コンソレーショントーナメントで優勝を飾ったのは専修大。その専修大とオープニングゲームで対戦し、勝利を収めたのは東海大。1部、2部それぞれのグループを代表する優勝候補同士がよりによって緒戦で激突するなんてもったいない。この組合せを最初に見たときはそう思った。しかし、よくよく考えてみると、この2校はどこかでぶつかることになるはず。ならば開幕戦で対戦させて大会を盛り上げる方法もある。穿ち過ぎかもしれないが、主催者側にそんな意図があったのかも知れない。
この大会は数年前までは一般的な方式、すなわち、1回戦の組合せを1部校と2部校のたすき掛けで決めていた。しかしながら、1部校のセブンズに対する取り組みがまちまちで、必ずしもレギュラーで固めた最強メンバーで試合に臨む訳ではない。そこで、大会を盛り上げるために1回戦の対戦カードに工夫を凝らすようにしたのではないだろうか。東海大vs専修大が予想通りの熱戦(26-22)となったのは既にレポートしたとおり。ちなみに、もう一つの私的注目カードだった関東学院vs東洋大も接戦となったし、法政は國學院を相手に冷や汗を搔いた。そのほか、大東大vs山梨学院、流経大vs国士舘も一方的な展開にはなっていない。
こうして観戦した試合のひとつひとつを振り返ってみると、1回戦の対戦カードの組合せに運営側の工夫と(何とか大会を盛り上げたいというという)意図が感じられる。緒戦で敗れてもそこで「ジ・エンド」にならないコンソレーショントーナメントがあることの利点を活かしているとも言える。感想(その1)であえて大会の運営に関して苦言を呈したのは、せっかくの内容が濃いセブンズ大会を多くのラグビーファンに楽しんで欲しいと願うから。関東協会のHPにも事前告知がされていたし、入場料が無料の割には一般観客が少ないことがとても残念なのだ。
【チャンピオンシップ 1回戦】
○東海大学 24-5 ●立正大学(前半14-0)
緒戦で専修大と接戦を演じた東海大。だが、いったんエンジンがかかると強力な選手達が躍動する。前後半で各2トライずつを奪って試合を優位に進め、立正大の反撃を試合終了間際の1トライに抑えて貫禄勝ち。東海大が格の違いを見せて難なくベスト4にコマを進めた。
○拓殖大学 17-12 ●朝鮮大学校(前半12-7)
1回戦は不戦勝でこの試合が緒戦となる朝鮮大学校。対する拓大はパワフルな留学生を擁し、2戦目で既にエンジンがかかった状態。しかし、試合は拓大が先行するものの朝鮮大学校が追い付くことが2サイクルの拮抗した展開となった。朝鮮大学校は昨年度の大会でも巧みなパス回しで強くアピールした好チームだったが、それは今年もまったく変わらない。拓大のパワーを分散させる形で接戦を演じたが、試合終了間際にトライを奪われて無念の敗退。緒戦負けながら次の戦いがないことがとても残念に思われた。
○関東学院大学 26-19 ●大東文化大学(前半14-7)
開始早々の1分、関東学院はシンビンで1人少なくなるピンチに陥る。しかしながら、ここを被トライ1で凌いだあと2本連続でトライを挙げて逆転に成功。後半は開始早々に関東学院が1トライを挙げて21-7とリードを拡げたものの、4分と5分に大東大が連続トライを挙げてビハインドを2点に縮める(19-21)。一発逆転可能圏内となったところで大東大が勝利への執念を見せるが、関東学院はワンチャンスをものにする。15番を付けた佐々木が自らウラに蹴ったキックの確保に成功してそのままゴールラインまで到達。26-19で逃げ切りに成功しベスト4進出を果たした。
○流通経済大学 19-17 ●法政大学(前半0-17)
前半は(ほぼレギュラーメンバーの陣容で戦ってきた)法政が中井健人のトライを皮切りに3トライを連取して17-0と優位に立つ。このまま一方的な展開になるかと思われたが後半にまさかの失速。今度は前半のお返しとばかりに流経大が3本連続でトライを挙げて逆転に成功。GK1本分の際どい2点差ながら流経大もベスト4に名乗りを挙げた。後半に足が止まった法政はまだまだフィットネス不足だったのだろうか。試合を重ねる毎に進化を遂げる勘所の良さがあるチームという印象があるだけに残念。とはいえ、今シーズンは絶対的なエースへと成長を遂げた中井の活躍が楽しみ。去年にも増して、「ケントを使え」「ケントに回せ」といった観客席からのリクエストの声がより高く響くに違いない。
【チャンピオンシップ 2回戦】
○東海大学 24-17 ●拓殖大学(前半10-7)
開始早々に鹿屋、2分に池田がそれぞれトライを決めて東海大がさい先良く10点をリード。しかしながら、前半終了間際に拓大が1トライを返しGK成功でビハインドを3点に縮める。快足を飛ばして東海大のディフェンダーを振り切った濱副はリーグ戦屈指のスピードスターとしての活躍が期待される。後半はまず拓大が1本決めて12-10と逆転。すかさず東海大も反撃して池田がトライを挙げて再逆転に成功する(17-12)。東海大は6分、さらに1トライ1ゴールを追加してリードを拡げる(24-12)。拓大は終了間際に1トライを返すものの一歩及ばずベスト4で敗退となった。
○関東学院大学 36-19 ●流通経済大学(前半19-14)
開始早々、関東学院がシンビンでいきなりピンチに立たされる。1人多い流経大が2トライを連取して14-0と優位に試合を進める。しかし4分に関東学院が1トライ1ゴールを返したところで流経大の選手にもシンビンが適用される。さらに6分、流経大の選手がさらにもう1人イエローカードをもらい、ピッチに立つのは5人となる大ピンチに陥る。HWL付近に設けられた特別席に同じジャージーを着た選手が仲良く(でもないが)2人座るのは珍しい。しかし、つい先だってのYC&ACセブンズでも同じ場面を目撃したことが思い出された。関東学院がこの好機を逃すはずもなく、2つ連続でトライを挙げて難なく逆転に成功して前半が終了(19-14)。
後半開始早々、流経大はまだ1人少ない状況ながら気合い一番で1トライを挙げて19-19と同点に追い付く。しかし、流経大の反撃もここまで。その後、関東学院が4つ連続でトライを挙げて36-19で流敬大を突き放す。流経大にとって、一時的とはいえシンビンで2人を同時に欠いた代償は大きかったと言えそう。トライゲッターの佐々木や今井が絶好調の関東学院が決勝進出を果たした。
【チャンピオンシップ 決勝戦】
○関東学院大学 19-14 ●東海大学(前半12-7)
決勝戦はファイナルゲームに相応しい白熱した展開となる。1分に関東学院のFB小出がトライを挙げて5点を先制。しばらく攻防が続いた後、4分に東海大の池田がトライを奪いGKも成功して7-5と逆転。しかし、その直後の5分に関東学院が今井のトライ(GK成功)で再逆転に成功(12-7)する。東海大がボール支配率で上回るものの、関東学院は個々のタックルとダブルタックルをバランス良く機能させる組織ディフェンスで簡単には突破を許さない。
後半も攻撃力に勝る東海大が攻める時間帯が多かったが、4分に痛恨のミス。東海大のパスをインターセプトした今井が一気にゴールラインまで走りきり19-7(GK成功)となる。残り時間がどんどん少なくなっていく中での12点のビハインドは大きい。東海大には焦りの色が見えるものの、とにかく1トライを奪うための猛攻が続く。果たして終了間際に起死回生のトライを挙げて、間髪入れずにGKも成功。試合終了を告げるホーンが鳴ったのはその直後だった。東海大ファンはもう1プレーあるかと期待したのも束の間、終戦を告げるホイッスルが吹かれる。関東学院サイドからは一際大きな歓声が沸き起こった。
これで、東海大はYC&ACセブンズ、東日本大学セブンズに続き、またしてもあと一歩のところで優勝を逃した。最低限ひとつでもタイトルが欲しかった東海大にとっては残念過ぎる結果だが、王者復活を目指す関東学院にとっては幸先のよいスタートとなったと言える。本大会での個々の判断と組織力が融合したような戦いぶりを見る限り、既に復活を果たしたと言ってよさそうだ。長年の苦労に苦労を重ねたチーム作りのノウハウが蓄積され、それが確実に伝承されることになったチームの底力を見た思いがした。15人のチームになれば、現時点ではまだパワー不足かもしれない。しかし、このチームの持ち味でもあった、個々の判断力が組織として活きる創造的なラグビーを再び観ることができるようになったことを率直に喜びたい。
ラグビーは頭脳が9割 | |
斉藤健仁 | |
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