦めない。1人少ない状況の中での39分、15人に戻った47分にそれぞれトライを挙げて試合終了となる。ファイナルスコアは52-43。東洋大が圧勝する可能性、法政が勝利する可能性のどちらもあり得た、ある意味不思議なゲームでもあった。

◆試合後の雑感

東洋大はチームとしてはできあがっている印象。バランスの取れたチームだと思う。ただ、法政の個の強さを活かしたアタックに翻弄されている様子も見られた。厳しい条件ではあったことは間違いないが、失点が多く圧勝出来なかったことが反省点かも知れない。

法政はゴールラインを背負ってのラインアウトの局面(すなわち自陣での反則)が多かったことが惜しまれる。FW、BKともに走力のあるランナーが揃っていることとスクラムの強さが魅力。どのような形でチームが纏まっていくかに注目したい。
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日本大学 vs 大東文化大学(関東大学リーグ戦G1部-2024.09.15)の感想

2024-09-20 00:25:32 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


実に2年ぶりとなるリーグ戦Gのレギュラーシーズンの観戦。昨シーズンは入替戦しか観ておらず、選手をほとんど知らない状態になってしまった。しかも場所は暑さが名物の熊谷ラグビー場。12時半キックオフの第一試合は、ピッチ上で戦う選手はもとより、照り返しがきついスタンドでも暑さとの戦いとなる。

両校の選手をほとんど知らない中で1人、大東大のCTB12のハニテリ・ヴァイレアは覚えていた。2年前の試合では留学生の枠もありなかなか出場できなかった選手。2年生当時からプレースキックの名手として注目していたが、4年生の今は副将としてBKをまとめる存在。試合前から見せる確かな存在感に学生の成長の早さを感じる。

◆前半の戦い

酷暑の中、日大のキックオフで試合開始。序盤から、暑さに対する消耗とハンドリングミスを避けるためか、陣取りキックの応酬。ラインアウトからのリスタートが多い展開となる。アタックでは大東大は奔放なパス回し、日大はスクラムの強さとパワフルなランナーを活かしたタテ突破がそれぞれの持ち味。

両者一進一退の攻防が続く中で、23分にようやく均衡が破れた。大東大が日大22m内のラインアウトからモールを形成して前進しHO嵯峨がトライ。ヴァイレアのGKがポスト中央に収まり大東大が7点を先制する。

日大も反撃。28分、中間エリアでのラインアウトからモールで前進した後、WTB14の筒井がビッグゲイン。ボールはフォローしたSH福田につながりトライ。GK成功で試合は7-7の振り出しに戻る。

日大は畳みかける。31分、日大のFB半田が左タッチライン際を快走してトライ!と思われたところで大東大のFBオトが渾身のトライセービングタックルを見せる。続くラインアウトで大東大がファンブルしたボールを日大が拾い、No.8の大宮がトライ。GKも成功して日大が14-7と逆転に成功する。左隅から決めた日大のSO徳永もヴァイレアに劣らない好キッカー。

このまま日大リードのまま前半が終わるかと思われた43分、大東大が日大ゴール前でのラインアウトのチャンスを活かし、モールを押し込んでトライ。GKも成功して14-14で前半が終わる。ラインアウトからのモールは確実に武器になっていると感じさせる安定したモールで、練習の確かさが覗われる。結果論だが、日大にとっては痛すぎる失点だった。



◆後半の戦い

ピッチの内外での暑さとの戦いが続く。しかし、意外と言っては失礼だが、比較的ミスの少ない戦い。日大にノットリリースの反則が多かったのは、大東大の(とくにパワフルな選手に対しての)ダブルタックルがしっかり決まっていたことの裏返しでもある。一方、大東大の反則はスクラムでのコラプシングが多かった。日大の強力スクラムの復活は確かなようだ。

さて、後半。大東大は日大ゴール前でのラインアウトからモールを経てサイド攻撃を繰り返して前進。右側にオープンスペースができたところで、CTBヴァイレアからのロングパスがWTB神田につながりトライ。GK成功で21-14と大東大が逆転に成功する。

日大も食い下がる。24分にSO徳永が正面20mのPGを決めてビハインドを1Tで逆転可能の4点に縮める。しかしながら、28分に大東大はこの日3本目となるラインアウト/モールのトライ。右隅からのヴァイレアのGKは左ポストに当たったが成功し28-17となる。

何とか得点差を縮めたい日大は攻撃の強度を高める。しかしながら、そんなムードに水を差すミスが出る。30分大東大選手がショートキックしたボールをダイレクトで蹴り返すと前にいた味方選手にヒット。転々とするボールを大東大のノア・トファエオノが拾ってそのままインゴールへ持ち込む。GK成功で35-17。不運とも言えるが丁寧に捕獲していれば防げたと思われるトライだった。

試合はそのまま得点表示が動くことなく終了。ピッチ上は相当暑かったはずだが、そんなことは感じさせない位に運動量が豊富で楽しませてくれた選手達を讃えたい。



◆試合後の雑感

酒井監督が就任して2年目の大東大はチームとしての一体感があり、ムードもいい。本当は時折見せたパス回しの巧みさでトライを重ねたいところを、地道にモールで3トライで勝利を呼び込んだ。勝ち星を積み重ねることで着実に上位は見えてくると思う。5本のGKを確実に成功させたヴァイレアのスーパーブーツも武器になるだろう。

敗れたとは言え、日大の個の強さを活かしたタテ突破を基調としたアタックも見応えがあった。ヘラクレス軍団復活は道半ばといった感じだが、大東大をまくり上げたスクラムを見ても、手応えは感じられる。法政戦に続く連敗は残念だが、気持ちを入れ替えて頑張って欲しい。
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日本大学 vs 東洋大学(関東大学リーグ戦G1部-2022.10.16)の感想

2022-10-30 10:27:22 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


第1試合の大東大と立正大の戦いもそうだったように、最後まで縺れる展開となることが多い今シーズンのセナリオハウスフィールドでの戦い。ちなみに、これまでの6試合中4試合が敗者にもボーナス点1が与えられる7点差以内の試合。さらに言えば、そのうち2試合が東洋大絡み。とくに前節の試合は、最後の土壇場で大東大に逆転を許し、1点差で勝ち星を逃す悔しい戦いだった。

そんな厳しい戦いが続く東洋大だが、ここまでの3戦で前年度上位校に対して2勝1敗の戦績は立派。この試合こそは勝利して大学選手権出場に一歩でも近づきたい。一方の日大はここまで(期待されながら)1勝2敗と苦しい戦いが続く。選手の卒業などによる交代に首脳陣の変更による戦術転換がうまく噛み合っていない印象を受ける。BKに得点力のある選手を揃えているだけに、この試合に勝利してチーム建て直しを図りたい。

◆前半の戦い

日大のキックオフで試合開始。序盤から激しい攻防が展開されるが、FWで組み立ててBKへ展開する東洋大に対し、日大は(前節の流経大戦と同じで)殆どBK主体で攻める攻撃スタイルを変えていない。先制したのは東洋大。日大の自陣からのキックに対し、カウンターアタックからラックを経てSH神田が抜け出しトライ(GK成功で7-0)。

先制トライに勢いを得た東洋大が攻め続けるが、接点やスクラムでの反則が続き波に乗れない。その後も東洋大は反則の多さに悩まされることになる。12分、日大は東洋大ゴール前で東洋大の反則により得られたチャンスを活かし1トライを返す(GK失敗で5-7)。ゴール前のスクラムから左オープンに展開と見せかけて右サイドから走り込んで来たSO鏡平名にラストパスが渡る。BKに切り札を揃える日大の場合、とくにセットプレーが多いことは有効。

日大は畳みかける。17分、東洋大陣左サイドでのラインアウトからボールは一旦右に展開されるが、返しの左オープン展開でWTBトゥポウが自慢の脚力を見せてトライ。しかし、ここも日大はゴールキックを外して10-7。逆転には成功したが難しくない位置からのGKを2回連続で失敗したことは(結果論だが)その後の試合展開に大きく影響することになる。日大はさらに27分、HWL付近で得たPKでショットを選択。交代でキッカーを務めたCTB広瀬が約50mのGKに成功し、日大が13-7とリードを6点に拡げる。

反則が多く波に乗れなかった東洋大だったが、31分にスクラムを起点とした順目のアタックの連続で左WTB杉本がトライ。GK成功で14-13と逆転に成功する。しかし、直後の35分に日大がPGを成功させて再々逆転の2点リード。東洋大は反則やPKがタッチインゴールとなるなどミスが続き逆転のためのトライが奪えない。

このままの日大のリードで前半が終わるかと思われた45分、東洋大が日大陣22m内でのラインアウトのチャンスを活かす。中央で得たラックからまたもSH神田が抜け出しゴールラインまで走り抜ける。GK成功で東洋大が21-16と逆転に成功したところで前半が終了。ちなみに、東洋大が前半に犯した反則は10個だが、後半も同じ数の反則を重ねてFKも含めると合計22個となった。東洋大が波に乗れなかったことは事実だが、日大も有効に得点に結びつけることができたとは言い難い。



◆後半の戦い

後半、最初に得点を挙げたのは東洋大。日大陣ゴール前のラインアウトからモールを形成して押し込みトライ。右隅からのGKは失敗するが26-16と得点差を10点に拡げた。東洋大は11分に両LO(チャニングスとウーストハイゼン)をサイロとオスティンに替える。大型選手達に変わりはないが高さよりも機動性重視の交代かも知れない。

後半になっても東洋大の反則禍が止まらない。スクラムではコラプシングなど、接点ではノットリリースかノットロールアウエイが多く、観客席からは「またか…」の溜息も漏れる。スクラムで(東洋大選手が)組みにくそうな見えたことと接点での圧力(おそらく)に、上位校の試合経験(駆け引きの巧みさ)と意地を観たような想いがした。

東洋大がリードを拡げたのも束の間、7分に日大は東洋大陣22m付近のスクラムを起点とした連続攻撃からCTB広瀬が左タッチライン際を快走してトライ。GKは失敗するが21-26となり日大の反撃モード。日大のBKは水間、トゥポウ、普久原といった攻撃力の高い選手達に注目が集まりがちだが、CTB広瀬選手も地味ながらいい働きをする。

その後、試合は東洋大が5点リードを保ったまま硬直状態となる。両チームともに肝心なところでミスが多く、ボールと同じで試合はどちらに傾くかまったく分からない。もちろん、負けられない気持ちが強かったことも間違いないのだが。選手個人の攻防では、WTBで対面だった日大の水間と東洋大の杉本の火花が散るようなマッチアップが面白かった。水間の低い重心を活かした突破力は日大の大きな武器で、前半から再三東洋大をピンチに陥れている。しかしながら、このままでは終われないとばかりに杉本もタックルで意地を見せる。体重差をものともせず水間を捻り倒した場面は「ファイター」そのものだった。

時計は進み、24分と32分に日大の広瀬が2連続PGを決めて27-26と一点差ながら日大が逆転。残り時間10分で試合をひっくり返せる(お約束の)『セナリオ劇場』の幕が開いた。後半開始早々の得点のあと、ゴールが遠い東洋大だったが、2試合連続で、しかも最小得点差で負ける訳にはいかない。ロスタイムも消化された46分、東洋大はゴール前ラインアウトからモールを押し込みトライ。GKが決まれば(前節の大東大戦とは真逆の)1点差でのサヨナラ勝ち!

やや右の角度のあるゴールキックを杉本が慎重に狙う。が、弾道は右に外れて日大勝利で試合終了!と思われた。しかしながら、レフリーが両キャプテンを呼ぶ。「キックの時に(日大選手が)声出してるから。」ということでキックはやり直し。こうなればキッカーは怖くない。今度はキックがゴールポストに収まり東洋大の劇的な逆転勝利が確定。歓喜の嵐の東洋大ベンチに対し、3敗目となった日大の選手達はガックリ肩を落とすしかなかった。



◆試合後の雑感
前年度上位校との対戦となった4戦を3勝1敗で終えた東洋大は立派。ただ、このゲームでの反則数22個は大きな課題と言える。1部の戦いの経験値不足は仕方ないが、レフリーとのコミュニケーションなど、今後の戦いに向けて克服すべき点が見えた試合だったと思う。激戦が予想される残り3つの戦いに向けて、自信を持ちつつ、テンションを上げて頑張って欲しい。

本日もほぼBK展開一辺倒だった日大のラグビーには疑問を感じずには居られない。強力なアタッカー達の存在もあり、東洋大も面食らったようだが、相手の反則の多さを活かせなかったことは確か。深めのラインはしっかりディフェンスされれば前に出られないし、強力な選手にはダブルタックルで対応可能。FWもランニングでかなり消耗するのではないだろうか。今後の相手も難敵が揃う中でどのように立て直していくのか注目したい。


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立正大学 vs 大東文化大学(関東大学リーグ戦G1部-2022.10.16)の感想

2022-10-25 01:45:57 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンからリーグ戦グループ1部で戦う立正大学と東洋大学はいずれも大東文化大学と同じ埼玉県に拠点を置くチーム。しかも、立正大学は森林公園駅、大東文化大学は高坂駅、東洋大学は鶴ヶ島駅がそれぞれ最寄り駅で、練習グラウンドは東武鉄道の東上線沿線にある。リーグ戦ではライバルでもご近所同士、お互いに切磋琢磨してレベルアップして欲しい。

さて、本日のセナリオハウスフィールド三郷にはその埼玉県の3チームが一堂に会する。そして第1試合は立正大学と大東文化大学の直接対決。立正大はここまでの3戦で1勝2敗と負け越してはいるが、日大、東海大ともいい戦いが出来ている。一方の大東大も同じく1勝2敗だが、対戦相手は前年度の下位校。そして、この試合の後には前年度上位校との対戦を控えている。目標は違ってくるが、両チームともに負けられない。

◆前半の戦い

昨日も同じ場所で法政と関東学院の試合を観ているが、本日の2チームとは体格が一回り(以上?)違うことは一目瞭然。立正大のキックオフで始まったこの試合は、序盤から留学生選手を中心とした大型選手同士による激しい肉弾戦の様相を呈する。開始直後の3分、立正大のFB武田が自陣奥深くで相手キックの処理を行う際に、タックルを受けて負傷交代するアクシデントに見舞われる。リスタートのラインアウトから大東大がモールを形成して前進。HO西林が抜け出て難なくゴールラインを越えた。先発メンバーが負傷でピッチを去り、あっさり得点を許した立正大に不安がよぎる。

さて、本日の大東大でプレースキッカーを務めるのはCTB(13)のハニテリ・ヴァイレア。ひとつ前の試合では同じCTB(12)の戸野部のキックが試合を決めた大東大だが、実はさらに優れたプレースキッカーが居たことを知る。この日、ヴァイレアは5本のプレースキックをすべて成功させたのだが、タッチライン際からでも2本のポールの真ん中にボールを収めるキックの正確性・安定度は特筆に値する。

ヴァイレアはキックオフでも鋭角的に高く上がるドロップキックで相手を悩ませ、自陣奥深くからは足の長いキックでチームをピンチから救う。ラインアタックでも落ち着いてプレーできる。過去3戦、CTB(13)で先発だったペニエリ・ジュニア・ラトゥの負傷によりスタメンとなった格好だが、もしこの試合に勝っていたらPOMの有力候補だっただろう。

いい選手を見つけたので話が逸れてしまった。序盤のアクシデントに動揺することもなく、立正大はすかさず反撃。キックオフで大東大が確保したボールをターンオーバーに成功してラック。左サイドから角度を付けて接近してきた(ノーマーク状態の)WTB大月にパスが渡り大きく前進。ゴール前でフォローしたSH中森がラストパスを受け取る。GK成功で7-7とゲームはあっと言う間に振り出しに戻る。

大東大も負けていない。10分、立正大陣ゴール前でのラインアウトからモールを形成して押し込みHO西林が連続トライ(GK成功で14-7)。次は立正大の番で、16分、大東大陣ゴール前でのラインアウトを起点としてラインアタックでボールを右に展開しNo.8ユアン・ウィルソンがトライ。GKは失敗するものの12-14となる。試合はこのまま最終スコアが予測不能なくらいの撃ち合いの様相を呈してきた。

しかしながら、予想に反し、ここから前半終了間際までなかなか得点表示が変わらない膠着状態となる。前半は蹴り合いとなる場面が多かったが、立正大にとって痛かったのは相手陣22m付近を狙ったと思われるキックがことごとく22m内に到達してフェアーキャッチされてしまったこと。ヴァイレア選手等のロングキックが効果的で、前半のキック合戦は大東大の勝利。

電光掲示の得点の数字がようやく動いたのは40分を経過してから。大東大が立正大キックに対するカウンターアタックからボールを右に連続して展開し、最後は右隅への絶妙なキックパスがWTB(11)小田嶋のダイビングトライを有無。GK成功で21-12と大東大のリードが9点に拡がる。大東大としてはこのまま前半終了にしたかったところだがHWL付近でのスクラムで反則を犯す。立正大のSO吉永が約50mのゴールキックを成功させ15-21と、ビハインドを(微妙な)6点差に縮めることに成功して前半が終了した。



◆後半の戦い

後半は開始早々に立正大が先制する。4分、大東大陣ゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進し、HO陣内がトライ。GKは失敗するが20-21と大東大のリードは僅か1点に縮まる。立正大は畳みかける。10分、大東大陣22m内左サイドのラインアウトを起点として、パスを受けたNo.8ユアン・ウィルソンが力強く前進。ラックを経てボールがCTB小熊に渡りトライ。GK成功で遂に立正大が逆転に成功する。前半はトライを挙げる等活躍していたとはいえ、あまり目立たないユアンだったが、後半へエンジン全開。もしかしたら、ベンチから後半勝負を言い渡されていたのかも知れない。

更に立正大。15分の3点を狙ったショットは失敗するが、大東大の自陣でのパスをCTB(13)キニ・ヴェイタタがインターセプトして前進。ラックから左に展開してSO吉永がトライ。GK成功で34-21となる。波に乗る立正大は23分にもう1つトライを追加。大東大陣でのスクラムを強力にプッシュし、ここでもNo.8ユアン・ウィルソンがボールを確実に前に運ぶ。ボールはラックから右に展開され試合開始早々にFB武田に替わって出場した23清永がゴールラインを越えた。GK成功で41-21と立正大の怒涛の4連続トライで41-21と立正大のリードは一気に20点まで拡がった。先に大東大の13番(ヴァイレレ)のことを書いたが、立正大の13番も(サイズもあるが)沈着冷静な選手で要注目だと思う。

しかし3T3G(21得点)で逆転可能な20点リードはけして安心できない。「キックオフからカウンターアタックでトライ」が3回続けば逆転可能だし、大東大にはその力が十分にある。ここから(このまま負ける訳にはいかない)大東大の死力を尽くした反撃が始まる。大東大のFWにはLOジョセフ・ドモニとNo.8サイモニ・ヴニランギといった強力なボールキャリアーが居るし、BKにボールが回れば得意なパス回しで相手を翻弄出来る。法政とはまた違ったパス主体のランニングラグビーで魅せてくれるチームに対して油断できない。

果たして終盤に迫った30分、大東大に起死回生のトライが生まれる。立正大陣22m内からのラインアウトからの連続攻撃でSO落がトライ。GK成功で28-41とビハインドは13点に縮まる。立正大に焦りはなかったと思うが、もったいない反則などミスが目立つようになったこともあり大東大の勢いを止められない。

時計は40分を経過。反則が増えてきた立正大に対し、大東大はタップキックから速攻で攻め続ける。43分には立正大選手に対し反則の繰り返しによるシンビンが適用される。そして45分、大東大はサイモニがトライをもぎ取る。やや難しい位置からのGKをハニテリがここも冷静にポストのど真ん中に蹴り込み遂に大東大のビハインドは6点!(25-41)。

「セナリオ劇場」と言ったらいいのか、最後の最後に逆転可能な点差を残す試合が続くこのグラウンドでの試合は本当に心臓に悪い。何故か関係者にとっても胃に穴が開きそうな展開になってしまう。しかし、立正大は1部リーグの経験があるとは言え、昇格したばかりのチームとは思えない落ち着きを見せて大東大の猛攻に耐え抜いた。



◆試合後の雑感

立正大は1部リーグ在籍時の試合を何度も観ている。キック主体の手堅いラグビーは得てして「大人しい」という印象をもたらしたことを思い出す。エンジンの掛かりが遅く、終盤に見せる怒涛の攻撃が何故前半から出来なかったのかと思わせたことが何度もある。そういったイメージを完全に払拭したのが今シーズンのチーム。「ニュー立正大」と呼びたくなるくらいに前半から積極的に攻めるチームへと変貌した。また、過去のチームにはなかった試合運びの巧さも身につけた模様。前日と本日で3試合6チームを観たが、この時点ではチームの仕上がりは一番と思えた。まだまだ発展途上のチームの今後の戦いが楽しみ。

敗れて1勝3敗と厳しくなった大東大。だが、負傷欠場者が相次ぎ、後半のスタミナに課題があるとは言え、チーム状態は悪くないように見える。スクラムの圧倒的な強さがなくなっているのが痛いが、ジョセフやサイモニと言った攻撃の核がしっかりしており、BKのキック力も大きな武器になっている。戦績は危機的だが、状況は悲観的ではない。前を向いて頑張って欲しい。


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法政大学 vs 関東学院大学(関東大学リーグ戦G1部-2022.10.15)の感想

2022-10-23 10:38:29 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


かつてはリーグ戦最終節に秩父宮ラグビー場で行われ、黄金カードだった2チームの対戦。そのかつては何時のことだったかを調べてみた。私がリーグ戦Gの観戦を始めた1997年以降だと、まず1999年、2年置いて2001年から2007年までの7年連続、そして2010年。それ以後は最終節での秩父宮での対戦がない。「黄金カード」と言っても通じ難くなっているのは致し方ない。

時計を現在に戻す。開幕から2勝1敗で好調な法政に対し、関東学院は3連敗。最後の最後まで縺れた東洋大戦以外は完敗と言える内容で両校の明暗が分かれる。前年度5位の法政は上位校との対戦がこの試合で終わり、逆に前年度4位の関東学院の残る対戦カードは前年度上位校。順位がひとつ違うだけでも大きな違いだが、勝ちたい気持ちはどちらも同じように強いはずだ。

◆前半の戦い

観客席には黄金カードの時代を知る人達も少なからず居るはず。序盤戦は様子見も兼ねたキックが多い展開。だが、チャンスとなればBKにボールが展開される。法政はシンプルなように見えて間合いに独特のリズム感を持つパス回し。それに対し、関東学院はロングパスを使うなど変化をまじえたパスで攻める。このあたりは時代が変わっても両校に受け継がれている伝統だろうか。

さて、先制点を挙げたのは関東学院。11分、SO安藤が10mライン手前からの距離のあるPGを決めて3-0となる。関東学院の安堵も束の間、法政が関東学院陣内でのラックのターンオーバーを期に攻勢に出る。直後のスクラムで強力なプッシュを見せ、関東学院はたまらずコラプシング。法政はゴール前のラインアウトからモールを形成して前進し、HO石川が抜けてあっさりトライを返す。GKも成功し、法政が7-3と逆転。

このトライを期に法政に勢いが出るが、ラインアウトのミスやゴール前でのラインアウトを狙ったPKがタッチインゴールとなるなど、ややちぐはぐ。一方の関東学院も法政が看板とする「炎のタックル」(グランドレベルで観ると、その低さとしつこさがよく分かる。)に苦しみ攻めきれない。法政のタックルの狙いはもちろん相手の前進を止めることにあるのだが、ノックオンを誘うことでカウンターアタックの起点ともなっている。「こぼれ球」への反応は法政の方が速く、ルースボールの7~8割は法政が確保するような状況。

両チームともに決め手を欠く中で時計はどんどん進み、電光掲示の得点が動いたのは前半も終盤にさしかかった35分。ゴール前スクラムでの関東学院のコラプシングの反則で得たPKでスクラムを選択。ここで法政はスクラムを強力にプッシュし、No.8寺前がボールをインゴールに運び連続トライ(GK成功で14-3)。法政は畳みかける。直後のキックオフでラックでのターンオーバーからオープン展開の連続によりWTB坂田がトライを重ねる(GK成功)。両チームが攻めている時間はさほど変わらないか、むしろ関東学院がボールが持つ時間が長いものの点差が18点まで拡がる。

前半終了間際に関東学院は相手の反則から法政陣ゴール前でのラインアウトのチャンスを掴む。しかしながら、ここでも関東学院にミス(ノックオン)が出て前半終了。法政が「炎のタックル」の他にスクラムで圧倒的に優位に立っていたことも大きいが、関東学院にやや元気がないように感じられたことが気になった。



◆後半の戦い

点差こそ開いているが、関東学院は法政に圧倒されているわけではない。リードしていても3トライ(+3ゴール)で追い付く21点差以内なら安心できないのがラグビー。関東学院は「流れ」をミスで掴みきれなかった印象が強い。言い換えれば、流れを変えられれば試合をひっくり返すことは十分可能に見えたのが前半の戦いぶり。ペースを掴むためにも後半は先に点を取りたい。関東学院はメンバーを一気に3人替えて後半の戦いに臨む。

そんな観客席の想いとは裏腹に、関東学院のミスが不利なスクラムを招くという悪い連鎖が止められない。キックが多ければ必然的にラインアウトも多くなる。ひとつ気になったのはラインアウトのポイントに向かうときにうつむき加減で歩いているFWの選手が散見されたこと。高校時代ならジョギングでないと怒られたはず。ルースボールをことごとく法政に拾われてしまったことも含めて意識の違いを感じた。

もちろん、関東学院にも何とか流れを変えようと奮闘している選手はいる。接点周辺でのファイトが前半よりも増え、身体を当ててボールを前に運ぶ動きに勢いがでてきた。5分、関東学院は法政陣ゴール前ラインアウトからモールを形成し、FL福見が抜け出てトライ。GKは失敗するが8-21となり2T2Gで逆転と、いよいよ反撃体制が整ったかに見えた。

が、本日の関東学院は集中力が続かない。カウンターアタックからのチャンスもノックオン、苦戦のスクラムではコラプシングとスタンドから溜息が漏れる場面が続き、波に乗ることができない。法政は17分に関東学院陣で得たPKのチャンスからショットを成功させて24-8とリードを16点に拡げる。反撃の芽を摘まれた形の関東学院にとって、この3点が重しのような形でのしかかりアタックでのミスが減らない。

試合も終盤にさしかかった33分、関東学院は法政陣ゴール前のアタックで21服部がラックからスッポリ抜け出てトライ。GK成功でビハインドは9点となり、残り時間からまだまだ再逆転は可能。関東学院は最後の力を振り絞って反撃する。しかしながら、ここでも自陣のスクラムでコラプシングを犯してしまい法政が(ショットは選択せずに)ゴール前ラインアウトからアタック。ここで痛いトライを献上し15-29(GK失敗)。

さらに43分、法政は自陣でのカウンターアタックからFB石岡が左サイドタッチライン際を快走。タックラーをかわして内側にフォローしたWTB坂田にパスを送る。パスを受けた坂田はゴールに向かって快走し、タックラーを巧みにハンドオフでかわしながらさらに内側を走っていた21北川にラストパス。法政らしいと言ってしまえばそれまでだが、この形なら絶対にゴールラインまで行くぞ!というDNAはしっかり受け継がれている。個人技と3人の意思疎通が図られた連携プレーが見事だった。

GKは失敗するが36-15で法政の勝利が決まった。スコアから見れば法政の圧勝だが、攻めている時間は関東学院の方がむしろ長かったこともあり辛勝の方が近い内容。勝敗を分けたのは、派手なプレーはなくても地道に相手をタックルで止め続け、ルースボールに素早く反応し、パスを確実に繋ぐプレーができたかどうか。「復活」への道程は法政が一歩以上リードだろうか。



◆試合後の雑感

法政の選手達のプレーを観て、まずやるべきことを確実にやることを普段の練習から心がけているように感じられた。ピッチから聞こえてくる声の多さも法政の圧勝。叱咤激励が飛ぶ活気のある練習風景が浮かんでくる。この試合の勝利により、3勝1敗での折り返しは大学選手権出場に向けて上々の出来。ただ、残りの対戦相手3校は前年度下位とは言え、体格面での不利は否めず厳しい相手と言える。今シーズンの持ち味をどこまで貫けるか(活かせるか)に着目したい。

関東学院がVを重ねていた頃のラグビーは、たとえそこが自陣インゴールだったとしても15人で確実にボールを前に動かしてゴールを目指す組織的なランニングラグビー。フロントローが余裕を見せてフィニッシャーになるラグビー(けして偶然ではない)は他に観た記憶が無い。そんなラグビーが可能なのも基本プレーがしっかりしていたから。狙いは分かるが軽く見えてしまうプレーが散見されるのが現在のチームと言える。東海大、日大、大東大との対戦を控える中で、相手に学ぶことが多かったと思われるこの試合での教訓を糧にして欲しい。

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